(百年 未来への歴史)序章・瀬戸際の時代 よみがえる「戦間期」の悪夢(朝日新聞)
上記のような図が新聞の1面に掲載されていたのですが、いかがなものでしょう。第2次大戦の図は枢軸国をピックアップしたものとして間違いではないのかも知れませんけれど、後段の現代を表したとされるものは強い作為を感じさせます。特におかしいのが中東地域の図で、具体的な国名としてはイランが名指しされているのですが、しかしイランがどこかの国に派兵を行ったなどの事実はなく、名前を挙げられた4つの国に共通点を探すとすれば結局のところ「アメリカから敵視されている」ぐらいしか言いようがありません。せっかくなら南北アメリカ大陸も地図に加えてベネズエラの国旗も掲揚したら、より主張が伝わったような気がしますね。
国のチョイスもおかしいのですが、地域ごとに付け加えられた説明もおかしい、欧州やアジアに比べて中東の説明だけが不釣り合いに長いのですが、曰く「イスラム組織ハマスの奇襲を受け~」とのこと。これではパレスチナ側が先制攻撃を仕掛けた結果としてイスラエルが正当防衛を行っているかのような誤解を読者に与えてしまいます。朝日新聞としてはそれが本望なのかも知れませんけれど、事実関係の説明としてはいかがなものでしょうか?
確かにハマスによる反転攻勢はあった、しかしこれに先立つイスラエル建国以来の絶えざる侵略については触れられていません。何事も全てを始まりから記載するのは難しいとはいえ、これでは紛争の原因がハマスにあるかのようなミスリードと言わざるを得ないでしょう。もちろんこのミスリードも意図遭ってのことのようにも思えます。ウクライナであれば、まずクーデターがあり、その後に国内の少数派住民に対する武力攻撃があった、これが解決されずロシアによる介入が始まったわけです。中東ではハマスの反転攻勢から触れることでイスラエルを免責し、欧州ではウクライナの内戦を無視することでロシアを悪玉に仕立て上げる、まさに西側陣営のプロパガンダそのものの図と言えます。
立ち位置で言えば、ガザ=ドンバス、イスラエル=ウクライナであり、昨今の紛争におけるロシアに相当する国は現在のところありません。確かにイスラエルに抗している勢力の後ろ盾としてイランが存在することは否定できないものの、それでもイラン本国は日和見主義的な立場を維持しており、戦局はイスラエル優位が続いています。やはりイランがロシアのように直接的な軍事介入を始めれば、ガザの窮地は救われる可能性が高い、それは上策ではなくとも大義のあることなのですが──「国際社会」を自称する欧米諸国からの非難に晒されるのは、イランであることがあらかじめ決められているのでしょう。
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今週は広島の平和記念式典が行われるわけですが、前年と同様にロシアは排除、アメリカやイスラエルは招待を継続、パレスチナ代表も当然ながら招待せずと、広島市の立場は鮮明です。日本にとっての核廃絶とはアメリカ陣営による核の独占であり、平和とはアメリカによる天下統一である、アメリカの覇権を脅かす存在こそが平和にとっての脅威であると、そう解釈すれば日本国内で平和を唱える人々の行動にも一貫性がないわけではないことが分かります。シオニストが平和を訴えるとき、それはパレスチナ人の絶滅政策を意味しているように、平和の基準が正しいのかどうかは常に顧みられてしかるべきでしょう。
PAC3、米に売却契約 ライセンス完成品で初―防衛省(時事通信)
防衛省は28日、航空自衛隊が保有する地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を米軍に約30億円で売却する契約を締結したと発表した。弾数や引き渡し時期は非公表。昨年12月に防衛装備移転三原則の運用指針を緩和した後、国内製造する外国ライセンスの防衛装備完成品の移転は初めて。
先月には日本国内製造の兵器をアメリカ軍に売却すると発表されました。「日本製」の兵器はアメリカ軍が使用するとの触れ込みですが、この分で余剰が出来るであろうアメリカ製の兵器はイスラエルやウクライナに送られるわけです。どう小細工を弄したところで、結局はパレスチナ人の虐殺へ日本も間接的に加担することになったと言えます。日本が「平和」を口にするとき、その意味するところはアメリカが世界を牛耳っていることです。「アメリカの敵」がどのような攻撃に晒されていようと、それは平和のためと言うことになるのでしょう。
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先に行われたベネズエラの大統領選挙では、西側メディア発表の世論調査結果を覆してマドゥロ大統領の再選が発表されました。4年前にトランプが選挙結果に異議を唱えたように、その公正性について疑問を投げかける権利はヨソの国にもあるのかも知れません。しかし西側メディアによる世論調査結果を根拠に、対立候補が本当の勝者であると認定し始める国もあるわけです。国外メディアによる世論調査結果で一方の候補が当選者として認定されるとしたら、それこそ民主主義とは何だろうと考えさせられるところもあります。そしてウクライナでは大統領の任期の切れたゼレンスキーが今なお権力の座に居座り、西側諸国から国家元首扱いされている有様で、どうにも選挙すら実は正統性の根拠にならない、要はアメリカの敵か味方かに収束してしまうのだと言わざるを得ません。
このウクライナのクーデター政権がドンバス地域の少数派住民への武力攻撃を開始してから、ロシアが直接介入に踏み切るまでは8年の歳月を要しました。それを思えば、イランがガザのために決起するにはまだまだ時間を要するのかも知れません。ロシアがそうであったように外交的努力を積み重ねた結果、どれだけの年月をかけても解決の見込みはない、かくなる上は軍事力による対抗しかないとイランが判断する時期が訪れたとしても、決して驚くことではないでしょう。そうなったときに日本ではイランへの非難が吹き荒れるであろうことは想像に難くありません。しかし本質的な悪はイスラエルの増長を助けてきた欧米にあってイランは大義のある行動をしているのだ、と私はあらかじめ態度を表明しておきます。