労組の組織率、過去最低の16%台に パート推定組織率8.1%で変わらず(毎日新聞)
労働組合の組織率が今年の推計で16.7%になり、9年連続で過去最低を更新した。厚生労働省が19日公表した労働組合基礎調査で明らかにされた。全国組織である連合は結成30年を迎えたが、労組の縮小が進む。
組織率は全労働者に対する労働組合員の割合を示す数字で、2012年調査から17%台だったが、今年6月末現在の状況を全労組に聞いたところ、前年より0.3ポイント下がり、初めて16%に落ち込んだ。
さて表題の通り労組の組織率が過去最低を記録したそうですが、残念でもないし当然と言ったところでしょうか。まぁ、日本の企業内労組はユニオン・ショップ制を基本としていますから、組織率=労組の存在する会社の割合みたいなものです。そうすると、8割超の人は組合のない会社に勤めている、組合なんて見たことがない方が普通と考えられます。ならば、この組織率の低さを評価する材料を持っていない人も多いのかも知れません。
現代日本において、組合は存在しない方が普通です。組合とはどんなものか、現物に接したことがない人の方が圧倒的に多いと言えます。だから組合の実態よりも、経済誌やネット言論に書かれるような偏見まみれの組合イメージで物事が判断されがちなところもあるのではないでしょうか。なにせ下手をすれば組合員より外国人と接する機会の方が多そうなのが現代ですから。
もっとも、労組のない企業において労使協定を結ぶ立場にある「(労働者の)過半数代表者」に比べれば、まだ実在が確認できる分だけマシな気はします。私自身が渡り歩いてきた勤め先もまた組合が存在しない方が一般的で、そうした会社に正社員として雇用されていたこともありますが、この「過半数代表者」というものを見たことは一度もありません。きっと、法律の条文にのみ存在する幻獣みたいなものなのでしょう。
それはさておき、組合など存在しない会社の方が普通です。だいたいの人は、組合のない会社で働いています。組合とはどんなものか、直に接する機会がないまま生涯を終える人が多数派なのです。組合の組織率が高くあるべきか低くあるべきか――それを考えようにも、実物を見ることができない珍獣が相手では、難しいところもあるのではないでしょうか。
ただ一口に組合と言っても、だいたい3種類くらいに分けられるように思います。特定企業に属さず個人加入を中心とする例外的な組合、企業との対決を辞さず「連合」から排除された少数派組合、民主党の支持母体として労使協調の理想を追う御用組合、最大勢力は3つめの連合であるわけですが、この連合にしてもあくまで組織率16%の中の最大勢力に過ぎない、と。
意図して少数派あるいは例外的な組合へ加入しようとしない限り、遭遇する可能性が圧倒的に高いのは御用組合の連合です。私も今はそんな企業内労組に加入しているのですが、組合員として過ごして感じたのは、組合と町内会、あるいはPTAって似ているな、というものだったりします。まぁ私自身はPTAに加入したことはないので、そこは人づてに聞いた話を含めてですけれど。
自分の勤務先の多数派労組の特徴として挙げられるのは、「事実上の強制加入」「会費が結構高い」「よく分からない組合費の使途」「一部で盛り上がっているだけのレクリエーション活動には熱心」「(民主党候補への)寄付金集めには熱心」「いつも役員の押し付け合いが起こる」「未加入者への嫌がらせに熱心な人がいる」「人事部から組合幹部へ定期的に『寸志』が渡されている」等々でしょうか。この辺、町内会やPTAでも似たようなものがあると思うわけです。
町内会やPTAもそうであるように、企業内労組もまた本来の目的を忘れ、一部の人が張り切っては周りを振り回すだけの厄介者になっている印象は拭えないところです。企業内労組が存在すれば同業他社より給与水準が高いかと言えば、そんなことはありませんし、企業内労組があってもパワハラや退職強要はなくならない、企業内労組の存在意義ってなんなのでしょうね?
今の勤務先は、転職エージェントの人から「組合の強い会社(の子会社)」として紹介されました。ただ、この「強い」とはどうやら、経営側に対して「強い」という意味ではないようです。何に対して「強い」かと言えば従業員に対して強い、人事部を後ろ盾に各部署にヤミ専従の組合役員が闊歩する姿は間違いなく「強い」組合ですが、じゃぁ従業員の不利益となる決定を会社が下したときに戦ってくれるかと言えば、労働者側の代表として合意するだけだったりします。こういうのを見ると、少なくとも多数派労組に関しては既に歴史的使命を終えているのだな、と感じるばかりですね。労組の組織率もさることながら、労組の世界の政権交代もまた意識されるべきだと思います。