非国民通信

ノーモア・コイズミ

会社は痛くもかゆくもない

2010-08-31 22:59:23 | ニュース

プラダジャパン、不当解雇を訴えた元販売部長を逆提訴(AFP通信)

 イタリアの高級ブランド「プラダ(Prada)」の日本法人「プラダジャパン(Prada Jpan)」は、容姿などを理由に不当に解雇されたとして同社を訴えていた元販売担当部長のボブリース里奈(Rina Bovrisse)さんを逆提訴した。

 25日付の英字紙ジャパン・タイムズ(Japan Times)によると、プラダジャパンはブランドイメージを傷つけられたと主張し、ボブリースさんに賠償金3300万円を求めている。初公判は東京地裁で24日に行われた。

 ボブリースさんは、プラダジャパン幹部がボブリースさんに対し「醜い」、「プラダのイメージではない」などと容姿に関する差別的な発言をしたうえ不当に解雇したとして、元同僚2人とともに同社を訴えていた。ボブリースさんは、解雇の撤回と精神的苦痛に対する慰謝料を求めている。

 ボブリースさんは 労働審判でプラダ側と和解に達しなかったため、プラダジャパンを提訴していた。

 外資企業では簡単にクビを切られると、昔からまことしやかに噂されてきたものですが、実際のところはどうなのでしょう。日本発祥の企業だって大差ない、日本で営業する以上は外資も日本企業も変わりないという気がします。にもかかわらず日本では解雇規制が厳しく正社員はクビにできない、などとしたり顔で言ってのける人もいるのですから呆れるほかありません。経済誌やビジネス本ばかりではなく、もうちょっと社会の動向にも目を向けるべきですね。ともあれ日本国内では正社員の解雇も珍しくないわけですが、それでも「解雇が横行しているのは中小企業だけだ、大企業は違う」と言い張る人もいます。じゃぁ、外資系企業はどうなのでしょう。簡単にクビを切られるものとされている外資は大手ではないのでしょうか。まさか在日米軍よろしく外資は治外法権、日本の法律が及ばないから解雇が可能なのだと思っているわけでもありますまい。

 日本では慣習的に、労働関係の法律は守らなくてもあまり問題になりません。労基署などの監督機関の働きもアリバイ作り的なレベルに止まっているのが現状で、給与の不払いも不当解雇も九分九厘は黙認されているわけです。雇用に関しては実質的な無法状態にある中で大半は労働者側が泣き寝入りせざるを得ない状態にありますが、ただ一応は法律が存在していますので、個人的に裁判に訴えるという手段が残されてはいます。それも随分とハードルの高い話ですが、意を決して裁判に訴えた場合は何が待っているでしょうか? 裁判に関わる諸々の負担もさることながら、このプラダのように雇用主側が逆提訴に踏み切るなど、報復措置を執られるリスクもまた存在するのです。

 似たようなケースとして「すき家」を運営するゼンショーの例が挙げられます。当初、不払いとなっている残業代の支払いを求めて店員側が会社を提訴していたのですが、あろうことかゼンショーは商品用のご飯どんぶり5杯分を無断で食べたとする窃盗などの疑いで店員を刑事告訴したわけです(参考、働く人をいかに蔑ろにしているか)。この件はつい先日、店員側勝訴で訴訟が終了したのですが、2008年4月の提訴から最終的な判決が出るまで、実に2年以上もの年月を要しています。会社側の逆提訴などの報復措置に屈せず、2年や3年という長期間にわたって会社と戦い続けるだけのタフな人間であれば、雇用主相手に勝利を勝ち取ることもできるのかも知れません。しかし、普通の人には無理でしょうね。労働者側は泣き寝入りするほかありません。

 さらなる問題は、こうした労働関係のトラブルが企業イメージの悪化、ひいては企業業績の低迷を招いて「いない」ということです。プラダやゼンショー以外の企業でも残業代の不払いや過重な残業、不当解雇や雇い止め、パワハラなど諸々の問題が毎日のように紙面を賑わせているわけですが、これが原因で深刻な業績不振に陥った会社は、少なくとも近年は一社たりとも存在していないでしょう。これが消費者に対する問題であれば話は別、消費者の信頼を裏切るような行為であれば大きくシェアを落とすことにも繋がる一方で、雇用関係の問題は全くと言っていいほど売り上げに影響を及ぼしていません。商品の表示を偽装すれば大問題ですが、偽装請負が発覚したところで会社が傾くようなことにはならないわけです。

 大企業は世間体を気にするものですが、それはあくまで「消費者」に向けてのことに限られます。世間体を気にする企業は消費者を裏切ることで企業イメージが傷つく、それで売り上げを落とすことは避けようとするものです。しかし労働者に関しては違います。従業員をぞんざいに扱い裁判沙汰に発展しようとも、そして雇用関係の諸問題が全国紙で取り上げられる日が来ようとも、そのことによって消費者に対する企業イメージが低下することはないのです。プラダもゼンショーも、トヨタもキヤノンも、雇用関係で問題を起こしてきましたが、それで消費者からそっぽを向かれるようなことがあったでしょうか? 決して客から見放されたりはしていないどころか、むしろ好業績を上げる企業として社会的な賞賛を浴びることの方が多かったぐらいです。だからこそ大企業も安心して、賃下げや首切りに励めるのでしょう。

 

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コメント (5)
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