非国民通信

ノーモア・コイズミ

今までのやり方が通用しなくなるなら、それは良いこと

2018-11-25 23:39:01 | 雇用・経済

外国人3千人が加入の労組結成 日高屋、大半が非正社員(朝日新聞)

 中華料理店「日高屋」を首都圏で約400店展開する「ハイデイ日高」(本社・さいたま市)で、外国人従業員が約3千人加入する企業内労働組合が結成されたことが分かった。組合員の約3分の1を占めるといい、これだけ多くの外国人が入る労組は極めて異例だ。政府が外国人労働者の受け入れ拡大を進める中、外国人の待遇改善をめざす新たな動きとして注目を集めそうだ。

 同社や労組関係者によると、名称は「ハイデイ日高労働組合」。今年5月に繊維・流通・食品業界などを束ねる産業別労働組合「UAゼンセン」に承認され、労組の中央組織・連合の傘下に入った。店舗網の拡大による従業員数の増加を受け、社内で労組の結成が長く検討されていた。関係者は「今年ようやく話がまとまった」という。

 組合員数は約9千人。パートやアルバイトなどの非正社員が8千人超を占め、このうち約3千人がベトナムや中国、ネパール、ミャンマーなどから来ている従業員だ。週28時間以内なら働くことができる日本語学校や専門学校で学ぶ留学生らが多いという。

(中略)

 外国人の労働事情に詳しい日本国際交流センターの毛受(めんじゅ)敏浩執行理事は今回の動きについて、「日本の労働市場に、すでに外国人が相当入り込んでいることの表れだ」とみる。一方で「要求のとりまとめは日本人以上に難しい」(外国人の労働相談を受ける地域労組の代表)との指摘があり、言葉や文化の壁があるなかで組合員の要求をどう集約し、実現していけるかが課題になりそうだ。(土屋亮)

 

 さて正規雇用が減って非正規労働者が増えた時代には、この増えた非正規社員を取り込まないと労組が衰退するのはわかりきったことでした。ところが大半の労組は組織の拡大に不熱心で、組合員の供給源たる正社員の減少を指を咥えて眺めているばかりだったわけです。果たして大手労組連合は単にやる気がなかったのか、それとも組合員の権利保護とは別のところに目的があったのか、もう少し問われるべきなのかも知れません。

 「連合は共産党の影響を排除するために闘ってきた」とは日本労働組合総連合会(以下「連合」)の神津里季生会長の発言ですが、この大手労組の集合体である「連合」とは、労使協調の理想を追求すべく、会社側との対決姿勢が強い共産党寄りの労組を排除する形で、右派労組が結集して作られたものです。その中核は、かつて自民党を右から批判していた民社党の支持母体であるゼンセンであり、時には安倍内閣に先んじて残業代ゼロ法案への賛意を表明するなど、本質的には「反・労働者」の立場と言えるでしょうか。

 ともあれ「連合」は、大手というに止まらぬ「過半数」労組として労働者を代表する立場にあり、自民党が政権を取ろうが民主党系諸派が政権を取ろうが、その地位は揺るがないものでもあります。一方で労組内の「野党」である共産党系の組合や連合傘下に入らない諸派組合は、連合の「与党」としての地位を理論上は脅かしうる存在であり、それが高じて連合の「反・共産党が第一」に繋がるわけです。ゆえに民主系政党が自民に負けても問題はないが、共産党には――と。

 また安倍内閣の賃上げ要請などに強く反対しているのもこの連合でして、要するに連合としては「自分たちこそが労働者の代表」であり、賃上げ交渉のテーブルに立つ資格があるのも自分たちであると、そういう思い上がりを強く持っているのです。「連合の主権」に最大限の配慮をしてきた故・民主党政権が安倍内閣に代わると、口先レベルとはいえ賃上げ要請という「政府の介入」が始りましたが、連合にとってそれは「聖域への侵入」だったと言えます。

 労働者にとっては連合よりも安倍政権の方が頼りになったところですが、しかし連合からすれば「主権を侵害された」みたいな感覚なのでしょう。連合にとって守るべきものの第一は過半数労組として「労働者を代表する権利」に他なりません。だから政府の介入は許さない、それが高じて経済政策面では自民党以上に小さな政府思考になるところがありますし、連合を支持母体とする民主党系諸政党もまた、政府の介入を厭う市場原理主義的、新自由主義的な主張に傾きがちなのは、ある種の必然と言えます。

 前置きが長くなりましたが、この連合と、その中核たるゼンセンに、大半を非正規とするばかりか外国人比率が3割以上を占める労組が加わったと伝えられています。当然ながら異例の事態とも報じられていますけれど、この影響はどうなるでしょうか? 曰く「要求のとりまとめは日本人以上に難しい」(外国人の労働相談を受ける地域労組の代表)とのことで、引用元では課題があるような書きぶりです。しかし私には、むしろこの「難しさ」こそが希望であるようにも思われます。

 というのも、昨今の日本の組合員に「難しさ」はなかったわけです。要求のとりまとめに苦労することなどなかった、自民党に反対するポーズでも適当に取りつつ、会社側とも出来レースのプロレスごっこを続けていれば、それで済んでいたのです。ところが外国人が、日本的な従属意識を身につけてくれるかと考えれば、やはり難しいと言えるでしょう。そして難しいからこそ、今まで通りのやり方が押し通せなくもなる――ことを期待したいです。

 日本の市場はまさにガラパゴスであり、グローバルな考え方からは頑なに背を向けてきました。労働環境も然り、労組連合と組合員の関係も然りです。しかし外国で生まれ育った組合員という「外来種」の上陸を前に、これまでの旧態依然とした日本的労組もまた変化を迫られる可能性があります。悪しき労組が淘汰され、真に労働者のために戦える世界基準の労組が産み出される、そうした化学変化を起こす火種は、日本の内からではなく、外から来る可能性の方がずっと高いでしょう。

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日本人がやりたがらない仕事

2018-11-18 22:56:28 | 社会

 さて日本は四半世紀ばかり、国内で働く人の所得がほとんど増えていないわけです。一方、海の向こうでは子供が大人になるだけの時間が流れていたりします。日本には大きな変化がなくとも、周辺国は完全に様変わりしている、昔の常識が通用しなくなっていることが珍しくありません。一世代前の日本は豊かで進んだ国でしたが、果たして現代日本は他国と比べてどうなっているでしょう?

 今や中国から日本の大学に留学してくるのは、あまり優秀でない人の方が増えているそうです。本当に優秀な人は、中国国内のエリート大学に進み、そういう大学には入れないけれど家は裕福な子供が日本に留学するのだとか。元より中国も韓国もトップクラスの企業は日本企業よりも高い給与を払い、日本より高い技術力を持つようになった時代です。日本と周辺国の力関係は、もう過去の認識が通用しないところに来ていると言えますね。

 我らが日本国政府は出入国管理法を改正し、外国人材の受け入れ門戸を広げようとしているようです。内容を一言でまとめれば「日本人がやりたがらない仕事をやってくれる外国人労働者」を増やそうというものですが、その是非はいかがなものでしょう? 東南アジアまで目を広げれば確かに、母国で働くより日本に出稼ぎに来た方が儲かる地域は残っています。とはいえ、それがどこまで続くかは分かりません。

 まず日本が「選ばれる国」であるのかどうか、少なからず疑わしいように思います。時計の針が30年前から動いていないような人も多いですから、そうした人の頭の中では「(門戸を広げれば)外国人が勇んで日本に殺到する」ことになっているのかも知れません。一方で現実は厳しく、「日本より稼げる国」はいくらでもあるわけです。日本に来るような人は「親日派」のブローカーに騙されてきた人か生粋のオタクぐらいになりつつあるのではないでしょうか。

 よくよく考えれば母国語と日本語のバイリンガルとなった時点で、経緯はさておき日本に来る外国人労働者の多くは日本人より優秀なのかも知れません。にも関わらず日本人より低い賃金で、日本人がやりたがらない職種に縛り付けられている、親族の扱いや将来の保証の面でも日本人とは待遇面で差別されているとあらば、それは搾取と見なされるものであり、将来の禍根にも繋がるものです。

 現代日本は「人を安く長く働かせることで収益を上げる」ビジネスモデルが主流ですから、「外国から安価な労働力を買ってくる」ことが、日本の経済界にとって魅力的に映るのは無理のないことです。ただ、そうしたビジネスモデルがグローバル時代に耐えうるものなのか、それとも日本というガラパゴス列島でのみ生存可能なものなのか、どうにも私には後者に感じられてならないところがあります。奴隷を買ってタダ働きさせて財を築く……というのは海の外では廃れた代物ですよね?

 なお今回の出入国管理法の改正案には含まれていないようですが、「日本人がやりたがらない」もしくは「なり手がいない」とされる職種としては、「零細企業経営者の跡取り」と「地方議会議員」が挙げられます。どうなんでしょう、この辺こそ日本人で賄えていない以上は、積極的に外国人材をあてがうと良いのではないでしょうか。外国人に介護職を押しつけても何か世の中が良くなるとは思えませんが、外国人を社長や議員にすれば、何かが変わる気がします。

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再来年はひどいことになりそう

2018-11-11 23:23:14 | 社会

迷惑度「急上昇」、満員電車の背負いリュック(東洋経済ONLINE)

全国72社の私鉄が加盟する日本民営鉄道協会(民鉄協)では、毎年ホームページ上でアンケートを行い、その結果を「駅と電車内の迷惑行為ランキング」として発表している。現行のスタイルでアンケートを始めた2009年から昨年までの9年間の推移を見ると、「荷物の持ち方・置き方」が2009年の12位から2017年には3位に上昇していることがわかる。

このアンケートでは、それぞれの迷惑行為の内訳についても質問を行っている。「荷物の持ち方・置き方」の内訳は以下のとおりだ。

この内訳を見ると、荷物の持ち方や置き方のうち、もっとも迷惑に感じるのはリュックサックやショルダーバックの持ち方だということがわかる。こうした状況を受け、関西では今年3月に20の鉄道事業者が共同で「車内でのリュックサックは、前に抱えるか網棚の上に置くなど、他の方のご迷惑にならないようお願いします」というポスターを掲出した。首都圏では各鉄道会社がポスターやステッカーの掲示に加え、アナウンスにより、マナー向上に取り組んでいる。

 

 生活保護受給者や学校給食費の未納などは声高に非難されることが多いものですが、一方でNHK料金や国民健康保険の未納については、あまり非難されることはありません。違いは、どこにあるのでしょうか? 前者と後者、決定的な違いは「数」だと私は思います。すなわち少数派か多数派か、と言うことですね。

 生活保護受給者は、とにかく数が少ないので、それを不正な受益者と見なしてバッシングしたところで反撃を受ける恐れはありません。学校給食費の未納者も同様ですね、未納者が少ないからこそ安全な場所から攻撃できるわけです。一方でNHK料金や国民健康保険の未納者ともなれば、至る所に存在します。今あなたの隣にいる人が未納者である可能性だって否定できません。未納者を非難すれば、周りの未納者から逆に責められることだってあるでしょう。

 今回の引用元で伝えられている「リュック」は、果たしてどういう理由で迷惑がられているのでしょうか。本当に迷惑度合いが高いためにやり玉に挙げられているのか、それとも「安心して非難できる」少数派だからこそ頂点に輝いたのか、幾分か判断に迷うところです。少なくとも「皆がリュックを背負っているのが普通の」社会であれば、それは迷惑行為でなくなるのですから。

 なお「荷物の持ち方・置き方」の順位が上昇する一方で、その他の項目には大きな変動が見られません。でも、「混雑した車内で新聞や雑誌・書籍を読む」辺りはどうなのでしょう。新聞や雑誌の売り上げは、急落しているわけです。新聞や雑誌がこれほどまでに売れなくなっているのに、それを迷惑行為と感じている人の率には影響が出ていないとすれば、なんとも不思議なことです。本当に迷惑な行為なのか、ただ単に迷惑だと「感じている」だけで実体を伴わないのか、そこも判断に迷います。

 

平成29(2017)年度 駅と電車内の迷惑行為ランキング - 日本民営鉄道協会

 ちなみに調査元では、「男女別」の集計結果なんかもありました。男性が回答する迷惑行為の1位は「騒々しい会話・はしゃぎまわり等」で、第2位が「歩きながらの携帯電話・スマートフォンの操作」、一方で女性の回答した迷惑行為の1位「座席の座り方」、第2位が「荷物の持ち方・置き方」とのことです。

 「騒々しい会話」云々は女性回答でも3位、「座席の座り方」は男性回答でもやはり3位と、全体では似るところもありながら、それでも男女で順位に差があるのは興味深いところです。概ね、座席の座り方で女性に迷惑を掛けるのは男、騒々しい会話で男性に迷惑を掛けるのは女、という傾向があるのでしょう。

 いずれにせよ用意された選択肢の中から回答するシステムのようですので、生の声からは少しばかりずれたものになっているところもあると思います。「抱きかかえた子供を振り回して子供の靴をぶつけてくる人」とか「二人で力を合わせて人を押しのけようとするカップル」とか、選択肢以外にも色々と思い浮かぶのですが――「行楽客」こそが迷惑王なんじゃないかと、私なんかは思いますね。

 「旅の恥は掻き捨て」とも言いますが、老若男女、人種国籍を問わず行楽客のマナーは酷いものではないでしょうか。日頃は元気のない高齢者も日頃は大人しい若者も、国元では真面目な外国人も、いざ遊びに出かけるとなればキャリーバッグを振り回し、仲間と共に人目も憚らず騒ぎ出すものです。一時は京葉線で浦安方面に通勤していたのですが、ディズニーランドに向かう客の傍若無人ぶりは、筆舌に尽くしがたいところがありました……

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理解できるところもある

2018-11-04 22:11:55 | 政治

宗教で兵役拒否「正当」=判例変更、徴兵制に影響も-韓国最高裁(時事通信)

 【ソウル時事】宗教に基づく兵役拒否は兵役法で定めた「正当な事由」に当たるとして、韓国最高裁は1日、兵役法違反罪で有罪判決を受けた男性(34)の二審判決を破棄し、審理を高裁に差し戻した。2004年に宗教的、良心的兵役拒否は「正当な事由ではない」とした最高裁の判例を変更して事実上「無罪」を言い渡した形で、韓国の徴兵制に影響を与えそうだ。

 

 まだ一部に止まるところはあるとは言え、世界市場での競争力や技術力では日本を追い越し、ついでに最低賃金でも日本を上回ろうとする韓国ですが、社会的な成熟度合いはどれほどのものでしょうか。意外に忘れられているのではないかと思われるのは、つい30年ばかり前までの韓国は、軍部が独裁体制を敷き民主化を求める人々を弾圧しているような国家だったことです。そんな名残もあってか徴兵制度が今なお続くわけですけれど、ここで画期的な判決が出てきたようです。

 そんな韓国の最高裁で、もう一つの興味深い判決が下されました。何でも韓国の元徴用工4人に対して請求権を認め、新日鉄住金に賠償を命じたとか。これに日本政府は強く反発しているわけですが、色々と考えさせられるところがないでもありません。注目したい点の一つは、韓国――韓国に限りませんけれど――が三権分立を採っていることですね。ここが日本には理解しづらいところでしょうか。

 日本では立法や司法に対する行政の優越が確立されており、総理大臣自らが「立法府の長」を名乗ったりしています。これは公的には誤った表現ですが、自衛隊が「軍隊」を名乗るのと同じようなもので、実態から外れてはいないわけです。立法府は行政を支えるものであり、司法もまた然り、地裁レベルならいざ知らず、最高裁は原則として行政に足並みを揃え、違憲性が問われれば憲法判断には踏み込まないとの鉄則を堅持してきた歴史があります。

 そんな日本で生まれ育った人間からすれば、過去に韓国政府との間で取り交わされた合意事項と相容れない判決を、司法が下すという事態は奇異に映るのかも知れません。日本であれば、あり得ない判決には違いないでしょう。とはいえ、三権分立とはそういうものです。行政から独立して司法が判断する、韓国に限らず三権分立を採用している国では、起こりうる事態なのです。

 さて働く人に正当な対価を支払おうとしないのは、今も続く日本の伝統と言えます。韓国人が犠牲になることは減りましたが、現代ではベトナム人などが犠牲になることが多いようです。彼らは軍隊に強制連行されて来日したわけではないのかも知れません。それでもなお、日本での処遇に恨み辛みを抱くのも仕方ないと、そう思えるような現状があります。ベトナムの日本大使館前に技能実習生像が建てられたとしても、残念でもないし当然ですね。

 

韓国紙、評価割れ「正義」「韓日関係に台風」(毎日新聞)

 【ソウル堀山明子】韓国最高裁が新日鉄住金に元徴用工4人に対する賠償命令を下した確定判決から一夜明けた10月31日、韓国主要紙は1面トップで判決を大きく報じた。ただ、判決の評価を巡り、韓国メディアは革新系と保守系とで論調が割れている。

 革新系のハンギョレ新聞は「裁判巡る裏取引で遅れた正義」と見出しをつけ、日韓関係悪化を憂慮する朴槿恵(パク・クネ)前政権時代に最高裁と外務省が判決を5年間延期した状態が解消されたとの見方を強調し、判決を肯定的に報じた。

 一方、保守系の中央日報は判決内容を伝えるメインの見出しの脇に「韓日関係に台風」との見出しを掲げ、1965年に締結された日韓協定の土台が崩れることへの懸念を示す有識者コメントを掲載した。

 また、保守系の朝鮮日報は4面で「国交正常化の軸となる請求権協定に動揺」との見出しで日韓協定締結時の個人請求権を巡る交渉記録を整理。日本から提供された5億ドルを管理する当時の経済企画院長官が「国家の資格で補償金を受けたので個人には国内で処理する」と国会答弁していた事実を紹介した。

 

 この判決について韓国の「革新系」と「保守系」で受け止め方が異なっていることが伝えられています。総じて日本側の見解は韓国の「保守系」と一致していますが、正当性はどちらにあるのでしょうか。とかく保守派と言えば排外的なイメージがあるかも知れません。しかし、その辺は実は相手次第だったりしまして、日本でも最もアメリカに親和的なのは、ハト派やリベラル派、左派や革新派ではなく保守派だったりするわけです。

 韓国の保守系も然りで、アメリカには親和的で――その盟友である日本にも少なからず贔屓目があると言えます。では保守としての排外性をどこに向けるのか、その仮想敵は日本ではなく、共産主義(と名前が付くもの)であり、北朝鮮だったりするわけです。今なお内戦中の韓国にとって北の国こそが敵であり、日本は勝共連合の同志なのですね。だから、今回の判決を受けても上記引用のような態度になるのでしょう。

 かつては日本の右翼団体と韓国のカルト宗教が仲立ちとなって、日本と韓国は手を結びました。「共産主義」を共通の敵と見据えることで、怨恨を乗り越えたと言えるでしょうか。ところが日本の仮想敵であったソ連が崩壊する一方、韓国の仮想敵である北朝鮮は延命中、その辺が日韓の「保守」の温度差に繋がっているようにも思います。韓国の保守にとって矛先を向けるべき相手はずっと北にいる一方で、日本の保守は拳を振り下ろす先が定まらない、だから韓国を非難してみたりもする、と。

 ともあれ今回の判決を受けて日本政府側は強く反発しているわけです。まぁ、個人的な恨み辛みは政府間の「手打ち」では消えません。例えば日本と北朝鮮の拉致問題でも政府間の手打ちは小泉政権時代に一段落付いたはずですが、日本側は常に蒸し返し続けることを好み、北側の説く「未来志向」を頑なに受け入れようとしないように、ですね。ならば韓国が日本の説く「未来志向」を受け入れないのも、立場を変えれば理解できないものではないでしょう。

 日本と韓国が協定を結んだ当時、韓国は軍部が独裁体制を築き、民主化を求める人々に過酷な弾圧を加えていました。反共の旗を掲げ「西側」に属していれば軍事独裁政権でも民主主義の同志となるものですが、しかし手を組む相手としてはどうだったのでしょうか? 韓国の軍事政権は、日本にとって信頼して協定を結ぶに足る相手だったのでしょうか? 現に「日本が手を結んだ軍事政権」は協定通りに韓国国民への補償を行わず、日本を裏切る形になったのですから!

 この韓国の軍事政権に好意的な人々すなわち「保守系」は、軍事政権が日本と結んだ協定を、それなりに重んじていることが今回報道から分かります。しかし、その協定を適切に履行しなかった軍事政権の過去までは非難できていないようです。この辺の構図は、日本の「保守」が日本の戦時体制で犯してきた罪を直視できない、批判を受け入れられないのと同じようなものがあるのかも知れません。

 一方で、日本が協定を結んだ当時の軍事政権によって弾圧を受けていた人々もまた韓国にはいます。民主化を求め「日本と協定を結んだ軍事政権」と戦ってきた人もまた、いるのです。そうした人々の精神を継いでいる「革新系」の人々にとって、長らく韓国人を抑圧してきた軍事政権が結んだ協定は、どこまで尊重できるものなのでしょうか? まぁ日本もそうであるように、民主化する前の政権が引き起こした結果を、国民は引き受けなければならないところはあります。

 とりあえず韓国の司法は、当時の軍事政権が日本と結んだ協定を尊重しない判決を下しました。民法的に考えれば、日本と抑圧者である軍事政権の間の取り決めは、善意の第三者(韓国で民主化を進めてきた人)に対抗できないと主張することもできるでしょうか。ただ国際法的には軍事政権といえどアメリカが認めた自由の同志である以上、当時の韓国もまた正当な国家ですから、協定も法的拘束力を持つと考えられそうです。

 とはいえ、逆のパターンならどうでしょう。かつて「東側」の旧共産主義国で、反ロシア派武装勢力によるクーデターが起こり、その国が「西側」の一員に加入した場合を想定してみてください。新しくアメリカの同盟国となった国が、かつてのロシア寄りだった政権が結んだ協定を反故にするべく主張し始めた場合ならば――それは結構、国際的に認められるのではないかと思われます。

 いずれにせよ日本側が心得るべきは、協定を盾にしても個人の恨み辛みは消えない、拉致問題における北朝鮮政府との手打ちが意味をなしていないのと同じことが、韓国でも起こるのは必然ということです。河野外相のように他国のせいにしているばかりでは、何も解決することはないでしょう。そして協定の中身を実践しなかった「当時の」韓国軍事政権もまた非難されて良さそうなものですが、その非難の矛先を「現在の」韓国政府に向けている限り、軋轢は深まるばかりと考えられます。

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