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非国民通信

ノーモア・コイズミ

野党共闘

2025-04-20 21:25:27 | 政治・国際

藤井氏が再選確実 富山市長選(富山新聞)

 任期満了に伴う富山市長選は20日投開票され、いずれも無所属で、現職の藤井裕久氏(63)=自民、立民、国民、公明推薦=が、新人の理学療法士染谷明子氏(47)=共産推薦=との一騎打ちを制し、再選を確実にした。

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どの戦争から80年なのか

2025-03-30 21:22:48 | 政治・国際

 今年は「戦後80年」なのだそうで、諸々のメディアで特集が組まれていたりします。確かにアメリカとの戦争終結から80年が経過したことには違いないのでしょう。ただ日本が加担した戦争は80年前のそれだけではなく他にも色々とあるはずです。太平洋戦争は「悲惨な戦争」として語り継がれているわけでもありますが、それ以外の戦争をどう思っているのか、私は常々疑問に感じるところです。

 明治以降の外国との戦争としては、日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦、シベリア出兵、日中戦争から太平洋戦争、イラク侵攻、アフガニスタン侵攻などが挙げられるでしょうか。ここで反省の対象として想起されるのは専らアメリカとの戦争に限定されているところですが、その他の戦争と何が違うのかを考えることは日本が何を過ちとしてきたかを測る基準になると言えます。

 ではアメリカとの戦争は他の戦争と比べて何が違うのか。まず第一は「負けたこと」です。他の戦争は勝ちきれなかったとしても日本国内へ攻め込まれるまでは至らないものでした。そしてもう一つは「アメリカが相手であること」ぐらいですかね。だからアメリカとの戦争に限定された日本の反省とはすなわち「二度と敗北はしない(攻撃あるのみ)、二度とアメリカには逆らわない」という誓いなのだと解釈することが出来ます。

 しかし80年前の戦争以外にも、反省すべき点はないのでしょうか? 今の世論は80年前の鬼畜米英が鬼畜中露に変わっただけ、たしかに「アメリカとは二度と戦わない」という強い決意こそ窺えるものの戦争そのものへの忌避感は見られません。むしろ満蒙ならぬ台湾は日本の生命線と語る政治家も出るなど「暴支膺懲」の方は盛り上がっており、「陣営を間違えないように」という思い以外は皆無のようです。

 原爆やパレスチナ問題で顕著なのは、その攻撃がアメリカやイスラエルによって行われたものである場合、専ら主体をぼかして伝えられることです。あたかもそれは天から突如として降ってきたように語られる、加害国への非難に繋がらないような「配慮」が窺われます。それほどまでに日本の「陣営」に対する意識は強い、「敵」と見なした国への憎悪や蔑視とは裏腹に、「味方」と見なした国をかばう意識もまた深く根付いていると言えるでしょう。

 トランプは、アメリカ以外の国にとっては概ね良い大統領だと私は思います。「概ね」と留保したのは中東の国々にとっては前任者と同レベルという話で、逆にネオコンのアメリカの靴を舐めることに悦びを見出してきた国──日本など──にとっては良い機会を与えてくれる存在です。これまで日本はアメリカの世界戦略における不沈空母の役割を担っていましたが、その重要性を当のアメリカ大統領が理解していない今以上に日本が自立するチャンスはないはずです。

 アメリカと戦い敗れた80年前の戦争を唯一の反省対象として回顧し続けるのか、それとも他の戦争をも悔悟するのか、これは完全な分岐点であるように思います。80年前の戦争だけしか反省していないから、日本が攻める側の戦争、アメリカの側に付く戦争に対しては(昨今のウクライナを傭兵とした戦争のように)専ら官民あげて賛同の声しか聞こえてこないような有様になるのではないでしょうか。

 一方でネオコン達の本尊であった当のアメリカではトランプという異端者が大統領となってしまい、ヨーロッパでは「アメリカへの追従」から「自国の軍拡」へと舵が切られ始めています。4年後にはどうなるか分からないにせよ、少なくとも大きな転換点であることは間違いありません。では日本はどうするのか、このまま対米追従を続けるのか、80余年前の軍拡路線に回帰するのか、それとも隣国との協調という初めての道へと踏み出すのか、選ぶべきチャンスは今まさに訪れています。

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野党共闘

2025-03-23 21:18:33 | 政治・国際

福岡知事に服部氏の再選確実 与野党相乗り、3新人破る(共同通信)

 任期満了に伴う福岡県知事選は23日投開票され、無所属現職の服部誠太郎氏(70)=自民、立民、国民、公明、社民推薦=が、無所属の弁護士吉田幸一郎氏(45)=共産支持、諸派の政治団体代表新藤伸夫氏(76)、無所属の自営業藤丸貴裕氏(48)の3新人を破り再選を確実にした。

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ウクライナの独立を願う

2025-03-17 21:30:59 | 政治・国際

 トランプ政権に変わって隠し立てにされることは少なくなりましたが、昔から日本はアメリカより多くの干渉を受けてきました。日米合同委員会や日米経済調和対話といったアメリカの要望を一方的に聞く仕組みも確立されていますし、そうでなくともアメリカがどこかの国を敵と認定すれば日本もこれに倣う、アメリカが制裁措置を決めれば日本も同調する、もちろん韓国と対立したり遠洋での捕鯨に固執したりと例外はありますが、総じて日本はアメリカの意向に沿って国の方向を決めてきたわけです。

 もし仮に、我々は独立国であり他国の干渉を受ける謂れはない、として独自の全方位外交へと方針を転換したらどうなるでしょうか? 治外法権を認めず米軍兵士を日本の法律で裁いたらどうなるでしょうか? さらには日本から外国の軍隊を退去させたらどうなるでしょうか? アメリカとの関係は悪化することが必至ですが、逆に中国やロシアといった隣国からは歓迎されることでしょう。日本が独立国であることを望んでいるのはどこの国か、逆に望んでいないのはどこの国か、そこは意識されるべきと思います。

・・・・・

 通貨安競争や投機マネーの流入出によって左右されるところはありますけれど、為替レートは国の経済力によって調整されるものです。ところが多国間で通貨を統一してしまうと域内での調整が利かなくなり、強い国はより強く、弱い国はより弱くなる方向に力が働きます。典型的なのが一時期のドイツとギリシャの関係で、本来なら自国通貨が高くなって輸出が不利になるはずのドイツが制度の恩恵を受け黒字を積み重ねる一方、本来なら自国通貨が安くなって輸出が有利になるはずのギリシャは赤字を積み重ねました。

 ここで独立した国であれば積極財政によって国の経済を立て直すことも出来るのですが、EU加盟国の場合は国と言っても実際には帝国内の自治体の一つに近い、自国の財政方針を自国で決めることが出来ず、EU帝国の差配に従うことが求められてしまいます。結果ギリシャは国外投資家の資産を守るため緊縮財政を強要され、経済を破綻させる結果に陥りました。そうでなくともEU加盟で手放さなければならない主権は財政に関わるものだけではなく、諸々の分野においてEU基準の遵守が求められる、自国だけの意思では物事を決められなくなるわけです。

 このEUにアメリカを加えたNATOも然りで、これに加入すれば「敵」と「味方」はNATOが決める、国内には外国の軍隊を駐留させることにもなります。自国の外交上の主権はNATOに上納せねばならなくなってしまうのですが、それでも加盟を望む国があるのは、例えるなら反社に加わりたがる人がいるのと同じようなものでしょうか。暴力団に入ることで失う自由もあるのは言うまでもありませんけれど、しかし組の看板でブイブイ言わせたい人もいるわけです。NATOに入れば「俺に逆らったらバイデンの親父が黙っちゃいねぇぞ」みたいに振る舞える、そう期待されているのでしょう。

・・・・・

 とりわけロシアは、アメリカの意向に付き従うばかりの国──日本を独立国ではないと批判しています。これはもっともな話ですが、ロシアの批判はもう一つの隣国にも向かっていることは意識されるべきでしょう。つまりウクライナとの最大の争点はNATO加盟の是非であり、これに反対する側がロシアでした。現実にはNATOの「予約済みの」国家としてウクライナは主権の少なからぬ部分をNATOに譲り渡してしまった節がある、3年前には停戦でまとまったはずのイスタンブール合意がイギリスの横槍で一方的にキャンセルされ、今はトランプへの代替わりで右往左往している、こうしたNATO諸国の意向次第のウクライナを最も嫌がっているのはどこの国かは考えられてしかるべきです。

 バイデンが思惑を隠して正当化のための装いを十分に整えて行動してきたのに対し、トランプは何もかも隠すことなくアメリカ側の欲望を表に出しています。いずれもウクライナから自国の利益を引き出そうとしている点は変わりませんが、そこで評価を異にしてしまう人がいるのはバイデンの象徴するネオコンの論理に飲み込まれているから、でしょうか。いずれにせよウクライナの資源はアメリカ陣営によって収奪される運命にある、ウクライナの平和を守るためとして実質的にはNATOがウクライナを支配しようとしているのが現状です。

 問題はこれが、当のウクライナ政府によって招かれた事態だと言うことです。経済的に弱い国がEUに加盟すれば「強い国」に富を吸い上げられる、「敵国」と隣接する国がNATOに加盟すれば前線基地として自国民は鉄砲玉にされる、いずれも上部団体の意向が優先となり自国だけでは物事が決められなくなる、EU/NATOに加盟するとはそういうことです。「自分が停戦を実現させた」という実績を作りたいトランプとは異なり、先代組長の意志を継ぐマクロンやスターマーなどの舎弟達はウクライナが戦争を続けられるように支援を強化すると息巻いていますけれど、その結果はどうなるのでしょうか。

 反対にウクライナがEUやNATOの支配に服さない「独立した」国であることを最も望んでいるのは、言うまでもなくロシアです。そしてアメリカに付き従う日本を批判し独立国であることを求めるのと同じように、ロシアはウクライナにも独立国であること=NATOに加盟しないことを求めているわけです。ウクライナを鉄砲玉に仕立て上げたいEU/NATOと、NATOの杯を貰ってブイブイ言わせたいウクライナ政府、隣国に独立国であることを求めるロシア、こうした観点で物事を捉え直してみると、真に望ましい着地点もまた見えてくるように思います。

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野党共闘

2025-03-16 21:16:19 | 政治・国際

千葉県知事選挙 現職の熊谷俊人氏の2回目の当選確実(NHK)

開票状況について、選挙管理委員会の発表はまだありませんが、NHKの事前の情勢取材や16日に投票を済ませた有権者を対象に行った出口調査などでは、自民党、立憲民主党、日本維新の会、公明党、国民民主党のそれぞれの県組織と市民ネットワーク千葉県が支持した現職の熊谷俊人氏が、共産党が推薦した小倉正行氏(72)らを大きく引き離して極めて優勢です。

また、期日前投票をした人への調査でも熊谷氏が小倉氏らを大きく上回っていて、熊谷氏の2回目の当選が確実になりました。

 

千葉市長選挙 現職の神谷俊一氏 2回目の当選確実(NHK)

開票はまだ始まっていませんが、NHKの事前の情勢取材や16日に投票を済ませた有権者を対象に行った出口調査などでは、自民党、立憲民主党、公明党、国民民主党のそれぞれの県組織が推薦し、日本維新の会の県総支部が支持した現職の神谷俊一氏が、共産党が推薦した新人の寺尾賢氏(48)らを大きく引き離して極めて優勢です。

また、期日前投票をした人への調査でも神谷氏が寺尾氏らを大きく上回っていて、神谷氏の2回目の当選が確実になりました。

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ウクライナの法律

2025-03-09 21:37:23 | 政治・国際

 トランプ政権が発足して色々とバイデン体制からの転換が図られているわけですが、これまで嬉々としてアメリカの靴を舐めてきた日欧の政治指導者達が挙って反トランプに転じているのを見るのは痛快と言えるでしょうか。アメリカ第一主義の泰斗である岸田文雄前首相は「これまで米国が主導してきた自由で開かれた国際秩序を変えてしまう可能性がある。それが私たちがめざした世界の姿だとは私は考えない」と語ったとか。こうした自国民を顧みない政治家の理想世界が破壊されて行くこと以上に、世界人類にとって喜ばしいことはありません。

 

トランプ米政権、英語が「唯一の公用語」初指定 スペイン語排除が加速(産経新聞)

トランプ米政権は1日、英語を米国の唯一の公用語に指定する大統領令に署名した。米メディアによると、30以上の州が英語を公用語にしているが、連邦レベルで指定されるのは初めて。これに伴い、英語を使用しない住民に対する言語上の支援などを政府機関に義務付けた従来の大統領令は撤回される。

トランプ政権は公用語指定に先立ち、ホワイトハウスの公式サイトやX(旧ツイッター)でのスペイン語の使用を停止していた。スペイン語を排除し、中南米からの不法移民に圧力を強める動きがいっそう加速しそうだ。(時吉達也)

 

 一方こちらの大統領令は、他の話題に埋もれ気味のようです。まぁ日本の場合は英語を公用語に指名する企業もある、大学では教授言語の英語化が推進され、英会話学校のまねごとや語学留学の斡旋で世評を高めているところも珍しくないだけに、あまり抵抗がないのかも知れません。英語こそが世界の共通語なのだ、誰もが英語を話せるようになるべきなのだ、という認識はむしろ日本でこそ根付いているところもあるでしょう。しかるに現実のアメリカには英語以外、特にスペイン語を母語とする居住者が少なくないわけです。そうした人々の排除がトランプ政権の狙いと考えられますが、さて──

 昨年、州じゃない方のジョージア(以下グルジアと略)では外国からの資金提供によって活動する組織を規制する法律が可決され、西側メディアからは専ら「ロシアの法律」として報道されました。曰く「ロシアにも同様の法律があるから」とのこと。ただ補足するのであればアメリカにも同様の法律は古くから存在していますし、カナダでも同年に同様の法律が可決されました。アメリカの法律はアメリカの法律、カナダの法律はカナダの法律として何ら問題視されない一方、グルジアの法律は「ロシアの法律」と呼ばれ「民主主義の後退」などと非難されたわけですが、これぞ「自由で開かれた国際秩序」というものなのでしょう。

 本陣たるアメリカと衛星国であるカナダの場合、外国からの資金で活動する団体は「敵」であり、それに対する防衛のための法律は民主主義を守るものと位置づけられます。一方、調略対象であるグルジアや香港の場合、外国からの資金で活動する団体とは第一にアメリカの「民主化」工作機関ですから、これを阻止されることは好ましくないわけです。2014年のウクライナではアメリカの国務次官補も公然と参加した「革命」によって選挙で選ばれた大統領が追放されたりもしましたが、それを他国でも続けたいアメリカ陣営と、阻止したいグルジア政府との間で意見が一致しないのは当然のことと言えます。

 このウクライナの2014年クーデター後にはナチス協力者の名誉回復など様々な転換が行われました。そうした一環で「ウクライナ語を唯一の公用語とする」ことも定められたのですが、いかがでしょうか。アメリカでは同様に「英語を唯一の公用語」とする大統領令が署名されたとのこと、グルジアの例に倣えば、これを「ウクライナの法律」と呼んでも過言でははないように思います。ともするとウクライナ側に厳しい、ロシア寄りであるなどと偏った人々から悪罵されるトランプですけれど、決してそんなことはない、ウクライナに歩調を合わせている部分もある、今回のウクライナと同質の大統領令などはその表れだ、と言えます。

 アメリカでスペイン語を母語とする人が多いのは移民が多いから、ウクライナの場合は元々ロシア系住民が多数派の地域(ハリコフやオデッサ)を拠点とする共産主義陣営がキエフを征服してウクライナ・ソビエト社会主義共和国を形成し、その国境線のまま分離独立してしまったからと、両国では事情が少なからず異なります。ただ現在の国境線を維持する限りは国内で別の言語を母語とする人々とも共生しなければなりません。自国の最大版図を維持しつつも単一民族・単一言語の国家を目指せば反発は当然、内戦が起こっても致し方ないと私は思います。

 ウクライナでは歴史的経緯から、ソ連崩壊後もロシア語が事実上の第二公用語として定着していました。それがクーデター政権によって明確に否定され、行政サービスなど公共の場からロシア系住民の排除が図られたわけですが、トランプ政権もまた同じことをやろうとしていると言えます。ウクライナが手本としていたであろうエストニアやラトビアでも同様に、エストニア語やラトビア語を話せないロシア系住民には国籍を与えないなどの排除措置があり、結果として両国は目出度くEUとNATOへの加盟を果たしました。そして今、トランプは英語を話さない住民の排斥を進めようとしていますが──これぞまさにヨーロッパの普遍的な価値観をトランプが共有していることの証と評価されるべきではないでしょうかね。

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現在に目を閉ざす者は言うまでもなく盲目

2025-02-27 21:37:19 | 政治・国際

 ウクライナを舞台にしたNATOとロシアの戦争は開始から3年が経過し、今もなお日本のメディアには呆れるばかりのプロパガンダが書き連ねられています。一方アメリカでは大統領の交代があり、日本やヨーロッパ諸国からすると梯子を外された状態になりつつもあるのが現実です。これまではアメリカ側に立っている勢力を絶対の正義として、その反対側の国を貶めることに専念してきたのが日本の政治でありメディアであり、昨今は大学教員も大きく加担してきたところですが、しかるにアメリカ大統領が真逆の方向を向きつつある中で、彼らがどう現実と折り合いを付けていくのか興味深くもあります。

 この戦争で露になったのは「自分のことを平和主義者だと信じ込んでいる軍拡論者」の存在でしょうか。現代では右派から毛嫌いされているようなメディアでも、戦前は率先して開戦を煽っていたなんて話はよく知られるところですけれど、その辺は現代も変わらないように思います。平和を望む風を装いつつ、それでいて「敵」を理由にした軍拡はやむを得ないことなのだと積極的に肯定する、停戦案をウクライナの降伏であると強弁して罵倒し、ウクライナ人が最後の一人までロシアと戦うことを望んでいるかのように語り、自らの欲望の生け贄にしようとしている輩は枚挙にいとまがありません。

 そもそも日本国内の主要政党、大手メディア、論壇で活躍する現役大学教員の多くは徹底して現実から目を背け続け、アメリカに付き従って軍備を拡充する、アメリカに従わない国との対決に備えることだけが平和を保つ唯一の方法であるかのように喧伝を続けてきました。目の前で起こっている現実を都合良く塗りつぶすことに夢中となっているリアルタイム歴史修正主義の隆盛を前にすると、危機に陥っているのは日本国内の理性であるとも言えるのかも知れません。

 現実を直視するのであれば、今回のウクライナを舞台にした戦争ほど「軍事力ではなく外交によって解決できる」ことを証明しているものはないでしょう。この戦争は避けられずに発生したものではなく、望んだから起こったものです。遡ればロシアとウクライナ両国には長い歴史がありますけれど、大きな転機となったのは2014年の、アメリカの国務次官補も参加したクーデターです。ここでウクライナに、当時はネオナチ組織として認定されていた極右武装勢力を含む強固な反ロシア派政権が成立したことで両国の対立は決定的に深まりました。

 その後ウクライナの東部ドンバス地方ではクーデター政権と反クーデター派の未承認国家(ドネツク・ルガンスク共和国)による内戦が勃発、二度の停戦合意が結ばれるも合意破りの攻撃は激化し、またロシアが反対してきたNATOの東方拡大も止まるところがなく、とりわけウクライナはNATO加盟を憲法に定めるなど挑発姿勢を強め、事態は悪化の一途を辿ったわけです。そもそも非民主的な武装勢力によるクーデターを認めず、これに諸外国が制裁でも科して封じ込めに努めておけば戦争などは起こらなかったと言えますが、しかるに欧米諸国が選んだ道は真逆でした……

 ロシア側の第一の要求であったNATO加盟の阻止についてはウクライナもNATO陣営も一向に応じる姿勢を見せず、もう一つの要求であったドンバス地方の自治権と住民の恩赦についても、停戦合意違反の武力攻撃を繰り返すことで顧みるつもりはないとのメッセージを絶えずロシア側に送り続けていたのが2022年までの流れです。これは一種のチキンゲームで、どれだけロシア側を蔑ろにしても軍事侵攻までは踏み込まないだろうとの思惑が西側諸国にはあったと推測されますが、結果はご覧の通りで相手を舐めすぎたツケを払わされているわけです。

 そもそもクーデター政権の成立がなければ戦争の理由すらなかった、その後もNATO加盟がなければロシア側のレッドラインを超えることはなかった、ドンバス地方のロシア系住民に対する殺戮がなければ、それをロシアが守ろうとする意義も存在しなかったはずです。戦争は決して急には始まりません。そこに至るまでには長い道のりがあり、戦争回避の選択肢を斥け続けた結果として開戦に至るものです。だから戦争は常に外交によって回避できる、軍事力に頼る場面は望まない限りは訪れないと私は断言しますが──そこで何らかの欲望を持って現実から目を背け続けているのが我が国の現状なのかも知れません。

 ともすると軍拡には否定的で、外交による解決が可能であると従来は主張してきたはずの人でも、今回の戦争を前に宗旨替えしているケースは少なからず見受けられます。ウクライナを部隊にした戦争が始まるまでの経緯から徹底して目を背け、邪悪なロシアが一方的に攻め込んできたのだと、そうした世界観に浸って自らを慰めている人が自称ハト派の中にも目立つわけです。しかし「急にロシアが攻めてきた」という日米欧のプロパガンダを認めるならば、その帰結は軍事力による防衛しかなくなってしまいます。戦争の前段を「なかったこと」にしてしまえば、後は開戦あるのみなのですから。

 真に平和を希求するのであれば、ウクライナひいてはそこに干渉してきた国々の過ちをこそ反省すべきではないでしょうか。そもそも何故ウクライナがこれほどまでにロシアを敵視するようになったかと言えば、ソ連崩壊後の経済停滞の中で都合の悪いことを隣国のせいにしてきた、ナショナリズムを不満のはけ口として政治が利用するようになったことが挙げられます(結果として2014年のクーデターに繋がったわけですが、しかるに日本では2022年の戦闘開始から全てが始まったかのようなミスリードが続けられています)。こうした点は日本も同様で、国民の不満を排他的ナショナリズムへと昇華させようとする動きは既に深く根付いているところです。隣国を憎み、隣国への警戒感を強めることが国是になったならば、そこで「平和」のために必要なのは何になるのでしょうか?

 ウクライナではロシア寄りと見なされた大統領が、暴動によって追放されました。そして日本でも、少しでも中国寄りと見なされた政治家がどのような扱いを受けているかは思い起こされてしかるべきでしょう。隣国を嘲り敵視することで国民の喝采を集める、国内の反対派を攻撃し、隣国からの抗議は無視してひたすらにアメリカへすり寄る──これがウクライナのやってきたことであり、日本にも少なからず共通するところです。そんなウクライナの政治が日米欧の庇護によって成功を収めることは、世界にとってプラスでしょうか? むしろ誤った政治は罰されるべきで、そうなる前に日本はウクライナを他山の石とすべきなのだ、というのが私の考えです。

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トランプ政権を支持します

2025-02-09 21:34:59 | 政治・国際

 トランプ大統領は就任前より世間を騒がせており、このブログでも定期的に言及しているところです。そこでまず、私はアメリカ国籍でもなければアメリカ在住でもない人間としてトランプを支持することを表明しておきます。これまでアメリカのやることには平和の為だの民主主義の為だのと何らかの形で常に正当化が行われてきたわけですが、トランプは己の欲望であることを全く隠そうとしません。トランプはアメリカ史上で最も誠実で嘘偽りのない大統領だと思います。後は、トランプと対峙する各国がどうするかの問題でしょう。

 先のアメリカ大統領選挙では、幾つか政党間のねじれが見えました。共和党でもネオコンの最右翼と言うべきチェイニー親子がハリス支持を表明した一方、民主党に所属していたロバート・ケネディ・ジュニアはトランプ政権の保健福祉長官に収まったわけです。このケネディについても、アメリカ国籍でもなければアメリカ在住でもない人間として私は強く支持しています。ケネディが過去に主張した米軍撤退論には全面的に賛同しますし、彼の誤った理解によってアメリカ人の健康が損なわれるであろうことも、私は一向に構わんとしか言いようがないですので。

 

イーロン・マスク氏へ批判高まる…「アメリカ国際開発局」解体を進めていることに対し TIME誌最新号表紙では大統領の椅子に座る姿が(FNNプライムオンライン)

トランプ大統領から政府の効率化を目指す組織の責任者に任命されたイーロン・マスク氏が、効率化の一環として外国への援助を行うアメリカ国際開発局の解体を進めていることについて批判の声が高まっています。

アメリカのTIME誌は、最新号の表紙に大統領の席に座るマスク氏の写真を使用し、マスク氏が国際開発局の解体に取り組んでいることについて、「1人の民間人が、アメリカ政府の機構に対して、これほどの権力を振るったことはない」と批判する記事を掲載しました。

 

 そしてイーロン・マスクについても、アメリカ国籍でもなければアメリカ在住でもない人間として、そして彼が所有する会社の従業員でもない身として、支持を表明したいと思います。マスクの標的になっているアメリカ国際開発局を筆頭に全米民主主義基金など、「非軍事的で民主的な」支援活動は世界に親米政権を樹立する上で重要な役割を果たしてきました。2014年のウクライナで起こったクーデターも、アメリカの支援なくしては起こり得なかったことでしょう。そんなアメリカの覇権のために欠かすことの出来ない機関を、マスクは効率化の名の下に解体しようとしていることが伝えられています。実に素晴らしい!

 その財力と自身が所有するSNSでの影響力を駆使してトランプの勝利に貢献したであろうマスクは、ドイツやイギリス等でも「極右」と呼ばれる政党への支持を隠すことなく表明しており、ヨーロッパの政治情勢にも関与しようとしています。そしてこの「極右」と呼ばれる勢力は軒並みEU懐疑派、NATO懐疑派でもあるわけです。これまでアメリカの覇権に協力的な中道政権がヨーロッパを支配してきた中で、アメリカ主導の国際秩序への貢献よりも自国第一主義を掲げる人々を当のアメリカの政府首脳が応援している──もし私がアメリカ人であったなら話は別ですが、そうではない身としては大いに結構だと思いますね。

 まぁ日本では自国第一主義とアメリカ第一主義が分化していない、アメリカの覇権こそが日本にとっての利益であり、それが脅かされることは平和を損なうものだとの認識が与野党間でも共有されている段階です。そうした意味では日本こそが最後までアメリカのために尽くす、民主主義の砦=アメリカの前線基地であろうとし続けるのかも知れません。トランプやマスクのおかげで世界は少しだけ良くなると私は信じていますが、日本がどうなるかは別の話になりそうです。日本でもアメリカ第一ではなく自国第一の勢力が伸びたら面白い、それもマスクの支援で伸びたりしたら二重に面白いのですが。

 

対米投資150兆円に引き上げ 首脳会談、石破氏がトランプ氏に表明(朝日新聞)

 石破茂首相とトランプ米大統領は米東部時間7日(日本時間8日)、ワシントンのホワイトハウスで初の首脳会談を行った。首相は日本から米国への投資額を1兆ドル(約151兆円)に引き上げる考えを表明。トランプ氏は日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収計画について、「買収ではなく投資だ」と述べ、取引の容認に前向きな姿勢を示した。両首脳は日米同盟の抑止力・対処力を強化することでも一致し、「日米関係の新たな黄金時代を追求する決意」を盛り込んだ共同声明を発表した。

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ナチズムを否定するようでいて、否定できていないもの

2025-02-02 21:47:27 | 政治・国際

 医師・薬剤師の国家試験には「禁忌肢」というものがあり、1回でも禁忌肢を選んでしまうと他の問題が全て正解でも不合格になるそうです。他の設問に正答していたとしても、まさに致命的な場面で間違いを犯す受験者は落とす仕組みになっているわけですね。そこで政治的な方向に話を向けると、ナチズムへの評価もこのようなものだと言うことができます。個々の政策を切り取ってみると肯定的な結果を得られたものがあったとしても、禁忌肢を何度か踏んでいる……ぐらいが客観的な評価になるでしょう。

 ところが、ナチズムを全否定する人もいます。曰く「ナチスは良いこともした、は間違い」とのこと。これは非常に危険な考え方で、ともするとナチズムを否定しているようでいて、その実はナチスの何が問題であったかを分からなくするものであると言えます。つまり政策ごとに当否を判断するのではなく全てを否定することで、どれが禁忌肢であるかを曖昧にする効果を発揮しているわけです。○○がダメとのことであれば答えは明確ですが、全てがダメというのであれば本当にダメだったのが何であるかは理解されなくなることでしょう。

 

米国務省の海外援助 一部を除き一時停止し ウクライナで影響も(NHK)

首都キーウに事務所があるウクライナのNPO「ベテラン・ハブ」は、前線から帰還した兵士やその家族などを対象に、社会復帰や心理サポートなどの支援を行っています。

団体によりますと、このうちカウンセリングや法律相談などの事業については、活動資金の3分の2をアメリカ政府からの援助で賄っていましたが、今月25日、援助が突然停止され、西部ビンニツァ州で行っていた活動を休止する事態になったということです。

29日、NHKのインタビューに応じた代表のイボナ・コステイナさんは「支援を受けていた多くの人たちが悲しみました。あまりにも急なことで、われわれも選択肢がありませんでした」と話していました。

 

 バイデン政権はアメリカ陣営の覇権を維持すべく諸外国への徹底的な介入を続けてきたわけですが、そんなアメリカのためのコストを惜しむトランプ政権へと移行したことから、各国の出先機関が悲鳴を上げている様子が伝えられています。そこでNHKが取材した団体が上記ですけれど、ここではエージェントの発言ではなく、その後ろに映っている旗の方が物事を雄弁に語っているのかも知れません。

 一つは立花孝志のNHK党でおなじみの黄色と水色の旗で、こちらは現在のウクライナ国旗の配色です。ではもう一つの、上が赤で下が黒の旗はどこのものでしょうか? これはUPA、ウクライナ蜂起軍などと訳される武装組織の配色です。日本での知名度は低いもののUPAは第二次世界大戦期に勢力を築いたウクライナの「英雄」とされ、彼らの創設日は「祖国防衛者の日」として2014年からウクライナの祝日と定められているものだったりします。

 では、このUPAとは何をした組織だったのでしょうか? 彼らは侵攻してきたナチスと協調し、ソ連からの分離独立を目指して現地の共産主義者やユダヤ人、ポーランド人の虐殺を行いました。最後にはドイツとも仲間割れを起こしたことから「ナチスの協力者ではない」と、とりわけ2022年以降は強弁されるようになって現在に至りますが、それまではロシアだけではなくポーランドからも強く非難されてきた存在です(なお2022年からポーランドは考えを改めた模様?)。

史実のウクライナ

 どこの国にも異論はあります。全ての国民が同じ方向を向いていることはあり得ません。ところが、しばしば都合の良い片方の声だけが国民の声として取り上げられ、異論はなかったことにされてしまいます。ドイツ「統一」は誰にでも歓迎されたかのように語られ、祖国の消滅を嘆いた東ドイツ国内の異論が顧みられることはありません。旧ユーゴスラヴィア諸国の「独立」は悲願が叶ったようにしか報じられず、祖国の分裂を嘆く声は存在しないものとして扱われます。赤い旗の下で共産主義革命への参加を望んだフィンランド人やエストニア人、ラトビア人の声に耳を傾ける人がいるでしょうか? 語り継がれるのは専ら、勝者の側に都合の良い声だけです。

 そしてウクライナの場合はどうでしょう。史実としては上記の通り、今も昔もウクライナは長らく分裂した国家です。常にロシアを憎み、その敵と手を組んできた勢力に同調する人々もいれば、反対にロシアと共に歩もうとする人々もいるわけです。いずれも異論自体は認められるべきものと思いますが、問題なのは正しい歴史認識が行われていないこと、史実通りではなく都合良く捻じ曲げられて語り継がれているところにあると言えます。とりわけ日本では、以下のように認識されているのではないでしょうか?

フィクションのウクライナ

 つまり、「昔からウクライナは誰もがロシアとの縁切りを望んでいた」⇒「ナチスと戦って勝った」⇒「ロシアに勝つまで戦いを続ける、そのための支援を必要としている」ぐらいに日本では語られているわけです。その中ではいずれも反対派がホワイトウォッシュされている、それも正しく系譜を継ぐのではなく都合良く対立陣営の成果を横取りしていることが明らかです。反ロシア派の系譜の中にはナチスと組んでソ連と戦った(その過程でユダヤ人やポーランド人をも虐殺した)歴史があるのに、そこだけ連邦の構成国としてナチスと戦ったかのごとくに経歴を偽っている、これはあまりにも不誠実と言えます。

 そんなホワイトウォッシュされた歴史の象徴であるウクライナ蜂起軍の旗を、NHKでは恐らく意味を解さぬまま大きく映し出しています。いったい何の旗であるのか、それを視聴者に伝えなくても良いのでしょうか? アメリカの側に立っている以上はウクライナが正しいに決まっている、疑義を呈するようなことなど何もない、そんな観点で公共放送が垂れ流されているとしたら、まさに自国の教育水準の低さを嘆くしかないのかも知れません。

 2022年まではネオナチ系の団体と認定されていた武装勢力がウクライナには複数存在し、政府にも深く浸透していました。その後に西側諸国で評価が改められたことは記憶に新しいわけですが、しかしユダヤ人虐殺の当事者でもあったUPAの旗は今でもウクライナの体制側の団体で公然と掲げられ続けています。ただ現在と昔とで違うのは、「浄化」の対象がユダヤ人ではなくロシア系住民に変わったことぐらいですね。

 そこで冒頭の「禁忌肢」の問題に戻ります。果たしてナチズムの何が問題だったのでしょうか。単にユダヤ人への憎悪をナチズムと見なすのであれば、日米欧各国で言われているようにウクライナの武装勢力はネオナチではないことになるのかも知れません。そして彼らはナチスではない以上、何ら問題はない、ロシア側からの糾弾は不当である、と。しかしナチスはナチスであることによって悪であるのではなく、ユダヤ人に限らず国内の「異分子」を排除する姿勢にあると見た場合はどうでしょうか?

 単純にナチスを全否定するだけ、せいぜいが「ユダヤ人」の扱いを基準にするだけであれば、ユダヤ人を称しイスラエルとの連帯を口にするゼレンスキーの政権がナチズムであるはずがない、ナチスではないのだから国際社会が支援して最後の一兵までロシアと戦えるようにすべきだ、と言うことになるのでしょう。一方で、ナチスであるかどうかではなく、その協力者を英雄として祀って旗を掲げているところや、国内の少数派を弾圧し排除しようとする姿勢に悪を見出すのであれば、道義的に正しいのはロシアの方です。

 ドイツ政府は、ユダヤ人の虐殺については深く反省する姿勢を続けています。一方でパレスチナ人の虐殺に関しては真逆でイスラエルの擁護に終始しています。彼らはナチスを悪いものとして否定こそしていますが、しかしナチスが踏んだ禁忌肢に関しては何ら意識していません。ユダヤ人を殺すのは悪かったが、パレスチナ人を殺すのは正当防衛である──それがナチスを単純に否定するだけでナチスの何がダメだったのかを理解しなかった末路です。

 本当に否定しなければならないのはナチスそのものではなく、ナチスが踏んだ禁忌肢の方にあります。概ねナチズムの否定自体は共通認識となっている現代かも知れませんが、しかし真に問題となるべき禁忌肢の方はどうなのでしょうか? ナチスでないから許される、標的がユダヤ人でないから許される、それもまた現代の西側諸国の共通認識です。単純なナチス全否定論の上に、ナチスが踏んだのと同じ禁忌肢を選んだ勢力が日米欧各国の支援を得ているわけで、これは明らかに間違った方向に進んでいると言えます。

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少しだけ、世界が良くなる

2025-01-19 21:39:34 | 政治・国際

米企業 多様性など実現見直す動き 大統領就任前に政治的配慮か(NHK)

DEIと呼ばれる多様性などの実現に向けた取り組みを見直す動きがアメリカの企業の間で広がっています。DEIに対しては保守層の反発もあり、トランプ氏の大統領就任を前に政治的な配慮も背景にあるものとみられます。

DEIは「多様性」「公平性」「包摂性」を意味する英語の頭文字をとったことばで、数値目標などを設けて多様な人材を集め、イノベーションなどにいかす取り組みとして注目されてきましたが、このところアメリカでは見直しの動きが相次いでいます。

このうち、IT大手の「メタ」が多様性に配慮した採用活動などを廃止する計画だとアメリカの複数のメディアが報じました。DEIを取り巻く法律や政策の状況が変化したことが要因だとしています。

 

 日本でも兵庫県知事選で斎藤元彦の再選が決まった際には、率先して自己批判を行い権力側にすり寄る動きが少なからず見られました。アメリカだって権力者が変われば、それに合わせて変節する人々が出てくるのは至って自然なことと言えるでしょう。ここで名前を挙げられている「メタ」は元より同社が提供するフェイスブック及びインスタグラムにおいて「ロシア兵とロシア人への暴力を呼び掛ける投稿を容認する」「ロシアのプーチン大統領ないしベラルーシのルカシェンコ大統領の死を求める投稿についても期間・地域限定で認める」方針を掲げるなど権力側に付き従う姿勢で知られているところですので、何ら驚くに値しません。
参考:FB、ロシア兵への暴力呼び掛けを一時容認 ウクライナ関連のみ(ロイター)

 もちろん同様の方針はメタに限らず他のアメリカの有名企業も先んじて多様性目標の見直しを表明しており、流行に敏感な経営層の間では一定の合意が形成されているものと判断されます。アメリカに限らず日本でも、深く考えずにとにかく流行を追いかけることで時代に適応したつもりになるのは普通のことですので、我が国の企業がこれに倣うようになっても不思議ではないでしょう。企業は決して善意や道徳心で多様性を尊重してきたわけではない、DEIだのSDGsだのDXだの、しかるべく合理的判断の上で進めてきたのではなく単純に流行に乗り遅れまいと努めてきただけであって、その流行に変化があれば企業だって当然ながら変わるわけです。

 しかし、ここで言われるDEIとはなんでしょうか。それらしき説明は存在しますけれど、ちゃんと意味を理解した上で実践してきた人や組織がどれだけあるのかは大いに疑わしいと思います。ただ単に、流行の歌を皆で合唱してきただけではないか、というのが私の見解ですね。結局はDEIに反発していたとされる「保守層」なんてのも、いわばK-POPを嫌うのと同じようなもので、どのようなファッションをするかどうかで好きな人もいれば嫌いな人もいる、ぐらいの争いに見えるところもあります。

 例えばある国では、大統領と立場を異にする野党の活動が禁止されています。それでも口を噤まなかった野党の政治家は身柄を拘束され、隣国に囚われた兵士との捕虜交換の弾にされました。民間人でも政府を批判したジャーナリストは投獄され、拷問によって殺された人もいます。隣国の言葉を使用することは禁止され、隣国にルーツを持つ住民は弾圧される、政府に反旗を翻した地域へは住宅地にも容赦なく砲弾が撃ち込まれる──これはウクライナのことですが、我が国の報道ではウクライナ人は誰もが大統領を支持し、ロシアとの戦争継続を望んでいることになっています。本当は逆の立場の人もいるはずですが、そこは今もなお黙殺されているところで、これは「多様性」の観点からはどうなのでしょう?

 性的嗜好に関する多様性は、これまでは認められるべきものとして扱われることが多かったわけです。それは結構なことと言えますが、しかし他の種類の多様性、例えば政治体制や外交姿勢の多様性は尊重されてきたのかもまた問われるべきではないでしょうか。統治形態がアメリカとは異なる国、国際政治の場でアメリカに同調しない国に対して日米欧各国がどのように接してきたかを考えてください。そこに多様性は認められていなかった、アメリカ型の統治、アメリカに従う外交だけが唯一の「民主的な」正しい在り方と規定され、それぞれの国の独自性が尊重されることが決してなかったのは明らかです。

 フェアトレードという概念が専らチョコレートやコーヒーや手芸品に止まるように、DEIという流行り言葉において想定された多様性の範囲もまた至って限られたものでした。流行に乗って掲げられただけのスローガンなど、その程度のものでしょう。故にDEI某が見直されたところで大した意味はない、元から大した意味がなかったのだから、というのが私の見解です。もちろんLGBT云々に関しては冬の時代の到来ですが、一方では逆に認められるようになる、締め付けが緩くなるものも出てくることを期待したいと思います。

 バイデンという大統領はまさにアメリカ至上主義で、「アメリカに背く国」を断固として認めてきませんでした。それだけにアメリカ陣営の結束を重んじた、アメリカ国内の融和を目指してきたところもあります。一方でトランプは前任者に見られたような一貫性を期待できない、何事も自身の好き嫌いが最優先で行動や言動にもブレが大きい指導者です。この辺は政治的な影響力を強めているイーロン・マスクも同様で、いずれもアメリカの覇権を自壊させる可能性があります。ただ、それは国際社会における多様性が認められるためには良いことでしょう。アメリカに付き従う国だけが「民主的」ではない、そうでない国も尊重される、そんな多様な世界を実現するためにはネオコン一辺倒のバイデンよりも、トランプ&マスクの出鱈目路線の方が相対的にはマシです。

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