非国民通信

ノーモア・コイズミ

国民は114年前から変わっていないと思うよ

2019-01-06 21:59:36 | 政治

安倍首相、北方4島返還「国民、困難さをよく理解」(朝日新聞)

 安倍晋三首相は30日に放送されたラジオ日本の番組で、北方領土をめぐる日ロ交渉について「今、残念ながら4島には日本の島民が住んでいない。ロシア人しか住んでいない中で、その帰属を日本に変えることの困難さを(国民に)よく理解していただいているのかなと見ている」と語った。

 首相は11月の日ロ首脳会談で、歯舞(はぼまい)、色丹(しこたん)の2島の日本への引き渡しを明記した1956年の日ソ共同宣言を基礎に、平和条約交渉を加速することで合意した。ラジオでは4島返還を求めて合意に反発する世論が大きくなっていないとして、その感想を問われた。

 

 北米大陸はアメリカ固有の領土である――トランプだったら、それぐらいの認識を大まじめに持っていそうな気がしますが、普通の人にとってはどうでしょうか。もちろん歴史を紐解けば時代と共に住む人や君臨する国家が変遷していくことは、全く珍しくありません。それでもなお「固有の領土」として信じ続けられるものがあるわけです。

 現在の北海道は江戸時代までは蝦夷地と呼ばれ、日本の領域外でした。明治時代に入ってから本格的な「開拓」が始まりましたが、そこは決して無人の荒野ではなく、「和人」とは別の人々が住む地域でもありました。この北海道よりも遠いところにある島までもが現在では「固有の領土」と呼ばれているのは広く知られるところですが、さて――

 100年あまり昔のこと、ロシアから獲得した領土が少ないと不満を持った人々が、大規模な暴動を起こしたことがありました。世に言う日比谷焼打事件で、戦前から一貫してお調子者として知られる朝日新聞などは、「(ロシアとの)講和会議は主客転倒」「桂太郎内閣に国民や軍隊は売られた」「小村許し難し」等と国民を煽ったとされています。

 似たようなノリで桂や小村のところに安倍の名を入れる人は今でもいるような気がしますが、ともあれ日比谷焼打事件の際は、国民の認識として「もっと領土を獲得できて当然」というものが前提にあったようです。日本にはロシアから領土を奪える正当な理由がある、それが出来ないとしたら政府が悪い、と考えられていたのですね。

 報道によると、安倍首相がいわゆる北方領土の「帰属を日本に変えることの困難さを(国民に)よく理解していただいているのかなと見ている」と語ったそうです。この「国民に」という括弧書き部分は報道による注釈ですが、どうしたものでしょう。少なくとも私には、問題の困難さが国民に理解されているとは思えません。

 日露戦争の戦後処理の場合は、国策報道の結果として国民が「戦争に勝った」と信じ込んでいたことが大きかったようですが、では太平洋戦争の戦後処理の場合はどうなのか、やはり国策報道によって国民があらぬ誤解をしていないか、どうにも私には過去の轍を踏んでいるように感じられるところです。捕鯨に関しても触れましたが、報道が「挙国一致」になっている類いほど怪しいものですから。

 敗戦後、日本は台湾や満州、朝鮮半島と共に千島列島の領有権も放棄する形で条約を結びました。しかる後、北方領土と呼ばれる諸島は千島列島に含まれないと、日本が言動を翻し始めたことで領土問題が生まれます。そこでロシア(ソ連)との間で当初は「二島山分け」で話が進みました。ここから1956年の日ソ共同宣言に繋がっているわけですが――

 残念ながら日ソの平和条約を良しとしなかったのがアメリカで、「2島返還で合意したら沖縄を返還しない」と日本を恫喝したと伝えられています。結果、日本は突然の「4島返還論」を唱え始め、当然のごとくソ連との交渉は立ち消えとなりました。結局、日本がアメリカを優先した時点で領土問題は「日本側から」切り捨てられたと考えるべきでしょう。何を今更、ですね。

 日本が今になって北方領土の「返還」を訴えるのは私には滑稽にしか見えませんが、領土獲得を夢見る国民の精神は100年前から変わっていないのでしょうか。そして仮にプーチンが辺境の小島を売り渡したとしても、その先をどうするのか日本の誰も考えていないようにも思います。北海道ですら札幌中心部以外は廃れているのに、そのさらに辺境となる地域を日本は支えられるのか、漁業権が云々と言いつつ日本の漁業は補助金と外国人頼みの衰退産業ではないか等々。

 「進め一億火の玉だ」とは戦中のスローガンですが、当時の日本の人口は台湾人や朝鮮人を含めないと「一億」には達しませんでした。この大日本帝国の臣民として「一億」に組み込まれていた人々が戦後にどうなったかと言いますと、「日本人ではない者」として扱われたわけです。日本の国籍は、限られた人にしか与えられなかったのですね。

 その結果として「中華民国籍」や「朝鮮籍」という、国家とは紐付かない奇妙な「籍」が産まれたりもしました。この辺は結構な根深い問題に繋がっていたりもしますが、では「北方領土」がめでたく日本の領土となった場合、そこに住む人々はどうなるのでしょうか。この辺、考えることすらが拒まれている分野ではないかと思います。

 捕鯨問題と同様、この北方領土問題も政党レベルでは左右の違いがないと言いますか、挙国一致の趣があります。そして国民の認識も大差ない、日露戦争終結後と同レベルの期待を抱いているし、メディアも煽り立てる方向にばかり進んでいるわけです。しかし、いい加減に現実に向き合うべき時ではないか、いつまでも夢を見ている場合ではないだろうと、私はそう感じます。

コメント

連盟よさらば!  我が代表堂々退場す

2018-12-23 21:49:24 | 政治

日本、IWCから脱退へ(共同通信)

 政府が約30年ぶりの商業捕鯨の再開に向け、クジラの資源管理を担う国際捕鯨委員会(IWC)から脱退する方針を固めたことが20日、分かった。政府関係者が明らかにした。来週にも表明する。日本近海や日本の排他的経済水域(EEZ)内で行う方向で調整している。日本の国際機関脱退は戦後ほとんど例がなく極めて異例。国際社会からルール軽視との批判を浴びることは避けられない。

 9月にブラジルで開かれたIWC総会で商業捕鯨の再開提案が否決され、脱退により局面を打開する必要があると判断した。日本は資源が豊富な一部鯨種の商業捕鯨再開を提案したが、反捕鯨国が反発して否決された。

 

 42対1だったかどうかは知りませんけれど、日本の提案が否決されたことを受け、我が国の代表?は国際機関からの脱退を表明したそうです。曰く「日本の国際機関脱退は戦後ほとんど例がなく極めて異例」とのこと。言うまでもなく戦前には実例がありますので、「異例」などと言われつつも先行きは見えるような気がしますね。

 この捕鯨に関しては与野党間の対立も少なく挙国一致の趣がないでもありません。後は北方領土問題辺りも俯瞰的に見れば大同小異で挙国一致的なフシがありますけれど、だいたいそういう類いほど色々な視点が抜け落ちているのではないでしょうか。強硬論さえ唱えておけば済む分野ほど、その実は怪しいものです。

 例えば鯨を食べる「伝統」にしたところで、歴史は短く戦後の一定時期の現象でしかないわけです。北欧の一部やアラスカ近辺では許されるものが日本だけ禁じられているみたいな語りもありますが、近海での細々とした漁と、南極海くんだりまで遠征する日本の「調査」とでは、当然やっていることが違います。しかし、この捕鯨に関しては挙国一致で被害妄想に浸りたがるところがあるのではないでしょうか。

 技術力に劣る日本は、鯨を殺すことでしか「調査」することが出来ません。それを哀れむ国の中には、「鯨を殺さずに調査する技術」の供与を打診してくれるところもありましたが、日本は日本流の「調査」を続けたがっています。そして日本近海での「調査」ならば諸外国の以降を無視しても多少は許されますけれど、敢えて極地へと遠征してきたのが日本流である等々……

 そもそも日本が再開を提案したという「商業」捕鯨とはなんなのか。確かに一部の「団体」が捕鯨によって利益を得ているのは事実なのかも知れません。しかし、かつて捕鯨を行っていた水産会社は専ら、商業捕鯨が解禁されたとしても捕鯨を始めるつもりはないと回答しています。捕鯨で儲かる時代ではないから、と。もはや「商業」捕鯨は商行為としては成り立たなくなっているのですね。

 まぁ捕鯨はロマンなのでしょう。そこには合理性では判断できないものがあるのです。趣味嗜好、あるいは信仰のようなもので、営利行為として成立するかどうか、損になるか得になるかといった観点では、評価することが出来ないものだと言えます。日本はなぜ鯨を殺したがるのか――それはアメリカ人がなぜベーコンを好むのかを問うようなものです。

コメント

理解できるところもある

2018-11-04 22:11:55 | 政治

宗教で兵役拒否「正当」=判例変更、徴兵制に影響も-韓国最高裁(時事通信)

 【ソウル時事】宗教に基づく兵役拒否は兵役法で定めた「正当な事由」に当たるとして、韓国最高裁は1日、兵役法違反罪で有罪判決を受けた男性(34)の二審判決を破棄し、審理を高裁に差し戻した。2004年に宗教的、良心的兵役拒否は「正当な事由ではない」とした最高裁の判例を変更して事実上「無罪」を言い渡した形で、韓国の徴兵制に影響を与えそうだ。

 

 まだ一部に止まるところはあるとは言え、世界市場での競争力や技術力では日本を追い越し、ついでに最低賃金でも日本を上回ろうとする韓国ですが、社会的な成熟度合いはどれほどのものでしょうか。意外に忘れられているのではないかと思われるのは、つい30年ばかり前までの韓国は、軍部が独裁体制を敷き民主化を求める人々を弾圧しているような国家だったことです。そんな名残もあってか徴兵制度が今なお続くわけですけれど、ここで画期的な判決が出てきたようです。

 そんな韓国の最高裁で、もう一つの興味深い判決が下されました。何でも韓国の元徴用工4人に対して請求権を認め、新日鉄住金に賠償を命じたとか。これに日本政府は強く反発しているわけですが、色々と考えさせられるところがないでもありません。注目したい点の一つは、韓国――韓国に限りませんけれど――が三権分立を採っていることですね。ここが日本には理解しづらいところでしょうか。

 日本では立法や司法に対する行政の優越が確立されており、総理大臣自らが「立法府の長」を名乗ったりしています。これは公的には誤った表現ですが、自衛隊が「軍隊」を名乗るのと同じようなもので、実態から外れてはいないわけです。立法府は行政を支えるものであり、司法もまた然り、地裁レベルならいざ知らず、最高裁は原則として行政に足並みを揃え、違憲性が問われれば憲法判断には踏み込まないとの鉄則を堅持してきた歴史があります。

 そんな日本で生まれ育った人間からすれば、過去に韓国政府との間で取り交わされた合意事項と相容れない判決を、司法が下すという事態は奇異に映るのかも知れません。日本であれば、あり得ない判決には違いないでしょう。とはいえ、三権分立とはそういうものです。行政から独立して司法が判断する、韓国に限らず三権分立を採用している国では、起こりうる事態なのです。

 さて働く人に正当な対価を支払おうとしないのは、今も続く日本の伝統と言えます。韓国人が犠牲になることは減りましたが、現代ではベトナム人などが犠牲になることが多いようです。彼らは軍隊に強制連行されて来日したわけではないのかも知れません。それでもなお、日本での処遇に恨み辛みを抱くのも仕方ないと、そう思えるような現状があります。ベトナムの日本大使館前に技能実習生像が建てられたとしても、残念でもないし当然ですね。

 

韓国紙、評価割れ「正義」「韓日関係に台風」(毎日新聞)

 【ソウル堀山明子】韓国最高裁が新日鉄住金に元徴用工4人に対する賠償命令を下した確定判決から一夜明けた10月31日、韓国主要紙は1面トップで判決を大きく報じた。ただ、判決の評価を巡り、韓国メディアは革新系と保守系とで論調が割れている。

 革新系のハンギョレ新聞は「裁判巡る裏取引で遅れた正義」と見出しをつけ、日韓関係悪化を憂慮する朴槿恵(パク・クネ)前政権時代に最高裁と外務省が判決を5年間延期した状態が解消されたとの見方を強調し、判決を肯定的に報じた。

 一方、保守系の中央日報は判決内容を伝えるメインの見出しの脇に「韓日関係に台風」との見出しを掲げ、1965年に締結された日韓協定の土台が崩れることへの懸念を示す有識者コメントを掲載した。

 また、保守系の朝鮮日報は4面で「国交正常化の軸となる請求権協定に動揺」との見出しで日韓協定締結時の個人請求権を巡る交渉記録を整理。日本から提供された5億ドルを管理する当時の経済企画院長官が「国家の資格で補償金を受けたので個人には国内で処理する」と国会答弁していた事実を紹介した。

 

 この判決について韓国の「革新系」と「保守系」で受け止め方が異なっていることが伝えられています。総じて日本側の見解は韓国の「保守系」と一致していますが、正当性はどちらにあるのでしょうか。とかく保守派と言えば排外的なイメージがあるかも知れません。しかし、その辺は実は相手次第だったりしまして、日本でも最もアメリカに親和的なのは、ハト派やリベラル派、左派や革新派ではなく保守派だったりするわけです。

 韓国の保守系も然りで、アメリカには親和的で――その盟友である日本にも少なからず贔屓目があると言えます。では保守としての排外性をどこに向けるのか、その仮想敵は日本ではなく、共産主義(と名前が付くもの)であり、北朝鮮だったりするわけです。今なお内戦中の韓国にとって北の国こそが敵であり、日本は勝共連合の同志なのですね。だから、今回の判決を受けても上記引用のような態度になるのでしょう。

 かつては日本の右翼団体と韓国のカルト宗教が仲立ちとなって、日本と韓国は手を結びました。「共産主義」を共通の敵と見据えることで、怨恨を乗り越えたと言えるでしょうか。ところが日本の仮想敵であったソ連が崩壊する一方、韓国の仮想敵である北朝鮮は延命中、その辺が日韓の「保守」の温度差に繋がっているようにも思います。韓国の保守にとって矛先を向けるべき相手はずっと北にいる一方で、日本の保守は拳を振り下ろす先が定まらない、だから韓国を非難してみたりもする、と。

 ともあれ今回の判決を受けて日本政府側は強く反発しているわけです。まぁ、個人的な恨み辛みは政府間の「手打ち」では消えません。例えば日本と北朝鮮の拉致問題でも政府間の手打ちは小泉政権時代に一段落付いたはずですが、日本側は常に蒸し返し続けることを好み、北側の説く「未来志向」を頑なに受け入れようとしないように、ですね。ならば韓国が日本の説く「未来志向」を受け入れないのも、立場を変えれば理解できないものではないでしょう。

 日本と韓国が協定を結んだ当時、韓国は軍部が独裁体制を築き、民主化を求める人々に過酷な弾圧を加えていました。反共の旗を掲げ「西側」に属していれば軍事独裁政権でも民主主義の同志となるものですが、しかし手を組む相手としてはどうだったのでしょうか? 韓国の軍事政権は、日本にとって信頼して協定を結ぶに足る相手だったのでしょうか? 現に「日本が手を結んだ軍事政権」は協定通りに韓国国民への補償を行わず、日本を裏切る形になったのですから!

 この韓国の軍事政権に好意的な人々すなわち「保守系」は、軍事政権が日本と結んだ協定を、それなりに重んじていることが今回報道から分かります。しかし、その協定を適切に履行しなかった軍事政権の過去までは非難できていないようです。この辺の構図は、日本の「保守」が日本の戦時体制で犯してきた罪を直視できない、批判を受け入れられないのと同じようなものがあるのかも知れません。

 一方で、日本が協定を結んだ当時の軍事政権によって弾圧を受けていた人々もまた韓国にはいます。民主化を求め「日本と協定を結んだ軍事政権」と戦ってきた人もまた、いるのです。そうした人々の精神を継いでいる「革新系」の人々にとって、長らく韓国人を抑圧してきた軍事政権が結んだ協定は、どこまで尊重できるものなのでしょうか? まぁ日本もそうであるように、民主化する前の政権が引き起こした結果を、国民は引き受けなければならないところはあります。

 とりあえず韓国の司法は、当時の軍事政権が日本と結んだ協定を尊重しない判決を下しました。民法的に考えれば、日本と抑圧者である軍事政権の間の取り決めは、善意の第三者(韓国で民主化を進めてきた人)に対抗できないと主張することもできるでしょうか。ただ国際法的には軍事政権といえどアメリカが認めた自由の同志である以上、当時の韓国もまた正当な国家ですから、協定も法的拘束力を持つと考えられそうです。

 とはいえ、逆のパターンならどうでしょう。かつて「東側」の旧共産主義国で、反ロシア派武装勢力によるクーデターが起こり、その国が「西側」の一員に加入した場合を想定してみてください。新しくアメリカの同盟国となった国が、かつてのロシア寄りだった政権が結んだ協定を反故にするべく主張し始めた場合ならば――それは結構、国際的に認められるのではないかと思われます。

 いずれにせよ日本側が心得るべきは、協定を盾にしても個人の恨み辛みは消えない、拉致問題における北朝鮮政府との手打ちが意味をなしていないのと同じことが、韓国でも起こるのは必然ということです。河野外相のように他国のせいにしているばかりでは、何も解決することはないでしょう。そして協定の中身を実践しなかった「当時の」韓国軍事政権もまた非難されて良さそうなものですが、その非難の矛先を「現在の」韓国政府に向けている限り、軋轢は深まるばかりと考えられます。

コメント

お里が知れる

2018-09-30 21:45:11 | 政治

立憲・枝野氏「安倍さん、日本を社会主義化させている」(朝日新聞)

枝野幸男・立憲民主党代表(発言録)

 (金融政策で)日銀まで株を買い、皆さんの年金の金で株を買っているのはご承知の通りだと思いますけれど、株を政府が買い支えをしている。値段をつり上げている。

 その結果、日本における最大の機関投資家は、日銀まで含めれば政府です。政府が最大の株主である国って、社会主義じゃないですか。安倍さん、日本を中国にしたいんじゃないかと思います。社会主義化をさせているとしか思えない。

 それで株は高いんだから、景気がいいという幻想を国民に描いている。必ず、大きなしっぺ返しを受けます。一日も早くそうした状況から脱却できる状況をつくりたい。

 税金を納めていただいて、再分配されて、所得の低い人たちの所得の押し上げに使われ、安心感につながれば、結果的に消費が増えてまたもうかる、ということを説明をしながら、税制を抜本的に変えていく方向に進めていきたい。(新潟市での講演で)

 

 「皆さんの年金の金で株を買っている」という枝野の主張が妥当かどうかはさておき、株価が上がっていることで年金の運用益は故・民主党政権時代に比べて大幅に改善されているのは、紛れもない事実です。民主党の残党としては、色々と受け入れがたい現実もあるのでしょう。その後も誹謗中傷が続くわけです。

 日本で「リベラル」と他称される人々の多くは、世界における「ネオリベラル」な人であることが一般的です。故・民主党は政府による国内経済への関与を嫌う市場原理主義で塗り固められていましたが、それに比べると現政権は大きな政府路線で前政権よりは経済政策に積極的、これが枝野に言わせれば「社会主義」とのこと。どうしたものでしょうね。

 実際のところ「景気がいいという幻想」は重要でして、「病は気から」ではありませんが、景気が良いと思って国民が財布の口を緩めれば消費が伸びて国内経済は成長するものです。一方で景気が悪いと国民が感じてしまうと、貯蓄志向が高まるばかりで消費は低迷、景気は悪化します。幻想には、少なくとも方向性を定める力があるのですね。

 さて「税制を抜本的に変えていく方向に進めていきたい」とも枝野は語ったそうですけれど、枝野も閣僚として参加していた民主党政権が行った税制の変更とは何だったでしょうか? それは実施時期こそ現政権下となりますが、あくまで決定したのは民主党であるところの消費税増税です。言うまでもない、逆進課税ですね。より所得の低い人からむしり取る、そういう路線を推進してきた党の重要人物であった枝野の頭の中の「方向」とはなんなのやら。

 自民党が求めていたタイミングでの解散総選挙に応じる代わりに、消費税増税を約束させたのは民主党政権最後の首相であった野田佳彦ですが、この野田は「安倍政治は白鵬の相撲」と2016年の参院選を前に語りました。地方議会では連立与党の一員でも、国政では野党として安倍政権との対決姿勢をアピールする、そんな文脈での言葉なのですが、いかがでしょうか?

 「安倍政治」をネガティヴに捉えるのは価値観の問題ですし理解できるところはないでもありません。しかし、それを「白鵬の相撲」と例えるのはどうでしょう、しばしばナチスやヒトラーは悪の代名詞として使われますが、ここでは白鵬がその役割を負わされているわけです。とはいえ白鵬が何か悪いことをしたとは思えないのですけれど……

 まぁ野田佳彦にとっては日本出身力士こそが善であり、モンゴル人横綱なんてのは侵略的外来種であり非難されて当然のものである、その名前を挙げることで「悪いもの」を想起するのが自然なことと感じられていたのだと思います。だからこそ、自分が否定したい対象(安倍政治)を衒いもなく白鵬になぞらえたわけです。

 そして、かつては野田とともに大不況時代の政権を担っていた枝野が今回、現政権を「社会主義」「日本を中国にしたいんじゃないか」などと非難の文脈で述べています。まぁ、枝野のような経済極右の市場原理主義者にとって社会主義とは絶対悪なのかも知れません。しかし資本主義も社会主義も理念の問題であり、どちらが悪というものではありませんよね?

 挙げ句は「日本を中国にしたいんじゃないか」云々。今となっては中国こそ資本主義の新たなリーダーですが、枝野の頭の中では色々と時計の針が止まっているのでしょうか。確かに中国にも避難されるべき点は多々あります。とはいえ、悪の代名詞として使うのが適切なのかどうかは、大いに疑問を感じるところです。

 もちろん政治家には各々の理想があり、目指すところはそれぞれ異なるものです。しかし思想の違いに絶対的な「正しさ」はありません。日本と中国、アメリカやスイス、インドやブラジルにロシア、どれが善でありどれが悪というものではないでしょう。いずれも尊重されるべきものはあり、中国=悪という発想は排他的ナショナリズム以外の何者でもありません。

 しかし「違い」を尊重できない偏狭な排外主義者の頭の中では、中国が自然に「悪いもの」として想起されている、それは見解の相違ではなく、正しいか正しくないかという基準で判断されているわけです。国の在り方はそれぞれですけれど、気に入らない相手を、自分が悪だと思っている国に例えて見せる人もいる――その振る舞いは「多様性」に対する真の態度を如実に表すものと言えます。

コメント

合区批判に関しては納得できる

2018-09-23 22:22:40 | 政治

総裁選、地方票に注目 首相苦戦地域は選挙へ不安表れ?(朝日新聞)

 20日に投開票された自民党総裁選で、安倍晋三首相を相手に善戦した石破茂・元幹事長が45%を獲得した「地方票」に注目が集まっている。首相が苦戦した地域を分析すると、統一地方選や参院選を来年に控えた党員らの不安や不満が垣間見える。

 地方票は党費や会費を納める党員・党友が投じる票のことで、党の都道府県連が集計する。今回、首相が石破氏を上回ったのは47都道府県のうち、37都道府県に上り、石破氏が首相を上回ったのが10県だった。

 首相が優位な戦いぶりを見せたのは、二階俊博幹事長の地盤の和歌山をはじめ、菅義偉官房長官の神奈川、麻生太郎財務相の福岡など、政権幹部の地元だった。東京や大阪も押さえた。石破陣営は「都市部での首相側の組織票固めの動きが見えず、手を打てなかった」と言う。

 一方、石破氏が勝った茨城、富山、三重、鳥取、島根、徳島、高知、宮崎の8県は、石破派や石破氏を支持した参院竹下派の議員らが地盤とする地域。鳥取・島根、徳島・高知は参院選の合区導入県でもあった。石破氏は憲法改正の優先項目として「合区解消」を主張し、安倍陣営の幹部は「(石破氏の)合区批判の影響がもろに出た」と受け止めた。

 

 さて、自民党総裁選の結果を石破の「善戦」と扱うかどうかは見解の分かれるところですが、地方によっては現職の総理を上回る得票を得たところもあったわけです。この辺は派閥のパワーバランスによるところも大きい一方、「合区」の導入もまた少なからず影響したと言われています。安倍陣営の幹部(誰?)によると「合区批判の影響がもろに出た」とのこと。

 議員定数削減と一票の格差是正が進めば当然ながら、人口の減少する弱い県は必然的に議席の割り当てを失い、合区とならざるを得ません。そんな地域の自民党員には合区の解消を主張した石破への票が伸びた――と一部では推測されています。これがどこまで妥当かはさておき、自民党内だけではなく野党側も視野に入れるとどうでしょう?

 少なくとも理念上、国政に代表を送り込むのは、その地域に住む有権者の権利です。ゆえに地域の議席が削減されれば、該当地域の有権者の、国会に代表を送り込む権利もまた削減されると言うことができます。一方で議席を自らに与えられた特権であるかのごとく勘違いしている政治家もいるものでして、そうした人にとって議員定数の削減は「身を切る改革」との位置づけになっています。

 そして野党筋ほど、議員定数削減に熱心な傾向がある、それを「身を切る改革」を呼ぶ傾向が強いわけです。この辺、安倍総理は煮え切らない態度を続けていると言いますか、野党の主流派ほどには熱心ではありません。そして今回の首相の対抗馬だった石破は、合区解消を主張したとのことで、合区を生む定数削減とは相容れるのが難しそうにも見えます。

 良くも悪くも「反・安倍晋三」で旗幟鮮明なメディアもありまして、この総裁選なら石破に好意的、普段なら旧民主党系勢力に親和的な報道が基本スタンスとなっていたりもしますが、石破と野党が並んだ場合はどうなのでしょうね。「身を切る改革」を唱える政党と、「合区解消」を訴える石破、「アベ政治を許さない」という点に限れば両立できるとしても……

 もっとも安倍政権の信任投票ならいざ知らず、安倍から石破に変えるのが好ましいかという判断なら、今回の結果は納得できるというのが私の感想なのですけれど、合区の扱いについては石破の方が良いとも思いました。繰り返しますが、地域に割り当てられた議席とは、その地域の有権者が国会に代表を送り込む「権利」です。そのために改憲が必要かはさておき、有権者の権利は守られねばなりませんから。

コメント

締め付けとはなんぞや

2018-09-16 22:34:44 | 政治

安倍陣営、地方で激しい締め付け 森友加計対応に反発も(朝日新聞)

 時に中央に反旗を翻し、独立王国の観もあった自民党の地方組織。安倍晋三首相が党中央を掌握する中、地方にも変化が見える。

 県政のドンと言われた人物のお別れ会が1日、水戸市であった。7月に97歳で世を去った山口武平氏。茨城県議を55年、自民党県連会長を22年間務めた。

 歴代首相とも関係を築き、党中央にたびたび直言した。政界随一の実力者だった金丸信・元副総理に「あそこは武平の独立王国だ」と言わしめたほどだ。

 お別れ会に駆けつけた麻生太郎財務相は山口氏をこう懐かしんだ。「『万機公論に決すべし』と口にされる一方、方針が決まれば一致団結を徹底された」

 いま山口氏のような直言型の政治家は減り、多様な議論を通じて党内世論を形成したかつての自民党は変貌(へんぼう)しつつある。5年半を超える安倍政権の下、自民党の単色化が進む。国会議員であっても異論を口にすれば冷遇され、首相と距離を置く議員は「物言えば唇寒しだ」とささやき合う。

 

 さて、こんな報道もありますけれど、どうしたものでしょう。例えば旧民主党系諸政党などは、国政でこそ自民党の対抗馬を演じる一方、地方組織は相乗りで自民党と共に首長を支えているのが一般的です。そういう類いも「中央に反旗」に該当するのかどうか、私は気になります。

 ここに引用した記事では「県政のドン」とやらが懐かしまれているわけですが、「都議会のドン」と何が違うのでしょうね。後者は随分と悪し様に言われてきましたけれど、いったい何が違うのかは、やはり気になるところです。結局、報道機関が肩入れしている政治勢力との関係次第で、肯定的に扱われたり否定的に扱われたりと、そういうものなのかも知れません。

 なお麻生太郎の語る「方針が決まれば一致団結を徹底」が事実なら、地方組織でも最終的には組織内での締め付けが激しかったのではないかと推測されます。つまるところ朝日新聞的には、安倍派の団結は悪い締め付け、反安倍の単色化は良き団結、ということになるのでしょう。

 そもそも「多様な議論を通じて党内世論を形成したかつての自民党は変貌」云々は安倍政権下で始まったことではなく、それこそ朝日新聞が今なお熱烈に支持する小泉政権下で急速に進んだことでもあります。小泉純一郎に異を唱えた政治家は党を追われ、刺客を差し向けられた時代もあったはずです。それを讃えてきた報道機関が現政権での「変貌」と非難するのも、節操のない話ですよね。

 一方で総裁選を巡っては、岡田裕二なる自民党の神戸市議が官邸幹部(誰?)から石破を支持しないように恫喝があったと訴えたり、斎藤健農水相が「安倍首相の応援団の一人(誰?)から『石破氏を応援するなら(農相の)辞表を書いてからやれ』と言われた」などと公言するなど、締め付けがきついのか、それとも緩いのかよく分からないのが現状です。本当に締め付けが厳しいなら、そう表に出てこないものですから。

 もう話題になりませんが、7月頃には人間山脈だか杉田水脈だかという自民党議員が「(LGBTのカップルは)子供を作らない、つまり『生産性』がない」と語って問題視されました。まぁ、安倍晋三・昭恵夫妻も子供を作っていないので生産性がなさそうですけれど、その辺はどういう扱いなのか、誰か夫妻にインタビューして欲しかったです。

 だいたいの民間企業では、上司を何よりも大切にするものだと思います。役員層に不敬があってはならないと、厳しく目を光らせておくのも中間管理職の重要な仕事です。では社長夫妻が不妊治療を受けたけどダメで結局子供ができなかったことが知られているような組織で、子供ができないんだから生産性がないなどと公言するような人がいたら、どうなるでしょうね。

 もし私の勤務先で上のようなことがあったなら、速やかに面談室送りとなるところですが、自民党の場合はどうなるのか、その後の水脈議員の扱いを見ると、ナアナアで済まされてしまったようにも見えます。あんまり、安倍晋三夫妻のプライベートなことには気を遣ってもらえなかったようですね。この辺は締め付けが厳しいというより、緩さを感じさせる一幕でした。

コメント

あまり争点になりませんでしたね

2018-06-04 00:11:38 | 政治

働き方法案、衆院を通過(朝日新聞)

 安倍政権が今国会で最重要と位置づける働き方改革関連法案は31日の衆院本会議で、自民、公明両党と日本維新の会、希望の党などの賛成多数で可決し、衆院を通過した。参院では6月4日の審議入りで与野党が合意。高度プロフェッショナル制度(高プロ)以外にも多くの論点を残したまま、議論の舞台は参院に移る。

 

 去る5月31日、政府の「働き方改革関連法案」がひっそりと衆院を通過しました。参院での審議入りについても与野党での合意が取れていると伝えられています。もちろん全国紙で普通に報道されていることですので決して「こっそり」行われたことではないのですけれど、世間の注目度及び国会論議と報道の熱の入り方はいかがでしょうか。その度合いを思うに「ひっそり」ぐらいの扱いが妥当と感じられるわけです。

 法案の衆院通過の2日前、5月29日は連合が、どういう風の吹き回しか高度プロフェッショナル制度への反対を表明しました。連合の本来の立ち位置は逆と言いますか、元々は高プロに賛成してきたはずです。ただ(連合幹部には予想外の)反発もあって態度を棚上げにしてきた代物でもあります。本音では高プロ賛成の立場は変わっていないと考えられますが――衆院通過が確実となった、労組として反対意見を表明しても大勢に影響がなくなった、だからこそ組合員へのアリバイ作りとして反対のポーズを取ってみた、と言ったところでしょうか。

 一方で扱いが大きいのは、政治的な分野に限るならば相変わらず森友学園や加計学園を巡る問題のようです。野党や報道機関が力を入れて扱いたいのは、働き方改革関連法案よりも政府スキャンダルの方であるように見えます。この辺、野党議員もメディア上層部も、連合と同じく経営目線で高度プロフェッショナル制度には必ずしも反対ではない、むしろ賛成の人も多いのでしょう。そもそも庶民一般の中にも、心だけはエグゼクティヴで、経営側に都合の良い制度こそが望ましい経済政策なのだと信じて止まない人は少なくないですよね!

 まぁ北朝鮮に対する拉致問題よろしく、一方的に相手を非難していれば事足りる問題というのは、ある種の人々にとって好都合なのでしょう。建設的な議論をするより、相手の非をあげつらっていた方がずっと楽です。責めることもあれば逆に責められることもあるような問題は与野党いずれにとっても面倒に違いありませんが、少なくとも森友・加計の問題に関して野党は一方的に責めるだけですから楽なものです。

 まぁ安倍内閣の支持率も昨今は下げ止まり、森友・加計の問題をいくら追求したところで野党支持層を興奮させることはあれ、与党支持層を今以上に切り崩すことは不可能に見えます。でもまぁ往々にして政治家は、新たな支持の拡大を目指すよりも、既存の支持層を喜ばせることの方を選びがちなのではないでしょうか。信念に乏しく当選第一の政治家ならば有権者の声に左右されますが、逆に己の信念と理想を重んじる議員であればこそ、世論には流されず、自分と主義主張が似通う人たちの声ばかりを聞こうとするものですから。

コメント

財政の引き締めばかりが好まれますが、財務省の引き締めの方はいかがでしょう

2018-05-06 22:59:54 | 政治

減給理由は「役所に迷惑」麻生太郎財務相 「セクハラ罪という罪はない」(産経新聞)

 麻生太郎財務相は4日、女性記者へのセクハラを報じられ財務事務次官を辞任した福田淳一氏について「役所に迷惑を掛けたとか品位を傷つけたとかいろんな表現があるが、(そういう理由で)処分した」と述べた。マニラでの記者会見で語った。

 セクハラ行為を認定した上で減給とした財務省の対応とは食い違う説明になる。麻生氏は「『セクハラ罪』という罪はない。殺人とか強制わいせつとは違う」とも発言した。

 その上で、福田氏がセクハラを否定していることを踏まえ「(福田氏の)人権を考えないといけない。言い分を聞かないと公平を欠く」と、これまでの主張を繰り返した。

 

 産経新聞なら独自に政府関係者を擁護する記事に仕立て上げることを読者から期待されているように思うのですが、この件は流石に無理があるのでしょうか、共同配信記事がそのまま掲載されています。曰く「セクハラ罪という罪はない」のだとか。まぁ、そういう罪状は現存しないのかも知れませんね。法律の隙間を狙った「節税」行為や危険ドラッグの売買が何ら問題のない行為であると考えられるのなら、麻生の言うことにも一理あります。

 「(福田氏の)~言い分を聞かないと公平を欠く」と、これまでの主張を繰り返したとも伝えられるところですが、問題が政局になってから結構な日数が経っているのは周知のことです。にもかかわらず、言い分とやらは聞けていないのでしょうか。今なお「言い分を聞かないと公平を欠く」と言い続けて判断を保留にしようとするのなら、疑われるのは福田氏を通り越して財務省トップの怠業の方になりそうなものです。

 ともあれ麻生大臣の語るところでは、セクハラ案件については事実関係を把握できていないことになります。しかし「役所に迷惑を掛けたとか品位を傷つけたとか~(そういう理由で)処分した」わけです。要するに財務省トップとして、しかるべく調査できていないけれど、野党やメディアがアレコレうるさいのでトカゲのしっぽ切りを計った、と言うことになるでしょうか。やはり仕事ぶりが疑われるところです。

 「説明の付かないカネ」の問題で失脚した政治家は枚挙にいとまがありませんが、そうした人々が法律に触れる行為をしていたかと言えば、大半は違います。小沢一郎なんて強制起訴まで行きましたけれど、法律的には無罪でした。では受け取った金が「シロ」かと言えば、ほとんどの有権者にとっては限りなく黒に近いグレーでした。政治の中枢にいられるかどうかは、刑事罰の基準とは違います。刑法に触れなければ「シャバ」にはいられますが、政治の舞台は事情が異なるのです。

 財務省でも末端のヒラ職員であれば事情は変わってくるところもあるのでしょうけれど、事務次官ともなれば国政への影響力も小さくありません。ましてや選挙によってふるい落とされるものでもないとなれば、誰かが厳しい目を向ける必要があります。果たして財務省のトップは身内を甘やかしたいのか、それとも引き締めを計りたいのか、どちらなのでしょうね。

 前々から書いてきたことですが、安倍内閣は「緩い」内閣です。強面の派閥のボスが党内に絶えず目を光らせ、野党に攻撃材料をプレゼントする愚か者は即座に切り捨てるような、そんな強権的な組織とは対極にあります。安倍は麻生をトカゲのしっぽには出来ないだろうとも書きましたが、今回のような発言が続いてもその辺は変わらないのだろうな、と。だからこそ、似たような放言、妄言も続くわけです。

コメント

ダメな人でも偉くなれます

2018-04-29 22:15:48 | 政治

 さて世間では財務省の偉い人のセクハラが結構な問題にもなっているわけです。元より日本の政界では政策面の誤りは許されても金銭問題と女性問題は命取りと相場が決まっています。どうしても与党筋の問題の方が世間の注目が高くなる一方、新潟では野党系の知事がひっそりと女性問題で辞職しました。政策的な誤りの方が国民の生活への影響は遙かに甚大ですが、「個人的にオイシイ思いをする」ことをこそ我々の社会は許さないのです。

 どこも対立勢力に攻撃材料など与えたがっているはずもなく、閣僚や高官への起用ともなれば当然「身辺調査」は行われているはず、無用なスキャンダルを抱えていないであろう人を選んでいると考えられます。しかし、週刊誌がその気になりさえすれば速やかに問題が見つかるのも事実です。果たして週刊誌記者の調査能力が秀でているのか、それとも「人事権を持った人」の目がことごとく節穴であるのか――皆様はどっちだと思いますか?

 まぁ政党や官僚の世界は知りませんけれど、民間企業だったら「明らかにヤバい奴」が普通に出世していたりするわけです。部下や同僚から見れば問題だらけの人物であっても、不思議と「人事権を持った人」の目には欠陥が見えない、そういうものなのでしょう。かくして機能しない組織が作られる、仕事の出来ない人やパワハラが習慣の人に権力が与えられるものです。これぞ「民間なら当たり前」のことと言えますが、霞ヶ関と民間企業の差はどれほどでしょうね。

 第三者を一目で呆れさせるセクハラおじさんを昇進させたのが財務省でありますが、「コイツの存在が知れたら赤っ恥」とは考えられなかったのかどうか――やはり「人事権を持った人」は普通の人とは目の付け所が違うようです。振り返れば男性ばかりの理系の世界でも、若くして理化学研究所のユニットリーダーに上り詰めた女性がいました。「リケジョの星」などと讃えられた彼女は――不正が発覚して失脚、利権の権威を貶めるのに大いに貢献しました。やはり理研でも「人事権を持った人」は目の付け所が違ったのだと思います。

 もっとも偉い人に限らず組織における人間間の「信頼」は大いに怪しいものだな、と感じないでもありません。例えば私の勤務先の場合、非公開の社内情報は速やかに井戸端会議を通じて拡散されるのが常です。発令前の人事情報は元より幹部限りのはずの通知事項も秘密裏に進められているはずのプロジェクトも、常に公開前に知れ渡っていたりします。誰かが情報をリークして、それを聞いた人は「ここだけの話」とオトモダチに披露する、そこからさらに先のオトモダチへと機密は伝達され、日数を要することなく全社に知れ渡る、至って普通の日常です。

 よく新聞には「ある与党議員によると」「ある○○省高官によると」云々と、出所不明な情報が踊っています。内部告発なら別として、安易に内部情報を漏らすような輩は人間的に信用できませんけれど、そういう人も多いのでしょう。どこもかしこも、口というより頭の緩い人でいっぱいです。だからこそ格好の取材源にもなる、女性記者と一緒に食事でもさせてやれば尚更のこと倫理意識も緩んでネタを吐き出してくれるだろうと、そう受け止められてきたフシもありそうですね。しかるに「ここだけの話」は必ずしも「ここだけ」では終わらないものです。

コメント

今の人より良い人なら

2018-04-22 22:42:02 | 政治

岸田派の政策、リベラル色前面に 安倍政権との違い強調(朝日新聞)

 自民党の岸田文雄政調会長が率いる岸田派(47人)は18日、東京都内のホテルで政治資金パーティーを開き、派閥としての政策骨子を発表した。「トップダウンからボトムアップへ」「多様性を尊重する社会へ」など、リベラル色を前面に掲げ、安倍政権との違いを強調した。

 政策骨子では、「権力に対するチェック・アンド・バランスを確保する」とうたい、ボトムアップの政治の実現を掲げた。「大企業・中央偏重から、中小企業・地方が主役」の経済政策も主張し、安倍政権の政権運営のあり方や「アベノミクス」からの転換の必要性をにじませた。

(中略)

自民党岸田派の政策骨子

・権力に対するチェック・アンド・バランスを確保する
・中小企業、地方が主役のボトムアップ型経済を実現する
・自律した個人、個性、多様性を尊重する社会へ
・持続可能な経済、財政、社会保障を実現する
・平和憲法、日米同盟、自衛隊の3本柱で平和を創る

 

 日本代表監督を解任されたハリルホジッチ氏が来日しているそうです。W杯出場権獲得後の不甲斐ない戦績には批判の声も強まるばかりだった同氏ですが、さりとて今のタイミングでの解任を肯定的に捉える人、西野新監督への交代でチーム状況が上向くと考えている人は、そこまで多くないようにも見えます。

 一方で国内の諸問題で野党にアレコレ責め立てられている安倍内閣はいかがでしょうか。ダメなものはダメですが――では政権交代すれば良い、別の首相ならもっと良くなると、そう考えている人がどれくらいいるのかは興味深いところです。批判の声が、「代わりうる人」への支持の声とは限りませんから。

 さて自民党内で「ポスト安倍」の有力候補の一人と位置づけられている岸田氏のグループが「政策骨子」を発表したそうです。引用元では「リベラル色前面に」とのことですけれど、日本にはリベラルと呼ばれつつネオの付くリベラルな人たちが数多います。果たして岸田派の「リベラル」とは? そもそもレイシストに毛嫌いされていれば誰でもリベラルと呼ばれる時代です。この「他称」ほどアテにならないものはありません。

 岸田派の政策骨子の中には、聞こえの良さそうなものもあります。しかし経済政策面では民主党政権時代への回帰、旧態依然たる構造改革路線への回帰を思わせるものがないでもありません。ブルジョワ新聞の言うように「安倍政権との違い強調」すればするほど、ですね。

 第二次安倍内閣の登場で第一に評価できるのは、ゼンショーに代表されるブラック企業を苦境に陥らせたことでしょうか。例によってブルジョワ新聞などでは「アベノミクスのせいで人件費が上がって中小企業が苦しんでいる!」と批判的に伝えられてきたものですが、しかし真っ当な賃上げを出来ない収益性の低い企業は社会の寄生虫でしかありません。従業員を低賃金で酷使することでしか延命できない企業を放逐することは、労働者の幸福のためです。

 東京一極集中もいい加減に限界ですから「地方が主役」は、わからないでもありません。しかし「中小企業が主役」ともなるとどうでしょう。労働関係の規制を緩和し、人件費を圧縮することでしか利益を生み出せない企業を栄えさせた橋本龍太郎や小泉純一郎の「改革」を思い出させます。政治の介入によって競争力のない中小企業を延命させることがどこまで望ましいのか、その辺は疑問です。

 そして「持続可能な経済」云々。これを語る人の99%は「反成長派」だったりしますが岸田氏はどうなのでしょう。90年代後半から第二次安倍政権誕生前までの、日本の「成長しない」経済が世界に例を見ない異端児であったことは、議論の余地がありません。それが安倍内閣下で幾分か正常化してきたわけですが、そこに「違いを強調」されるようだと、やはり退行路線かと思えてきます。

 そもそも「経済」に続いて「財政」が出てくるのが怪しい。またもや民主党時代の財務省ベッタリに逆戻りかと懸念されるところです。続く「社会保障」もまた「持続可能な」が頭に付くとニュアンスも変わってくるのではないでしょうか。「持続可能な」ものにするためと称して(財務省の描いたままに)社会保障を縮小する、そうした悪夢のシナリオを想像させてくれます。「持続可能な」と社会保障に留保を付ける、そこにリベラル色はあるのやら。

コメント