非国民通信

ノーモア・コイズミ

アメリカからの評価

2020-06-28 23:38:35 | 雇用・経済

人身売買報告で日本格下げ 米国、技能実習生など問題視(朝日新聞)

 米国務省は25日、世界の人身売買に関する年次報告書を発表した。日本については、外国人技能実習制度や児童買春の問題を取り上げ、「取り組みの真剣さや継続性が前年までと比べると不十分だ」として、前年までの4段階のうち最も良い評価から、上から2番目の評価に格下げした。

 今回不十分と判断したのは、人身売買の摘発件数が前年より減ったことなどを考慮したためという。報告書ではこれまでも日本の技能実習制度を問題視してきたが、今回は「外国人の強制労働が継続して報告されているにもかかわらず、当局は一件も特定しなかった」とし、「法外な手数料を徴収する外国の仲介業者を排除するための法的措置を、十分に実施していない」と改善を求めた。

 人身売買問題を担当するリッチモンド大使は記者会見で、「技能実習制度の中での強制労働は長年懸念されてきたことで、日本政府はこの問題にもっと取り組むことができるはずだ」と指摘した。(ワシントン=大島隆)

 

 日本が絶対の信用を寄せるアメリカから、このような報告書が出たそうです。時には国際機関に背を向けることもある日本国ですが、これまでずっと宗主国であるかのような扱いを続けて来たアメリカの見解に対して、日本政府はどう向き合うのでしょうか。

 格下げの根拠は「人身売買の摘発件数が前年より減ったことなど」と伝えられています。時期的にはコロナウィルス感染拡大が起こる前を調査していると思われますので、取り締まるべき事例が減っていたわけではなかったはずです。そうした中では、「取り組みの真剣さや継続性が前年までと比べると不十分」と評価されるのは当然かも知れません。

 もっとも前年までは「4段階のうち最も良い評価」だったようですから、随分と甘い評価である印象も受けます。やはりアメリカからの評価ですから、アメリカに付き従う姿勢を鮮明にしている日本へは緩い基準で評価し、アメリカの意向に沿わない中国やロシアには厳しめの基準で評価する等々、あまり客観的でないところはありそうです。

 一方でコロナウィルス感染拡大後は各国が国境を閉ざし、技能実習生の往来も途絶えました。安価な労働力に頼って利益を上げていた業界からの悲鳴も聞かれるところですが、「輸出元」の国ではどうなのでしょうね。とりあえず私としては、騙されて日本に来る(そして恨みを抱えて帰る)人が減って良かったと思っています。

 なお技能実習生の最大の供給元であるヴェトナムは新型コロナウィルスによる死者数「0」とされています。一応は感染症対策の優等生であり、日本より経済のリスタートも早い、日本とアジア諸国の経済格差は縮まり続けていますが、この傾向は加速することでしょう。ヴェトナム人にとって日本の賃金水準が魅力的でなくなる日は決して遠くありません。他のアジア諸国も同じで、いずれ「日本なんかに行っても稼げない」というのが世界の共通認識になる日が来ます。そうなれば――技能実習生に纏わる人身売買の問題は解決する、というのが私の見立てです。

 「技能実習」という言葉からは、児童買春を「パパ活」などと呼ぶのと同様のおぞましさを感じます。名称が実態を表すものになっていない、汚い部分、暗い部分を言い換えることで塗り隠している、まだしも「徴用工」と呼んだ方が内実に近いとすら言えないでしょうか。軍隊によって強制連行されたわけではないとしても、甘い言葉で日本に誘い、自由を奪っては低賃金で過酷な労働に従事させるのなら、何かしら「罪」を連想させる言葉の方が適切です。

 なお「法外な手数料を徴収する外国の仲介業者」も、呼び方を変えた方がいい気がしますね。こういう存在は「親日派」と書くのはどうでしょうか。自国民を日本に売り渡すことで私腹を肥やす、韓国において断罪されるようになった「チンイルパ」も、現代における中国やヴェトナムのブローカーも、時代が異なるだけでやっていることは似たようなものですから。

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社会の免疫

2020-06-21 22:37:40 | 社会

 「社会が免疫を付けて受け入れてしまう方が早いような気がしないでもありません」と、私は3月8日にブログに書きました。言うまでもなく新型コロナウィルスの感染拡大を指してのことで、感染者0に到達することは至難であり、そうなる前に「社会」が免疫を付けてしまうことを予測したものです。

 感染拡大が始まった当時には分からなかったことも多く、各国政府の対策や諸々の「専門化」の予測が外れることは珍しくありませんでした。私にしても、重傷化リスクや飛沫感染の範囲などについては認識を改めるばかりなのですが――海の向こうでは自説の正当化に固執して対応を誤り続ける大統領がいるのはどうしたものでしょう。

 東京ではジワジワと感染者の増加が続いています。にも関わらず、東京アラートは解除され、県境をまたぐ移動も解禁となりました。南米やインドなどの状況を見る限り、インフルエンザとは違って高温多湿の気候が大きく感染リスクを下げる可能性は低いと考えられますが、警戒態勢は着々と緩んでいます。

 よく言われる「集団免疫」と、私が思い描いた「社会が免疫を付ける」事態は、全く別の意味です。その社会の構成員の身体が免疫を持つのではなく、気持ちの面で免疫が付いてしまうこと、つまり感染者の増加を平然と受け入れるようになってしまうことを想定して、「社会が免疫を付ける」可能性を予想しました。

 新しいものには、社会も敏感に反応します。季節性インフルエンザで死んだ1,000人より、未知なる感染症で死んだ10人の方が、世間の注目は集まるものです。新型コロナウィルスも当然、最初は後者の扱いでした。ところが月日が経過するにつれ当初の警戒感は薄れ、感染者の拡大にも平然としていられるようになる、それが目下で進行中の事態ではないでしょうか。

 実際のところ、健康リスクが季節性インフルエンザと同程度に止まるのであれば、過剰に恐れる必要はないのかも知れません。ただ、季節性インフルエンザよりも重症化リスクは高い、暖かくなっても感染リスクは減らないことが判明していく中では、この「社会が免疫を付ける」状態は今後の大きなリスクに繋がっていく可能性があります。

 夜の街に繰り出す人々は、先行して「社会的(精神的)免疫」を身につけた人々であると言えます。こうした人にとって新型コロナウィルスは季節性インフルエンザと同じようなもの、恐怖を感じることのない代物となっているのでしょう。ただ、社会的免疫はあくまで気持ちの問題であって、ウィルス感染には無力です。そして夜の街のお客さんも昼間は普通の勤め人、満員電車に乗って出勤したり、時には全国各地に出張したりしているわけです。

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普通の会社なら高く評価されるタイプ

2020-06-14 22:22:04 | 社会

内部告発者の異動は「他職員守るため」 町が想定問答集(朝日新聞)

 山口県田布施(たぶせ)町が、固定資産税の課税ミスを内部告発した職員を1人だけの部署に異動させたことを巡り、住民らからの問い合わせへの「想定問答集」を作った。その中で異動の理由として、この職員が原因で周りの職員が精神的に行き詰まったとして「他の職員を守る必要がある」と記していたことがわかった。

 町総務課の亀田典志課長が10日、朝日新聞の取材に説明した。想定問答集はA4判2枚。人事についての報道で住民らから問い合わせが殺到し、主に対応する総務課員向けに作ったという。亀田課長は「報復人事との指摘を否定するため」と理由を話した。

 職員は2018年4月に税務課に着任以降、3回異動して今年4月に町史編纂(へんさん)室に移った。問答集には、これらの異動歴のほか、人事について「隔離ではありません」と説明するよう書かれていた。

 また亀田課長は、想定問答とは別に、対応した職員が「指示を聞かず、窓口や電話の対応をしない」「自分の興味ある仕事ばかりやる」「コミュニケーションがとれない」などと説明したこともあったと話した。(高橋豪)

 

 さて確認の取れている事実としては内部告発を行った職員がいて、その職員が「約30年ぶりに設けられた町史編纂室(人員1名)」へと異動させられたそうです。この町史編纂室は公民館の和室から畳を取り除いて急遽用意されたとのことで、少なくとも市の説明中の「隔離ではありません」とする部分は大いに疑わしいと言えます。

 曰く「この職員が原因で周りの職員が精神的に行き詰まった」「指示を聞かず、窓口や電話の対応をしない」「自分の興味ある仕事ばかりやる」云々と伝えられていますが、真偽はどれほどのものでしょうか。挙げられた問題点を聞くと「どこの職場にもそういう人はいるよね」と言った印象ですが――そういう人はむしろ評価が高い方が普通だと思います。

 他人の足を引っ張って周囲のパフォーマンスを落とす人材がいると、足を引っ張られる側の同僚の評価は下がり、相対的に足を引っ張る側の人間の評価が上がる、それが普通の職場です。人の指示で動けば「あいつは言われたことしかできない奴」とレッテルを貼られ、窓口や電話対応などの日常業務を「誰にでもできる仕事」と蔑んできたのが21世紀の日本の人事ではないでしょうか。

 逆に評価を高めていくのは決まって(誰からも望まれていないことを)自分から行動していく「主体的な」人材です。評価に繋がらないルーチンワークは周囲に押しつけ、自身は意見を言うことに徹する、組織内のコンサルタントとして積極的に現在の仕事にダメ出しして改革を訴えていく、そういう人を取り立ててきたのが日本の能力主義であったはずです。

 もし、この田布施町の課長の言うことが事実なら「そういう人が肯定的に評価されていないのはおかしい」と私は思います。田布施町が日本の一般的な民間企業とは180°異なる独自の人事評価方針を持っているのでない限り、街の説明には疑義が残るところです。左遷されたのはやはり、内部告発に対する報復人事じゃないのか?と。

 まぁ町史編纂室なり社史編纂室なり、閑職への異動は(私を含め)ある種の人にとってはご褒美という気がしないでもありません。報道写真を見る限り、今回の取って付けたような町史編纂室も居心地の悪い部屋ではなさそうです。それでも報復人事と感じられた理由の中には、本人が「やる気に満ちあふれている」こともあるのでしょうね。

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少なくとも内閣の功績ではないようです

2020-06-07 22:24:16 | 政治・国際

 さて日本のコロナウィルス対応については顕著なPCR検査数の少なさに疑念を募らせる人もいる一方、結果的に死者数は少ないのだからと納得する人もいる様子です。確かにヨーロッパ諸国やアメリカ、ブラジルに比べると日本のコロナウィルス関連死者数は少ない、欧米諸国より相対的には上手く対応できていると言えるのかも知れません。

 一方でこちらは、アジア諸国の人口とコロナウィルスによる死亡数(2020/6/5, 6:44pm WHO報告数)を列記したものです。これを見ると西側に位置する一部の国では「ヨーロッパ並み」の数値が出てくる一方で、東アジア、東南アジア地域では目立って多くの死者数が見られないことが分かります。

 ヨーロッパ、アメリカでウィルスがより強力なものに変容したとする説もあれば、人種によってウィルスへの抵抗力が異なるという説もあります。何はともあれアジアの東側では比較的、影響力が少ないことが分かりますが――その中で見ると日本の位置づけはいかがなものでしょうか。極端に悪くはありませんけれど、周辺諸国には幾分か後れを取っているようです。

 

コロナ死者少ないのは「民度が違うから」 麻生太郎氏(朝日新聞)

 日本で新型コロナウイルス感染症による死者が欧米主要国に比べて少ないのは、「民度のレベルが違う」から――。麻生太郎財務相が4日の参院財政金融委員会で、独自の説を展開した。そして、この認識が国際的にも「定着しつつある」と説明した。

(中略)

 さらに、死者数の割合が高い米英仏を例に挙げ、「こういうのは死亡率が一番問題。人口比で100万人当たり日本は7人」と強調。他国の人から「お前らだけ薬を持ってるのか、ってよく電話がかかってきた」と明かし、「そういった人たちの質問には『お宅とうちの国とは国民の民度のレベルが違うんだ』と言って、みんな絶句して黙るんですけれども」と語った。「このところ、その種の電話もなくなりましたから、何となく、これ定着しつつあるんだと思います」との見方も付け加えた。

 

 さて天下の副総理の発言がこちらです。この論理ですと欧米諸国を「民度が低い」と蔑むことになりますし、周辺国と比べた場合に死亡率がやや高めの日本は東アジアでは民度が劣る方に含まれることになってしまいそうです。まぁ麻生にしてみればアジアなど眼中にない、日本は西洋の一員、その中で相対的に良い結果が出ているのが誇らしかったのでしょう。

 実際のところ、麻生と同じような感覚でいる人はどの程度いるのでしょうか。自然と日本を「西側」の一員としてアジア諸国と切り離して認識している人は多い、名誉白人として欧米諸国の同朋と思い込んでいる人は少なくないように思います。アジア目線で「人口当りの死者数が少ないとは言えない」と考える人よりも、欧米目線で「死亡率が低い」と感じている人の方が、なんだかんだ言って多いような……?

 

内閣支持38%、不支持61% 新型コロナ対応、6割「評価せず」―時事世論調査(時事通信)

 時事通信が実施した5月の世論調査で、安倍内閣の支持率は38.1%、不支持率は61.3%に上った。新型コロナウイルス感染症をめぐる政府の取り組みに関しては「評価しない」が60.0%を占め、「評価する」の37.4%を大きく上回った。

 

 ただ日本は「死亡率が低い」と認識している人の間でも、その理由を総理のリーダーシップにあると考えている人は少ないようです。総理を真っ先に支えるべき副総理にしてからが「民度」に解を求めているわけで、先の選挙で与党が圧勝した韓国とは対照的です。確かに安倍内閣の積極的な取り組みで事態が動いた印象はありませんが、「結果」と照らし合わせてみるとどうなんでしょう。

 欧米諸国に比べて死亡率が低いから結果オーライなのか、中国や韓国に見劣りする状況が政府への低評価に繋がっているのか、支持と不支持の理由には興味があります。ただまぁ、アメリカのトランプやブラジルのボルソナロなど、大統領の積極的な取り組みが事態を悪化させている国もあるわけです。それに比べれば、消極的な人の方がマシですよね?

 結果はどうあれ自分の行動をアピールし、結果はどうあれ物事を変革していく、そうした人々は日本の会社では高く評価されます。結果が悪くても改革を訴え既存の枠組みを批判していけば一定の支持は得られるものではないでしょうか。逆に、「平穏無事に」物事を進める人は蔑ろにされがち、置き換え可能な人材と評価されがちです。評価と結果は一致しません。

 橋本龍太郎、小泉純一郎、菅直人に野田佳彦、この辺の人々は安倍晋三よりも強い信念を持ち強い実行力を発揮してきましたが、もたらした結果は悲惨としか言い様がありません。トランプもボルソナロも強い信念を持ってコロナウィルス感染拡大に対処していますが、世界の最悪を争っているだけです。それに比べれば「専門家会議から言われたことを読み上げるだけ」ぐらいの人の方が、ずっと安心できるとは思います。

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