人身売買報告で日本格下げ 米国、技能実習生など問題視(朝日新聞)
米国務省は25日、世界の人身売買に関する年次報告書を発表した。日本については、外国人技能実習制度や児童買春の問題を取り上げ、「取り組みの真剣さや継続性が前年までと比べると不十分だ」として、前年までの4段階のうち最も良い評価から、上から2番目の評価に格下げした。
今回不十分と判断したのは、人身売買の摘発件数が前年より減ったことなどを考慮したためという。報告書ではこれまでも日本の技能実習制度を問題視してきたが、今回は「外国人の強制労働が継続して報告されているにもかかわらず、当局は一件も特定しなかった」とし、「法外な手数料を徴収する外国の仲介業者を排除するための法的措置を、十分に実施していない」と改善を求めた。
人身売買問題を担当するリッチモンド大使は記者会見で、「技能実習制度の中での強制労働は長年懸念されてきたことで、日本政府はこの問題にもっと取り組むことができるはずだ」と指摘した。(ワシントン=大島隆)
日本が絶対の信用を寄せるアメリカから、このような報告書が出たそうです。時には国際機関に背を向けることもある日本国ですが、これまでずっと宗主国であるかのような扱いを続けて来たアメリカの見解に対して、日本政府はどう向き合うのでしょうか。
格下げの根拠は「人身売買の摘発件数が前年より減ったことなど」と伝えられています。時期的にはコロナウィルス感染拡大が起こる前を調査していると思われますので、取り締まるべき事例が減っていたわけではなかったはずです。そうした中では、「取り組みの真剣さや継続性が前年までと比べると不十分」と評価されるのは当然かも知れません。
もっとも前年までは「4段階のうち最も良い評価」だったようですから、随分と甘い評価である印象も受けます。やはりアメリカからの評価ですから、アメリカに付き従う姿勢を鮮明にしている日本へは緩い基準で評価し、アメリカの意向に沿わない中国やロシアには厳しめの基準で評価する等々、あまり客観的でないところはありそうです。
一方でコロナウィルス感染拡大後は各国が国境を閉ざし、技能実習生の往来も途絶えました。安価な労働力に頼って利益を上げていた業界からの悲鳴も聞かれるところですが、「輸出元」の国ではどうなのでしょうね。とりあえず私としては、騙されて日本に来る(そして恨みを抱えて帰る)人が減って良かったと思っています。
なお技能実習生の最大の供給元であるヴェトナムは新型コロナウィルスによる死者数「0」とされています。一応は感染症対策の優等生であり、日本より経済のリスタートも早い、日本とアジア諸国の経済格差は縮まり続けていますが、この傾向は加速することでしょう。ヴェトナム人にとって日本の賃金水準が魅力的でなくなる日は決して遠くありません。他のアジア諸国も同じで、いずれ「日本なんかに行っても稼げない」というのが世界の共通認識になる日が来ます。そうなれば――技能実習生に纏わる人身売買の問題は解決する、というのが私の見立てです。
「技能実習」という言葉からは、児童買春を「パパ活」などと呼ぶのと同様のおぞましさを感じます。名称が実態を表すものになっていない、汚い部分、暗い部分を言い換えることで塗り隠している、まだしも「徴用工」と呼んだ方が内実に近いとすら言えないでしょうか。軍隊によって強制連行されたわけではないとしても、甘い言葉で日本に誘い、自由を奪っては低賃金で過酷な労働に従事させるのなら、何かしら「罪」を連想させる言葉の方が適切です。
なお「法外な手数料を徴収する外国の仲介業者」も、呼び方を変えた方がいい気がしますね。こういう存在は「親日派」と書くのはどうでしょうか。自国民を日本に売り渡すことで私腹を肥やす、韓国において断罪されるようになった「チンイルパ」も、現代における中国やヴェトナムのブローカーも、時代が異なるだけでやっていることは似たようなものですから。