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自民 |
公明 |
立憲 |
共産 |
維新 |
国民 |
れいわ |
諸派・ 無所属 |
選挙前 |
276 |
29 |
109 |
12 |
11 |
8 |
1 |
15 |
選挙後 |
261 |
32 |
96 |
10 |
41 |
11 |
3 |
11 |
比 |
94.6% |
110.3% |
88.1% |
83.3% |
372.7% |
137.5% |
300.0% |
73.3% |
さて先週の総選挙も無事に終わり、上記の通りの結果となりました。どういうわけか立憲民主党の幹部連中はこの結果が予想外だったようで、枝野が代表の座を降りるという事態に至ったわけです。まぁ昔から、政治に興味を持っているつもりでいるだけの不勉強な人ほど、単純に共産党と民主党の票を合算して(共産が民主に道を譲れば)自民に勝てると夢想する傾向は見られました。枝野も、そういう人の声を真に受けてしまったのかも知れませんね。
組合票が行き場失ったと連合会長批判(共同通信)
立憲民主党最大の支援組織である連合の芳野友子会長は1日の記者会見で、衆院選での立民の不振を受け、共産党との共闘について「連合の組合員の票が行き場を失った。受け入れられない」と批判した。
「野党共闘」の結果、一部の選挙区では自民の有名候補を退けるケースこそ見られたものの、比例区を中心に立民は大きく議席を減らす結果となったわけです。敗因は色々と取り沙汰されていますけれど、自信満々に断言するのは立民の支持母体である連合で、「(共産党との共闘で)連合の組合員の票が行き場を失った」とのこと。連合の影響力はさておき、連合とは無関係で組合員でもない普通の有権者の票にもまた、同じことが言えるのではないでしょうか。
共産主義とはどんなものか、そして現存する日本共産党の政策はどのようなものか──それについては全くの無知であっても、とにかく「共産」と付くものは絶対に退けなければならない悪であると信じている人は少なくありません。共産党という小さな政党の支持者よりも、反共主義という現役バリバリの思想を奉じている人の方が世間にはずっと多い、それは多少なりとも政治に関心があれば普通に嗅ぎ取れるように思うのですが、野党共闘で盛り上がっていた人は周囲が見えていなかったのでしょう。
立民と共産の協力に温度差、出口調査分析…無党派層は維新支持増える(読売新聞)
立民候補に一本化した選挙区全体では、統一候補は立民支持層の90%、共産支持層の82%を固めた。一方、共産候補に一本化した選挙区全体では、統一候補は共産支持層の80%を固めたのに対し、立民支持層は46%にとどまり、自民候補(20%)、日本維新の会候補(11%)などに票が流れた。立民支持層の共産候補への投票は局所的だったことがうかがえ、両党の協力関係が一枚岩でないことが明らかになった。
なお109⇒96へ立民が議席を減らす中、共産党も12から10へと議席減、単純な比率で見れば最も勢力を弱めたと言えます。統一候補と称しつつ、立民の選挙区とは異なり共産が候補を立てた選挙区では立民支持層が流れ込むとは限らず、そもそも共産党が統一候補になったのは河野・石破・小泉進次郎といった人気者や、安倍・麻生・岸田など総理大臣経験者が対立候補になる勝ち目の薄い選挙区なわけで、まぁ共産党を利するものでなかったことは明らかです。
共産党側には(自分たちは社民党とは違う、社民党のようにはならないと)驕りがあったと私は見ていますけれど、立民からするとどうでしょうか。共産党の議席減に関しては、案外「計画通り」なのではないかと思います。元より勝ち目のある選挙区で共産党の候補を取り下げさせるだけではなく、あくまで「限定的な閣外協力」と留保を付け(現実味はさておき)政権を取っても関与はさせない姿勢を打ち出すなど、共産党側に恩恵を与えるつもりは皆無であったはずです。
表面上は選挙協力を装い、共産支持層の票の取り込みを狙う以上は明言できなかったわけですが、共産党の社民党化は立民幹部の狙いの中に入っていたのではないでしょうか。長年、対立してきた共産党だからこそ、社民党のように滅んでくれることが旧民主党勢力からすれば望ましい、そのためには玉木派のようにストレートに対決するのか、枝野派のように取り込みを図るのか、戦術は異なれど狙いは一緒だったと考えられます。
問題は、共産党を社民党のように消滅させると明言するわけにはいかないことですね。これを言ったら流石に選挙協力も成り立ちません。しかし、共産党との協調を装えば連合を筆頭とする立民の支持層を遠ざけてしまいます。もう少し世間から「選挙協力を続けていれば共産党も社民党と同じ道を辿る」と受け止められていれば、立民は支持層をつなぎ止められていたような気がしますが、そうしたビジョンを支持層と共有することが出来なかったのが敗因の一つでしょうか。
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立民・共産が議席を減らす一方、躍進したのは維新の会でした。大阪では候補を擁立した全ての選挙区で自民党候補に勝利しただけではなく、比例区でも全国に支持を広げ、自民・立民に続く41議席を獲得するに至ったわけです。自民への批判票の受け皿は立民・共産の選挙連合だけではなく、むしろ維新にこそ向かったところがあると考えられます。
政策面で見ると、維新はある意味で古典的な改革路線の継承者と言えるでしょうか。小泉純一郎を始祖とし、既成の権威を標的に自らを改革者に位置づける振る舞いは、その後に民主党へと引き継がれ、今は維新が担い手となったわけです。「小泉構造改革路線を忠実にやっているのは民主党だ」とは民主党が政権交代を果たした当時の小泉純一郎による言葉ですが、その民主党のポジションに収まったのが維新であると私は思います。
行政には莫大なムダが積み重なっており、それを削減・改革できれば財源が捻出できる──こうした世界観は今も昔も幅広く受け入れられています。問題は、何かをムダとして叩いたところで経済が疲弊するばかりだったということですね。だから自民も立民も、財政出動路線へと僅かなりとも舵を切ってきたわけです。ただ構造改革路線の誤りを認めず、改革が足りないからだと信じ続ける人もまた多いことが問題になります。
かつて民主党が政権交代を成し遂げたのは、自民党の低迷もさることながら、当時の民主党が自民よりラディカルな構造改革路線に舵を切っており、それが国民の期待を集めたからでもあります。もちろん民主党の政権交代後、事業仕分けなどのパフォーマンスで河野太郎や国民の喝采を浴びる一方、成果は上がらず徐々に民主党の支持は低下していきました。そうした中、にわかに議席を増やしたのが「みんなの党」であったことは、どれだけ記憶されているでしょうか。
参考、衆院選前に民主党が語ったことを、国民はまだ信じているのかも知れない
その後「みんなの党」は内部分裂を繰り返して消滅に至るのですが、民主党政権失速後は構造改革路線の継承者として、一時は候補を擁立さえ出来れば必ず勝つという人気ぶりでした。そして維新の源流でもある当時の大阪府知事、橋下徹は「みんなの党の渡辺喜美代表は僕がこうあるべきだと思っていることを進めている。渡辺代表の考えは1から100まで賛成」と賛辞を尽くしていたわけです。
財政出動ではなく、何かを「ムダ」と見立てて叩いていく、そうした政治姿勢が国民に益をもたらしたことはありませんが、根強く支持を集めてきたものでもあります。この路線の担い手は小泉純一郎から民主党を経て、維新の会が現代における旗手となっているのではないでしょうか。そして、党勢を躍進させている……と。
この結果は、今後の国政にどう影響を与えるのでしょう。今のところ自公政権は安定多数を確保しており、野党に怯える必要はないかも知れませんが、しかし将来的に議席を奪われていく可能性はあります。時に野党側の主張を取り込み、支持層の拡大に努めることは昔から行われてきましたが、そこで取り込みの対象となるのは「どの」野党の主張でしょうか。
立民が自民にとっての脅威であるならば、自民が立民の政策を取り込んで自身の手柄にするという未来もあり得ます。しかし立民以上に維新の方が脅威と見なされるのであれば、政策の取り込みが行われるのは維新の方です。支持層が維新へと流出するのを防ぐべく、自民党が維新に政策面で妥協していく可能性は高まることでしょう。
先に自民党の中で総裁選が行われたわけですが、最も国民からの人気があり、かつ最も財政出動路線からは距離を置いていたのが河野太郎です。岸田内閣が失速し変化が求められるようになったとき、改革路線・ムダ削減路線で維新と張り合えそうな看板が求められるようになったならば、一度は閣僚ポストから追いやったはずの人気者に逆襲を許す、そうして自民党が構造改革路線に回帰する、そんな将来もあり得る気がしますね。