非国民通信

ノーモア・コイズミ

大量殺人では、彼はアマチュアです

2020-01-26 21:41:45 | 社会

 先日の通常国会では、民主党玉木派の代表が習近平氏を国賓として扱うことについて「世界に誤ったメッセージを送ることにならないか」と発言したそうです。まぁ中国の政治体制には問題が色々とありますが、どうしたものでしょうね。一方、これを聞いて私の頭に浮かんだのは、じゃぁトランプ大統領の扱いはどうなんだろう、というものです。世界の首脳がトランプを歓迎していることが、ある種の人々に誤ったメッセージを送っているところもあるように思います。

 

植松被告、トランプ大統領「真実」理由に殺害正当化(日刊スポーツ)

相模原市の知的障がい者施設「津久井やまゆり園」で16年に45人が殺傷された事件で、殺人罪などに問われた元職員植松聖被告(29)の裁判員裁判の第8回公判が24日、横浜地裁(青沼潔裁判長)で行われた。

初の被告人質問で、責任能力がないという弁護側の主張について「責任能力はあると考えています」と主張。裁判の進め方についても「2、3審と続けるのは間違い」と異議を唱えた。

(中略)

テレビやウェブで世界情勢に興味を持ったとし、トランプ米大統領についても言及。「生き方、見た目、内面全て格好良い。真実を述べている。だから僕も真実を言って、重度障がい者を殺害して良い」。差別感情は変わらず、被告のゆがんだ考え方があらわになった。【村上幸将】

 

 トランプ氏もまた常軌を逸した発言が目立つところですが、しかし訪問先の何処でも国賓として遇されているわけで、そんな姿に勇気を得ている人もまた多いと考えられます。この植松被告もその一人というだけの話ですね。当選まではトランプ支持を公言する人は少なかったけれども、蓋を開けてみたら多数派の賛同を得ていた――そこからある種の「勇気」を貰った人は少なくないことでしょう。

 世間的には間違った考え方として内に秘めていたものを、トランプの大統領当選を契機にカミングアウトするようになった人は結構いるのではないかと思います。それまでは恥ずかしいものとして自身の差別心を隠していた人が、世界中で歓迎される大統領の言動を耳にして、「ならば自分も」と考えを改めたとしても不思議ではありませんから。

 ただ口先で猛々しいことを連呼しても、実行を伴わないのが普通です。実行力がないのは必ずしも悪いことではなく、だからこそ無難な結果が維持されているところもあると言えます。トランプや植松と似たようなことを考えている人はいくらでもいるでしょうけれど、普通の人はそれを実行するだけの行動力はありません。そして実行力がなければ、害もまた可愛いものです。

 植松被告の主張は決して独自性の強いものではないように思います。同じようなことを考えている人はいくらでもいるでしょう。匿名の賛同者には事欠きませんし、障害者に対する認識なら東京都民から4期にわたって選ばれた石原慎太郎だって似たようなものです。しかるに自らの理想を「実行した」という点において、彼は特異な存在となってしまいました。

 「一人を殺せば悪党だが、100万人を殺せば英雄となる。数が殺人を正当化する。」とはチャップリンの映画の台詞ですが、植松はまだ悪党の域でしょうか。自らが実行者となって殺人を犯す限り、悪党であることからは逃れられないと言えます。しかし為政者として政策的に弱者を切り捨てて間接的に多数の死を招く分には、必ずしも悪党とは見なされないわけです。そしてより多くの害をもたらすのは、悪党と見なされない方でもあります。

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ゆる(され)キャラ

2020-01-19 22:01:08 | 政治

 ブームは過ぎたと言えますが、「ゆるキャラ」と呼ばれるジャンルがあります。一般的には「ゆるい」キャラクターの意ですけれど、世の中には「許される」キャラ、略してゆるキャラと呼ぶべきタイプの人も少なからず存在するのではないでしょうか。他人が同じ事をやったら絶対に許されない、そんな振る舞いにも関わらず許容されている人もいるわけです。

 

明石市長また暴言 市議に「議員辞めてまえ」 新年会で口論(神戸新聞)

 兵庫県明石市の泉房穂市長(56)が市内で開かれた新年会の席上で、市政運営を巡り口論になった明石市会議員に「もう議員辞めてまえ」と暴言を浴びせていたことが14日、関係者への取材で分かった。泉市長は「はっきりとは覚えていないが感情的になってしまい、不適切だった」と発言を認めた。市議にはその場で謝罪し、発言を撤回したという。

(中略)

 泉市長は「火を付けて捕まってこい」などの暴言を市幹部に浴びせていたことが昨年1月に発覚し辞職。「市長としての資質に欠けていた」と謝罪し、3月の出直し市長選で当選した。

 

 さて、この明石市長こと泉市長もまた典型的な許されキャラなのかも知れません。全国的には昨年の「火を付けて捕まってこい」発言で有名になった人ですが、報道を見て批判の声を上げる人もいる一方、擁護の声も少なからず寄せられていたのを記憶しています。そして引用したとおり、出直し市長選では見事に当選を果たしました――しかも70%超の圧倒的得票を集めて。

 今回の「議員辞めてまえ」発言については、15日付の神戸新聞報道によると批判的な内容が33件、「頑張ってほしい」など市長を擁護する内容が26件、市役所に寄せられているそうです。まぁ会社組織でも、「辞めてしまえ」と部下を罵倒しつつも社内で高い評価を得ているタイプの人はいると思います。要するに許される人は、許されるのでしょう。

 

新成人に「態度なってない」 式辞で市長声荒らげ(神戸新聞)

 兵庫県明石市の泉房穂市長は9日、同市成人式の式辞で「ざわついていて、みなさんの態度はなっていない。式典に多大な税金を使っているが、来年以降の取りやめを考えたくなる」と声を荒らげた。関係者や新成人からは、前触れなく怒鳴るような言い方をしたことに批判が出ている。

 ある市議は「静かにしなさいと注意せず、頭ごなしで行き過ぎ」とし、新成人は「大人げなく、見習いたい態度でなかった」と話した。

 

 こちらは2017年の報道ですが、今に始まったことではない、ということは理解できます。以前から、そのような人だったのでしょう。一方では2011年に民主党と自民党が手を携えて推薦する候補を退けて当選して以来、無投票を含め4選を重ねているわけで、人気の高さが窺えます。暴言も、許されキャラにはマイナスにならないのですね。

 麻生太郎なり石原慎太郎なり、妄言で名高い人はいますけれど、いずれも批判を浴びこそすれ支持を失ったりはしていないわけです。海の向こうでもトランプ大統領が下馬評を覆して見事に当選を果たすなど、問題発言は必ずしも政治家にとってダメージとはならないことが分かります。むしろ逆に、支持層を鼓舞している効果の方が高いくらいでしょう。

 暴言を批判するような人は、元より支持者ではないとも言えます。「元から支持層ではない」人の怒りを買ったところで、それで票が減るでしょうか? むしろ麻生やトランプ、石原慎太郎の発言はレイシストやミソジニストの類の潜在的な共感を呼ぶ効果の方が高いとすら考えられます。何しろ彼らは、選挙における正真正銘の勝者なのですから。

 この明石市の泉市長もまた、暴言によってこそ支持されているのかも知れません。市職員を詰れば喝采を挙げる人も多いでしょうし、自民党議員を面罵すれば民主党支持層が喜ぶ、新成人を説教すれば一つ上の世代の共感を呼ぶ等々、批判ではなく擁護の声も寄せられているのは、そういうことなのだと思います。かくして暴言は繰り返され、当選もまた繰り返されるのです。

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現場からはどうすることもできなくて

2020-01-13 00:25:37 | 雇用・経済

 青菜は男に見せるな――これは私が会社で働く上での座右の銘です。茹でる前の青菜は嵩張って大きく見えるが、茹でると嵩が減ってしまう、この事を知らぬ男には、無用の疑問を抱かれてしまうため、茹でる前の青菜は見せない方が良い、そういう意味のことわざですね。青菜も仕事も同じ、男も会社の偉い人も同じですから、今なお現代に通用する言葉だと思います。

 もう一つ、大事にしている格言があるとすれば「見切り千両」辺りでしょうか。早期に手放すことで損失を最小限に抑えることの価値を説く言葉ですけれど、残念ながらこちらの方は、自分自身で実践する機会に恵まれません。私の判断で損切りすることができたならば、ずっと良い結果に至ったであろうと確信する場面は数え切れないほどあるのですが……

 少なからぬ職場では、ダメ出しや撤退の判断が、上位役職者の専権事項とはなっていないでしょうか。「下」あるいは「実務者」「現場」からの提言が上長や役員に一蹴される一方で、「上」からの馬鹿げた提案を「不可能です」「全く現実的ではありません」と断ることは許されない、それが組織の当たり前として受け入れられているところもあるように思います。

 何故「上」の言っていることが実現不可能であるか、これを実務者がいかに詳細に説明したところで、多くは受け入れられません。だいたいの場合は「それをなんとかするのが仕事だろうが」「できない理由を言うな」で済んでしまうわけです。だから結局は決定権を持たない側が折れ、「できます」「やります」と回答して終わります。結果は知りません。

 ダメ出しが上位役職者の専権事項になっている限り、例えば組織の偉い人が「アメリカと開戦する」と決めれば、それはもう実行されるしかなくなってしまいます。「下」から何を言っても意味はなく、いかにしてアメリカに勝つかを考える他ない、「やります」「できます」と言うだけが選択肢となる――まぁ昔も今も根本的な違いはないのでしょう。

 相手よりも強い立場にあるならば、根気よくダメ出しを続けていくことで、都合の良い報告を引き出すことは可能です。実態通りの絶望的な報告にも、粘り強く「なぜできないんだ」と結果が出ない理由を一つ一つ否定していくことで、最終的には「できます」という回答を引き出す、そういうのに長けた人も多いことでしょう。ただ、それで評価を高めることは可能でも、組織に利をもたらせるかは全く別問題ですが。

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実行力がない、ということ

2020-01-05 23:06:05 | 政治

来年中の改憲、見通し立たず 野党対決姿勢、解散で状況変化も(時事通信)

 憲法改正をめぐる与野党攻防が越年する。自民党は来年中に改憲原案の国会発議への道を開きたい考えだが、「安倍改憲」に反対する主要野党の姿勢に変化はない。首相主催「桜を見る会」の問題やカジノ事業に絡む政界汚職事件の広がりによっては政権の足元がぐらつく上、衆院解散の可能性も取り沙汰されており、改憲実現の見通しは立っていない。

◇会期延長は困難
 「必ずや私自身の手で成し遂げたい。任期が約2年あるから、その決意で臨む」。安倍晋三首相は13日の講演で改憲に関し、自らの2021年9月末までの自民党総裁任期を念頭にこう強調した。

 

 10年ばかり前まで、日本は首相がコロコロ変わるから諸外国と違ってトップの顔が分からない、などとも言われたものです。実際のところ小泉純一郎退任後は短期で椅子を投げ出す総理大臣が相次いだわけですが、それがどうして戦後最長の在職記録を更新する首相が現れたのですから、世の中は何が起こるか分かりません。とりあえず安倍晋三だけは、見事に再チャレンジで成功を収めたようです。

 さて安倍首相が改憲に言及するのは毎年の恒例ではあります。ただ、戦後最長の在職期間を更新中の首相の発言としてはどうなのでしょうか。なにしろ、戦後の誰よりも長い期間を与えられた総理大臣なのです。他の人よりも短い期間で結果を出せと要求するのは酷なことですが、他の人よりも時間的猶予があった割には、前に進んでいない印象は拭えません。

 まぁ、安倍首相の良いところは「実行力がないところ」だと思っています。もし安倍晋三に菅直人や野田佳彦のような実行力が備わっていたら、事態は今よりもずっと悪いことになっていたことでしょう。実行力に乏しく、世論の反発に日和る安倍晋三だからこそ、前任者ほどには酷い政策に突き進むことがなかった、相対的にはマシだったと考えられます。

 もう一つ安倍首相の良いところを挙げれば「経済政策に芯がないところ」ですね。総じて悪い方向に突き抜けていた前任者達に比べれば安倍晋三の経済政策は支離滅裂で、自殺的な政策もあればマトモな政策もある、橋本龍太郎以来の崖を駆け下りるような路線から、一歩進んで一歩下がるような方向へと転換が図られたのは、やはり相対的には良かったと評価できます。

 「安倍政治は白鵬の相撲に似ている」と、野田元首相は述べました。戦後最長の在職期間を誇る首相と、数々の歴代最高記録を持つ白鵬、釣り合いが取れているかは分かりませんけれど「ライバル不在」という意味では良い喩えなのかも知れないと思います。白鵬の強さもさることながら、朝青龍追放以来は壁になる相手がいないのと同じように、安倍晋三もまた強敵がいない、と。

 私の住む自治体では、自由民主党系の会派と、旧民主党系の会派が相乗りで首長を支え、大連立政権を構成しています。一方国政では立憲民主党と国民民主党が統一に向けた協議を進めているようです。ただ自由を除いた民主党がより集まっても白鵬に敵うかどうかは疑わしいところ、むしろ心配なのは自民党内の跡目争いの方でしょうか。実行力がある、芯がある人が出てくれば良いかと言えば、そうでもありませんので。

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