非国民通信

ノーモア・コイズミ

一本化などしなければ良かったのに

2017-10-29 21:41:42 | 政治・国際

 さて先般の衆院選は「北朝鮮のお陰(麻生太郎談)」もあって、自民党の大勝に終わりました。まぁ大勝と言っても議席を増やしたわけではありませんが、選挙前の数的優位を継続できれば与党にとっては勝利なのでしょう。一方、解散総選挙という政治的空白の中でも北朝鮮との間で新たな問題は何一つ発生することはなく、対外的には平和が続きました。日本の政治家達は安心して国内の政争に没頭できたわけですけれど、「現実的な」安保政策とは何なのでしょうね。

 

岡山市長に大森氏再選=共産系新人破る(時事通信)

 任期満了に伴う岡山市長選は1日投開票され、無所属現職の大森雅夫氏(63)=自民、民進、公明推薦=が、無所属新人で共産党岡山地区委員長の矢引亮介氏(47)=共産推薦=を破り、再選を果たした。投票率は過去最低の28.35%。

神戸市長に久元氏再選=無所属新人3氏破る(時事通信)

 任期満了に伴う神戸市長選は22日投開票され、無所属で現職の久元喜造氏(63)=自民、公明、民進推薦=が、前市議の光田あまね氏(40)=維新推薦=、共産党兵庫県委員長の松田隆彦氏(58)=共産推薦=、元同県加西市長の中川暢三氏(61)の無所属新人3人を破り再選を果たした。投票率は前回(36.55%)を上回る47.58%だった。

山口市長に渡辺氏4選=2新人破る(時事通信)

 任期満了に伴う山口市長選は29日投開票され、無所属で現職の渡辺純忠氏(72)=自民、公明、民進推薦=が、元市議の有田敦氏(50)、市民団体代表の湊和久氏(58)の無所属2新人を破り4選を確実にした。

 

 報道の集中する衆院選の裏では、各地で首長選が行われてもいました。そして消滅するかに見えていた民進党も、地方選では普通に活動していたわけです。自民党と相乗りで候補を立てる、連立与党の一員として、ですね。この「自民、民進、公明」による与党共闘で共産党と戦うのは、むしろ地方自治体の選挙では至って普通のスタイルだったりしますが、その辺はどこまで意識されているのでしょうか。

 地方議会では自民党と共に首長を支える与党なのに、それがいざ国政選挙ともなると「野党でございます、野党でございます、自民党政権に批判的な人はウチに投票してください」と、そう訴える民進党系の候補を見るたび、何とも卑劣な人々だなぁと私などは昔から感じてきたものです。ただ、この辺への疑問を私以外の論者が投げかけている場面はまず見ることがありませんので、「地方では自民の盟友、国政では反自民」という民進党のプロレスは世間に受け入れられていると理解するほかなさそうです。公明党の「都議会では自民の政敵、国政では自民の友」というスタイルも、民進が許されるなら普通にありなのでしょう。

 さて民進党が勝手に分裂したこともあり、一時は民進党に首を差し出していた共産党が候補を立てたりで、希望/立民/共産に維新と野党の選択肢が増えた選挙でもありました。その辺は結果として自民党有利に働いたこともあり、朝日新聞などは「野党一本化なら63選挙区で勝敗逆転」と強弁していたりするのですが、実際のところはどうなのでしょうね。むしろ「一本化しようとしたから負けた」ところも少なからずあるように私には思われます。

 今回の選挙で「敗北」と見なされているのは希望の党ですが(真の敗者は議席を半減させた共産党だというのはさておき)、敗因はどこにあったのでしょうか。小池百合子という東京都知事選、東京都議会選で自民党を蹴散らした「看板」に、民進党の「地盤」と「鞄」が加われば、勝利は確実と考えた人も当初はいたのかも知れません。しかし結局は、議席を減らす結果に終わりました。その敗戦の責を希望/民進内部で醜くなすりつけ合っているようですが、特定の誰かが悪いのではなく、一本化の試みがそもそもの間違いであったのではないかと思うのです。

 小池一派に有権者が期待していたのは、(虚像ではあれ)新しさなり、しがらみのなさであったはずです。実態はさておき自民党と袂を分かつことで小池一派は改革機運を演出できていたと言えます。しかるに民進党という、なんだかんだ言って昔から政界に巣くっている集団を衆院選候補者の主流に据えたことで、「何だ、小池も既存の政治家と変わらないじゃないか、選挙に勝って権力を手にしようとしているだけではないか」と、一時は小池に期待していた支持層を失望させてしまったわけです。

 一方で民進党も、彼らをリベラルだと勘違いして支持している人が多かったのに、小池百合子という極右と組み、安倍内閣が推した安保法制には反対していたことすら軽々しく翻してしまいました。これで、元々は民進党支持であった人々の勘違いも解けてしまったと言えます。とりあえず国政だけでも自民党に反対しておくポーズを取っておけば「リベラル」のイメージを勝手に抱いてくれる人がいた、そうした人々の支持が厚かったのに、わざわざ支持層の夢を覚ますようなことをしてしまったのです。

 まず間違いなく民進党と希望の党は、合流しない方がお互いの票は確保できたであろうと推測されます。選挙後は民進党代表である前原に非難囂々のようですけれど、そんな前原が党代表選の勝者であることを忘れてはならないでしょう。枝野を結構な差で退けて、前原が民進党の代表に選出されたのはつい先月のことなのです。今になって前原を非難している民進党関係者は、まず自身の選択を反省するところから始めなければいけません。

 枝野一派には、石原慎太郎や小林よしのり、鈴木邦男など時代から取り残された右翼が続々と応援に駆けつけました。「右」の主流派から毛嫌いされてさえいればリベラルと呼ばれる昨今ですが、前原と枝野にそこまで大きな違いがあるかは疑問がないでもありません。ただ、党代表の座を争う上で分水嶺になったのは共産党との関係ではなかったかと思われます。その辺、とりわけ民進党の最大の支持組織にとっては譲れないポイントでもありましたから。

 言うまでもなく民進党の支持母体は自称労組の連合です。この連合の二大イデオロギーは労使協調と反共でして、実際のところ民進党代表戦でも、共産党との連携はあってはならないと会長自ら力説していたわけです。曰く「連合は共産党の影響をどうやって排除するかということで闘ってきた」とのことで、共産党との選挙協力は支持母体である連合との関係悪化要因でしかありませんでした。組織票に逃げられたら困る民進党議員にとって、選ぶべき道は限られていたことでしょう。

 希望の党は、かつての民進党や小池百合子の支持層を取り込んだと言うよりはむしろ、民進党と小池百合子それぞれの「アンチ」を敵に回した、より大きく反発を受ける存在になってしまいました。そして民進党と共産党の提携もまた、そもそも共産党の影響を排除するために作られた団体を支持母体にしている時点で、内部に地雷を抱え込むようなものだったわけです。野党の一本化など考えなければ「敵」を作ることも少なかったと思われますが、まぁ戦略が間違っていたのでしょう。そして与党に「他の党より良さそうだから」と票が入るのです。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

社長や役員が自社のことを分かっていないのは普通なのかも知れない

2017-10-22 22:02:08 | 雇用・経済

神戸製鋼、不正発覚を隠蔽 数社からコスト負担請求も(ロイター)

 神戸製鋼所(5406.T)は20日、製品の性能データ改ざん問題で、不正行為が明らかになったにもかかわらず、自主点検や緊急監査の際に報告していなかった事案があったと発表した。一部管理職を含むグループ従業員が行っていたという。自主点検の信頼性にも疑問符が付きかねない状況だ。

 会見には、梅原尚人副社長、山本浩司常務執行役員、勝川四志彦常務執行役員が出席。川崎博也会長兼社長は、体調不良のため出席しなかった。会見に出席した3人は、一連の不正について「全く知らないし、関与していない」と述べた。

 

 さて日本企業の信用を損ねるような話題には事欠かない昨今ですが、神戸製鋼も将来が危ぶまれる事態となっています。一昔前は「メード・イン・ジャパン」が高品質ブランドとして通用していましたけれど、遠からず「日本製=駄目な安物」のイメージが根付いていくのではないでしょうか。

 なお神戸製鋼を揺るがせている一連の不正について副社長と役員はいずれも「全く知らないし、関与していない」と述べたそうです(社長に至っては欠席……)。責任ある立場の人々の言動としてはいかがなものでしょう。「把握した上で、続けるよう指示していました」と自白するような人は流石にいないとしても、今回の事態を知らぬ存ぜぬでやり過ごそうとするのは無責任の誹りを免れないだろうと思います。

 まぁ、会社を傾かせたポンコツ経営者ほど、プロ経営者と賞賛されて退職金で焼け太りしたり他社に厚遇で招かれたりするのが日本の資本主義です。銀行マンは社長を死なせて初めて一人前、消費者金融なら3人自殺させて一人前――そう言われることもありますね。ならば社長や役員はと言えば、業績を悪化させて一人前、従業員を路頭に迷わせてこそ一人前なのかも知れません。

 いずれにせよ、社長や役員が不正を知っていながら続けていたのなら、当然ながら大問題であり罪に問われるべきものです。逆に、本当に不正を知らなかったのならどうでしょう、責任のある立場として相応の報酬を受け取りながらも自社で行われていることを把握していなかったのであれば、それもまた問われるべきものがありますよね。

 今回の一連の不正は特定の部門や特定の工場限定で行われていたものではなく、グループ企業も含めて広範囲に続けられていたことが報道されています。ならば「密かに」行われてきたのではなく、組織全体の方針に沿ったものであろうと考えるのが自然ではないでしょうか。全社で行われてきたものなのに、経営層だけは全く知らないとは、いったいどういうことなのやら。

 「担ぐ神輿は軽くてパーがいい」とは小沢一郎の発言だそうですが、こうした感覚が政界だけではなく財界でも流通した結果として、自社で行われていることを「全く知らないし、関与していない」などと宣う無能を経営陣に据えている、とも考えられます。いくら何でも自社で組織的に行われてきたのだから知らないわけがないだろう、と思うのが普通の感覚かも知れません。しかし、日本の企業のトップとは我々の想像を絶する馬鹿の集まりである、という可能性はありそうです。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

よその選挙区で投票したいですわ

2017-10-15 22:54:27 | 政治・国際

 さて来週は衆院選です。相変わらず事前の調査では「選挙に行く」と回答する人が多いですけれど、実際の投票率はどうなるのでしょうね。序盤は民進党の自爆テロもあって話題に事欠かない選挙模様でしたが、さりとて結果に「希望」が抱けるかと言えば、その辺は甚だ微妙な代物かも知れません。政権与党からすれば現状維持が濃厚なわけで、強いて言えば共産党の伸張を何よりも厭う連合にとっては喜ばしい結果になりそう、見込まれる変化はそんなところでしょうか。

 各政党の選挙向けの主張の中には良いものもある一方で、それが実現されるかと言えば「空手形だろう」と確信できるような類いも少なくありません。選挙前には消費税は上げないと主張していたのに、不況の中で消費税増税を決めた政党もありました。あるいは安保法案に反対し続けていたのに、今回の選挙に向けて主張を翻した候補も数多います。都合の良い「これから」を語る前に「これまで」を自省すべきではないかと思われる候補は目立ちますよね。

 そして「どうしようもない」と言わざるを得ないのが、特定の個人へのヘイトで有権者の歓心を買おうとしている政党・候補でしょうか。「アベ政治を許さない」では、ヘイトの対象になっている個人が退場すれば済むとでも思っているのか、政策ではなく人に問題があると考えているのかと、そう言わざるを得ません。まぁ、一時は「安倍総理退陣なら」自民党との連携に意欲を見せた希望や、同様に「反安倍内閣なら」と希望との連携を匂わせた立民も大差ないですが。

 ともあれ、選挙向けのパフォーマンスに過ぎない公約よりも「これまで」の実績の方が判断材料として役に立つのは確かだとは言えます。では一種の信任投票的な色合いを帯びてきた与党の「これまで」はどうでしょう。例えば「アベノミクス」――ネーミングセンスは良くない――の結果は。野党や反政府系メディアが言うように駄目な代物なのか、与党が主張するように成功なのか? 失敗なら変化が必要ですが、成功なら継続が求められるわけです。

 客観的に見るならば、「前政権よりは」良い結果を出しているとは言えます。消費税増税を決めた民主党政権時代よりも、第一次安倍内閣時代よりも、国民の支持は抜群だった小泉政権時代よりも、「アベノミクス」の結果として諸々の経済指標は良い方向に動いている、これは間違いありません。一方で、それでもなお足りていないのも現実です。ほんの少しだけ経済成長率が上がったところで、世界経済に追いつくには全く足りていないわけです。比較対象が「日本の」過去の内閣であればアベノミクスは成功ですが、グローバルな視点で見た場合は?

 国民の生活は上向いていない、景気回復の実感に乏しいとはよく言われるところです。その原因は大きく2つでしょうか。1つは、現状の微々たる経済成長では不足が著しいことが上げられます。こんな僅かな成長では実感に乏しいのも致し方ない、実感できる人がごく一部に限られるのは当たり前と言えます。しかし、そこで「アベノミクス」否定で方向性を変えてしまうのはどうでしょう? 片側のエンジンだけで飛んでいる飛行機のエンジンを逆回転させることでより高く飛べるとしたら、それは奇跡ですね。

 2016年度、日本の企業の留保は406兆円に達したそうです。これは前年度から28兆円の増加だとか。増加率は7.4%です。あの中国の経済成長率が7%を切っていることを思うと感慨深いものがあります。日本のGDPは上述の通り改善が見えつつあるとはいえ微増レベル、所得もほとんど増えていない、同年の設備投資は僅か0.7%増に止まる、しかし内部留保の「成長率」だけは中国の経済成長率をすら上回るわけです。国全体としては成長していない、設備投資すら増えていない中でも内部留保だけは飛躍的な伸びを続ける、この現実に何も感じていないとしたら愚鈍に過ぎます。

 大多数の国民が景気回復を感じられない原因のもう一つは「企業への締め上げが足りない」からです。なけなしの経済成長が専ら内部留保の積み上げに終わってしまう、日本で働く人の給料に反映されない、それではアベノミクスの恩恵を疑う人が出るのも当然ですし、日本で働く人が豊かにならない以上は国内市場の購買力だって伸びません。しかし、いかに企業を優遇するかを考えるのが日本の経済言論みたいなところがあるわけで、その辺とは一定の距離がある安倍内閣もまた抜本的な対策を取れていないと言えます。

 経済成長と、企業への締め上げ、この2つが真の成長のための両輪ですが、なかなか両輪の揃った主張をする政党にはお目にかかれない気がするのが残念です。経済成長だけでは庶民への恩恵がないとは言えますが、そこで経済成長を否定してしまっては、いかに企業を締め上げたところで効果がなくなってしまいます。現内閣の成功している部分は認めた上で、そこに不足を付け加えることが望ましいと思うのですけれど――現内閣(党首個人?)の否定から始めたがっている野党筋が多くて、そうなると与党の方がマシと感じる人が多いのもやむなしかな、と。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

選挙の話は一休み

2017-10-08 22:32:32 | 社会

 「コーヒー牛乳」や「フルーツ牛乳」は、現代では商品名として表示することが出来ません。成分調整の有無や乳固形分の割合など、しかるべく条件を満たしたものだけが「牛乳」と名乗ることが許される、そう省令で定められているわけです。条件に満たないものは「加工乳」であったり、「乳飲料」として区別されているもので、コーヒー牛乳なんかは「乳飲料」になってしまうのですね。

 似たようなところで「アイスクリーム」「アイスミルク」「ラクトアイス」の区別もありますし、「ジュース」の名前で販売できるのは果汁100%のみ、なんて法律もあります。まぁ、この辺は今更の話でしょうか。ともあれ日本は総じて「食」関係は五月蝿いだけに、細かく定めがあるわけです。その反面、緩い分野では本当に緩いと言いますか、無法地帯と化している局面もありますよね、例えば労働関係とか。

 ……で、私が思いついたのは「奨学金」の話です。この辺も在学中の利息負担や返済開始時期なんかで「奨学金とローンの違い」がなくはないようですが、もう少し牛乳やアイスクリームの場合を見習っても良いような気がします。つまり、より利用者の安全を担保できるように基準を厳しくする、安易に奨学金を名乗れなくするような制度も必要なのではないかと思ったわけです。

 具体的には「奨学金」と表示することが許されるのは給付型のみの場合で、貸与型のは無利子の場合に限り「奨学貸与金」とし、有利子の奨学金は「教育ローン」、これまで教育ローンと呼ばれてきた商材は単純に「ローン」との表記しか認めない、ぐらいはどうでしょうか。間違いなくそっちの方が、実態と品名が一致しているような気がします。

 親世代の貧困化で奨学金を称する教育ローンに頼らざるを得ない若年層が増えている、しかし給与水準が低くや非正規率の高い日本の労働環境では、卒業後に奨学金=教育ローンを返済するのが難しい、そういう人が増えているわけです。この辺は21世紀の日本経済の欠陥もさることながら、高騰する学費の問題もありますし、その背景には一貫した日本の教育軽視もあります。対処が必要なものは山のようにありますが、どうしたものでしょう。

 名前によって誤魔化されてしまう、間違ったイメージが植え付けられてしまう、そういう代物はたくさんあります。法人税の「実効税率」なんてのも実態に合わせるなら「額面税率」ぐらいに書く方が正しい理解が広まることでしょう。しかし、間違ったイメージの方を好ましく感じている人もいるのかも知れません。言葉が違えば印象も変わる、印象が変われば世論の反応も異なりますから。

 そして奨学金も然り、奨学金を返済できないとなると(元)学生側が悪いようなイメージも作られがちですが、「若者がローン漬けにされている」となればどうでしょうね。決してそれだけで片付くような代物ではありませんが、ちょっとした規制で少しでも風向きを変えられることが出来れば、僅かなりとも上積みにはなるかな、と思ったわけです。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

外患はないが内憂はある

2017-10-01 23:19:46 | 政治・国際

前原代表を「政治的ハラキリ」…ザ・タイムズ紙

 日本の衆院解散について、世界各国のメディアも小池百合子東京都知事の台頭を伝えるなど関心を寄せている。

 政権与党への不満が表面化した欧州諸国の選挙と比較する視点も見られた。

 米ブルームバーグ通信は、安倍首相が衆院解散に踏み切った理由について、28日の配信記事で「北朝鮮が日本列島を越えてミサイルを発射した後、支持率が上昇したことに乗じたものだ」と分析した。

 米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは社説で「(安倍氏の)戦略は裏目に出るかもしれない」と論評。6月に総選挙に打って出て敗北した英国のメイ首相を引き合いに出し、「似ている?」と首相の決断を皮肉った。

 英国メディアの多くは小池氏に焦点を当て、「日本初の女性首相候補」と紹介した。ザ・タイムズ紙は、民進党の前原代表が新党への事実上の合流を決めたことについて「政治的ハラキリ」と表現。「政治風景が一変し、結果の予想が不可能になった」と指摘した。

 

 さて昨今の北朝鮮情勢を受け、アメリカでは国防予算の大幅増が圧倒的多数で可決、軍需産業各社の株価が急上昇しているそうです。一方で日本は安倍内閣の支持率が上昇に転じたわけですが、北朝鮮のミサイル実験が世界に与える影響とは何なのでしょうね。とりあえず、それが「危機」でないことだけは確かだと思います。

 もちろん愚かな判断を下す政治家は枚挙にいとまがありませんが、それでも責任を問われる立場であり、かつ一般の国民に先んじて機密情報を知らされる身です。そうした人々の中のトップが、「国会を解散して総選挙を行う」という決断を下したのは、今が危機的状況だからでしょうか、それとも安全だからでしょうか?

 真に危険が迫った状況で、国会を解散して政府を空っぽにする、危機への対応を放り出して選挙戦に専念する、そんな馬鹿なことをする人は――いくら政治家にだっていません。差し迫った危機がない、緊急事態ではない、それだけの確信があって始めて、解散総選挙という決断が可能になるのです。北朝鮮の悪ふざけが日本に危機をもたらす可能性は皆無、安心して国内の政争に努めましょう、そう首相は訴えていると私は理解しました。

 ……で、自民党政府にとって真の危機は北朝鮮などであろうはずもなく、時流に乗ったポピュリズム政党の台頭にあります。相手が民進(民主)党である限り負ける恐れはなかった一方、より右寄りのポピュリストが勢いを持ち出すと、それを止める力がないのが今の自民党です。だから安倍内閣としては、小池グループが体制を整える前に選挙を済ませてしまいたかったのだろうな、と。

 ところが、どこまでも国民に迷惑をかけ続ける民進党が選挙資金(政党交付金!)もろとも小池グループに首を差し出すという暴挙に出たことで状況は一変してしまいました。タイムズ紙が言うように「政治風景が一変し、結果の予想が不可能になった」わけです。「アベ政権打倒が第一」であるならばまぁ、起死回生の一手ではあったかも知れません。その代わり、国民の生活が犠牲になりそうではあります。

 これは故・民主党政権時代の発言ですが、この他にも小池百合子の特別秘書で一時は都民ファーストの会代表であった野田数なんかは「国民主権という傲慢な思想を直ちに放棄」すべしと主張して大日本帝国憲法の復活を主張していたくらいです。民進党は極右グループに何もかも譲り渡すことに抵抗がないようですけれど、それは国民にとってどうなのでしょうか。この「非現実的な保守」の台頭よりも危ういものはなかなか思いつきませんね。

 「経済最優先」を掲げつつも今ひとつ経済を優先し切れていない安倍内閣ですが、今回の選挙に向けての主張は完全に「経済が後回し」になってしまった感があります。当初は消費税増税原理主義の民進党がライバルだったことから、完全に消費税増税路線に迎合した様子ですし、北朝鮮からのエールを受けて自身の趣味に走る好機とも感じている様子がうかがわれますし……

 そして政局争いの新たなライバルが自身より右寄りともなればどうなるででしょうか。まだしも安倍内閣には「建前を守る」ところがありましたが、小池一派はより先鋭的です。これに対抗するために自民党が一線を越えようとする、ぐらいのことはあってもおかしくありません。北朝鮮が日本を現実に脅かすことは考えられない一方で、日本の政治が危険な領域へと突入する可能性は否定できない気がします。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする