非国民通信

ノーモア・コイズミ

日系企業がストライキを防げないのは

2010-08-02 22:59:25 | ニュース

中国、外資でスト多発 日系が7割、ネット・携帯で連鎖(朝日新聞)

 中国内で5月中旬から約2カ月間にストライキが発生した外資系企業が少なくとも43社に上ることが、朝日新聞社の調べでわかった。そのうち日系企業が32社を占めていた。ストの拡大による社会不安を恐れる中国当局は報道規制や労使の仲裁に乗り出した。ただ、待遇改善を求める労働者の不満は収まらない状況だ。

(中略)

 労働者はインターネットの掲示板や携帯電話を通じて労使交渉の中身や賃上げについて連絡を取り合っている。労働争議に詳しい弁護士や大学教授が「指南役」としてストに参加、組織化も進みつつある。日系企業に争議が集中するのは、ホンダ系工場の賃上げ提案以降、日系企業は賃上げに応じるとの情報が労働者の間に広がったことが大きい。また、社内の中国人の登用があまり進んでおらず、労使交渉がうまくないとの指摘もある。

 43社はいずれも、操業や生産の一時停止に追い込まれ、ほとんどの企業が十数%の賃上げに応じて妥結した。天津市の日系企業で従業員が社内の会議室に立てこもったり、江西省の台湾系運動用品会社で約8千人が暴徒化して工場施設を破壊したりするケースもあった。

 中国ではストライキが相次いだわけですが、その7割強は日系企業で発生しているとのことです。「日系企業は賃上げに応じるとの情報が労働者の間に広がったことが大きい」とも報道されていますが、俄には信じがたいところでもあります。利益そのもの以上にコストカットを優先する日本企業が賃上げに応じるということ自体が日本人からすれば驚きですが、他の国から進出してきた企業はどうなのでしょうか? 他の国の企業は元から賃金水準が上昇傾向でストライキに発展するほど労働者側に不満がなかった、一方で日系企業は賃金水準が据え置かれるばかりだったために労働争議に発展したとも考えられます。日頃の待遇が悪いからこそ、ストライキは起こるものですから。

 不況もまた良し、不況で鍛えられる、などと日本の経済界では真顔で語られがちですけれど、実際のところは日本の著しく雇用側に偏った労使関係に起業はすっかり甘やかされているのではないでしょうか。日本にいる限り何でも雇用側の思い通り、労使関係に心を砕く必要などないわけですから。そういう雇用者天国とも言うべき環境でぬくぬくと育った日本企業だけに、日本国外の労働者を扱うすべというものを心得ていないのかも知れません。現代の日本人ならストライキを起こす心配などないだけに会社は左うちわでいられますけれど、他所の国でも同じ感覚でいるとどうなるか――それを示しているのが中国におけるストライキの頻発であり、そのストライキを日系企業が7割を示すという結果であるように思われます。

 労働者をぞんざいに扱えば頻繁にストライキが起こるような国では、雇用側もストライキを未然に防ごうと相応の注意を払うはずです。そうした「ストライキを未然に防ぐには」という意識を持って中国に進出していれば、ここまでストライキに苦しめられることはなかったでしょう。何しろ憲法上はスト権が認められていない国なのですから、後は経営側にマトモな判断力があれば容易に対応できる話です。しかるにストライキの心配は一切無用で、どれほど労働者を無碍に扱っても経営側が反撃される可能性など皆無の国もあるわけです。こうした国の企業が考えを改めることなく中国に進出したために、その国から進出している企業にばかりストライキが頻発するという結果を招いているのではないでしょうか。

中国の日系工場スト「労働コストの問題で自然」 副首相(朝日新聞)

 中国の王岐山(ワン・チーシャン)・副首相は10日、河野洋平・日本国際貿易促進協会会長(前衆院議長)と会見し、ホンダやトヨタ自動車の系列工場などで相次ぐ従業員のストライキについて「中国経済の発展に伴い、労働コストの問題が出てくるのは自然なこと」と指摘。「中国の投資環境全体に影響を与えるものではない」と述べた。

 スト問題が、海外企業の対中投資に与える影響は限定的との見方を示したものだ。

 王副首相は、ストは「労働力市場の需給で起きている問題」とし、「ある国のある企業を対象にしたものではない」と述べ、日系企業を狙い撃ちした動きでないことを強調。「世界をみても13億人のマーケットを探すのは困難」とも語り、市場としての中国の魅力に注目して対中投資を進めるべきだとの考えを示した。

 この辺も、もっともな話ですね。日本であれば分配なき成長が当たり前、戦後最長の景気回復局面が続き、バブル期を上回る過去最高益を記録する企業が続出しても、給与所得の水準は上がるどころが下がっていったわけですが、これが通用するのは日本だけでしょう。日本以外の「普通の」国では経済成長の果実を従業員にも分配しないと当然のこととしてストライキなどに発展するわけです。「経済の発展に伴い、労働コストの問題が出てくるのは自然なこと」であり、現代日本だけが特別なのです。日本の従順な社畜やいつでも経営者目線の国民達、存在するだけで適用されることのない労働法制に甘やかされて育った日本企業が中国市場で生き延びるのは難しいのかも知れません。日本ではストなど起こそうものなら世間に迷惑をかける存在として白眼視されるばかり、世論は労働者側ではなく企業側に付くものですが、他所の国ではそうもいかないでしょうし。

 

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コメント (13)
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