「部長」に身につけておいてほしい能力ランキング(gooランキング)
学校などのクラブや部活の「部長」と違い、求められる能力は多岐に渡り、果たすべき責任も大きい会社や企業などの組織内に置かれた部の「部長」。今回、みなさんに会社組織の「部長」に身につけて欲しい能力を聞いてみました。
部長に最も求められている能力は《リーダーシップ》でした。日本の政治家のトップはどうやら《リーダーシップ》に乏しいようで、昨今の政治に対する世論調査でも内閣を支持しない理由の上位には必ずと言っていいほど「リーダーシップがない」が選ばれています。やはり多くの人は、上に立つ人間に強い《リーダーシップ》を求める傾向にあるようです。一般企業において高い地位と大きな権限を持つ部長ですから《リーダーシップ》を期待されるのは当然なのかもしれませんね。続いて票数が多かったのは《人の話を聞く力》。多くの会社で現場と経営者の意見を橋渡しする役割を担う部長職は、高いコミュニケーション能力がないと務まりません。リクルートマネジメントソリューションズが実施した「2012年新入社員意識調査」における「あなたが上司に期待すること何ですか?」のアンケートに対し「相手の意見や考え方に耳を傾けること」が昨年に続いて1位を獲得。この結果からも今の新入社員たちが上司に仕事力や指導力よりも《人の話を聞く力》を求めていることがわかります。多くの部下を抱える部長にとっても部下たちの意見をしっかり聞くことが大事であることは変わらないのではないでしょうか。3位には《実行力》が入り、4位は《調整力》、5位には《カリスマ性》がランク・インしています。
部長に限らず上司として部下を抱える人は、今回のランキングを参考にご自身の能力チェックをしてみてはいかがでしょうか。
会社側が求職者に求める能力と言えば、お決まりのコミュニケーション能力が馬鹿の一つ覚えのように続くわけですが、一方で部下が部長に求める能力はいかがなものでしょうか。いの一番に挙げられたのが「リーダーシップ」で、これまた変わり映えがしない印象です。有権者が政治家に求める能力とも大して変わりませんね。そして昨今「リーダーシップがある」として評価されるタイプと言えば大阪市長の橋下が挙げられます。アホな研修屋の企画する「理想の上司」ランキングでも橋下がトップに立ったりするくらいで(参考)、その辺は確かにアンケート回答者にも一貫性は見られるのかも知れません。決して適当に答えているわけではなく、一定の思惑があってのことなのでしょう。もっとも当の橋下自身は「市の職員に聞いたら、絶対にそんな順位にならない。同じ組織にいないから無責任に言えるんじゃないですか」「自分の組織にリーダーシップのある上司が来たら嫌でしょ」と述べており、この点に限っては橋下の方が物事を良く心得ているように思います。
よくよく考えれば、会社が新入社員に求めるコミュニケーション能力と、部下が部長に求める能力との間には大きな違いはないのかも知れません。ランキングの2位には「人の話を聞く力」、3位の「実行力」はさておくにしても4位は「調整力」で5位が「カリスマ性」、6位には「人脈」と続くわけです。この辺、ある意味で「コミュニケーション能力」を細分化したものと言えないこともないのではないでしょうか。人の話を聞くコミュニケーション能力、部内を調整するコミュニケーション能力、部門を率いるコミュニケーション能力、社外との人脈を築くコミュニケーション能力、リーダーシップの発揮だって歴としたコミュニケーション能力です。新たに会社に入ろうとする若者にコミュニケーション能力を要求し、そして部下を率いることになる部門長にもコミュニケーション能力を求める、これまた一貫性がある……と言い切れるなら話は簡単ですが、実際はどうでしょう。
まぁ、上司にこそコミュニケーション能力が求められるとして、では誰もが「上司」になるのかどうか、その辺だって考慮される必要があるはずです。何度か書いてきたことですが、人口構成がピラミッド型で自分より年下の人間の方が頭数が多い、さらには一次産業や自営業からサラリーマンへと労働人口の流入も続き、かつ女性は結婚や出産を機に会社から離れていく、そういう時代であれば必然的に「中年以上の男性正社員の数」<<<「若手社員の数」みたいな構成ができあがります。そうなると、中年以上の男性正社員には自然と「若手を率いる」役目が期待されるわけです。一方で少子化が急速に進行し、会社勤めの人口も今後は増えない時代ともなれば、今度は「中年以上の社員」>「若手社員の数」といった逆転現象が生じます。そうなれば当然のことながら、中年以降の社員にとって「率いるべき部下」はいなくなる、部下を率いるのではなく現場の第一線で踏ん張ることが求められるようになるはずです。では、そのときに必要なのはリーダーシップや人の話を聞く力などのコミュニケーション能力なのでしょうか?
部下は上司にコミュニケーション能力を要求しているわけです。そこで「将来の上司候補」となる新人にもコミュニケーション能力を求めるのなら、それは間違っていないと思います。しかし、会社の世代別人員構成がピラミッド型になっているのならいざ知らず、そうでないのなら将来的に「上司」となれる新人は一握りにしかならないはずです。ならばコミュニケーション能力を求めるのは管理職候補となる一部だけで十分、他はもうちょっと現場で役に立つ具体的なスキルを問う方が合理的ではないかと私は考えます。今の採用基準を野球に例えるなら、監督やコーチなど指導者になれる資質の有無を基準にして選手を獲得しているようなものです。しかるに指導者(上司)となるのは一握りだけです。指導者(上司)になったときに効果を発揮する能力を最初から全員に求めるより、もっと別の何かを問う方が合理的であるような気がします。まぁ、男性正社員は初めから「将来の上司候補」として採用し、中高年になっても出世できない=上司になれなかった人は自由に解雇できるようにして、また新たに若者を「将来の上司候補」として採用する、そして中高年になっても出世できないようであれば……そういう不毛な使い捨てサイクルを求めているのが日本社会なのかも知れません。
ちなみに私が部長に求める能力を挙げるとしたら「役員の無理難題を巧みにスルーする能力」ですかね。とかく会社経営に密接に関わる役員ともなると、現場に無茶な要求を突きつけがちです。会社の利益だけを考えるなら誤った要求ではないとしても、それを実現させようとすれば現場すなわち一人一人の社員にこそ重い負担がのし掛かるばかり、しかし無理を重ねれば営業成績が向上するかと言えばさにあらずだったりします。役員の言うことなんか真に受けていたら体も心も保たない、そんな職場も多いのではないでしょうか。部長の能力が問われるのは、そういう場面です。役員はまず部門長に、普通のペースではとうてい達成不可能な営業目標を突きつけたりするものですけれど、そこで部長が言われるがままに部下の尻を叩いているようでは部長失格だと私は思います。無理なものは無理、自分の部下もやるべきことはやっていると、そうやって役員の要求を突っぱねて自部門の職場環境を守れる、そういう能力こそ私が部長に求めるものです。