非国民通信

ノーモア・コイズミ

感染症対策は社会全体で行う必要があるわけで

2021-06-27 21:18:02 | 社会

ワクチン敵視、背景に疎外感 「反対派」レッテル貼り危険―専門家「互いに尊重を」(時事通信)

 企業や大学による職域接種が21日から本格化する新型コロナウイルスワクチン。普及が進む一方、インターネット交流サイト(SNS)上では接種への抗議をあおったり、デマを拡散したりする動きも強まる。専門家は「ワクチンへの不安や警戒感だけでなく、そうした気持ちを理解されない『疎外感』がある」と分析。「接種を受けたい人も受けたくない人も、互いの判断を尊重し合うべきだ」と訴える。

 SNSでワクチンの危険性を呼び掛ける人たちの投稿には「接種すると遺伝子を組み換えられる」「不妊の原因になるとファイザー社が認めた」などのデマも交じる。「打つと5G電波で操られる」「体が磁力を帯びる」といった荒唐無稽な主張も見受けられる。

 こうした投稿を嘲笑するユーザーも多いが、リスクコミュニケーションに詳しい土田昭司・関西大教授(安全心理学)は「『ワクチン反対派はおかしい』などと安易にラベリング(レッテル貼り)して突き放すことは、事態をさらに悪化させる」と危惧。「社会が不安に寄り添わず、親身に話を聞いてくれるのはカルト集団や陰謀論者だけ、という状況は非常に危険だ」と警告する。

 

 こうした「リスクコミュニケーションの専門家」の主張はいつだって同じですけれど、彼らの一貫した主張が世の中に益をもたらしたかどうかについて私は大いに懐疑的です。曰く「接種を受けたい人も受けたくない人も、互いの判断を尊重し合うべきだ」とのことですが、ワクチンを接種しない人が増えることは社会的な感染リスクを増やすことであり、隣人の健康を脅かします。他人に危害を及ぼす行動への尊重を訴える人に良心はあるのでしょうか?

 「ワクチン反対派はおかしい」――これは否定の余地のない客観的事実ですけれど、リスクコミュニケーションの専門家に言わせれば「レッテル貼り」なのだそうです。差別主義者を巡っても、こうした主張はよく聞かされるところですが、では差別的な言動や行動を繰り返す人をどう呼べばいいのか、事実無根の妄想に基づいてワクチンは危険だとデマを流す人をどう呼べばいいのか、首をかしげないでもありません。

 2011年に東日本大震災が起こって、その中で原発事故も発生した際には、これまた非科学的な反原発デマが次から次へと創作されていきました。エセ科学に乗っ取る言動が風評被害を広めていく中で、科学コミュニケーションの専門家を称する人々が風評「加害者」に寄り添い、その尊重を求めていたことを鮮明に覚えています。しかし結果としてエセ科学の信奉者が考えを改めて科学を受け入れるようになった例を、私は見たことがないです。

 著名人の中でリスクコミュニケーションの専門家の信条に最も近い行動をとってきたのは、トランプ前アメリカ大統領であったと言えます。トランプは差別主義者や陰謀論者の不安に寄り添い、親身に耳を傾けて対話を重ねることで、彼らの疎外感の解消に大いに尽力してきました。そうして差別主義者でも陰謀論者でも自己肯定感を持って前向きに生きられる社会を築いていったわけですが――事態が好転したのか悪化したのかは明白だと思います。

 そもそも疎外感なんて、人間誰しも多かれ少なかれ抱えながら生きているものではないでしょうか。ワクチン反対派や差別主義者への尊重を呼びかけるコミュニケーション論者は、疎外感を言い訳に使っているだけです。問題は社会性や知性の欠如であって、その欠如を正しく評価し、問題ある言論が他人の生活や権利を脅かさないよう隔離・制限していくことこそが求められます。

 WHOは2019年に「世界的な健康に対する脅威」の一つとしてワクチン忌避を挙げました。新型コロナウィルスが登場する以前からワクチン反対派は一定の勢力を有しており、予防接種率の低下によって本人の感染だけではなく周囲への感染拡大というリスクを招いていたわけです。新型コロナに関しても然りで、ワクチン摂取率が低ければ低いほど感染ルートは残される、予防できるはずの感染症に第三者が晒される機会は増えてしまいます。

 イスラム教徒が豚肉を食べなくても学校教員が起立して君が代を歌わなくても私が忘年会に出席しなくとも、それが社会の危機を招き隣人の生活を脅かすことはありません。しかしワクチン接種は違います。医師の診断ではなく個人の信念によって接種を怠れば、その人自身が感染リスクに見舞われるだけではなく、感染の伝播者として他人に危害を加える可能性があるわけです。それは個人の自由で済まされるものではなく、公共の福祉への挑戦と言えます。

 ヘイトスピーチに対して言論の自由を適用してしまうような社会であれば、ワクチン忌避に対しても同様の扱いになってしまうのかもしれません。言論の自由を謳歌する差別主義者の言動によって日々の生活を脅かされている人もいれば、ワクチンを接種しない隣人に病気をうつされる人もいることでしょう。それは一つの権利を保障するために別の権利を侵害する判断なのですが、どうにも我々の社会は無秩序な自由に重きを置きすぎているようです。

 むしろ私などは、医療ネグレクトの方をもう少し心配すべきだと思いますね。保護者が自身の信仰や思想に基づき、子供に適切な医療を受けさせず健康状態を悪化させるケースは以前から少なからずあります。ワクチン接種に関しても、同じことは繰り返されることでしょう。親の信条のためにワクチンを受けられない子供も続出することが予想されます。こういうとき、毅然とした対応が取れるのか個人のエゴを尊重してしまうのか、問われるものがあるはずです。

 

宗教団体の研修会を発端とした麻疹集団発生事例(国立感染症研究所)

 2019年1月7日, 三重県に対して他県から三重県内の成人の麻疹患者発生の情報提供があった。患者は麻疹様症状がありながら, 三重県内で開催された宗教団体の研修会に2018年12月23~30日までスタッフとして参加しており, 28日から発熱, 30日に発疹が出現していた。研修会への参加者は54名(うち20名は三重県外在住)であった。研修を主催した宗教団体は, 医薬に依存しない生活を基にした信仰生活を重んじているため, ワクチンを接種していない参加者が多く, 同日, 三重県内からも同じ研修会に参加していた二次感染患者の報告があり, これらの未接種者を中心に多数の麻疹患者が発生することが予想された。

 

 2019年、三重県では麻疹の集団感染が発生しました。発端は医療を否定する宗教団体でしたが、ここから三次、四次と市中に感染が広まり異例の拡大となったわけです。感染は宗教団体の内部に止まることはなく、教団とは無縁の「たまたま近くにいただけ」の人にも及んでしまったのですが、新型コロナウィルスでも同じことは当然、起こりえます。感染リスクの高い人は、自身だけではなく周囲の人間にもまたリスクを負わせる存在なのです。

 反社会的な主張や、それを擁護する主張を繰り広げるのも言論の自由ではあるのかも知れません。しかし良識あるメディアであろうとするのなら、その結果として公共の福祉がどのように害されるのか、同じ社会で生きている他の人々をいかに脅かすのか、そこもまた当然のこととして明記すべきであると言えます。

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組合という変わらぬ世界

2021-06-20 21:52:39 | 政治・国際

連合、立・共の接近警戒 都議選でも不協和音(時事通信)

 7月の東京都議選や次期衆院選をにらみ、連合は立憲民主、共産両党の接近に警戒を強めている。共産党系の新聞が立憲東京都連幹事長の手塚仁雄衆院議員と共産東京都委員会委員長の対談を掲載。これに連合東京が猛反発し、「立憲都連とは埋められない距離を感じざるを得ない」との談話を出す事態に発展している。

(中略)

 実際、連合東京は談話で、次期衆院選での立憲候補者の推薦について「共産党とくみしないこと、違反行為がある場合は推薦等の支援を取り消す」と明記。これ以上の共産との接近をけん制した。

 

立民・枝野氏「共産と連立考えず」 連合幹部に明言(時事通信)

 立憲民主党の枝野幸男代表は17日、東京都内の連合本部で開かれた中央執行委員会に出席し、次期衆院選で目指す同党の政権構想について「共産党とは理念が違っている部分があるので、連立政権は考えていない」と述べ、共産と連立政権を組む考えのないことを明言した。会合後、枝野氏が記者団に明らかにした。

 

 民主党とは誤解されがちな政党です。それは支持層からもアンチからも同じで、想像上の民主党に対する事実に反した期待から投票する人もいれば、やはり実態に反する嫌悪から民主党を否定する人もまた少なくないのではないでしょうか。今回の枝野発言は率直な真情の吐露と言えますが、支持者やアンチは勝手に「裏の意図」を読むのかもしれません。

 この民主党の支持母体である労組「連合」に関しても誤解の目立つところで、実態よりも勝手に思い描いたイメージに沿って期待や反発をしている人も多いように思います。でも近現代の政治史なんて学校では教えてもらえないですし、就職先で学ぶ機会などあろうはずもない、ネット上の風聞のような純然たる創作など言わずもがなですから仕方ありません。

 「連合は共産党の影響を排除するために闘ってきた」とは「連合」の神津里季生会長の発言です。組合なんて見たこともない人の方が現代は多数派だけに、空想上の組合イメージとは一致しないと感じる人もいるでしょうか。ただ、この労組の中の多数派による「連合」が結成された経緯を振り返れば、発言は必然でもあるわけです。

 一口に労組と言っても、同一企業グループ内にも複数の組合があったり、企業からは独立した組合もある、それが全て「連合」に参加しているものではありません。現代に至る「連合」が形成される過程では相応の選別もあり、結局は労使協調の理想を追う御用組合が結集することで労組の代表者としての勢力を築き上げるに至りました。

 その一方で方針の異なる労組もあり、連合に属さぬ組合の中にも一定の規模を持つ組織もあるわけです。こうした組織の中には共産党との関係が深いところが多く、労組の世界の野党的ポジションを占めています。そして労組の中の絶対的多数派として君臨する「連合」としては、自らに従わぬ労組のバックにいる共産党は不倶戴天の敵である……と。

 現行制度上、過半数労組には会社の提案する諸々に同意する権限が与えられています。それが労働者の不利益につながるものであり、制度上は違反に当たる場合であっても、過半数労組の同意があれば様々なことが合法となります。いわば過半数労組は会社の決定にお墨付きを与えるものであり、世間で思われている以上に権力を持っているわけです。

 ところが少数派の労組には然したる権限もなく、過半数労組が同意してしまえば流される他ありません。政治の世界以上に労組の世界は数がモノを言います。だからこそ連合は自らの勢力にこだわる、労組の世界の与党としての地位を脅かす存在とは絶対に手など組めないという判断にしかならないわけです。

 とはいえ、連合が労組の安定与党であり続けることが労働者にとってプラスに作用しているかは極めて疑わしいところですし、そもそも現代は労組に加盟している人の方が少数派であるなかで労働者の代表者面をさせて良いのかという話もあります。連合の敵である少数派労組もあれば、特定企業に属さぬ新しい労組だってあるのですから。

 成果があったかはさておき、国会における政権交代はまれに起こっていますし、それを期待する人もいます。一方で労組の世界は政権交代とは無縁であり続けています。どの労組を支持するかを投票で問われることもなく、人事と癒着した御用組合へ半強制的に加入させられることも一般的なのが労組の実態ですけれど、これに比べれば国政はまだしも健全だと感じますね。

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世の中は前に進んでいる

2021-06-13 21:58:32 | 社会

 先日は法律が改正され、株主総会をオンラインだけで開催できるようになったそうです。これまでは会場を設けることが義務づけられていたわけですが、漸く日本の制度も少しずつ前に進んでいるのでしょうか。

 日本における2020年の死亡数は前年比から減少に転じたことも伝えられています。従来型の肺炎とインフルエンザを死因とするケースがずいぶんと少なくなったようで、新型コロナウィルスによる分を相殺する結果となっています。

 古くさい制度を引きずっていたものが時代に沿ったものへと改正され、公衆衛生の水準が上がって(新型コロナウィルス以外の)感染症で亡くなる人も減った、「元に戻そう」という意思を持った人もいるわけですが、概ね世の中は前に進んでいるようです。

 そしてテレワークあるいはリモートワークは、今ひとつ実施率が上がらないまま今日に至りますが、いかがなものでしょうか。通勤負担の軽減や満員電車の解消、地理的制約(東京一極集中)の緩和など、「密」を避ける新型コロナ対策を別にしても効能はありそうなものです。

 過去の記事にも書きましたが、私の勤務先では「コロナ前」からテレワークの制度がありました。ただし実際にテレワークを行うのは、障害などの理由で出勤が困難な人に限られていました。要するにテレワークは「訳あり」の人のための制度でしかなかったのです。

 しかるに政府の緊急事態宣言が発出されるや、「普通の」人もテレワークを行うことになりました。宣言前はあれこれと理由をつけて「(テレワークは)出来ない」と抵抗していた人も少なくなかったのですが、実際に政府の号令に沿って始めてみるや、ほぼ滞りなく業務は回ることが分かりました。

 満員電車でベタベタ触られながら通勤する回数が減ったり、悪天候時に外出せずとも済むようになったので私の生活は大幅に楽になりましたが、それだけでもないように思います。これまで事実上の障害者枠だったテレワークが全社員を対象としたことで、今まであった「壁」も取り払われた気がしますので。

 かつてテレワークしている人は本当に特別な存在でした。同じ会社に在籍こそしているものの、同じ職場に席を並べているわけではない、どうしても距離を感じている人も多かったものです。もちろんメールや電話は可能でしたが、「自宅にいる人」へ連絡を取ることをためらう人も少なくありませんでした。

 そのため、実際にはテレワーク中の人が担当している業務でも、職場に出勤している同部署の人に連絡し、同部署の人からテレワーク中の人に用件を伝えてもらう……というのが一般的な流れだったのです。ところが「全員がテレワーク」となるや、元からテレワークをしていた人が特別な存在でもなくなりました。同部署の人を介したやりとりは激減し、皆が当たり前のようにテレワーク中の人へ直接コンタクトするようになったわけです。

 どこまで配慮するべきか、障害のある人との距離感を図りかねている人も多いと思います。テレワークが実質的に障害者枠だったほんの1年ちょっと前までは、誰もがテレワーク従事者との間に「壁」を持っていました。それがテレワークが「普通」になると、元からテレワークだった人とそうでない人が肩を並べるようになったのです。

 これまで身体的なハンデのために通勤が出来なかった人と、当たり前のように満員電車で出勤してくる人、これまでは後者が圧倒的多数派として「普通」の存在でした。その分だけ前者が「特別な」存在ともなってしまったわけですが、コロナのおかげでテレワークが普及するや、誰も特別ではなくなったように思います。これがバリアフリーなんだろうな、と。

 学校の授業でもオンラインで実施しているところが増えているようですが、同様に「特別な」存在であった通信制の学校とマジョリティである全日制の学校との距離感も多少は変わったりするのでしょうか。とかく我が国は「普通」がエリートコースになりがちですけれど、そうでない人との溝が縮まっているのならば、世の中は良い方向に進んでいると言えます。

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ショー・ザ・フラッグ

2021-06-06 21:29:45 | 政治・国際

日本からのワクチンが台湾到着 蔡総統、「友好の神髄再確認」―新型コロナ(時事通信)

 【台北時事】日本からの緊急支援として台湾に提供された新型コロナウイルスワクチンが4日午後、台湾に到着した。英アストラゼネカ製の124万回分で、医療従事者に優先的に接種される見通しだ。蔡英文総統は「ワクチンのためにこの間奔走してくれた台日双方の関係者に感謝する。同じ価値観と助け合いの精神に基づく台日友好の神髄を再確認した」とのオンライン談話を発表した。

 

 アストラゼネカのワクチンはファイザーやモデルナ製に比べて有効性が劣り副反応の報告も目立つなど、概ね外れ扱いされているわけです。だからこそ日本政府も「使わない」という判断を下しているのですが、そうした「日本人には使わない」ワクチンを他国に譲り渡す行為がどれだけ誇らしいものなのかどうか、私には分かりません。

 もちろん、他社製に比べて効能や安全性に劣るワクチンでも、新型コロナウイルスの感染が拡大する中ではマイナスでもないのでしょう。ベストな選択肢が選べないのならば、ベターな選択肢としてアストラゼネカという「余り物」を使う他ないと判断するのは妥当です。ワクチンを選別している場合でもないことは理解できます。

 

中国、ワクチンで台湾揺さぶり 新型コロナ感染拡大で(時事通信)

 【台北時事】新型コロナウイルスの感染が拡大中の台湾に対し、中国がコロナワクチンを材料に揺さぶりをかけている。先進国の新型コロナ対策の軸足がワクチン接種に移る中、台湾はワクチン調達に苦戦。接種済みの人は約32万人と、人口の1%超にとどまる。民進党・蔡英文政権は、野党からもワクチン問題で突き上げられ、コロナ禍最大の試練に直面している。

 「台湾同胞から大陸(中国)のワクチンを切望する声が上がっている。大陸も最大の努力を払って同胞を手助けしたい」。中国国務院台湾事務弁公室の朱鳳蓮報道官は26日の記者会見でこう述べ、「世界保健機関(WHO)が承認した大陸製ワクチンが必要かどうかはっきりと答えて」と台湾当局に問い掛けた。

 台湾ではこれまでもワクチン調達の遅れが指摘されてきたが、今月に入ってからの感染急拡大で、最大の焦点として浮上。最大野党・国民党は、「ワクチン接種の遅れが感染拡大を招いた」などと蔡政権を連日のように批判している。

 

 しかるに日本でいらなくなったアストラゼネカのワクチンが台湾にとって唯一の入手可能なワクチンであったかといえば、そうでもないわけです。中国製のワクチンであれば、感染拡大に先んじて接種を進めることも出来たことでしょう。しかし台湾政府与党には感染拡大の防止よりも優先したいものがあったのだと言えます。

 兵は拙速を尊ぶとは孫子の言葉とされますが、最良と考えられるワクチンを待っている間に感染が拡大してしまうよりは、効能が多少劣るとしても早期に入手可能なワクチンの接種を進めるという判断も十分にあったはずです。ワクチン接種の遅れは日本もまた顕著と言えますが、それはワクチンの調達先を最初から限定していたからではないでしょうか。

 ウクライナでも親ロシア派の実効支配する東部地域ではロシア製のワクチン接種が進んでいるそうですが、反ロシア派の支配する西部地域では2月にロシア製ワクチンを禁止すると決議したことが伝えられています。しかるに西ウクライナ政権にNATO諸国からワクチンが優先供給されると言うこともなく、調達には苦戦が続いているとか。

 トランプ前大統領の外交姿勢は「弱い犬ほど良く吠える」を実践するかのような代物でしたが、バイデン現大統領は伝統的なアメリカ外交への回帰と呼ぶべきか、より実効性の高い衛星国を巻き込んだ覇権主義を貫いています。そうした中では「どこのワクチンを打つか」もまた「どの陣営に属するか」を表明する意味合いを持つようになるわけです。

 国内で感染者が急増しても中国からの供給は受けず、同陣営に属する隣国の「余り物」を歓迎する政権もあれば、世界的イベントの開催を控えていながら、ひたすら「西側」のワクチン供給を待つばかりだった国もある、感染症との戦いという面では最善と呼べない判断ですが――自分たちがどの陣営に属するかを示すために譲れないものがあったのでしょう。

 どこの国が行うとしてもワクチン供給は人類への貢献です。しかし「自国民には使わないワクチン」の横流しが「友好の神髄」と称される一方で、自国民にも使っているワクチンの供給打診が「揺さぶり」として非難される辺り、感染症拡大を封じ込めるよりも優先したいものが、それぞれの国の政府にはあることがわかります。

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