麻生氏が谷垣氏に活=船長釈放で「ちゃらちゃらするな」―自民(時事通信)
「野党第1党の党首として、怒らないといけない。ちゃらちゃらしたことは言わないことだ」。28日、自民党の麻生太郎元首相が衆院議員会館の自室をあいさつに訪れた谷垣禎一総裁に苦言を呈する場面があった。
発端は、中国船衝突事件で船長釈放が発表された24日に谷垣氏が「小泉政権は国外退去にした。そういう処理の仕方もあり得た」と発言したこと。2004年に中国人活動家が尖閣諸島に不法上陸した際、当時の小泉政権が日中関係悪化を考慮して強制送還した例を指したもの。
ただ、党内からは「言い方が生ぬるい」との不満が噴出。27日には安倍晋三元首相に「党員や支持者の士気を鼓舞する行動を」とクギを刺されていた。麻生氏との面会後、記者団から「総裁が首相ならどう対応する」と繰り返し聞かれた谷垣氏の口から、「国外退去」の言葉は出なかった。
中国船衝突事件に関して「直ちに国外退去させた方が良かった。最初の選択が間違っていた」と船長を逮捕したことを批判していた谷垣ですが、党内からも色々と非難を浴びているようです。この辺の反応を受けて谷垣は軌道修正しつつあるようですが、何かに付け煮え切らないのが彼の個性なのでしょうね。総裁選の時は構造改革路線の見直しを掲げつつ結局は小さな政府論を採り、あるいは極右系議員とは距離を取りながらも靖国に参拝してみせるなど、どっちにアピールしたいのかはっきりしない、どの側面から見ても中途半端なのが谷垣という政治家です。今回の件もまた同様、現内閣を批判するにしてもどっちの面から責めていくつもりなのか、今ひとつ方向性が定まっていないように見えます。
日中間で紛争防止の仕組みを=政府・検察の対応支持―経団連会長(時事通信)
日本経団連の米倉弘昌会長は27日の記者会見で、沖縄県・尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件について「早急に沈静化させる努力を日中双方が行うべきだ」とした上で、「(紛争になることを)未然に解決する仕組みを両国政府で考えるべきだ」と指摘した。特に経済面での悪影響を避けるため、問題発生時に対話を行うパイプづくりが不可欠との考えを強調した発言だ。
米倉会長は、漁船船長の釈放に関して「国際社会では、日本が弱腰との批判はない」と擁護。中国による謝罪と賠償の要求を拒否した菅直人首相の姿勢も「正しい」と支持した。
経団連会長が春、秋の年2回訪中する方針については「われわれはわれわれなりに、対話を継続しなければいけない」と述べ、経済界として対中交流を見直す考えはないことを明言した。
菅内閣の対応は野党や世論ばかりでなく、与党内部からも非難囂々であるわけですが、数少ない味方がこの経団連のようです。これを契機に菅内閣と経団連が一層の仲良しになるなんて可能性もあるでしょうか。必ずしも経済合理性に沿って動いているとは言い難い財界の代表者たる経団連ではありますが、一応は日中関係から得られる利益を重視する立場を取っていることが窺われます。経済が外需頼みになることにも何か利点があるとしたら、財界が穏健派に傾くことなのでしょうね。総じて右よりの経済界ではありますが、外国と良好な関係を築かないことには利益が得られない、そういう状況の中では平和を志向せざるを得ませんから。
小泉にしろ経団連にせよ私にとっては不倶戴天の間柄と言える存在ではありますが、今回のような問題に関しては小泉や経団連の対応の方が、諸々の与党批判勢力よりも私との立場が近いような気がします。ことの善悪に関してはまた別の観点があるのでしょうけれど、損得という面では小泉や経団連の方がクレバーな判断を示しているように思えるのです。いくらか過去を美化し過ぎているかも知れませんが、昔は損得を基準に行動する与党と理想を追う野党とで、少なくとも今よりはずっと相互補完性の高い政治上のパワーバランスが築かれていたのではないでしょうか。それが急激に自民党も理想ばかりを追うようになってきた、典型的なのが安倍晋三で経済や社会上の重要問題を放り出して自分の趣味を押しつけるような政治に走る、そういう輩が幅を利かせるようになってきたわけです。与野党がそれぞれの理想を追いかけるばかりで損得勘定のできる人がいなくなってしまったその結果として、日中間の問題を深刻化させずに丸く収められるような人材が払底した、そういう見方もできるのではないでしょうか。時に私は「古い自民党」を「汚い大人」に擬えることがありますが、昨今の政界には理想に燃える青年はいても大人がいないような気がしてなりません。「昔は良かった」と同レベルの言説になってしまいますが、なんだか保守本流の政治家が懐かしくなってきます。