勤務中に黒大豆乾燥、筍ゆでる 職員5人を処分 奈良市(朝日新聞)
勤務時間中に黒大豆を乾燥させたり、タケノコをゆでたりしたとして、奈良市は31日、市青少年野外活動センターの所長(66)を減給10分の1(1カ月)とするなど、計5人を処分したと発表した。
市によると、所長は今年1月までに計4回、自宅で栽培していた黒大豆を持ち込み、勤務中に事務所内で乾燥させていた。敷地内のタケノコをゆでて職員間で分けたり、ユズを取りに行ったりしたなどとして、ほかの職員や臨時職員計4人も戒告や訓告、厳重注意となった。
センターは市中心部から約15キロの山中にあり、小中学校の夏休み期間以外は、比較的暇な時間が多いという。
よく分からないニュースです。黒大豆を乾燥させることがそんなに悪いことなのか甚だ疑問です。奈良市には勤務中に黒大豆の乾燥を禁じる規定でもあるのでしょうか?
ラインで働いていたりすれば話は別かも知れませんが、トータルで見れば忙しい仕事でも、どこかしら暇な時期、暇な時間帯は出てくるものです。仕事はベルトコンベアに乗せられて一定のペースで運ばれてくるものではありませんから、どうしても特定の時期あるいは時間帯に仕事が集中し、その一方で仕事のない時間もあります。この辺を完全にフラットに出来ると随分と効率は上がるのですが、機械だけはなく人間を相手にしている以上、どうしても仕事量に偏りが出てくるわけです。
で、暇な時間をどう過ごすかがポイントです。学生時代に試験監督とか家庭教師とか、色々とバイトをしていたわけですが、生徒に問題を解かせている間は暇ですから、本を読んだりして過ごすわけです。自分が監督する側であって監督される側でない場合は色々と出来ますよね。行きつけのカレー屋は店主が一人で経営しているのですが、私が食べている間はやることがないようで、カウンターの奥で本など読んでおりますし、近所の床屋も客が来ない間は新聞を読みながらテレビを見て過ごしています。そんなものですよね。空いた時間を有効活用しなくちゃなりません。
それが職場となりますと周囲の目、上司の目がありますから、露骨に他のことをやるわけにもいかない、かといって仕事はとっくに片付いている、しょうがないから働いているフリをする、これもまた面倒です。いずれにせよ仕事は片付いているわけで、仕事とは無関係なことをやろうが働くフリをしようが何ら変わりはないのですが、それでもなお前者ではなく後者を迫るような空気が、確かに存在するのではないでしょうか?
成果主義、と言ってもそれが意味するところは「成果を出せばいい」というものではないようです。成果を出せばいいのなら単純明快、やるべき仕事さえしっかり片付けておけば後は何をしようが勝手なはずです。ところが全く以てそんなことはないわけで、たとえ仕事を完璧に終えていようと、空いた時間があればその全てを仕事のために使い尽くすことが求められます(仕事はもう終わっているのに!)。大事なのは仕事の出来映えとは限らず、全てを仕事のために捧げ尽くしているかどうか、それが問われるのです。全てを使い尽くさず、余裕を持つこと、会社なり組織のためではなく自分のために何かをすること、それが時には仕事を滞らせること以上に強く非難されるのです。
ですからそう、この奈良の職員も本業は滞りなく進めていたのでしょうけれど、時間を余らせてしまった、その余った時間を仕事のために使い尽くすのではなく、他のことに使ってしまったこと、組織の判断ではなく自分の判断で行動したことが咎められているように見えます。労働者が自由を手にすることを許してはいけない!と。そしてこの非難は上からだけではなく、道徳的な影を帯びて隣からも来るものです。荷を担う驢馬が、荷を運び終えて水を飲む驢馬を怠け者!と罵るわけですね。
青少年野外活動センターという施設の性格を考えると、筍や柚子を収穫したり豆を乾燥させたり、そうした行動は職務の妨げになるどころか職務に関連性が強い、青少年向けの実習プログラムの一環に組み込まれてもおかしくないような内容でもあります。むしろ来るべきシーズンに向けた下準備のような印象も受けるのですが、まぁ坊主憎けりゃ袈裟まで憎い、いつもの公務員叩きの一環でもあるでしょうかね。