非国民通信

ノーモア・コイズミ

バブル「崩壊」防止が前提じゃないのか?

2010-11-27 23:04:26 | ニュース

高成長継続、バブル防止が前提=中国経済見通しで日銀総裁(時事通信)

 日銀の白川方明総裁は23日、香港で講演し、中国経済について「今後も高成長を続ける可能性が高い」としながらも、バブル防止がその重要な前提条件になると強調した。

 白川総裁は1980年代後半に日本でバブルが発生した要因として、(1)日本全体を覆った過剰な自信(2)不十分な金融監督体制(3)金融緩和の長期継続―の3点を指摘。中国などの新興市場国はこれらを教訓に社会全体が自制心を保ち、金融の規制・監督を重視するとともに、金融政策は為替レートや経常収支ではなく、「物価が安定した状況下で持続的な経済成長を実現するという『国内経済の安定』を目的に運営する必要がある」と語った。

 この日銀総裁の言葉が的を射たものであるかは、近年の日本経済の「結果」を見れば考えるまでもないでしょう。ある意味、常に間違った経済政策を貫いてきた一員である日銀総裁の語ることの180°反対を向けばマシな政策になるとすら言えそうです。世界の中で日本だけが継続的なデフレに陥り、主要国中の例外として世界の経済成長か取り残され、明らかに日本ばかりが異常な経済運営を続けているにも関わらず、日本と違って経済成長の続いている国で恥ずかしげもなく講演できるその神経が理解できません。日本の経済政策の過ちを象徴する一人なのですから、ここは地面に頭をこすりつけて中国に教えを請うぐらいした方が、まだしも身の丈に合っています。経済誌のお約束は知っているとしても、実際に経済を好転させるための方策を何一つとして理解できていない分際で何をか言わんや、です。

 もちろん各種の食品汚染や公害問題など、中国もまた日本の轍を踏んでいる部分が少なくないだけに、日本から教訓を得るべきところはあるでしょう。お互いに参考にすべき面もあれば、反面教師とすべき面もあるものです。しかるに、何事もただ見守るしか脳のないバカに言わせれば高成長の継続はバブル防止が前提なのだそうで、"Japan as no.1"と呼ばれた1980年代の日本を反面教師的な意味で教訓にせよと垂れ流しています。マトモな国であったなら、90年代以降の成長することを止めた日本をこそ、負の教訓にすると思うのですがねぇ。

 「景気が回復したら、改革する意欲がなくなってしまう」と、かの小泉純一郎は語りました。日本にとっては「改革」こそが目的であり、その目的を達成するためには好景気は不都合だったわけです。では、その改革の狙いとは何だったのか。結果から類推するなら、格差の拡大と固定化、雇用側優位の力関係の構築でしょうか(もし経済成長が目的であったとするのなら、彼らの選択はあまりにも的外れとなりますから)。そのためには経済合理性はしばしば犠牲にされてきた、むしろ改革の必要性を錯覚させるための状況作りとして、不況をこそ是としてきたところがあるはずです。だからこそ、日本ではバブル崩壊ではなく、バブル経済そのものが反省の対象と見なされ続けてきたと言えます。

 日本ではバブル=悪ですけれど、日本以外の国ではバブル崩壊=悪なんじゃないかという気がします。だってバブルが続いている限り国民は上昇気流に乗っていられるのですから、それを敵視するような理由などどこにもないわけです。しかしバブル崩壊となると、持ち上げられたところから落とされてしまうことになります。ではどうしたらいいのか、そこで日本はバブルそのものを危険視してバブルにならないよう心掛け、日本以外の国ではバブルが崩壊しないように手を打つ、あるいはバブルが崩壊してもすぐにリカバリできるように対策する、そういう違いがあるのではないでしょうか。少なくとも目指しているものは全く違うように思われます。

 バブル経済には実態がないと語る人もいますが、元より景気とはそういうもののはずです。国の経済的な豊かさは「どれだけお金を貯め込んだか」ではなく「どれだけお金を使ったか」で計られるものであり、そしてお金とは使っても所有者が移るだけで、決して消えて無くなったりはしないものなのです。好況と不況の違いは、お金を持っているかどうかの違いではなく、お金が循環しているかどうかの違いに過ぎません。日本のように膨大な貿易黒字を抱える経常黒字国でも不況に陥いることはありますし、逆に経常赤字国でも国内での循環が活発であれば好況になるものなのです。「実態」云々などよりも、「循環」の有無をこそ健全性の指標として考えるべきではないでしょうか。

 空気の詰まった風船と、空気の入っていない風船があるとして、これはどちらも風船です。片方は膨らんでいるかも知れませんが、中に入っているのは空気に過ぎません。それでもやはり、中身が空であろうとも膨らんだ風船としぼんだ風船は全くの別物として機能するわけで、不況とバブル経済の違いとはそういうところにあるのだろうと思います。中身は何もないのだからと風船を膨らませることを否定するのか、あるいは膨らませた風船が割れないように尖ったものを遠ざけるのか、そういうところで日本と日本以外の国の経済に関する考え方が決定的に分かれている気がしないでもありません。

 経済成長ではなく改革を目的とする日本では「景気が回復したら、改革する意欲がなくなってしまう」と語る首相が幅広い層から絶大な支持を集めたりもします。そして不況になるほど雇う側が強くなるわけで、人件費を削って利益を確保する10数年来の日本的経営の元では不況の方が何かと好都合なところもあるのでしょう。ゆえにバブルこそ避けるべきものであり、超売り手市場だったバブル時代こそ繰り返してはならない過去にもなっているのかも知れません。バブル崩壊ではなく、あくまでバブル経済そのものを忌避の対象とする、そうした日本特有の経済観念をこの無能な日銀総裁は象徴していると言えそうです。

 

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高所得者にとっての1%は重い負担のようです

2010-11-25 23:53:42 | ニュース

年収1300万円で年12万円増税 政府税調案から試算(朝日新聞)

 政府税制調査会が来年度税制改正で、配偶者控除と給与所得控除の見直しを検討している。こうした所得税の控除見直しが実現すると、年収が1300万円を超える世帯では、年収に応じ、税負担が年12万~40万円増えることがわかった。所得税とともに、地方自治体に納める住民税も見直しとなるため、高額所得者にとっては「大増税」となる。

 個人が納める所得税を計算するときには、まず年収から一定額を差し引く。これを所得控除と呼ぶ。差し引き後の課税所得に、所得水準に応じた税率(5~40%)をかけて納税額が決まる。このため控除額が少なくなれば、税負担は増える。

 この記事では「大増税」などと呼ばれていますけれど、年収1300万円の世帯にとって12万円という金額は「大増税」に相当するのでしょうか。そりゃ増税には違いないのかも知れませんが、平均的な給与所得の3倍近い収入がある世帯にとって、その1%に満たないレベルの課税を「大増税」と呼ぶのは、いささかヒステリックな反応と見なされてもしかたないものです。

 たとえば世間的には高給取りということになっている公務員ですが、この公務員給与が2%以上引き下げられたときに、世論並びに今回の記事を書いた記者はどう感じたのでしょうか。行政職の平均給与は15万円以上、下がることにもなったわけで、もし1%&12万円が「大増税」に相当するのなら、2%&15万円の給与引き下げは、さながらカタストロフと言ったところです。しかるに、どうも私の覚えている限り15万円の給与引き下げに関しては「もっと引き下げろ」という論調が圧倒的であった気がします。12万円は大きな額だが、15万円は微々たる額だと、そう感じた人も多いのではないかと。

消費税増税でどうなる モデル世帯で16・5万円の負担増(産経新聞)

 消費税の引き上げで暮らしや経済にどんな影響が出るか-。税率10%の場合は平均的世帯で年間16・5万円の負担増となることが第一生命経済研究所の試算で明らかになった。消費の冷え込みで景気が下押しされれば、目標の財政再建自体が遠のく恐れも指摘されており、消費税論議でも家計負担と財政再建のバランスが焦点となりそうだ。

 ■低所得者層ほど負担増

 消費税は税率1%の引き上げで約2兆5千億円の税収増が見込まれるが、試算では、1%引き上げで平均的な4人家族世帯で年間3万4千円の負担増となる。

 現行5%の税率を10%とすれば16万5千円の負担増で、年間の消費税支払総額は34万6千円まで膨らむ。

 低所得層ほど相対的な負担は大きく、年収250万円以下世帯の消費税支払額が年収に占める割合は8・1%。年収1500万円以上世帯の4・2%の約2倍となる見込みだ。

 できれば冒頭の引用と同じ朝日新聞の記事があると良かったのですが、ともあれ消費税増税による負担増の程度が伝えられています。モデル世帯では16万5千円の負担増、年収250万円以下世帯ともなるや12万円の負担増で、その年収に占める割合は8.1%(5%増税の影響はその半分の4%強)に相当するとのことです。もし本当に年収1300万円の世帯にとっての1%、12万円の増税が大増税であるとするのなら、年収250万円の世帯にとっての4%、12万円の増税はどう表現すればよいのしょう。大増税を超える大増税、何か新しい言葉が必要になりそうですね。

 しかし、消費税増税に関して朝日新聞はどういう態度を取っていたのでしょうか。高所得世帯にとっての1%を「大増税」と呼びながら、低所得世帯にとっての4%に関しては「財政再建のためには仕方ない」と説くとしたら、それこそ数値の大小すらも理解できていないと言わざるを得ません。まぁ、それこそ経済誌などを見れば数値の大小すらも比べられない人のご高説が居並ぶわけですけれど、弱者切り捨てや財界側の立場からものを言うにしても、もう少し矛盾のないように話を組み立てる努力をしたらどうかと思わないでもありません。

 給与所得者のうち、年収1千万円以上は5%程度の約220万人。この層に大きな負担増を求めると、個人消費に影響があるのではないかとの指摘や、配偶者控除は女性の働き方をめぐり意見がわかれていることもあり、見直しの基準や時期をめぐっては議論を呼びそうだ。

 で、再び朝日新聞からの引用に戻ります。「この層に大きな負担増を求めると、個人消費に影響があるのではないか」とのことです。それだって全所得層に影響を与える消費税に比べればマシなものですし、収入を消費に回す率が相対的に低い高所得層ともなれば、個人消費に及ぼす影響もまた相対的には軽微です。年収1千万の世帯が年収250万の世帯の4倍を消費に費やすわけではありませんから。個人消費への影響を最低限に止めつつ税収を確保するためには、貯蓄性向が高くて消費性向の低い高所得層に増税するのが合理的な判断となるのですが、おそらくこの記事は別の思惑に沿って書かれているのでしょう。

 さて年収1千万円以上は人数にして5%程度、巷では「高所得層は数が少ないので、そこに増税しても税収増は増えない」などと恥ずかしげもなく語る輩もいるわけです。そりゃ、高所得者に人頭税を課すのならそういう主張も成り立つのかも知れませんが、頭数は少なくとも収入は格段に多いのが高所得層というものです。収入に応じた課税であれば財源として大きな地位を占めることになります。しかるに、累進課税の話となると高所得層の頭数の少なさを強調するような連中ほど、逆に消費の話となると今回の朝日新聞のような立場を取る人が多いような気がします。せめてどちら片方の立場を貫いたらどうか、最低限の一貫性は持てと言いたくなります。

 高所得層への軽微な増税を大増税と呼びながら、低所得層をも対象にしたより大規模な増税を致し方ないこととして受け入れを迫るとしたら、自家撞着もいいところです。少なくとも同じメディアが同時に主張すべきことではないでしょう。それでも高所得層への増税は軽微なものでもNGで、低所得層への大増税は推進するとしたら、要するに累進制は嫌だ、もっと逆進的な課税に切替よと主張しているに過ぎません。

 

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何故こんな人を起用したんだよ

2010-11-23 01:00:43 | ニュース

法相?えーっ何で俺が…柳田法相の発言要旨(読売新聞)

 柳田法相が14日に広島市で開かれた法相就任を祝う会合での発言要旨は次の通り。

 「9月17日(の内閣改造の際)新幹線の中に電話があって、『おい、やれ』と。何をやるんですかといったら、法相といって、『えーっ』ていったんですが、何で俺がと。皆さんも、『何で柳田さんが法相』と理解に苦しんでいるんじゃないかと思うが、一番理解できなかったのは私です。私は、この20年近い間、実は法務関係は1回も触れたことはない。触れたことがない私が法相なので多くのみなさんから激励と心配をいただいた」

 「法相とはいいですね。二つ覚えておけばいいんですから。『個別の事案についてはお答えを差し控えます』と。これはいい文句ですよ。これを使う。これがいいんです。分からなかったらこれを言う。これで、だいぶ切り抜けて参りましたけど、実際の問題なんですよ。しゃべれない。『法と証拠に基づいて、適切にやっております』。この二つなんですよ。まあ、何回使ったことか。使うたびに、野党からは責められ。政治家としての答えじゃないとさんざん怒られている。ただ、法相が法を犯してしゃべることはできないという当たり前の話。法を守って私は答弁している」

 結局、辞任することになった柳田法相に関しては就任時にちょっと触れたことがあるのですが(参考)、本当に何で柳田氏が法相に決まったんでしょうね。法曹出身でもなければ法学部卒ですらない人物を敢えて法相に起用するからには、それなりに理由があってしかるべきものと思われます。しかるに有権者にとっても理由の不明な人選であるだけではなく、当の柳田氏にしてさえ理解に苦しむ人事だったようです。まぁ、そこはボロを出さないように表面を取り繕うのが普通の政治家というものですが、この柳田氏は森元総理と同様に思ったことを軽々しく口に出すタイプなのでしょう。そして森元総理がそうであったように、失言の連発であらゆる方面から顰蹙を買うわけです。

 前任の千葉法相が社会党出身であまり人気がなかった分、今度は逆に民社党出身の右派色が強い人を選ぼうという意図もあったのではと当初は思われたのですが、今にしてみると単に党内派閥のバランス取りでしかなかったように見えてきます。先日のエントリでも触れたように、国民の大半は自分が生きてきた時代の政治すら忘れている人が大半です。民社党という右派政党が存在したことなんて覚えている人はほとんどいない、そんな中で旧民社の人間を起用したところで自称中道の右派層から歓迎されることはないわけです。そうなると、後はもう本人の適正か党内のパワーバランスかという問題になってしまう、そして本人の適性が皆無であることが露わとなった今では、要するに「旧民社グループにも大臣の椅子を」という理由に沿った人事であろうと推測するほかありません。

 結局、この柳田法相が得意気に語る逃げの答弁にせよ、おそらくは派閥調整でしかない人選にせよ、野党時代には民主党もさんざん批判してきた自民党のやり方と何も変わらないことを示すものです。多数派を占める政党が変わっただけで、やっていることは何も変わっていません。これがサラリーマンの世界なら、意に沿わぬ起用でも何とか切り抜けようとするのは頷けるところですけれど、特別な職業である政治家がこれでいいはずがないのです。政治主導などと猛々しく掲げながら、実際は野党からの質問をかわして自分の身を守るだけしか脳のない人物にポストを与える、たぶん民主党の語る政治主導とやらは、単に官僚を忌み嫌う心さえあれば済むものなのでしょう。

 子ども手当とか、あるいは麻生内閣時代の定額給付に関して「狙いがはっきりしない」と何度か当ブログでは指摘してきました。その政策が何を意図したものであるか、それによって評価の指針も変われば取捨選択すべき要素も変わってくるものですが(たとえば「農業」を保護したいのか「農家」を保護したいのか、それだけでもやるべきことは全く変わってきます)、しばしば狙いのはっきりしないまま政策なり人選なりが決定されてしまうわけです。政治の透明性云々といった類は世間のウケが良いところですけれど、ならば閣僚起用の意図ぐらい国民に公開してはいかがでしょうかね。曲がりなりにも国会での議論を通じて決められることならいざ知らず、与党の専決事項である閣僚人事ともなれば、ある意味で完全な密室の中で決められてきたと言えます。このブラックボックスの中身を公開する試みぐらい、あっても良さそうな気がします。菅は何を狙って柳田を起用したのか、その意図は達成されたのか、それくらいは問われるべきです。

 

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武装した公務員

2010-11-20 23:03:17 | ニュース

 私たちは「戦後」を知らない/あなたは、共産党が日本国憲法の制定に反対し、社会党が改憲をうたい、保守派の首相が第九条を絶賛していた時代を知っているだろうか――これは『〈民主〉と〈愛国〉』を著した小熊英二の言ですが、「戦後」という大きな括りでなくとも、例えば「自分が生きてきた時代」ですらも、この国の人々はロクに知らないのではないかという気がしないでもありません。単に歴史修正主義者が戦前や戦中に起こったことを歪曲しているだけではなく、中立を装う普通の人までもがこの10年、20年に発生し、自ら記憶していて当然のことを忘れ去るどころか偽りで塗り替えようとしているところがあるように思えるのです。

保安官擁護論に懸念=自民・谷垣氏(時事通信)

 自民党の谷垣禎一総裁は14日、さいたま市で講演し、中国漁船衝突事件のビデオ映像流出を名乗り出た海上保安官を擁護する声があることについて、「わたしも半分ぐらい気持ちは分かるが、国家の規律を守れないというのは間違っている」と指摘した。

 党内の一部にも、「日本の正統性を国民と世界に示した」(安倍晋三元首相)など、保安官の行為を称賛する声もある。谷垣氏は、旧陸軍の青年将校が反乱を起こした二・二六事件を例に「(国民の一部は)若い純粋な気持ちを大事にしなきゃいかんと言っていたが、最後はコントロールできなくなった」として、保安官の行為を称賛する声に懸念を示した。 

 とにかく谷垣禎一とは煮え切らない人物です。小泉政権下の閣僚として構造改革に荷担しておきながら、その一方で総裁戦では改革路線の見直しに言及したり、あるいは極右勢力とは距離を取るように見せかけながら唐突に靖国神社へ参拝したりと、どっちを向こうとしているのか本人の中でも定まっていない印象を受けます。そして日頃は真性保守的な立場から現政権を非難しているかと思えば、今回の漁船衝突事件では「問題を深刻化させないことが一番大事だ。直ちに国外退去させた方が良かった」とも述べました。そして今回の発言です。このような見解は例によって自民党支持層だけではなく世間一般からも肯定的には受け止められないような気がしますが、でも保守の「本流」や本来の自民党って、こういう立場だったはずです。

 元より自民党はハト派が主流であって、ナアナアで付き合うのが外交の基本、アパルトヘイト政策で国際的な非難を浴びていた南アフリカとだって交流を続けて名誉白人の称号を頂戴するなど、実利が優先で事を荒立てることを好まない政党でした。そうした自民党の姿勢を毅然と批判してきたのが野党であり左派政党であり、とりわけ北朝鮮などの旧東側諸国に厳しい目を向けていたのは日本共産党であるなど、自民党とはその対極にいたわけです。それがいつの間にか自民党が猛々しいだけのお子様政党に堕し、それと対立する政党が今なお自民党の逆の立場を取っているかのごとく誤解されるようになったのが近年の誤りと言えます。

 漁船衝突事件に関しては共産党もまたある種の「毅然とした」主張を繰り広げているわけで、これをネット世論上ではあたかも奇異なことであるかのように語る向きが目立つわけですが、こういう反応を示す連中とはどれだけ政治に疎いのだろうと呆れずにはいられません。共産党とは昔から、そういう政党なんです。他国と揉めそうになってもナアナアで済ませようとする、それもまた融和路線と呼びうる外交方針を採ってきたのは自民党であって左派政党ではないのですから。ともあれ谷垣発言は古い自民党の名残とも言うべきもので、あの小泉にしたって尖閣諸島に中国の活動家が上陸した際には速やかに中国に送り返してきたわけです。この辺の、自分が生きてきた時代に起こったことをマトモに覚えている人がどれだけいるのか、何かと疑問を感じずにはいられません。

 かかる健忘症の世論の元では、改革が足りないと小泉カイカクを右から批判し、何でも民営化、自由化すれば良くなると脳天気に掲げてきた反省なき規制緩和論者が左翼と「設定」されて諸方面からの非難を浴びていたりもします。経済誌で語られていることの多くは目の前で起こっている現実には当てはまらないもので、いうなれば現実の経済問題ではなく経済誌の「お約束」に則って議論されているわけですが、政治も似たようなものです。実際にどういう政治家であるかよりも、世論の中でどういう政治家として「設定」されているか、それに基づいてバッシングしたり支持や不支持を決めたりすることが多いのではないでしょうか。

・・・・・・

 武器を持たない公務員に対する世間の反応は憎悪に満ちています。武器を持たない公務員を公衆の面前でこれ見よがしに罵ってみせれば、それこそ拍手喝采が送られる始末です。いかに「武器を持たない公務員」を痛めつけられるかが、国民にとって最も重要な政治家の資質となっているといっても今や過言ではありません。しかるに「武装した公務員」に対してはどうでしょうか。「武器を持たない公務員」への攻撃を競って躍進した党の政治家であっても、「武装した公務員」への賛辞は惜しまないように見えます(参考)。あまつさえそれが曲解に基づくものであっても「武装した公務員」を非難する言動と受け止められようものなら、直ちに撤回や陳謝を与野党双方から求められる有様です。本物の「小さな政府」であれば武装の有無にかかわらず公務員の規模は小さくあるべきと考えられるものなのですが、この国では武装の有無によって蔑ろにされるものとアンタッチャブルで神聖なものとに分かれているのでしょう。

「政治的発言する人、行事に招くな」防衛省、幹部に通達(朝日新聞)

 防衛省が中江公人事務次官名で、政治的な発言をする団体に防衛省や自衛隊がかかわる行事への参加を控えてもらうよう指示する通達を、同省幹部や陸海空の幕僚長に出していたことがわかった。

 通達は10日付。「隊員の政治的中立性の確保について」と題し、同省や自衛隊が主催したり、関連施設で行われたりする行事に部外の団体が参加する場合(1)政治的行為をしているとの誤解を招くようなことを行わないよう要請する(2)誤解を招く恐れがあるときは、団体の参加を控えてもらう――の2点を指示している。

 きっかけとなったのは、今月3日に埼玉県狭山市の航空自衛隊入間基地で行われた航空祭。同基地を支援する民間団体「入間航友会」の会長が式典で、尖閣諸島沖での中国漁船の衝突事件の対応を取り上げ「一刻も早く菅内閣をぶっつぶして」「民主党政権では国が持たない」とあいさつした。これに民主党議員の一部が強く反発したため、防衛省の政務三役が通達を出すよう指示したという。

 さてマックス・ヴェーバーのようなマトモな学者からだけではなく、石破茂とか小林よしのりなどのアレな連中からも「暴力装置」として言及されてきた軍隊であるところの自衛隊ですが、その自衛隊と政治的な発言をする団体との距離を取るように通達が出されたそうです。これは自衛隊が国家における暴力的手段を占有しているからには当然の措置、文民統制の原則に照らせば「そうでなければならない」ものと言えます。しかるに「武器を持たない公務員」のチンケな違反には激しい怒りを露わにする人が圧倒的多数を占めながら、「武装した公務員」の明白な意図をもった違反行為には擁護の声が相次ぐ世論の元では、こうした通達ですらも反発を買うものなのかも知れません(記事見出しが「招くな」と命令形に書き換えられている辺りにも、その辺の反発が窺えます)。

 この「入間航友会」とやらは極右系の団体なのでしょうけれど、政治的な立場以前の問題として、自衛隊に訴えることの誤りは指摘されてしかるべきです。「一刻も早く菅内閣をぶっつぶして」と自衛隊に訴えたそうですが、暴力装置であるところの軍隊に現内閣を倒せと頼むことの意味を、果たして報道側は理解しているのでしょうか。信頼など置けるはずのない民意によって定まる政治の結果も無惨なものではあるにせよ、その代わりに軍隊の行動によって政治の先行きを決めさせようとする発想がさりとて危険視されることもなく垂れ流されているとしたら、いよいよもって危機が迫っていると言えます。

 

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日本的ビジネスモデル

2010-11-17 23:39:31 | ニュース

経団連会長、TPP参加で労働力として移民奨励(読売新聞)

 日本経団連の米倉弘昌会長は8日の記者会見で、「日本に忠誠を誓う外国からの移住者をどんどん奨励すべきだ」と述べ、人材の移動が自由化される環太平洋経済連携協定(TPP)への日本の参加を、改めて促した。

 米倉会長は「将来の労働力は足りず、需要をつくりだす消費人口も減る」と述べ、積極的な移民の受け入れが必要との考えを強調した。

 ちょっと前のニュースですが、いかにも日本の財界人の考えそうなことと言えます。とりあえずTPP参加や外国からの移住を奨励することに関してはさておき、この移住者に「日本に忠誠を誓う」と冠が載せられているのはどうしたものでしょうか。まずこの場合に「日本」とは何を指すのか、あるいは「忠誠」と言うからには単にビジネス目的の来訪者は歓迎しないのかと、ツッコミどころは多々あります。たぶん、国内企業にとって脅威となりかねない外資系企業の進出は望んでいないのでしょう。そうではなく、来て欲しいのはあくまで企業が搾取できる対象としての「忠誠を誓う」外国人である、そう考えた結果としての発言であるように見えます。

 で、「将来の労働力は足りず~」とは決まり文句のようなものとなっていますけれど、しかしこの10年来の雇用情勢を考えてください。特定業界への偏在はあっても、総数として労働力が不足することなど微塵もなかったはずです。ましてや昨年頃からは空前の「超」買い手市場で、今や中小ブラック企業でも大学新卒者を選り取り見取りの時代です。先日の記事でも取り上げましたけれど、企業業績の好調ぶりとは裏腹に採用抑制はエスカレートするばかり、にも関わらず企業側は「もっと容易に社員を解雇できるようにしろ!」と叫び続けているほどです。これだけ労働力が余っている、景気回復が続いても労働力の需給ギャップは大きくなるばかりで今後もより一層、就職できない人は増えることが予測される中で、「将来の労働力は足りず~」などと言えるのは、あまりにも現実を知らない人間の言葉としか思えません。

参考、労働力が不足するから労働力を輸入するのではない。労働力の再生産にコストを払う気が無いから労働力を輸入するのだ - 模型とかキャラ弁とか歴史とか

 上記リンク先のエントリは秀逸ですので一度お読みになることをお勧めします。この表題が明言する通り、財界筋が移住者を積極的に受け入れよと説くのは、断じて労働力が不足するからではなく(余っているのですから!)、あくまで労働力の再生産にコストを払う気がないからです。「需要を作り出す消費人口も減る」と経団連会長は語っていますが、そもそも需要を作り出す力が弱まったのは企業が従業員に払うべき給与を削り続け、国民の可処分所得を減らしてきた(その代わりに企業収益を増やした)結果であり、消費人口が減るのは随分と先の話でしょう。その消費人口の減少にしたところで、労働環境の悪化や低賃金が少子化を後押ししてきた結果でもあります。労働力と消費人口を再生産するために適正なコストを投じてきたのならば、その将来的な減少は回避できるはずなのですが。

 本来なら雇用主が従業員に適正な賃金を支払うことで国民の可処分所得も増え、それで内需も高まるものなのです。しかるに企業側が資本を蓄積させるばかりで労働者側に還元しないことで、このサイクルを意図的に破壊してきたのが近年の日本経済と言えます。圧倒的な国際競争力を背景にして国家レベルでは巨額の経常黒字を蓄えながら、なぜ日本は貧しくなるばかりなのでしょうか。働く人の取り分を削って会社の利益を確保する、国内でお金を循環させずに海外にモノを売って外貨を稼ぐ、こういう野蛮な収奪型のビジネスモデルが持続可能なわけがありません。海外からの移住者という新たな搾取の対象を探ることで日本的なビジネスモデルの延命を財界筋は図っているようですが、こんなやり方を許している限り日本経済の凋落は終わることがないでしょう。

 

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景気回復は続くけれど

2010-11-15 23:57:50 | ニュース

9月中間の経常益2.5倍=通期も上方修正相次ぐ-上場企業・時事通信集計(時事通信)

 時事通信社が大企業の2010年9月中間連結決算を6日集計したところ、新興国を中心に需要が増加、売上高は前年同期比11.2%増、経常利益は2.45倍の大幅増益となった。11年3月期(通期)業績予想は、為替相場で円高が進み1ドル=80円台まで上昇したにもかかわらず、足元業績の好調を受けて上方修正する企業が相次いだ。

 東証1部上場の3月期決算企業(金融を除く)のうち、これまで9月中間業績を開示した742社を対象に集計した。会社数では全体の6割強を占める。経営統合や買収で前年同期と比較できない企業は除外し、米国会計基準など日本の会計基準を使わない場合は経常利益の代わりに税引き前利益を使用した。

 企業の下期に対する見通しは慎重なものの、9月中間実績が予想を上回った企業が多く、通期の経常利益予想を上方修正した企業は279社と全体のほぼ4割に上った。輸出産業の間では下期の想定為替レートを従来の1ドル=90円前後から80~85円に修正する動きが相次いだが、売り上げ増加や経費節減が円高による利益の目減りを吸収する見込み。自動車ではトヨタ自動車やホンダ、電機ではソニーや日立製作所など大手企業の利益増額修正が目立った。

 相次ぐ上方修正を受けて、通期の連結経常利益予想は前期比46.9%増となり、4~6月期決算を開示した8月中旬時点予想(38.8%増)から大幅に改善する。

 相変わらず不況であるかのごとく語られ続けている昨今ですが、企業業績の方は引き続き好調のようです。好業績が続くと「先行きに不安材料が~」などと言い出して不況っぽいイメージを装うのが財界筋の常でもありますが、しかるに中間実績が予想を上回る企業が相次いだことが伝えられています。従業員はさておき、会社は儲かっているわけですね。

大学生の就職内定率、過去最低の60%割れ 10月時点(朝日新聞)

 来春卒業予定の大学生の10月1日時点の就職内定率が57.6%(前年同期比4.9ポイント減)に落ち込み、政府が調査を始めた1996年以降、最低となることが分かった。2008年以降の不景気が深刻化し、「就職氷河期」を下回るほど厳しい就職環境に陥っていることが改めて浮き彫りになった。

 内定率は文部科学、厚生労働両省が調査しており、来週前半にも正式に公表される。短大生や専門学校生を含めた内定率も前年を下回る見通し。

 大学生の10月1日時点の内定率は、ピークだった97年の73.6%から03年に60.2%まで下落した後、08年まで徐々に回復していた。しかし同年秋のリーマン・ショックを受けて企業は採用数を大幅に絞り込み、09年には前年比7.4ポイント減の62.5%と、過去3番目の低さまで下落。その後も景気回復と採用枠拡大の兆しは見えず、卒業まで半年を切った大学生にとって、これまでにない厳しい環境となっている。

 この朝日新聞の記事には勘違いと言いますか、ミスリーディングがあると思います。「その後も景気回復と採用枠拡大の兆しは見えず」と、さも当たり前のように書かれていますけれど、景気はとっくに回復局面に戻って久しいのですから。ましてや大学新卒者ともなれば大企業志向が強く、その大企業の好況ぶりに関しては冒頭でも伝えられているところです。ここは「その後も景気回復 と は 裏 腹 に 採用枠拡大の兆しは見えず」とでも書かなければ、新聞として事実を正しく報道できているとは言えないでしょう。

 もっとも6割を切って過去最低を記録してさえ大学新卒者はマシな方で、高卒はもっと大変だったり、既卒で中途採用枠ともなると1年で半減するほどの急激な採用枠縮小が見られるわけです(参考)。大手に入れない大学新卒者に向けて「中小企業に目を向けろ」などと無責任なことを言う人も少なくないですけれど、今や中小企業にすら大学新卒者が殺到する有様、その結果として既卒者が中途で入り込む余地が失われているところもあるはずです。

女子大生から現金詐取=就職あっせん装い近づく―容疑で61歳男逮捕・警視庁(時事通信)

 大手電機メーカー幹部を名乗り、就職あっせんをすると装って近づき、女子大学生(22)から現金をだまし取ったとして、警視庁丸の内署は12日までに、詐欺容疑で、住所不定、無職岡本耕一容疑者(61)を逮捕した。

 同署によると、容疑を認め、「ほかにも3、4件やった」と供述。就職活動中の大学生約60人分とみられる電話番号が書かれたノートを持っており、関連を調べている。

 逮捕容疑は9日午後9時ごろ、JR東京駅八重洲中央口で、都内にある私立大4年の女子学生に、「5倍にして返すから、カプセルホテルの宿泊費を貸して」と偽り、現金8000円を詐取した疑い。

 同署によると、同容疑者は女子学生が入社試験の面接に向かっていた際、「私は電機メーカーの本部長だ。話を聞きたい」と声を掛け、約3時間にわたり会食。同メーカーについて説明し、会社訪問に応じる約束もした。

クレジット詐欺、免許偽造役の男逮捕=架空面接でデータ入手―宮城県警など(時事通信)

 架空の就職面接会を訪れた求職者の運転免許証データを使ったクレジット詐欺事件で、宮城、岩手、千葉の3県警は9日、有印私文書偽造や詐欺容疑などで、偽造役とされる水産卸業者宮田義久容疑者(42)=千葉県松戸市松戸=を逮捕、弁当会社役員清水幸治容疑者(46)=東京都中野区弥生町=を再逮捕した。宮城県警仙台中央署によると、宮田容疑者は「全然関係ない」と容疑を否認している。同事件の逮捕者はこれで11人となった。

 同署などによると、このグループは総合商社や輸入業者を装い、架空の求人広告を情報誌に掲載。面接会で求職者の免許証データをスキャンする「入手役」や、偽造免許証を使って商品をだまし取る「買い子役」など役割を分担し高額商品をクレジットカードで購入、換金して利益を得ていた。

 被害は東北、関東地方などの14県で計約600万円に上るとみられている。

 で、こういう事件も起こっています。特に前者などは引っかかる方もどうかと思えるようなところがありますけれど、昨今の採用側と求職者の力関係であれば、採用過程で何が起こっても不思議ではないと考えられているのかも知れません。内定後や採用後そして入社後に、どう見ても仕事とは関係のない理不尽な要求を突きつけられることが珍しくない日本の労働現場ではありますが、採用段階だって似たようなものなのでしょう。圧迫面接と称して求職者側を試すかのごとき振る舞いに出るのも日本流です、採用側が非常識な態度を取ったからといって、そこで席を立つようであれば就職は難しい、その難しさがエスカレートしてもいるわけです。ならば採用側の人間に、いかにも怪しいところがあったとして求職者側に何ができるのでしょうか? あろう事か公的機関であるハローワーク経由の求人ですらも詐欺に使われていたりします(参考)。企業業績は好調でも雇用は減るばかり、雇う側と雇われる側の力関係はますますもって不健全なものとなり、就職を餌にすれば簡単にカモが食いついてくる、求職者は詐欺かも知れないと疑いつつも食いつかざるを得ない、そんな悲惨な状況ができあがっているのです。

 

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むしろ中国国民の方が冷静なのかも知れない

2010-11-13 23:02:00 | ニュース

日本のビデオ流出に英語メディアは反応薄く 右傾化は懸念(gooニュース・JAPANなニュース)

英語メディアが伝える「JAPAN」をご紹介するこのコラム、今週は尖閣諸島沖の漁船衝突ビデオ流出についてです。と言っても、英語メディアの反応はどちらかというと薄いのですが。「ウィキリークス」による大リークにはあんなに騒いだのに。衝突ビデオ流出について「政府の管理体制」とか「犯人はだれだ」を気にする日本メディアと違って、英語メディアはもっぱら日中関係の悪化や、日本の右傾化を気にしているようです。

(中略)

記事はさらに尖閣諸島の領有権をめぐっては、6日に都内で開かれた反中デモに3000人以上が参加したことや、中国でも複数都市で学生たち数千人が日本に抗議したと短く紹介。その上で、読売新聞社と中国・新華社通信発行の週刊誌「瞭望東方週刊」による日中共同世論調査に言及し、日本では過去最多の87%が中国を「信頼できない」と答え、中国でも79%が日本を「信頼できない」と答えていると伝えています。

(中略)

日中国民同士の感情が改善されない問題については、こちらもビデオ流出前の記事ですが、英『インディペンデント』紙が「ナショナリズムが台頭する国、日本」という記事を掲載。原題の「Japan: The Land of the Rising Nationalism」という表現は、イギリス・メディアが日本の枕詞としてことさらに使いたがる「The Land of the Rising Sun(日出処、ひいづるところ、日の本の国)」のもじりです。

記事は、「ベビーフェイス」な30代の右翼団体代表が「中国人はわれわれを馬鹿にしている」と憤る様子や、普段は閑静な東京・元麻布の界隈が、中国大使館を取り囲む反中デモで騒然としている様子を紹介しています。

 引用した箇所で言及されている反中デモに関して、「国内メディアが報じていない!」などと吹き上がる向きもあったのは記憶に新しいところですが、その辺は心配ご無用、日本の恥はきっちり国外メディアによって伝えられているようです。そして日本は大丈夫かと懸念されているわけですね。

 概ね自国の恥を伝えることに国内メディアは積極的ではありません。日本がそうであるように中国でも自国の恥を大きく報じることは好まれないわけで、中国メディアもまた国内で発生する反日デモの類を報道することには及び腰になっているものと推測されます。しかるに自国の恥ではなく、隣国の恥に関してはどうでしょうか? 自国の恥を報道しない分だけ、隣国の恥に関しては大々的に伝えたがる傾向は日本以外でも見られるように思います。

 日本の大手メディアは「自国の恥」である反中デモをスルーしようとした一方で、「隣国の恥」である反日デモに関しては盛んに報道してきました。そこでメディアを通して映し出された世界が全てを見知ったかのごとく勘違いし、中国人は日本にとんでもない敵意を抱いているのだと、さらなる勘違いを深めてしまう人も少なからずいるように思われます。テレビに映らず、新聞にも載らない圧倒的多数人々の存在を想像できないと、一部の特殊な例を全体像に適用する愚を犯してしまうわけです。

 とりあえず日本を訪れる中国人観光客には全くと言っていいほど減る様子が見られないとか、中国側で領土問題を盛んに取り上げているのは若者向けのメディアばかりで一般向けのメディアは特に騒いでいないとかも聞きますが、日本のメディアに載らない「普通の」中国人の対日感情はどうなのでしょうか。反日デモを装った反政府デモに参加する一部の中国人ではなく、10億で割った平均像を考えてみるべきです。それは日本人の平均像に比してどうなのか……

「中国信頼せず」87%、対日不信は79%(読売新聞)

 読売新聞社と中国・新華社通信発行の週刊誌「瞭望東方週刊」が実施した日中共同世論調査(電話方式)で、日本では現在の日中関係を「悪い」と思う人は90%、中国を「信頼できない」は87%に達した。

 中国側でも日中関係が「悪い」は81%、日本を「信頼できない」は79%に上った。

 日本側では昨年、日中関係について「良い」45%と「悪い」47%が 拮抗 ( きっこう ) していた。過去の日本側調査は面接方式のため単純比較はできないが、対中意識の急激な悪化は明らかだ。2007年からの共同調査で「悪い」の最高は08年の57%で、今回は極めて高い水準だ。中国側は昨年は「良い50%―悪い43%」だった。

 互いの国を「信頼できない」は、昨年も両国で多数を占めたが、日本は69%、中国は63%だった。

 冒頭の報道と被りますが、日中双方のメディアによる世論調査結果が紹介されています。そしてここで注目したいのは、相手国を「信頼できない」と回答した人の割合は日本の方が中国よりも高いということです。前年度調査からの変動幅もまた日本の方が上回っており、隣国に対してより強く悪感情を抱いているのは中国ではなく日本である可能性を示唆しています。あまり大きな差ではないにせよ、全体的に見て中国人は日本人ほど隣国を嫌っていない、一方で日本人は周囲に不信の目を向けるばかり、それでいて「(中国などの隣国から)不当な敵意を向けられている」かのごとき被害妄想を抱いているとしたら、何とも憐れなピエロです。本当に周りに敵意を向けているのは自分だというのに。

交渉6割、武力4割弱=領土紛争解決で中国世論調査(時事通信)

 中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報は8日、中国が周辺国との領土紛争をどのように解決すべきかという質問に、「交渉による解決を堅持する」と答えた人が59.3%、「必要なときは武力で解決する」が36.5%に上ったとする世論調査結果を掲載した。

 同紙の調査部門が5日から7日にかけ、北京、上海など7都市の18歳以上を対象に無作為で電話による調査を実施。1305人から回答を得た。

 日本をはじめ周辺国との島をめぐる紛争に少しでも関心のある人は94.9%に上り、特に男性が高かった。中国の基本戦術を尋ねた質問に対しては「中国の主張する海上境界を実現させる」が39.8%、「紛争を棚上げして共同開発する」が35.3%、「交渉で海上境界を引き直す」が18.3%と、意見が割れた。

 この辺は同時期の条件を揃えた日本との比較調査があるわけではないのですが、いかがなものでしょうか。「必要なときは武力で解決する」が36.5%と伝えられる一方、「交渉による解決を堅持する」と答えた人が59.3%に達したそうです。日本であればどうでしょう、圧力をかけることが可能と信じられている国との間で問題が持ち上がった際に「対話」か「圧力」かの選択肢が示されたとして、あくまで交渉による解決を堅持すると答える人が6割に届くとは、なかなか考えにくいところです。

 より具体的な解決策としては「中国の主張する海上境界を実現させる」が39.8%と最多を占めつつも、「紛争を棚上げして共同開発する」が35.3%と接近しています。これまた日本よりは、柔軟な考え方の持ち主が多いことを感じさせます。日本の場合、とりわけ国会レベルともなると紛争を棚上げにして実利を取りに行こうとするような発想は古い自民党もろとも完全に放逐され、自国の唱える正義を実現させるべく勇ましい発言を繰り返す政治家ばかりです。少なくとも永田町で世論調査をするのなら、「自国の主張する海上境界を実現させる」との回答が9割を占めるでしょう。世論はもうちょっと多様性がありそうなものですが、それでも自国の主張を通すことにこだわる人の割合は中国のそれに比べれば格段に高い気がします。

 中国が日本のGDPを抜くのは、人口規模を考えればごく自然なことです。人口が10倍の国に、国単位のGDPで上を行かれるのは別に驚くようなことでもなければ、抗う必要のあることでもないでしょう(日本のあまりの低成長ぶりはさておき)。それよりも他に懸念されることがあるとするならば、国民の精神的な成熟度合いにおいて、中国の方が先に行ってしまったのではないかということです。中国人よりも死刑が好きで、中国人よりも隣国への嫌悪を露わにし、領土問題では中国人よりもヒステリックな反応を示す、そうした傾向を日本は垣間見せるようになってはないでしょうか。

 

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相変わらず狙いが定まっていない

2010-11-11 23:22:25 | ニュース

子ども手当所得制限案、年収1千万か2千万(読売新聞)

 2011年度の子ども手当について、受給対象となる世帯に一定の所得制限を設ける案が政府内で浮上している。

 具体的な目安として、年収1000万円または2000万円の世帯を上限とする案が有力視されている。

 11年度の子ども手当をめぐっては、3歳未満の子どもを持つ世帯に限って月額1万3000円から2万円に引き上げる案が検討されており、手当の支給総額が膨らむのを抑えるのが狙いだ。

 「手当の支給総額が膨らむのを抑えるのが狙いだ」と引用元記事では断言されていますけれど、本気なのでしょうか。そもそも与党政治家の言葉の中に支給総額を抑え込む意図を示唆するものがあったのか、あるいは記者が勝手に断定しているだけなのか、ちょっと気になるところです。昨年末の鳩山内閣時代にも年収2000万円以上は支給の対象外とするプランが検討されていたことが報じられただけに(参考)今回もその再燃と言えそうですが、意図はどうにも不明確であるように思われます。

 そもそも年収が1000万を超える世帯ともなりますと10%ほどですし、2000万円以上ともなると1%程度にしかなりません。頭数は少なくとも収入は多い人たちなので所得に応じて課税すれば結構な財源になる人々ではありますが、しかるに子ども手当を不支給にした場合の影響はどうなのでしょうか。言うまでもなく子ども手当は富裕層でも貧困層でも一律、定額です。そうである以上、頭数は多くない富裕層を支給の対象から外したところで支給総額への影響は小さいわけです。本当に「支給総額が膨らむのを抑えるのが狙い」であるならば、もっと支給判定ラインを下げないと意味がありません。

 子ども手当をどう評価するか、あるいは支給の制限を設けるかどうかといった事柄には議論の余地もあるでしょうけれど、それ以前に「何を意図しているのか」も掘り下げて考えられるべきものと思います。少子化対策なのか景気対策なのか貧困対策なのか世論対策なのか、何を狙っているか次第で取るべき方策も変わってきますし、評価の仕方も変わってくるものですから。とりあえず所得制限の意図は何なのでしょう? 「支給総額が膨らむのを抑えるのが狙い」であるとしたら、今の段階で失敗が見えているのですが。

 仮に支給総額を抑えたいのならば、もうちょっと低いラインに上限を設定する必要があります。まぁ何をやっても反発を買いそうなジリ貧の現政権ですけれど、どの辺にラインを設定すれば「本当に」支給総額を抑えられ、かつ理解を得られやすいでしょうか。とりあえず私だったら「公務員給与を基準にします」「平均的な公務員より収入の多い世帯は支給の対象外です」みたいに説明してみたいところです。たいていの人の頭の中では公務員給与は非常に高いようですから、自分は不支給の対象には含まれないと思い込む中流層も少なからず出てくるのではないでしょうか。しかるに蓋を開けてみたら……ということで最終的には世論の反発を買いそうなところではありますが、それならいっそのこと「公務員所得より高給の人は所得税増税」ぐらいのことを訴えてみても面白いような気がします。

 

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どっちに転んでも住民にはいい迷惑かも

2010-11-09 23:13:15 | ニュース

八ツ場ダム中止前提を撤回 国交相、来年秋に結論(共同通信)

 馬淵澄夫国土交通相は6日午後、八ツ場ダム(群馬県)の建設について「私が大臣のうちは『中止の方向性』という言葉に言及しない」と述べ、前原誠司前国交相が表明した中止前提の方針を事実上、撤回した。建設予定地を視察後、大沢正明群馬県知事らとの意見交換で明らかにした。八ツ場ダム建設の是非検証する結果を出す時期は「2012年度予算案に反映できる時期で(来年の)秋ごろだ」と説明した。

 何というか、極端から極端に飛んでいる気がしますね。政権交代直後の民主党に勢いがあった頃は「話し合いはするが建設中止に変わりはない」と、初めに結論ありきの態度でそれもまたどうかと思われたものですが、今度は「『中止の方向性』という言葉に言及しない」そうです。建設続行確定というわけではないにせよ、「中止の方向性」には言及しないとあらかじめ決めておくのもどうなのでしょうか。私だったら「中止も選択肢に含めた事業計画の見直し」ぐらいに止めるところですが、とかく曖昧な表現は好まれないのかも知れません。

馬淵国交相、6日に八ツ場視察 前原氏以来10カ月ぶり(共同通信)

 国が建設中止を表明している八ツ場ダム(群馬県)をめぐり、馬淵国土交通相が6日に建設予定地を視察することが1日、決まった。三井国交副大臣が記者会見で明らかにした。大沢群馬県知事ら関係自治体の首長と会談する予定だ。国交省トップの現地入りは、前原前国交相が1月に訪れて以来、約10カ月ぶり。三井氏は視察の目的について「工事の進ちょく状況や地元住民の現状を把握する」と説明。

 ちなみに民主党政権発足当初は大いに話題になった八ツ場ダムですが、トップの現地入りは10ヶ月ぶりになるのだそうです。この辺の現地入り頻度の「相場」は寡聞にして知るところではないのですが、建設中止は民主党の目玉政策の一つでもあったことを思うと、ちょっと扱いがぞんざいであるような気もします(そもそも大々的に中止を宣言しておきながら、ダム本体の工事が棚上げになっただけでダム周縁部に関してはダラダラ継続中とのことですし)。パフォーマンスとして大々的に中止を打ち出しておきながら全国的な関心が冷めた後はほったらかしというのでは、現地の人も良い迷惑でしょう。

八ツ場ダム 「前進」「安心できぬ」 住民、ぶれる民主に複雑(産経新聞)

 馬淵澄夫国土交通相が6日、八ツ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)の建設中止方針を白紙撤回したことを受け、建設推進派の地元住民からは「ようやく前進する」と歓迎の声が上がった。一方で「政府に振り回されるだけになるのではないか」と冷ややかな見方も根強く、地元住民は複雑な心境をのぞかせた。

(中略)

 こうした動きに対し、水没予定地の川原湯温泉で4月まで旅館を経営していた豊田幹雄さん(44)は「先の見えない状態から、これで一歩前進した」と歓迎。川原湯地区ダム対策委員会の樋田洋二委員長(63)は「なるべく早く大臣と話をしたい」と語り、馬淵国交相と地元住民の意見交換会開催に期待を寄せた。

 ただ、25日に休業する同温泉旅館「高田屋」の主人、豊田明美さん(45)は「政府は、まだ建設するとは決めていないので安心できない。国に振り回され、一喜一憂するのはもうたくさんだ」と、ぶれる民主党政権の対応を批判。その上で、建設の是非を決める検証作業について、「誰もが納得できる結果を出してほしい」と注文をつけた。

 この辺で紹介されている地元住民の声から窺われるのは、建設推進というより「もう振り回さないでくれ」という悲鳴であるように思われます。明確に賛成、明確に反対というより、政府の方針次第で将来的にどうなるのかわからなくなってしまう、そうした状況に不満を持つ人が多いのではないでしょうか。政権交代直後は建設続行を求める声が地域住民からもそれなりにあったと伝えられたものですが、その多くはダム建設の必要性を感じたなどというものではなく、「今さら決定を翻されても困る!」という思いから新政権の方針に反対の声を上げたものと推測されます。

「有言実行内閣」 また腰砕け TPP「後退」 新農水族に屈す(産経新聞)

 「有言実行内閣」はどこへ行った-。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP=トランス・パシフィック・パートナーシップ)の基本方針は「参加を目指す」との表記さえ見送られた。所信表明演説で唐突にTPP参加をぶち上げた菅直人首相だったが、「新農水族」の抵抗であっさり腰砕けに。折衝の経緯を検証すると、与党内のパワーゲームにばかり心を砕く閣僚の姿と、首相の指導力の欠如ばかりが浮かび上がる。

 TPPに関して問題視されがちな農業分野に関しては保護主義を貫いたところで何かが好転するものとも思えなかったりするわけですが、それはさておきTPP「後退」の要因として「新農水族に屈す」と挙げられている辺りはどうでしょうか。引用元は産経新聞ですけれど、産経新聞でなくともこうした考え方をする人は多いように思います。つまり何かが進展しなかった場合に、その原因を「抵抗勢力(いわゆる族議員であったり官僚であったり)」に敗れたからだと説明するわけです。そこで抵抗勢力を打ち破れない惰弱な現政権に変わって強いリーダーシップを持った政治家や政党が望まれる、と。

 この辺もまた「勝ち負け」を優先する思考と言えます。自説に反対する相手を打ち負かすか、あるいは屈するか、こういう基準で物事が計られ、そして当然のことながら「勝ち」を追い求めることになるわけです。そこで八ツ場ダムに戻ります。このダムの問題もまた「勝ち負け」で考えられがちではないでしょうか。建設推進派あるいは中止派をそれぞれ対立陣営が貶めようとする、利権だの何だのを持ち出して相手側にネガティヴな印象を与えようとする動きも少なからずあったはずです。結局、最終的な結論が建設中止となったとしても一方の側を黙らせて決定を下すようであれば、政治の「やり方」に関しては従来路線とりわけ小泉路線から何ら変わるものではないように思われます。明確な変化が生じたと言えるのは、どっちが勝った負けたというレベルではなく、中止にせよ続行にせよ反対の立場に立つ住民や自治体にも損をさせないよう、双方が納得いく形で話が収められた時でしょうね。

 

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大半の人にはどうでも良いことと思われますが

2010-11-08 23:19:07 | 編集雑記

 大半の人にはどうでも良いことと思われますが、ようやく仕事が決まりました。あんまり満足できる仕事ではないので決してめでたくはないのですが、これ以上失業期間が延びると本格的にヤヴァイので色々と譲渡です。しかも例によってまた派遣です。失業保険が出ている間は正規雇用の求人メインで応募していたのですが、ハナも引っかけられなかったのでどうしようもありません。とりあえずこれからは失職してから次の仕事を探すのではなく、在職期間中に細々とでも転職活動を続けるようにしたいと思います。

 ちなみに派遣期間には原則3年の制限があって、3年以上続けて雇用する場合は直接雇用への切替が求められます。これを嫌って派遣先企業は派遣社員との契約を打ち切るので、むしろ規制緩和で雇用期間の制限をなくすべきだと主張するアンポンタンもいるわけです。ただ「政令26業務」という派遣期間の制限を受けない「特殊な」枠がありまして、「事務用機器操作の業務(パソコンを使った仕事)」とか「ファイリングの業務(書類整理)」等であれば制度上は何年でも派遣社員としての契約が可能です。ですからホワイトカラーの派遣社員に関しては実質的に派遣期間の制限がなく、私もまた前回も前々回も、そして今回もまた「政令26業務」に該当する派遣期間に制限のない契約だったりします。にも関わらず何度となく契約打ち切りにあってきたわけですし、今回の仕事もいずれ打ち切られるでしょう(そうなる前に何とか逃げ切りたいものです)。ホワイトカラーの派遣社員が切り捨てられるのは、派遣期間の制限とは別の理由からです。

 なにはともあれ前の職場に比べると勤務時間が長い上に勤務地が遠いため、ちょっと多忙になります。ブログの更新がない日もそれなりに出てくることになりそうです。特にコメント欄に関してはほったらかしになることもあるかと思いますが、別にシカトしているわけではありませんので返答がなくてもご気分を害されませんよう、ご理解をお願いいたします。

 

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