非国民通信

ノーモア・コイズミ

似たような制度でも、陣営が違えば扱いも違う

2024-07-21 21:20:04 | 政治・国際

西側がそれでグルジアを批判した「外国の代理人」法案をカナダが可決(スプートニク)

カナダは、米国の外国代理人登録法(FARA)よりも厳格な法案をわずか1か月半で可決した。これにロシア外務省のザハロワ報道官が注目し、トルドー政権の指示で急いで提出された文書に一部の議員が目を通していなかったのを認めたことに言及した。ザハロワ氏は、これほど重要な法制度の改正としては前例のない速さだと指摘した。

法案には以下の提案が含まれている:
・外国代理人登録リストの作成
・大使館職員の制限
・外国の影響を管理する機構の設置

 

 この法案については当然のことながら公にされているのですが(参考)、日本語で読めるメディアで報じているのはロシアのスプートニクと、法輪功の大紀元ぐらいしか見つけられませんでした(参考)。まぁ大紀元は中国におけるウイグル弾圧の情報源として西側諸国では大いに信頼されている、ということは伝えておくべきでしょうか。

 本年の5月には州じゃない方のジョージアにて、同様の外国代理人登録に関する法律が可決されました。これは日本国内の大手メディアでも頻繁に報道され「ロシアの法律」「民主主義の後退」などとレッテルを貼られてきたわけです。事実関係としてはザハロワ報道官も正しく指摘するとおり、アメリカには先駆者として既に同様の法律があります(参考)。アメリカの州にあやかって国名を改称するような国がアメリカの法律を模倣しただけなのに、西側諸国のメディアは挙って事実をねじ曲げて報道してきた、この偏向ぶりは強く意識されるべきでしょう

 

政府が「メタ情報」を平時監視へ 能動的サイバー防御巡り検討(共同通信)

 政府はサイバー攻撃に先手を打って被害を未然に防ぐ「能動的サイバー防御」を巡り、インターネットの住所に当たるIPアドレスや通信量の変化などの付随的な「メタ情報」について、政府機関による監視を平時から可能とする方向で検討に入った。プライバシーに配慮し、メールの件名や本文のようなデータ本体は原則、収集の対象外とする。複数の政府関係者が14日明らかにした。

 

 この辺も一応は報道されているわけですが、あまり話題にはなっていないように思われます。曰く国内のデータ通信を政府機関によって監視する、データ本体は「原則」収集の対象外とするとのこと、「原則」とは具体的に何を例外とするのでしょうかね? よく西側諸国が中国やロシアの企業との取引を抑制する口実として、データが相手国の政府に渡される云々と吹聴されていますけれど、では日本やアメリカ、イスラエルなどの同志国であれば違うのか、という疑問は尽きません。少なくとも上記の検討事項が通れば、日本政府によって通信の秘密が侵されることになる、日本国内でのビジネスは中国やロシアにおけるものと同様にリスクがあると言えます。

 結局のところ、どこの国も根本的な制度は似たようなものです。アメリカにもロシアにも、州じゃない方のジョージアにもカナダにも外国の代理人を監視する制度はありますし、中国にも日本にも民間の活動情報を政府が監視・収集する取り組みはある、制度面ではどこの国も大差ないと言うことができます。違うのは制度ではなく「陣営」に過ぎない、アメリカの傘下にある国を信頼できると見なし、アメリカの意向に従わない国を危険と見なしている、ただそれだけのことです。

 

・・・・・

 

 先般はトランプ大統領候補が演説中に銃撃される事件が起きました。そしてお決まりの「テロは許されない」「民主主義への脅威」等といった非難が国内報道にも並んだわけです。しかし2014年に武装勢力が議会を包囲して大統領を追放したウクライナを巡っての言説はどうだったでしょうか? 結果として親米政権が樹立された場合、その暴力革命は「マイダン革命」や「アラブの春」などと呼ばれ西側諸国から賞賛されてきました。一方でアメリカの意向に沿わない政権が樹立された場合はクーデターとして非難される等々、結局は武力による現状変更もまた「陣営」次第で賛否が分かれると言えます。

 暴力革命と聞くと一概に否定する人が圧倒的多数を占めているはずですが、しかし現実にウクライナで暴力革命が発生した際にこれを非難した人は極めて稀でした。結局のところ、制度や行為そのものは問題ではない、単純にアメリカ側に属しているかどうかで評価している、そんな人々が西側諸国で主流派を構成しています。日本は専ら差別する側に立っているからこそ、この歪さには全く気づかないのが現状かも知れません。しかし差別される側、不公正に取り扱われてきた側にとって驕れるアメリカとその衛星国の言動は白々しいものにしか映っていないことでしょう。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

目次

2024-07-21 00:00:00 | 目次


なんだかもう、このカテゴリ分けが全く無意味になりつつあります……

社会       最終更新  2024/ 6/23

雇用・経済    最終更新  2024/ 6/ 9

政治・国際    最終更新  2024/ 7/21

文芸欄      最終更新  2024/ 2/23

編集雑記・小ネタ 最終更新  2024/ 7/12

 

Rebellion (rebellion0000) は Twitter(現X) を利用しています

 

↑暇ならクリックしてやってください


 このサイトはリンクフリーです。 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

各国の選挙を振り返って

2024-07-14 21:27:50 | 政治・国際

 先日の東京都知事選ですが、投票率は60%超で平成では過去2番目の高水準だったそうです。2012年の都知事選には及ばなかったものの、このときは石原慎太郎が職を辞しての争いだったのに対し、今回は圧倒的優位にある現職がそのまま立候補しています。それでも冷めた選挙にならなかったのは、大幅に増えた泡沫候補達の影響もあるでしょうか。中には悪ふざけとの誹りを受けても仕方のない候補者もいましたけれど、そうしたネタ候補もまた選挙への関心を高める上では役に立っていたのかも知れません。

 投票率が上がるのは一般的に良いこととされますが、この結果として割を食ったのが蓮舫で、当初は小池百合子の対抗馬と目されながら石丸伸二にすら及ばない3位という結果に終わりました。蓮舫に限らず民主党系の候補は若年層の支持が薄く、投票率が低迷して相対的に中高年層の票が多数を占める状態では一定の強みを見せるものの、今回のように選挙への関心が高まり若年層の投票も増えるようになると2位にもなれないわけです。政治家が子供受けの良いキャラクターを目指す必要はありませんけれど、支持層が中高年に偏る立憲民主党の弱点は自覚されるべきでしょうね。

 なお立憲・国民の民主両陣営は今回の敗北の責任を共産党に転嫁したいようで、共産党との連携解消を主張する議員も散見されます。実際どうなるかは分かりませんけれど、もし野党共闘という茶番が解消されるのであればどうなるのでしょう。民主党に道を譲って立候補の取り下げを続けてきた結果として共産党は少しずつですが着実に議席と得票を減らしてきました。共産党を滅ぼしたい、共産党に社民党と同じ末路を辿らせたい、反共であればこそ共産党との選挙協力は維持すべき、というのが私の見解ですが、両民主党や連合にどれだけの将来計画があるかは今ひとつ分かりません。

 東京都知事選挙はそれなりに投票率が高かった一方、ヨソの国に目を転じると盛り上がりに欠けたのか投票率の低い選挙もありました。その一つはイランの大統領選挙で、最初の投票では40%、決選投票でも結局は50%に届かない結果に終わったそうです。前大統領の事故死を受けて、今後の方向性を左右しかねない選挙であったにも拘わらず、イラン国民は冷めた目で見ていたことが分かります。

 決選投票に勝利したのは元保健相のペゼシュキアンで、氏を「改革派」と呼ぶ西側メディアからは一定の期待が寄せられているようです。イスラエルの蛮行を制止する上で重要な役割を担っているイランが欧米に媚びるようになるとパレスチナが見捨てられる恐れもあり決して歓迎できる事態ではありませんが、しかしイラン国民の低い投票率に見られる冷めた目線からすると、結局は最高指導者の決定が優先であって大統領についてはあまり重要でないとも考えられます。

 大きな選挙は続き、イギリスでは与党・保守党が大敗し、野党・労働党が政権を奪回するに至りました。もっとも現在の労働党は党内の左派を排斥して「中道」路線で染められており、その政策スタンスは保守党と大きく変わるものではありません。イギリスの場合は純粋に与党の失策のために別の党へ票が移っただけであり、日本における自民党から民主党への政権交代と同様、与党は変わっても根本的な政策は変わらない、あまり期待の持てない政権交代で終わる可能性は高いことでしょう。

 逆に転換の見込みがあるのはフランスで、第一回投票では右派が第一党を窺う勢いだったのですが、その後の決選投票で大きく覆り左派がまさかの第一勢力を占めるに至りました。ただ第一勢力と言っても過半数には届かず、左派・右派・中道のいずれも何らかの形で連立を組む必要に迫られています。この連立次第でフランスの政策は変わる可能性もあるものの、中道勢力が上手いこと立ち回ってキャスティング・ボートを握ってしまうと、これまで何も変わらない状況が続くと懸念されるだけに、今しばらくは状況を見守る必要がありそうです。

 ここで「中道」とは何かについて少し考えて欲しいのですが、世間一般の理解は以下のようなものはないでしょうか。「左」と「右」が両側で極端な主張を持っており、その中央でバランスを取っているのが「中道」であると、世の中にはそんな思い込みもありますし、「中道」勢力自身が意図を持ってそのイメージを作り出してきたところもあるわけです。「中道」という言葉を字義通りに解釈すればその名の通り左と右の中間に位置しているように感じられてしまうのは仕方がないのかも知れません。しかし「中道」勢力が促進してきたことの実態はどうなのでしょう?

 確かに「左」と「右」にも当然ながら主張はあり、それが相反して綺麗に対立している部分もあります。では「左」と「中道」、「右」と「中道」の間ではどうなのか、ともすると中間的な関係であろうと勘違いされがちですが、その実は「左」と「中道」の間には絶対に相容れない溝があったり、その点ではむしろ「左」と「右」の間の方がまだしも歩み寄れる余地があったりもするのではないでしょうか。世の中「左」と「右」の対立軸もさることながら、もう一つ「中道」という「極」があって、それぞれ3つの対立で捉えた方が現実に符合するところがあるように思います。

 例えば「資本家を優先」する政策を推し進めているのは「左」か「右」か「中道」かと言えば、多くの場合は中道勢力が最も先鋭的です。同様に「NATOの覇権を優先」しているのもまた「中道」であり、「左」や「右」は懐疑的な立場を取る傾向にあります。こうした点では「左」と「右」の間にはそこまで大きな相違点がなく、むしろ「中道」との間にこそ埋めがたい隔たりがある、その辺は強く意識されるべきでしょう。

 フランス大統領のマクロンはまさに「極中道」とでも呼ぶべき人物で、徹底した資本家優先、NATOの覇権優先へと舵を切ってきました。この極端な中道主義者に比べれば、極左や極右と呼ばれる政治勢力の主張はずっと穏健とすら言えます。日本を振り返っても「右」の安倍晋三と、保守本流の出身と呼ばれ相対的には中道に位置づけられる岸田文雄のどちらが資本家優先、アメリカ優先であるかは考えるまでもありません。日本をアメリカの意向に沿って戦う国へと作り替えようとしている急進派の政治家は、安倍晋三ではなく岸田文雄の方です。

 実際は右よりも左よりも先鋭化した急進派でありながら、「中道」という偽りの仮面であたかもバランスの取れた存在であるかのごとく自らを装う、そんな政治勢力こそが長らく欧米諸国を牛耳ってきました。ひたすらにアメリカ陣営のため勢力圏を広げようとする中道勢力によって国際関係も大きく歪められてきたのが現代と言えますが、フランスのように僅かでも左右勢力が中道を打ち破るようになってきたのは、多少なりとも希望のもてる展開ではあるでしょうか。そして中道勢力の打倒が必要なのは、欧米だけではなく日本もまた同様です!

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アメリカ・ファースト

2024-07-12 23:17:28 | 編集雑記・小ネタ

「PFAS漏れ事故は『非公表』で」アメリカの要求に日本は従い、国民に真実を隠した…政府関係者が経緯明かす(東京新聞)

 米軍横田基地(東京都福生市など)で昨年1機フッ素化合物(PFAS)を含む汚染水の漏出事故について、日米両政府が非公表とする方針で合意していたことが、政府関係者への取材で分かった。日本政府は、米軍側から事故についての説明を受け月に発生した高濃度の有た際、情報を外部に出さないよう求められ、これに従っていた。(松島京太)

 

 先般は在日米軍兵士による誘拐及び不同意性交について政府が沖縄県に情報を伏せていたことが明るみに出ました(参考)。今回もまた結果的には表沙汰になったものの、やはり日米両政府が合意の上で事故を隠していたことが伝えられているわけです。バイデン大統領も日本の防衛費増額がアメリカ側の意向であったことを二度にわたって証言しているなど、日本政府が何を最も優先しているかを如実に表していると言えます。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

結果はさておき

2024-07-07 21:06:23 | 政治・国際

 このブログでは取り上げませんでしたが、東京都知事選挙が終わりました。私は千葉都民の子として生まれ自らも千葉都民として生活しているわけですけれど、残念ながら東京都の選挙権はありません。選挙権は居住地を基準に割り当てられるものですが、しかし多くの千葉都民にとって自分の生活に直結するのは千葉の政治なのか東京の政治なのかは一概に言えない気がします。その他、たまたま転勤で赴任しているいるだけの地域の選挙よりも自分の故郷の政治の方が関心がある、そんな人も多いことでしょう。ふるさと納税のような悪法がまかり通る時代であれば、むしろ選挙権を行使する地方を国民に選択させるぐらいのことは考えても良いかも知れません。

 それはさておき、今回の都知事選には過去最多の56人が立候補しました。多少なりとも現職と競れる見込みのある人もいれば、勝機はなくとも候補者なりに訴えたいことがありそうな人もいる、ただ同じ政党でありながら複数の候補を乱立させたところもあり、売名を疑われている人も少なくないようです。かつては日本の供託金を「高い」と批判する声の方が大きく取り上げられがちでしたが、実際は供託金を「安い」と判断する人の方が多数派で、その結果が今回の候補者56人に結びついたと言えます。

 実際のところ、立候補することで得られる露出の機会を考慮すれば300万円という供託金は格安なのかも知れません。東京都民しか投票できない選挙でありながら関心は全国から向けられる、僅か300万円で日本全国へ名前を売ることが出来るのであれば、十分に元が取れると判断する人も多かったのでしょう。そして制度の穴を突き、候補者を乱立させて獲得したポスターの掲示スペースを、寄付を募るという名目で実質上の販売を行った政党もあるわけです。

 

都知事選「ポスター枠」を55万円で購入した男性 「生後8カ月のわが子」をポスターに掲載した理由(AERA dot.)

 6月20日に告示された東京都知事選は候補者の「選挙ポスター」が物議をかもしている。ほぼ全裸の写真や風俗店のポスターが貼られ、一部候補者や政治団体が警視庁から警告を受ける事態に発展した。さらに、ある政治団体は候補者を乱立させ、そのポスター枠を事実上「販売」していることも波紋を広げている。“売名”など本来の目的とは異なる形で掲示板が利用されており、対策を求める声も出ている。では、ポスター枠を“買う”側は世間からの批判に何を思うのか。「55万円」でポスター枠を買った男性に取材した。

「掲示板ジャックに参加したのは、都知事選の判断材料として有権者の皆さまに私個人の主張を伝えるためです。マスメディアの情報はどうしても偏りがちですし、(公の場で)一個人の意見が取り上げてもらえる場は限られています。こうして名もない一個人が主張できる機会を得られたので、私はお金を払ってポスターを出したのです」

(中略)

 だが、道理としては、自らが都知事選に立候補して堂々と有権者に政策を訴えればいいはずだが、男性はなぜそれをしないのか。

「私が立候補すればいい、考える人はそういないのではと思います。人には能力がありますし、分相応ということもあります。私は緊張しやすいですし、人前でうまく喋れるタイプではありません。都民だったとしても立候補など全く考えられません」

 

 先般はアメリカ本土でバイデンとトランプの討論会が行われ、バイデンが大きく評価を落としました。ただ、主張の中身は大差ないもので、政策面でバイデンがトランプに劣っていたとは一概に言えません。それでもトランプ勝利と評価する人が多数派を占めたのは、バイデンの振るまいが顕著に老いを感じさせるものであったからです。政治家の評価を決めるのは政策よりもキャラクターの強さによるところが大きい、政策面では五十歩百歩でも意気軒昂な70代と衰えの顕著な80代とでは前者が票を集めてしまう、そういうものでしょう。

 だから、ここで「ポスター枠を買った」人に私は共感するところもあります。政策はある、主張もある、しかし政治家に転身するつもりはないし、そのために人前に出るだけのタフさはない、そんな人は多いはずです。こうした従来は広く伝えられる機会のなかった人々の声を表に出す機会として、今回の掲示板ジャックは一つの「穴」であったのかも知れません。現行の選挙制度の趣旨とは異なる手順で行われたことではありますけれど、一概に否定できたものでもないというのが私の評価ですね。

 ついでに言えばNHK党の露出戦略には全否定できないところもあります。結局のところ候補者を立てていかなければ党の主張が有権者に届くことはなく、勝算に乏しいからと他の党に道を譲っていれば、その党は次第に忘れられてゆくだけです。だから現行の共闘路線を継続している限り、共産党は議席を減らしいずれは社民党と同じ末路を辿ることでしょう。野党共闘は、共産党を憎む人こそが追求すべき路線です。当の共産党サイドは「我々は社民党とは違う」と思い上がっていると推測されますが、いずれは後悔する日が訪れると私は予言します。そうなる前に路線を修正できるかが運命の分かれ道ですね。

 ちなみに東京都知事選ですが、「良い」候補が当選すべきか「悪い」候補が当選すべきか、迷うところがあります。日本全体で俯瞰してみた場合、東京一極集中と地方の衰退は当然ながら好ましいことではなく是正が必要です。そうした観点からは東京には「悪い」都知事が君臨していた方が、ことによると日本全体の利益になる可能性があります。もし石原慎太郎や小池百合子ではなく、もっと良心的で賢明な首長が東京に誕生していたならば東京はもっと栄えていた、その結果として東京一極集中は今よりもずっと酷いものになっていたかも知れません。東京のトップが石原慎太郎や小池百合子だったからこそ、東京一極集中がこの程度で済んでいるのではないか、そんな気もしています。東京一極集中を抑制するためには、東京都知事は少し問題があるぐらいの方が良いのではないか……と。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

失言ではなく証言

2024-07-06 21:59:57 | 編集雑記・小ネタ

「日本に予算増加させた」 バイデン氏、また失言(時事通信)

 【ワシントン時事】バイデン米大統領は5日、米ABCテレビのインタビューで「私は日本に予算を増加させた男だ」と述べた。バイデン氏は昨年6月にも日本の防衛予算増を巡って「私が説得した」と述べた後、「わが国自身の判断」とする日本政府の申し入れを受け撤回した経緯がある。今回は何の予算か言及しなかったが、重ねての「失言」で同氏の認識が改めて問われそうだ。

 

 事実を述べただけで失言扱いは、いかに高齢者相手といえど失礼だと思いました。これは失言ではなく「証言」です。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

宗主国と衛星国

2024-06-30 21:15:24 | 政治・国際

【経過表】沖縄の米兵、少女への不同意性交罪で起訴 わいせつ目的誘拐罪も 外務省、3カ月県に連絡せず(琉球新報)

 2023年12月、県内に住む16歳未満の少女を車で自宅に連れ去り、同意なくわいせつな行為をしたなどとしてわいせつ誘拐、不同意性交の罪で、米国籍で米空軍兵長の男(25)を那覇地検が起訴していたことが25日、分かった。地検や県警への取材で判明した。

 外務省は起訴を把握しながら約3カ月、県側に伝えていなかった。玉城デニー知事は同日、事件の発生に「女性の尊厳を踏みにじるものだ」と強い憤りを示した上で、外務省の対応を「著しく不信を招くものでしかない」と批判した。起訴は3月27日付。

 

 在日米軍による性犯罪は定期的に起こりますが、昨年の12月にも発生していたそうです。警察への通報から3ヶ月を経て県警が書類送検し同月に起訴されたとのこと、この時点で外務省は事態を把握し駐日アメリカ大使に「抗議」していると伝えられています。まぁ抗議は建前で、実際には米軍の不利益となる事態をいかに回避するかを協議しただけだったのだろうと推測されるところ、そこからさらに3ヶ月を経て事件が報道されましたが、この時点まで事件は沖縄県に対して伏せられていたそうです。

 被告人は既に保釈され米軍側に移されているとも伝えられており、一応は7月から公判が始まるとされているものの、その結果がどうなるかは大いに懸念されます。いずれにせよ県警も地検も外務省も、沖縄県行政サイドには犯行について伝えていなかったわけで、当然ながら相応の作為があったと言わざるを得ません。6月16日に行われた先の沖縄県議選への影響を考慮して政府側が情報を隠しておきたかったのではとの推測も働くところですが、いずれにせよ信頼を損なう結果であることは言うまでもないでしょう。

 

SNSの投稿削除措置「認める」 米最高裁、偽情報の拡散阻止(共同通信)

 【ワシントン共同】米連邦最高裁は26日、X(旧ツイッター)やフェイスブックなどの交流サイト(SNS)運営企業に偽情報の投稿削除を求めた連邦政府の措置について、認める判断を示した。措置を制限する命令を出した下級審判決を破棄した。11月に米大統領選を控える中、偽情報の拡散阻止に向けた対策を進める民主党のバイデン政権には追い風となる。

 共和党は投稿削除について「言論抑圧だ」と反発。南部ルイジアナ州の司法長官らが提訴し、同州の連邦地裁が昨年7月、憲法で保障された言論の自由を侵害した可能性が高いとして措置を制限する命令を出していた。

 

 一方こちらは本土アメリカの話で、やはり来る選挙を念頭にメディアを巡る争いが発生していることが伝えられています。しかし「偽情報」とは何なのか、本当に偽物の情報であれば削除やむなしというものもあるのかも知れませんが、ただ単純に片方の陣営にとって都合の悪い情報を偽情報と悪い呼んでいるだけ、という場合も考えられるわけです。

 昨今のウクライナを舞台にしたロシアとNATOの戦争でも然り、NATO陣営に不都合な情報は何ら根拠もなく「偽情報」「フェイクニュース」「ロシアのプロパガンダ」であると、大手メディアや大学教員によって否定されてきました。一方でロシア側を貶める内容でさえあれば、それは全て事実であるかのごとくに報道されてきたわけです。中にはウクライナ側が自ら虚報と認めた(参考)ものもあったにも拘わらず、我が国のマスコミや「専門家」は、「どちらの陣営にとって好ましいか」を基準として物事を判断する姿勢を崩していません。

 トランプ支持層は闇の政府なる「ディープ・ステート」を敵視しているようですが、実際に世の中を牛耳っているのはバイデン大統領の率いる表の政府「ユナイテッド・ステート」です。そして全てをアメリカの敵か味方かで判断するメディアや大学教員、そして衛星国の首脳は少なくありませんが、なかでも日本政府は、まさに筆頭と言える存在です。在日米軍の地位を危うくするような事態が発生したとあらば、これを隠蔽することに躊躇はないでしょう。

 今回は沖縄県での選挙も終わり、公判も迫ったとあって記者側に情報が開示されたわけですが、もし選挙前にどこかの新聞記者が警察ではなく事件そのものを取材して、その事実を露にしようとしていたら何が起こったでしょうか? 紙面に載せないように圧力がかかったかも知れませんし、あるいは「偽情報」としてSNS上からの削除が命じられたかも知れません。偽物だから消されるのではなく、宗主国にとって不都合だから消される、それぐらいは普通にあり得る話です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

周りの大人が変わるべきと言える

2024-06-23 22:05:37 | 社会

 近年、理工系の学部を中心に「女子枠」を設ける国立大学が増えているそうです。その他にも「女性限定」で教職員の募集をするケースもあるようで、一部で話題にもなっています。後者に関しては、特に国公立の大学ともなるとコストカットが最優先事項である中「女性の活躍推進」みたいな旗印がないと新規での採用が許されないという話も聞くところ、教育への公的投資を惜しむ日本政治の帰結でもあるでしょうか。

 この「女子枠」が増える以前から大学には推薦枠も多く、十分な学力がなくとも入れてしまうケースはあります。その辺を批判的に見る人もいるわけですが、しかし勉強は出来ずとも要領よく周囲の評価を勝ち得るタイプの方が就職には強いことでしょう。大学のネームバリューは入試難度によって担保されることが多く、一見すると推薦組はそこにただ乗りしているようにも見えます。ただ実は要領の良い推薦組が就職実績の方で大学を牽引している、みたいな構図もあるのではないかな、というのが私の感想ですね。

 

「女子枠」国立大初採用から30年 名工大副学長「経過措置だったが」(朝日新聞)

 女子枠で入学した学生は、大学院への進学率が低いことも気になっています。就職状況が好調である以外に、女性は大学院まで行って学ぶ必要がないというバイアスがいまだ残っていると考えています。

 優秀な女性研究者、女性技術者を多く輩出するという状況には、残念ながら、まだまだ達していないと感じています。

 

 では女子枠についてはどうなのかというと、30年の歴史を持つ名古屋工業大学では入学する女性の割合を増やすことにこそ成功したものの、その先では成果が上がっていないようです。現実問題として学部によって男女の差は顕著であり、卒業後のキャリアにおいても男女で大きな隔たりがあります。それを是正しようとする意図は理解できるところですけれど、今のやり方は妥当なのでしょうか。女子枠で入学する人は増えても、卒業した先に繋がっているかと言えば明らかに不十分で、ここでさらに事実上の女子枠ポストを設ける動きも見られ……

 一時期のアメリカでは「我が社は人種差別をしていません」というアピールのために受付に黒人を置いていた、なんて話を聞いたことがあります。私の勤務先でも男性よりは少数であるものの女性の役員は一定数いて、会社HPにも掲載されています。ただ、そんな女性役員が有能かと言えば同僚の女性社員からも裏では非難囂々の無能であったり等々、まぁ男性役員も無能ぶりでは負けていないのですが、能力によって平等に登用された結果よりも社外へのアピールのために椅子を与えられている印象が拭えなかったりします。

 それはさておき「女子枠」に応募する要件は何なのでしょうか。やはり戸籍上の性別が重要なのか、それともLGBTQにも配慮して性自認によって選択することが可能なのか、この辺は気にならないでもありません。一口に「女子」と言っても要するに人口の半分ですから内訳は様々、文化的資本と周囲の理解に恵まれた女子もいれば、そうでない人もいるわけです。後者に関してはアファーマティブ・アクションの対象とされるべきと考えられる一方、前者はどうなのかという議論はあっても良さそうです。

 高齢者の中には富裕層もいれば貧困層もいるわけですが、そうした区別をせず高齢者をひとくくりにしてバッシングの対象とする類いの主張は大いに支持を集めています。富裕な高齢者に重く税を課し貧しい高齢者に福祉を厚くする──という区別は行わず、高齢者全体を富裕層に見立てて現役世代と対立させるような議論は幅広く受け入れられています。「女子枠」もそれに近く、女性の中でも置かれた環境の違いを考慮するのではなく、女性をひとくくりにするところに一つの本質があるのかも知れません。

 男性の方が進学に関して周囲の理解や協力を得やすいというのは、長年の進学実績から明らかです。しかし高齢者の全てが富裕層ではなく実際は貧困層も多いように、男性もまた文化的資本や周囲の理解に恵まれずに育った子は少なくありません。そうした男子から見れば、女子枠のために一般入試の椅子が減らされてしまうのは腹立たしいことでしょう。男か女か性別で合格枠を限定するくらいなら、出身地方や家庭の所得で枠を設けた方が公平感はありそうです。

 医学部入試を見れば分かるように、女性の受験者が理系科目を苦手とするようなことはなく、「その気にさえなれば」女子枠などなくとも女性が理工系の学部に進学することには何の障壁もないと言えます。問題はいかに「その気にさせるか」ですね。医学部でも外科医の道に進もうとする女性が少なくて問題視されたり等々ありますが、結局は能力ではなく本人の志向の問題です。本当は女性に下駄を履かせる必要なんてない、ただ女性の志向を変えるべきであって、そのためには女性を取り巻く環境を変えていくことがスタートなのだと思います。

 

女性起業家比率が高い中東、STEM進学率や学習習熟度の高さに見るポテンシャル(AMP)

サウジアラビアでは大学で理系学位を取得する女性の割合は50%ほどといわれている。ユネスコの調査では、イランの大学でSTEM(科学・技術・工学・数学)分野に進む学生の男女比率は女性が67%と圧倒的に高いことが明らかになっている。同調査によると日本は25%ほどにとどまっている。

(中略)

この現象について、Atlantic誌の取材が興味深い実態を伝えている。ヨルダンでは、男子生徒はそこそこの成績であっても、高校卒業時点で警察や清掃などの仕事を容易に見つけることができるが、女子生徒はそうは行かないという。親の目が厳しく、教師や医師などのプロフェッショナル職業のみが選択肢として与えられるというのだ。

そのため、女子生徒の多くは大学に行く必要があり、厳しい卒業試験を乗り切るために猛勉強をしているという。サウジアラビアでも状況は似ており、男性は一定の年齢になれば政府から仕事が与えられるため、学校で猛勉強するインセンティブがないという。

 

 実のところ、女性の権利が抑圧されているかに見える中東諸国では理系学部に進学する女性の比率が高いことが知られています。ここから何か学ぶべきところはあるでしょうか。日本の場合、非正規や一般職など昇進に縁のない仕事であれば女性の方が職を得やすいわけで、引用元で挙げられているヨルダンのケースとは真逆です。家計の中心は夫が担い、妻は補助的に働くのが理想ならば日本は良い国ですが、女性がビジネスで活躍できる社会を目指すのであれば日本は中東よりも立ち後れている部分があるのかも知れません。

 私が小学生の頃、休み時間は男子は校庭でドッジボールをするのがクラスのルールでした。時に理不尽な校則が巷の話題になったりもしますけれど、校則ならぬクラスのルールはどうなのでしょう。ともあれ「男子は」必ずドッジボールをやらなければならず、教室で本を読んだりすることは許されていなかったのです。こういう環境で育つと、男子よりも女子の方が勉強が得意になると考えられますが、でもそれは性別による適性の結果ではなく、周囲の大人の押しつけが隔たりを作り出しているだけです。

 子供は当然ながら、育っていく過程で家庭で周囲の大人から影響を受けます。周りがダメな大人ばかりであれば子供はステレオタイプに嵌って育つわけで、結果として理系の学部に女性は進学したがらなくなっているのが現状でしょう。そこで女子枠を設けて入試のハードルを下げれば、かろうじて学生だけは増やせるのかも知れませんが、その先に繋がっているかどうかは疑わしいと言わざるを得ません。多分、本当に変えるべきは大学の「枠」ではなく、受験生の周りにいる大人の態度です。

 男性向けのフィクションには、男の子っぽい趣味のヒロインが多いです。この辺の設定に眉をひそめる人は、特に女性の側には多いように見受けられますが、そう馬鹿に出来たものでもないように思います。むしろ典型的な「女の子っぽい」育ちだからこそステレオタイプに嵌って偏った進学先を選んでしまうのであって、「男の子っぽい」趣味嗜好で育った方が学部の偏りも減るのではないでしょうか。男の子にはお人形遊びをさせて、女の子にはゲームやプラモデルを与えるぐらいで良いのではないか、そんな気もしますね。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日本の政界にはいないタイプの右派

2024-06-16 21:44:48 | 政治・国際

欧州議会選、右派・極右2割超 親EU派は過半数確保(日本経済新聞)

【ブリュッセル=辻隆史】6〜9日に投開票された欧州議会選(定数720)で、極右や右派など欧州連合(EU)に懐疑的な勢力が伸長し、2割超の議席を獲得する見通しとなった。フランスやオーストリア、イタリアなどで国内第1党になったもようだ。

欧州統合を推進する親EU派は全体で過半数を維持するものの、環境政策や移民政策などへの修正圧力が強まる。

欧州議会が各国のデータを踏まえて10日昼に公表した議席獲得予測によると、極右を含めてEU統合の理念に懐疑的で、EU主導の野心的な環境政策やリベラルな政策に反発する勢力が伸びる。

 

 先日は欧州議会の選挙が行われたとのことで、主立った国内メディアからは「極右政党が躍進」などとも伝えられています。ただ獲得された議席数を見る限り、確かに議席数を増やしてこそいるものの「中道」と称される勢力を脅かすには至らず、議会のパワーバランスを突き崩すにはほど遠い結果のようです。それでも大手メディアが警戒を隠さないのは、これが日米欧の既存の支配階級にとって好ましくない結果であるから、でしょうか。

 そもそも「極右」だの「中道」だのとカテゴライズされる基準はどこにあるのか、人権意識の希薄さに関しては大差ないように感じるところもあります。ただ「中道」であれば善悪の基準がアメリカにある、親米勢力のやることであれば擁護し、反米勢力のやることであれば非難するという明確な基準を持つ一方、「極右」に関しては自身の好き嫌いが基準で何を擁護し何を叩くか大まかな傾向はあってもブレが大きいのが両者の違いかな、という印象です。

 日本では政党が極右と呼ばれることは稀で、代わりに「保守」などと呼び慣わされることが一般的ですけれど、確かに日本の場合はどの政党も親米という点では一貫しており、そうした面では欧州の「中道」カテゴリには収まっているのかも知れません。あくまでアメリカを頂点とした排他的仲良しグループによる安定統治を志向するのが欧州の「中道」であるならば、日本の主要政党は全てが中道であり右も左もありません。

 一方で「躍進」と呼ぶには微妙ながらも徐々に支持を広げているのが欧州において右派や極右と呼ばれる勢力で、こちらはアメリカの元に一致団結するのではなく、自国優先主義を訴えることが特徴とされます。アメリカの率いる「陣営」の勝利を優先し、そのためであれば自国の支出を惜しまない中道・保守勢力とは裏腹に、NATO陣営の勝利のためであろうが自分の財布を他国のために使うのはお断り、という考え方をするわけですね。

 アメリカ第一主義を国是とする日本はアメリカ陣営の勝利が何よりも優先、自国の被災地には予算を渋ってもNATOの代理人として戦うウクライナのためなら金に糸目を付けません。日本を含む自国の「陣営」が勝つためには、それも一つの戦略ではあるのでしょう。しかし「陣営」即ちEUやNATOなどどうでもいい、単純に自国の利害だけ見ていれば良いのだと、ある意味で潔さを持っている人々が欧州では「極右」と呼ばれて警戒と支持を集めているのが実態と言えます。

 日本は政治的な対立の少ない国だと、私は以前に書きました。与党も野党も、親米と緊縮財政で志を同じくしており、政権交代が起こったところで外交政策や経済政策には変化がない、日本はそんな国です。左からも変化を起こせる勢力が伸びてきて欲しいところですが、同様に右からも望まれるところはある、「自陣営」の利益と「自国」の利益を切り離して考え後者を優先できる右派勢力もまた政治を変えていく上では必要な気がします。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

弊社でも起こり得ること

2024-06-09 21:43:44 | 雇用・経済

 じゃんけんのグーで勝ったら「グリコ」と叫んで3歩進む、チョキで勝ったら「チヨコレイト」と叫んで6歩進む、パーで勝ったら「パイナツプル」と叫んで6歩進む、ずっと昔から伝わる子供達の遊びです。勝った手によって進める歩数が違うことで単純なじゃんけんとは異なる駆け引きの要素が生まれる──等と言えば格好が付きますけれど、どうにも私の住む地域では独自の発展を遂げているようで、じゃんけんや歩数の要素を切り捨て、その場に立ち止まってひたすらに「パイナツプル」と絶叫し続ける遊びへと進化していたりします。子供達にとっては駆け引きなんて興味ない、ただ単純に大声を張り上げることが楽しいのでしょう。

 そんな知名度抜群のグリコですが、看板商品であるプッチンプリンなどチルド商品が4月より軒並み出荷停止となっており、2ヶ月を経た今もなお復旧時期は明らかにされていません。発端は4月3日からのグリコ社基幹システムの切り替えにあると伝えられています。このシステム更改は2022年に交代した新社長の肝いりのプロジェクトだったそうで、グリコ社内でどんなことが起こっていたか、ありありと想像できるところです。

 結果として2ヶ月を超えてグリコの一部商品は欠品継続中、既に売り場の棚には他社の商品が陳列されています。このプロジェクトはコンサルティングファームのデロイトトーマツが指揮し、「SAP S4 HANA」へと移行するものであったそうですが、この責任はどこに問われるのでしょうか。SAP社の製品は私の勤務先でも幾つか導入されていますけれど、例外なく品質が悪くどの部署からも歓迎されていません。それでもSAP製品を根付かせるために利用サポートの専任チームが作られたりもしていますが、もうちょっとマトモな他社のサービスを選ぶ良識があれば、こんな無駄は省けたはずです。

 一方デロイトトーマツに関しては職務上で直接の関わりはないものの、同業他社は私の勤務先にも入り込んでおり、業務の攪乱に勤しんでいます。いかにコンサルの影響を最小限にとどめ、職場を守るかに苦心させられるところですが、しかし問題のコンサルは幹部社員の強い推薦でねじ込まれたもののため、社員の声よりもコンサルの提言の方が優先順位が高かったりします。コンサルが阿呆な改革案を提示する、社員がコンサルの案を何とか実現させ、そこで生じた歪みの尻拭いをする、最後にコンサル主導の改革の成功を上長が役員に報告する──これが我が社のサイクルです。

 グリコも、実際に業務を回している社員であれば誰一人としてデロイトトーマツに指揮を任せるようなことは望んでいなかったことでしょう。しかし同様に社長もまた、現場の社員に主導権を与えるようなことは望まなかったのだと思います。新社長としては、むしろ社員の抵抗を振り切って改革を成功させる、そんな実績が欲しかったはずです。だから社外のコンサルに権限を持たせて必要のない変革に大枚を叩いた、グリコに限らずどこの会社でも普通に見られる光景ではないでしょうか。

 結果としてグリコの場合は大惨事を招いています。株主の批判は社長に向かうかも知れませんが、しかし社内ではどうでしょう。往々にして、社長や役員の信頼は社員ではなくコンサルの方に寄せられるものです。コンサルを招いて事態が悪化したのであれば、その責任はコンサルではなく現場の社員にある、よりコンサル主導で物事を変革していく必要がある、世の中そう考えられがちです。だからグリコの場合も、社内では「コンサル以外の誰か」が責任を問われていることと推測されます。デロイトトーマツは正しいことをしているのに、上手くいかなかったのは何故なのか──デロイトではなくグリコ社内のシステム担当者の方がより厳しい立場に置かれている可能性が高いです。

 プロスポーツでもフロントが大金を投じて獲得した選手の起用が優先で、勝手に伸びてきたユース上がりの選手は蔑ろにされる、なんてことがよくあります。「上」の人間が己の実績を作るためには、そうするしかないのでしょう。社員が現場の創意工夫で事態を改善させたとしても、そんなものは会社役員の業績にはならないわけです。「上」の人間がやりたいのは「自ら」ねじ込んだコンサルによる改革であり、まさに「自分の」業績を作ることです。その結果として現場に即した声ほど蔑ろにされ、太鼓持ちコンサルの浸食を許すことになる、グリコの失敗は決して他山の石ではなくどこの会社でも起こりうることと思います。

 

・・・・・

 

6/11追記

 間が悪いのかどうか分かりませんが、グリコの「一部商品」は6/25から出荷再開予定と発表されました。ただしプッチンプリンなどは相変わらず未定だそうです。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする