非国民通信

ノーモア・コイズミ

一般に考えられているよりずっと、日本の企業は教育熱心ではあるのだが

2018-02-25 22:31:41 | 雇用・経済

 世代間格差ってのは色々とありますが、自国(日本)の評価に関しても、世代によって結構な違いがあるんじゃないかな、と感じることがあります。スマートフォン世代は割と日本を客観的に見られている人が多くて、日本企業の惨状を「残念でもないし当然」と受け止めている人が多い、しかし老害の域に片足を突っ込んだ氷河期世代以上ともなると、「技術は日本の方が優れている」というノスタルジーを引きずっている人が多い、そんな印象があります。まぁ、純然たる印象論ですが。

 確かに四半世紀あまりを遡れば、日本が世界の最先端に立っていた時期もありました。まぁ、ずっと昔の話ですから当時はまだ生まれていなかった人だって多いことでしょう。しかし日本が輝いていた時代で時計の針が止まっている人も多く、そうした人の誤った現状認識の元で日本経済は動かされてきた、結果として今に至ると言えます。つまりは、技術は優れているのに人件費の安い国に押されているとの勘違いから人件費抑制に全力を注いできたわけです。

 なんでも半導体メーカーの売上高でサムスン電子がインテルを抜いたそうですが、この長年の王者だったインテル台頭以前の「世界一の半導体メーカー」はと言えば、我らが日本のNECでした。昔の光今いずこ、NECは度重なるリストラにもかかわらず凋落を続けています。日本企業の考える悪玉であるはずの人件費を削っても削っても、何も良くなりません。シャープみたいに中国企業に買われればリストラしなくてもV字回復しそうな気もしますが……

 

24キロ完歩研修「無理がある」 福岡の会社に賠償命令(朝日新聞)

 太陽光発電システムの販売をするサニックス(福岡市)の入社時の研修で24キロ歩かされたことで足に障害を負ったとして、元社員の男性(52)=広島県福山市=が同社に損害賠償を求めた訴訟の判決が22日、広島地裁福山支部であった。金光(かねみつ)秀明裁判官は研修と障害の因果関係を認め、1592万円の賠償を命じた。

 男性は2013年8月に入社。福岡県宗像(むなかた)市での研修で、24キロを5時間以内で歩くプログラムに臨み、4時間51分で歩ききった。その後病院で右足関節離断性骨軟骨炎などと診断され、足の一部の関節の可動範囲が狭まるなど両足に障害が残ったという。当時身長171センチ、体重101キロ。事前の訓練で足の痛みを訴えたが、「完歩しないと正社員にはなれない」と言われたと主張していた。

 判決は、足の障害は研修によるものと認定。「参加者の個人差や運動経験に配慮していない点で、無理があるプログラム」と指摘し、事前の訓練で痛みを訴えたのに中断させず、医師の診察も受けさせなかったことは安全配慮義務違反にあたるとした。

 

 判決では「無理があるプログラム」とのことですけれど、それ以前に業務と関連性のない行為の強要として捉えられるべきではないかと思います。太陽光発電システムの販売をする会社とのことですから、客に嘘を吐く練習をさせるならまだしも、なぜ24キロを5時間以内で歩く必要があるのでしょうね。24キロを5時間以内で歩くことで太陽光発電システムが売れるようになるとは、とうてい考えられません。

 問題はこうした「研修」が有意義なものであると、日本の会社の経営層に認識されていることだと言えます。この裁判に発展した類いでなくとも、日本の社員研修先としては「自衛隊」が高い人気だったりするわけです。自衛隊に体験入隊させて訓練を受けさせることで、会社に利益がもたらされると日本の会社の経営者は信じているのです。他にも、研修と称して穴を掘らせるとか無人島生活をさせるとかカルト宗教の真似事をさせるとか、色々とあります。いずれも、会社の経営層が「必要だ」と判断しているからこそ継続されているはずですが、結果はどうしたものでしょう。

 結局のところ人を育てないと国が栄えることはありません。そして会社の発展にも当然ながら、人の成長が必要です。では日本の企業は人を使い捨てにするばかりで人を育てようとしていないのかと言えば――人を育てるのに熱心な「つもり」の会社がきわめて多いのではないでしょうか。私の今の勤務先でも、研修の機会は多いです。研修の機会は多いですが――仕事で必要になる知識や技術を教わったことは一度もありません。

 日本の会社は世間で考えられているよりもずっと「人を育てる」意識は高いけれど、間違った認識に基づいて無駄な労力を費やしているばかり、というのが客観的評価になろうかと思います。日本の経営者がよかれと思って下した決断は、万人を不幸にするばかりなのですから。いい加減に日本という国の遅れを自覚して、大陸から進んだ資本主義の考え方を学ぶ姿勢を持った方が良い、経営陣には渡来人を招聘した方が良いのではないか、そんな気すらしてきますね。

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食在広州、職在東京

2018-02-18 22:11:45 | 雇用・経済

若者の地方移住策で会議=5月にも取りまとめ-政府(時事通信)

 政府は14日、若者の地方への移住を促す抜本策を検討するため、有識者による「わくわく地方生活実現会議」を設置し、初会合を開いた。地方から東京圏への転入超過が年間10万人以上の規模で推移している流れを食い止めるため、自治体による移住促進策の強化などを目指す。5月にも方策を取りまとめ、経済財政運営の基本指針「骨太の方針」に反映させる考えだ。

 

 さて地方の衰退と東京への一極集中は議論の余地のない重大問題ではありますが、どうしたものでしょう。政府も「有識者」による会合を開くなど問題意識は持っているようですけれど、なんだか間の抜けた名称には不安を覚えないでもありません。曰く「自治体による移住促進策の強化などを目指す」とのことです。しかし人は何故地方を離れて東京へ移るのか、この原因に対処できるのは自治体なのかどうか、もっと強い影響力を持っているところに対処が必要ではないか、とも思います。

 

就活生の7割「地域限定正社員」を希望…約束破りの「転勤命令」が出たら拒否できる?(弁護士ドットコム)

就活生の7割は「地域限定正社員」を希望ーー。労働政策研究・研修機構が就活サイトに登録している大学生・大学院生5601人にアンケートをとったところ、このような結果がわかり、人気ぶりを浮き彫りにしました。

地域限定社員とは、一定の地域内での配属・異動を条件に契約する正社員のことです。就職活動を経験している大学生・大学院生には、「住居の変更を伴う転勤がない」という点が魅力的にうつるようです。

今回のアンケートでも、地域限定正社員について、「ぜひ応募したい」と回答した人が24.5%、「一般正社員と処遇の大きな差がなければ応募したい」が48.1%で、合わせると7割を超えました。

 

 上記リンク先の本筋とは少し離れた箇所の引用になりますが、アンケートによると就活生の7割は「地域限定正社員」を希望しているそうです。わざわざ仕事のために転居したくない、そう考えている就業希望者が多数派であることが分かります。ならば当該地域に就職先があり、かつエリア外への転勤がなければ、多くの人は地方に定着する、東京に出てくる人はそう多くならないはず、とも考えられるわけです。

 しかるに、食は広州に在り、職は東京に在り、です。求人は圧倒的に東京に集中していますし、給与水準も地方と東京では大きく異なります。結局は新たに就職を考えている人の希望より、就職先の事業者の所在地こそが強い影響力を持つものです。より良い条件、より広い選択肢で仕事を探そうと思うなら、必然的に人は東京への流入を続ける、それを「自治体による移住促進策」ごときでどうにか出来るものとは考えにくいです。

 よくあるパターンとして、自治体がとんでもない優遇策で企業を誘致する、と言った類いも一定の効果はあるのかも知れません。ただ中には助成金を巻き上げられるばかりで早期に撤退される、みたいなケースもあるようですし、行き過ぎた優遇のために雇用は生まれても税収は増えない、なんてこともあるわけです。その辺のマイナス要素を払拭するだけの対策は、自治体ではなく政府にこそ求められるように思います。

 東京23区内の大学定員に制限を加える、なんて話もありますけれど、大学なんて4年あまりの短い間だけです。大学生を地方に止めたところで、卒業後の就職先が企業の集中する東京である限り、地方から東京への人口移動は止められません。止められるとしたら、それこそ就職先である企業を東京から地方へ移す必要があります。もっとも、大学には色々と強制できても、企業には自由放任で望むのが日本の行政ですから、これもまた難しいのかも知れませんね。

・・・・・

 なお「地域限定正社員」に関して余談となりますが、私の働いていたことのある会社では、関東エリア限定採用なら栃木から神奈川に異動ですとか、千葉から山梨(関東?)への異動等々、「エリア内」では普通に転勤していました。「地域限定」が「住居の変更を伴う転勤がない」とは限らない、ということを若い人には知っておいて欲しいと思います。かつ「限定」される地域の広さには要注意、時には山梨が関東に入っているなど、日本地図と企業独自の地図の違いにも要注意です。他にも、「地域限定正社員」を「正社員」に「昇格」させて遠方に異動させる、なんてことも普通にありました。この辺もまた若き就活生には知っておいて欲しいと思います。対策は、私も知りませんけれど。

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made in Japan神話は過去の話

2018-02-11 22:44:37 | 社会

 半年ばかり前、会社でHuaweiのWi-Fiルータが導入されました。その際に判明したことなのですが、私の勤務先の部長と課長は「Huawei」が読めません。まぁ別に海外メーカーの読み方が分からないぐらい、大したことではないのかも知れません。ただ、私の勤務先は通信業界です。グループ会社の中にはMVNO事業を運営しているところもあれば、SIMフリーの端末を販売しているところもあります。そしてHuaweiは通信機器では世界2位のシェア、スマートフォン販売でも世界第3位、日本国内のSIMフリー端末では売り上げ首位を独占し続けているわけです。まさしく業界の巨人なのですが、それを通信業に分類される会社の部長と課長が知らないってのは、どういうことなのでしょうね。

 なお上述のファーウェイ社は日本で新卒採用するにあたり、40万円を超える初任給を提示して話題を攫った会社でもあります。「初任給(20万円ちょっと)を引き上げたのに人材が集まらない!」などと寝ぼけたことを繰り返している日本企業では、もはや逆立ちしたって敵わない会社です。しかし、通信業界の部長と課長は、その読み方すら知りませんでした。確かに、社内ルールや社内用語、経営トップの趣味嗜好を把握することの方が、日本で働く上で重要なのは確かだと思います。でももう少し、世界の動きに目を向けてもいいんじゃないのかな、とも感じました。まぁ、日本人の中には90年代以前で時計の針が止まっている人も少なくない、今でも技術面では日本企業が優れていると信じている、中国や韓国ほか諸外国の企業を侮っている人も多いのかも知れません。

 

「遅い、安全でない、検査不合格」ジャマイカ側の言い分(朝日新聞)

 東京都大田区の町工場が開発した「下町ボブスレー」が平昌(ピョンチャン)五輪直前に、ジャマイカチームから「使用拒否」を通告された。不採用の事情について、ジャマイカ・ボブスレー連盟のクリスチャン・ストークス会長が朝日新聞の取材に答えた。

(中略)

 行き違いの始まりは昨年12月のワールドカップだという。輸送トラブルで下町のそりが届かず、ジャマイカチームは急きょラトビア製のそりに乗った。「すると驚異的に成績が伸びた。五輪出場権獲得へ大事な時期だった」とストークス会長は話す。このそりに乗り続け、出場権を獲得した。

 一方、下町のそりについて、ストークス会長は「遅い」「安全でない」「機体検査に不合格」の3点を強調。「1月に行われた2度の機体検査に不合格だった。五輪でも失格の恐れがあった」と語る。

 下町側は不合格を認めたうえで、「すぐに修正できる細かい違反だけ。一時は合格も出た。五輪には間に合う」と反論した。だが、ジャマイカ連盟は実績のある海外メーカーを選んだ。

 

 ……で、こちらの報道です。そりの性能に関しては単純に測定できるものではないにせよ、日本製は「2度の機体検査に不合格」であり、ラトビア製のそりへ変更したことが出場権を獲得する好成績に繋がったという揺るがぬ実績があるわけです。元より「下町ボブスレー」は日本代表チームからも採用を断られてきた代物ですから、これを擁護するのはかなり難しいように思います。契約面でトラブルに発展するリスクを背負ってもなお使用は避けたい、それが「下町ボブスレー」の評価なのですね。

 日本の町工場には世界レベルの技術がある、という伝説があります。そうした伝説を信じて動き出したプロジェクトの一つがこの「下町ボブスレー」だと言えます。結果はご覧の通り、競技者からは「付き合ってられない」と通告されるレベルです。確かに90年代以前なら、日本は世界に冠たる技術大国だったのかも知れません。しかし日本が成熟という名で成長を拒否してきた四半世紀の間に、よその国では子供が大人になるくらいの進歩がありました。中国も韓国も技術力では日本の先を行くようになった、その現実は直視しなければいけないでしょう。

 日本企業が中韓メーカーの後塵を拝するようになっても、「日本製の部品」は一定のシェアを残しているところはあります。「○○には日本の部品が使われているのだ」と、誇りを抱く人も一定の割合でいるようです。しかし本質的な問題として、部品を供給する日本企業と、供給を受けて製品を販売する外国企業のどちらが利益を上げているかは問われるべきでしょう。国内で言われるほど「日本製の部品」に唯一無二の価値があるのなら当然、高値が付くはず、相応の経済的利益もあってしかるべきですから。

 私自身、前職では「日本では一社しか製造していない」部材を取り扱うことがありました。他に代替となるメーカーは存在しなかったのですが――その取引先が儲かっているかと言えば、全くそんなことはありませんでした。結局ブルーオーシャンには理由があると言いますか、魚のいない不毛な海に漁に出る人はいないわけです。競合がいなければ同業他社との争いは発生しませんが、だからといって販売相手に対して強気に出られるかと言えば、決してそんなことはないようです。寡占市場でもニッチすぎる商材には、それ相応の値段しか付かない、と。

 そして「日本製の部品」を諸外国の企業に供給する下町の町工場ですが、日本国内の技術力幻想を満たしこそすれ、供給先企業に対して強気に出られるだけの能力などないのが実態なのではないでしょうか。ともすると市場を独占しているように見えるのは、「儲からないから」競合他社が発生しにくいだけ、大手企業からすれば「儲からないから」ヨソに外注したいだけ、その結果とも言えます。日本製部品の採用例が多いからと言って、それが優れているとは限らない、実態は安上がりな下請けとして利用されているだけ……なんて可能性もあるはずです。

 日本の、とりわけ小さな町工場の「技術力が高い」という幻想にしがみついていれば、精神的な満足感は得られるのかも知れません。しかし、経済的な利益は得られたのでしょうか。経済的な利益を酸っぱいブドウのように考えて自分を慰めているのなら、その先はありません。「下町ボブスレー」も、日本人に夢を見せる読者参加型の物語としては一定の成功はあったのでしょう。しかし、結果はご覧の有様です。夢から覚めるべき時間は、既に来ていると思います。

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当然の結果ではある

2018-02-04 22:05:56 | 雇用・経済

「1年前より深刻」が半数以上 企業の人手不足(NHKニュース)

企業の人手不足の実態を財務省が全国の企業を対象に調査した結果、半数以上が1年前よりも深刻になったと答え、景気の回復が続く中、人手の確保に危機感を強めていることがわかりました。

この調査は、財務省が、人手不足の実態を調べるため、全国の企業1341社を対象に、去年11月下旬から先月中旬にかけて行いました。

それによりますと、全体の71%に当たる952社が「人手不足を感じている」と回答し、中でも52.1%に当たる412社が、1年前よりも人手不足が深刻になったと答えました。

特に専門的な知識や技術を持つ正社員が不足しているという答えが目立っていて、人手が確保できないために休日出勤や長時間の残業が増え、従業員の負担が重くなっているとしています。

一方、人手不足を解消する対応策をきいたところ、80%以上の企業が、会社説明会を増やしたり初任給の引き上げたりして、採用の取り組みを強化していると回答しています。

財務省は「今回の調査では、製造業でより人手不足が深刻化している。景気回復が進む中で、専門的な人材の不足が顕著になっているのも特徴的だ」と分析しています。

 

 真偽の疑わしい「人手不足」報道には事欠きませんけれど、現実世界の求人情勢はいかほどのものなのでしょうね。世の中には人手不足を託ちつつ頑なに最低賃金ギリギリでしか求人を出さない事業者なんかも普通に存在していますし、アルバイトの奪い合いなんかはそれこそ「正規雇用する気がない」事業者側の姿勢を顕著に反映していると言えます。マトモな会社のマトモな求人であれば今も昔も人は殺到する、ただ単に低賃金非正規労働者の調達が少しばかり難しくなっただけなんじゃないか、そんな気がします。

 なんでも全体の71%が「人手不足を感じている」と回答、52%が1年前よりも人手不足が深刻になったと回答しているそうです。有効な対策を打てていない企業が、半数以上あると言うことでしょうね。対応策としては「会社説明会を増やしたり初任給の引き上げたり」しているとのことですけれど、効果は薄いようです。まぁ日本企業のやる「初任給の引き上げ」なんて誤差のようなものですし、引き上げる前の大元が低すぎるわけでもあります。中国ファーウェイの日本向け求人は大卒初任給が月40万超で話題を攫いましたが、こうしたグローバル企業の足下にも及ばない低賃金を続けている限り、微々たる賃上げで人材確保など出来るはずがありません。

 「専門的な知識や技術を持つ正社員が不足している」「専門的な人材の不足が顕著になっている」とも、報道されています。それが求人情勢に反映されているか、この辺もまた幾分か疑わしくもありますけれど、本当に専門人材が不足しているのなら、対応策として何が必要になるのでしょうか。金満クラブなら、高年俸を餌に他球団から有力選手を引き抜いてくるのが当然の経営努力になります。では、資金力のないチーム、あるいは資金を使いたがらない日本企業には何が出来るのでしょう。

 ヨソから選手を取ってこない(取れない)チームが成功するには、自前での育成しかありません。組織を牽引してくれるような逸材が空から降ってくることは未来永劫ないわけで、そこは時間と労力を費やし人を育てていくしかないのです。しかし、この育成に失敗を続けてきた結果として今の日本企業の惨状があるのかも知れませんね。目先の勝利/利益を言い訳にして若手に機会を与えなかった(特定世代の採用を控えてきた)から中堅世代がスカスカになる等々、駄目なチームの典型です。

 人材育成に努めてきた「つもり」の会社は、結構あるとは思います。しかし、育成と言いつつ実際にやることはコンサルタントと称した占い師に、研修と称して新興宗教のまねごとをやらせているだけ、本当に業務で必要な専門知識については組織として教育してこなかった、現場の個人レベルの先輩後輩間の指導に丸投げ(O!J!T!)だった会社も多いのではないでしょうか。私の勤務先なんかも研修機会だけはやたらと多いですが――仕事で使う技能に関しては何一つ教えてもらえない、そんな有様だったりしますし。

 新人採用にしてから、企業が求職者に求めるのは馬鹿の一つ覚えの「コミュニケーション能力」が不動の一位であり続けている限り、大学など高等教育機関による人材の育成も望み薄でしょう。勉強するために勉強する奇特な学生を除けば、どこの国でも「良い会社に入るために」進学するのが普通です。そこで「○○の専門知識を身につけておけば就職に有利/高給取りになれる」とハッキリしていれば、どこの国の学生も自身の将来のために勉強するわけです。一方で専門知識よりもコミュニケーション能力とやらが問われる日本国では、学生は勉強するよりも面接の練習やエピソードの捏造に励みますし、大学だって「生徒が就職先に困らないように」最良の指導を考えるわけです。自分を粉飾することが上手な若者なら育ちそうですけれど、現環境で専門的な人材が育つのを期待するのは、木に縁りて魚を求むって奴でしょう。

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