日本の若年無業者(ニート)は学力などに関する国際調査の成績が他国に比べて高いことが、経済協力開発機構(OECD)が27日に発表した若者の技能と雇用に関する報告でわかった。
OECDは「学校から仕事へと円滑につなげる仕組み作りが必要」と指摘した。
OECDが2011~12年に行った「国際成人力調査」(略称PIAAC)など複数の国際調査や統計データを基に分析した。
それによると、ニートはOECD加盟国全体で3900万人。日本のニートは、大学卒業以上の学歴を持つ人が、それ以外の人よりも多かった。PIAACの「読解力」では、成績が低いレベルだったニートは日本は3%にとどまり、他国に比べて好成績の割合が高かった。「数的思考力」も同様の傾向が見られた。
……こんな調査結果も出てきたわけですが、いかがなものでしょうか。まぁ、日本の労働環境をよく表わしているようにも思います。いわゆる「ニート」の学力が日本の場合は世界トップクラスにあるわけですが、それは裏を返せば「日本は学力が高くても採用されない」労働市場であることを意味するものです。ヨソの国には、学歴やテストの成績の問題で就職機会を奪われている人も多そうな気がしますけれど、日本の場合はひと味違う、日本では学歴や成績は十分でも労働市場から排除された人が山のようにいるのですね。勉強して良い仕事に就く――そういう発想が成り立つ社会も世界にはあるのかも知れません。しかし日本では、勉強しても就職には必ずしも結びつきません。やれやれ、これでは大学生が勉強しなくなるのも当然です。
日銀の黒田東彦総裁は23日、ポルトガルで開催された欧州中央銀行の会合で講演し、少子高齢化に伴う労働力人口減少が日本の潜在的な経済成長力に対し、「大きな脅威となる」と指摘した。その上で、成長力強化に向け、「労働生産性の引き上げに加え、女性や高齢者の労働参加率を高めることが必要だ」と強調した。日銀が24日に講演内容を公表した。
さて学歴は十分で成績も悪くない人が労働市場から締め出しを食らっている一方で、偉い人達は労働人口の減少を深刻な脅威と訴え続けています。この黒田氏も筋金入りのデフレ派として日本経済の癌であった前任者に比べればマシな部類ではあるのですが、それでもこのレベルなのですから先行きは明るくありません。結局のところ労働人口の減少が叫ばれ「女性や高齢者の労働参加率を高めることが必要だ」とか、他にも外国人労働者の受け入れ(技能実習生という名の人身売買含む)とかが唱えられていますけれど、一方で諸外国に比べて高い水準の学力を備えた人々が労働市場から排除され続けてもいるわけです。「読解力」や「数的思考力」に秀でた高学歴の若者を差し置いて、女性や高齢者、外国人を働かせることを考えている、それが日本の政財界における常識なのですから、まぁ経済が伸び悩むのも納得できるでしょうか。
要するに日本で需要があるのは高学歴で成績も良い人ではなく、「安く買い叩ける人」だということがわかります。日本の経済界が欲しがっているのは、学力の高い若者ではありません。夫の収入もしくは年金という支えがあって、その上に家系補助的なレベルの収入で妥協できるであろう女性や高齢者、そして出身国の水準からすれば最低賃金以下でも高収入に見えてしまう外国人など、そうした人を日本の会社は求めているわけです。従業員を低賃金で長時間働かせることで安価なサービスを提供する、そうした日本的経営は高学歴の人材を多くは必要としないもの、需要があるのは一にも二にも安い人材の方なのです。
日本の大学進学率はようやく5割に届いたばかり、国際的にはお世辞にも高いとは言えないレベルですが、それでも「大学生が多すぎる(キリッ」なんて真顔で言うコンサルタントやエコノミストが闊歩してもいます。まぁ、日本の市場と日本の人材はミスマッチ、謂わば「豚に真珠」となっているところはあるのかも知れません。人を安く買い叩くことしか頭に無く、足下の優秀な人材の使い道を見いだせない、こうした日本の企業にとって、日本の労働者は過ぎたるものなのでしょう。残念ながら、真珠は豚の餌にはなりません。そして輝く機会のないまま豚小屋の片隅に転がされているのが、日本の高学歴な「ニート」たちなのでしょう。