日産、事務系派遣社員を直接雇用 でも最長2年11カ月(朝日新聞)
日産自動車は10月から、事務系の派遣社員を期間を定めた直接雇用に切り替える。労働者派遣法で期間を規制されない「専門業務」として派遣社員を受け入れてきたが、実態は派遣期限に3年という上限がある「一般事務」であるとして、東京労働局が是正指導していた。事務派遣の規制を強化する派遣法の改正が検討されていることも、影響したとみられる。
日産によると、現在は数百人いる事務系派遣社員を、本人の希望に応じて直接雇用に切り替える。契約期間は半年で、判例などから雇い止めをしづらくなる3年を超えないよう、最長2年11カ月まで更新する。今月から新規採用の募集も始めた。
(中略)
労働局への申し立てを支援した「首都圏青年ユニオン」の河添誠書記長は「直接雇用への切り替えは一歩前進と評価できるが、契約更新に上限を設けることで、いつでも解雇できる安い労働力として使い続けようとする狙いが明らかだ。安定雇用には程遠い」と指摘する。
ダイキンが215人を雇い止め 継続雇用求め提訴へ(関西テレビ放送)
ダイキン工業が今月末で契約社員215人を雇い止めにすることがわかりました。その代替要員として新たに100人を採用していることから「雇い止めにする理由がない」として労働者が裁判を起こすことを決めました。業務用エアコンを製造しているダイキン工業堺製作所。今月末で215人もの雇用が失われます。このうち8年から20年にわたって働いてきた4人が雇用の確認を求めて裁判を起こすことにしました。3年前、ダイキン工業は請負の労働者を正社員の代わりに安く使う違法な偽装請負だと労働局から指摘されました。このため最長2年半の契約社員として迎え入れましたが今月末で期間満了となることから215人を雇い止めにするというのです。雇い止めされる男性は「なぜ今まで15年近く働いてきて今さら2年半という期間で切らないといけないのか」と疑問を投げかけます。これはダイキン工業が出していた求人です。雇い止めにする契約社員の代わりに100人を新規採用し仕事の引継ぎもさせています。仕事はこれまで通りあるのに労働者の首だけすげ替えるのです。「これからも仕事があるのに、なんで引き継ぎをして我々が去らねばならないのか」と契約社員の男性は訴えます。
今回は派遣社員ならぬ契約社員の話です。上に挙げた2例とも、一応は直接雇用でありながらも契約期間が限定され、雇い止めが確定しているわけです。これが仮に、労働力が必要なくなったから雇い止めにするというのなら、まぁ企業側の言い分として理解できないこともありません。もちろん雇用側の言い分だけを聞き入れていては社会は機能しなくなってしまうのですが、とはいえ必要なときだけ必要な人数を雇いたいという企業側の思惑は不可解なものではないでしょう。しかるに上記2例の雇い止め理由は「労働力が必要なくなったから」ではなく、端的に言えば「人を入れ替えたいから」です。「仕事はこれまで通りあるのに労働者の首だけすげ替える」わけです。日本では決して珍しいことではないですけれど……
女房と畳は新しい方がよい、なんて諺がありますが「末端の社員は新しい方がよい」ってのが日本的経営感覚とも言えそうです。不況が始まるや相対的に給料の高い中高年をリストラして、ベテランの仕事を若手に押しつけるなんてのが日常化しましたが、今は年齢を重ねても給料の上がらない時代です。ましてや契約社員ともなれば昇給機会はなおさら限られるはず、在籍期間の長い派遣社員も新たに雇用し直す派遣社員も、給与に大した差はないでしょう(賃金相場の低下分は無視できないにせよ)。ベテラン契約社員を雇い止めにして新しく契約社員を雇い直したところで、取り立てて人件費を圧縮できるわけでもありません。それでも雇い止めを繰り返す、継続雇用を避けようとするのは、実質的な雇用責任の発生を免れるための偽装であろうと指摘されています(判例上は3年間が一つの区切りになりやすい)。そうでなくとも派遣社員の場合であれば、業務改革なり組織変更なり、何か「きっかけ」さえあれば定期的に人が入れ替えられるものです。契約社員の場合も似たようなもの、会社側のカイカクごっこの一環としての入れ替えに付き合わされているフシもあるでしょう。
このような問題に対する最悪の対応の一つとしては、規制緩和があります。つまり3年以上の継続雇用があるなら、非正規であろうと雇用責任アリとの判決が下されやすいのですが(ただ個人的に頑張って裁判に持ち込む必要があるため、基本的に労働者側は泣き寝入りするしかありません)、この辺の年限を撤廃すべしと主張する人もいるわけです。しかし非正規雇用が非正規雇用のまま、不安定雇用が不安定雇用のまま働き続けられるように制度を緩めたところで、それはただ問題を先送りしているだけ、将来にツケを回しているだけです。むしろ必要なのは日産やダイキンのような純粋に入れ替えを目的とした雇い止めへの厳格な規制でしょう(制度だけではなく、運用面を含めて)。「仕事はこれまで通りある」のなら雇用は継続させなければならない、人の入れ替えの有無に関わらず中長期的に継続して仕事があるのなら、非正規ではなく正規で雇わなければならない等々。「同じ人を3年」だけではなく「同じ職場で3年」以上に渡って労働力需要があるなら正規に人を雇用する義務がある(例によって制度面だけではなく運用面を含めて)、それぐらいの制限を付けないと、増える雇用は不安定なものばかりという状況に歯止めをかけることはできません。
企業が表面的な利益確保に邁進し、労働者への適切な還元がないから、国内市場がじりじりと萎縮し、少子化も進み、日本全体がゆっくりと自死し続けてるのは、もはや自明だと思うんですが。
中小企業レベルならともかく、大企業レベルの幹部層がその程度の知能もないとは思えないんですがね。
何て言うか、株主重視や成果主義という日本では最近になって欧米追随で導入した制度が全て裏目に出てると思います。自社利益や自分の利益を重視すると、こういう結果になるのでしょう。
欧米では別の制度や規制、社会全体の考え方の違いがあってのことなので、全体構造を無視して良い所取りしようとした結果がこの惨状なのでは?
なんだかんだいって企業も他者を出し抜いて自社だけは生きのころうとしているわけですよね。結果として国全体がボロボロになる、と。こうなる前に企業全般に適切な規制をかけて共食いを防ぐこともまた政治の役割であるはずなのですが、その責任を放棄した自由競争論が未だに幅を利かせているようです。
あまりの脳天気バカさ加減に眩暈を覚えました。
もう、こんなのに期待するほうが間違いです。
(はなから、全く期待などしていませんでしたが)
全く悠長な話ですよね。財界人とよろしくやるのではなく、景気対策と雇用側への規制を速やかに進めなければならないはずなのですが、どうも菅は今の状況がわかっていないようです。
あと本筋からは外れますが、派遣業(特に製造業派遣)や請負業がなかなか一般企業に就職できない人のセーフティネット代わりに活用されているというのも、杞憂とは思いますが、不安もあります。それから、今の派遣・請負労働者と派遣元・請負元企業の労働者との関係が、江戸時代の「上見て暮らすな下見て暮らせ」という封建的な状況になっているとも感じてしまいます。
ふと思ったのですが、契約社員・期間工・派遣社員など人を頻繁に入れ替えることによって、果たして業務の継承とかって大丈夫なんでしょうかね?例えば、製造ならラインとか単純作業だから大丈夫という理屈を通そうとするのかもしれませんが。
しかるにその辺の需給ギャップを無視して、有期雇用を望む人の存在を言い訳に使う人が政財界には多いんですよね。この辺のアンバランスが放置されているが故に、非正規雇用への置き換えが止まらない。製造業では技術の継承が云々と問題視されることもあるはずですが(事務職だって、頻繁な入れ替えのために業務に支障を来しているケースは珍しくないですし)、それでも定期的に人を入れ替える方を会社は好むようです。