経済や財政のことを考える上で一つ念頭に置いて欲しいのは、お金は使っても決してなくならないということです。皆様お金を使ったことは当然ながらあると思いますが、使ったお金を廃棄箱に放り込んだり「使用済」のスタンプを押したりチケットのように二つに切り離したりとか、そういうケースに遭遇したことは一度たりともないはずです。お金を使ったときはいつも、他の人に渡すだけですよね? お金は使っても使っても、決してなくなることはない、ただ他の人の手に渡るだけなのです。それでいて購入した商品やサービスは残る、使われれば使われるほど富を生み出すのがお金と言えます。
しかるに、お金が限りある資源か何かのように誤解されているとお金は貯め込まれるようになる、すると金回りが悪くなる、つまり景気が悪くなるわけです。人それぞれの倫理観からすればどうなるのかは知るところではありませんけれど、経済のことを基本に立ち返って考えるなら、お金とは使えば使うほど価値を発揮するものである、逆にお金を使わずに貯め込むこと、すなわちお金を滞留させることこそが最悪のムダなのです。故に景気対策上は、いかにお金を使わせるか=循環させるかが鍵になります。
政府は今年度から家計支援策の目玉として子ども手当の支給と高校授業料の無償化を始めた。しかし、今回のGDP速報では、「消費の押し上げ効果は薄かった」との見方が大勢を占めている。
子ども手当は、6月に4、5月の2か月分である1人あたり計2万6000円が支給された。4月からの高校授業料の無償化も、家計で消費に回す金が増える計算だった。
政府は子ども手当について、支給額のうち、約7割が消費に回るとの試算を国会で示していた。だが、「自公政権での定額給付金と同じ3割程度しか、消費に回らず、多くは貯蓄されている」(農林中金総合研究所の南武志氏)との見方が強い。
子ども手当などの消費押し上げ効果について、荒井経済財政相は16日の記者会見で、「分析結果が出ていないのでコメントする状況にはない」と述べ、回答を避けた。
あくまでGDP速報からの推測レベルではありますが、子ども手当の経済効果は薄かったとする見方が大勢を占めるようです。支給額の7割が消費に回るとの試算もあったそうですが、ちゃんとした根拠に基づいた試算だったのでしょうか。とかく政府筋の試算は楽観的に過ぎるところがありますけれど、その辺は民主党政権になっても変わっていません。あまりにも甘すぎる予測に基づいた公共投資で大赤字を生み出すとか、この辺は野党時代の民主党も大いに非難してきたことのはずですが、民主党だって予測が大甘なのは前政権と同じようです。よもや見込みが外れれた時は官僚のせいにすればよいと、気楽に考えているんじゃないでしょうね?
まぁ子ども手当は純粋な景気対策ではないわけで、とりあえず景気対策「以外」の部分では奏功しているとしましょう。しかし景気対策の側面から見る限り、7割が貯蓄に回されるようでは失敗と言わざるを得ません。せっかく政府が支出を増やしても、貯蓄に回されてしまっては無意味です。金融機関にとって「投資先はたくさんあるのに運用できる資金が足りない」という状況なら、預貯金が有効に使われることもあり得ます。しかるに不況で国内に有望な投資先を欠くにも関わらず金融機関に預けられるお金ばかりが増えると、それはお金を滞留させることになる、せいぜい国債を買うぐらいしかないということになってしまうわけです。
ではどうやったら公的手当や公的給付が消費に回されるようになるのでしょうか。基本その一は、消費性向の高い所得層に的を絞ることですね。つまり、「ちょっとやそっと収入が増えたくらいでは貯蓄に回す余裕なんてない」人々に集中してお金をばらまくことです。これは福祉や格差是正の面でも好ましいわけですけれど、しかるに経済効率を犠牲にしてでも格差を拡大しようとする政策が、とりわけ小泉時代以降は主流になっているように思えてなりません。あるいは「すぐに使っちゃう人」にお金を配ることです。貯金する習慣がない、後先考えずに給料は全部使ってしまう、そういう人こそが最高の消費押し上げ効果を期待させてくれるわけです。とかく遊興費にお金を使う人には道徳的な非難が浴びせかけられるものですけれど、景気のことを考えるなら、むしろ不道徳な人に程お金を渡すべきでしょう。お金は使う人に配ってこそ意味があるのですから。
精神的な豊かさを追い求めるばかりで、経済的な豊かさを悪と見なす時代ですからね。使わずに貯め込むことを是とする以上、必然的に金回りは悪くなります。
夏冬ボーナス合計180000にしかならないけど、雑用係にはださいから。
使いたくても使えないんだ。
つまり、国民に一律に金をばらまいても意味が無いということがまたまた立証されてしまったわけです。
所得の再分配というものを「慈善事業」という叩かれやすい概念から「資金の流動化」という経済観念に変えてゆくアナウンスこそが政府やマスコミに求められるものでしょう。
ほんと日本人って金貯めるの好きですよね。地獄に持ってけやしないのに。
収入が足りていない人にこそ、お金を渡すことの経済効果があるのですが、民間は民間で人件費カットに血道を上げる、政府も何もわかっていない有様ですからね。
>紅葉修さん
その点では経済政策、景気対策を重視する立場からの再分配政策が、もっと大胆に提言されてもいいはずなんですよね。しかるに経済に関して言及したがる政治家は軒並み、再分配のことなど頭にない傾向にあるような気がします。これでは景気が良くならないのも当たり前……
「ある兄弟が父親の遺産を半分ずつ相続しました。兄はそれを貯金していましたが、弟はそれで酒を飲みました。」
ここまででしたら、賢い兄と愚かな弟、という結論になるでしょう。大多数の日本人の感覚でしたら。
「ところが、インフレが起こって兄の貯金は紙切れ同然になりました。一方の弟は酒瓶やビール瓶を売って大儲けしたそうです。」
大多数の日本人は貯金にはリスクが全くないと思っているから貯金できるのでしょうね。この例え話のような「貯金のリスク」が知れ渡ればもう少しお金が市中に回ってデフレ状態が少しは改善するかも?
ごもっともな話でもありますが、昨今の世論を鑑みると「だからインフレはダメなのだ」と論旨がすり替えられ、より一層デフレに安住する方向へ持って行かれそうな気もしますね。貯金を守るために、なおさらデフレを好む、デフレ真っ最中でも「インフレだけは絶対に避けなければ」と考えるような肉柄ですから。