非国民通信

ノーモア・コイズミ

日本の政界にはいないタイプの右派

2024-06-16 21:44:48 | 政治・国際

欧州議会選、右派・極右2割超 親EU派は過半数確保(日本経済新聞)

【ブリュッセル=辻隆史】6〜9日に投開票された欧州議会選(定数720)で、極右や右派など欧州連合(EU)に懐疑的な勢力が伸長し、2割超の議席を獲得する見通しとなった。フランスやオーストリア、イタリアなどで国内第1党になったもようだ。

欧州統合を推進する親EU派は全体で過半数を維持するものの、環境政策や移民政策などへの修正圧力が強まる。

欧州議会が各国のデータを踏まえて10日昼に公表した議席獲得予測によると、極右を含めてEU統合の理念に懐疑的で、EU主導の野心的な環境政策やリベラルな政策に反発する勢力が伸びる。

 

 先日は欧州議会の選挙が行われたとのことで、主立った国内メディアからは「極右政党が躍進」などとも伝えられています。ただ獲得された議席数を見る限り、確かに議席数を増やしてこそいるものの「中道」と称される勢力を脅かすには至らず、議会のパワーバランスを突き崩すにはほど遠い結果のようです。それでも大手メディアが警戒を隠さないのは、これが日米欧の既存の支配階級にとって好ましくない結果であるから、でしょうか。

 そもそも「極右」だの「中道」だのとカテゴライズされる基準はどこにあるのか、人権意識の希薄さに関しては大差ないように感じるところもあります。ただ「中道」であれば善悪の基準がアメリカにある、親米勢力のやることであれば擁護し、反米勢力のやることであれば非難するという明確な基準を持つ一方、「極右」に関しては自身の好き嫌いが基準で何を擁護し何を叩くか大まかな傾向はあってもブレが大きいのが両者の違いかな、という印象です。

 日本では政党が極右と呼ばれることは稀で、代わりに「保守」などと呼び慣わされることが一般的ですけれど、確かに日本の場合はどの政党も親米という点では一貫しており、そうした面では欧州の「中道」カテゴリには収まっているのかも知れません。あくまでアメリカを頂点とした排他的仲良しグループによる安定統治を志向するのが欧州の「中道」であるならば、日本の主要政党は全てが中道であり右も左もありません。

 一方で「躍進」と呼ぶには微妙ながらも徐々に支持を広げているのが欧州において右派や極右と呼ばれる勢力で、こちらはアメリカの元に一致団結するのではなく、自国優先主義を訴えることが特徴とされます。アメリカの率いる「陣営」の勝利を優先し、そのためであれば自国の支出を惜しまない中道・保守勢力とは裏腹に、NATO陣営の勝利のためであろうが自分の財布を他国のために使うのはお断り、という考え方をするわけですね。

 アメリカ第一主義を国是とする日本はアメリカ陣営の勝利が何よりも優先、自国の被災地には予算を渋ってもNATOの代理人として戦うウクライナのためなら金に糸目を付けません。日本を含む自国の「陣営」が勝つためには、それも一つの戦略ではあるのでしょう。しかし「陣営」即ちEUやNATOなどどうでもいい、単純に自国の利害だけ見ていれば良いのだと、ある意味で潔さを持っている人々が欧州では「極右」と呼ばれて警戒と支持を集めているのが実態と言えます。

 日本は政治的な対立の少ない国だと、私は以前に書きました。与党も野党も、親米と緊縮財政で志を同じくしており、政権交代が起こったところで外交政策や経済政策には変化がない、日本はそんな国です。左からも変化を起こせる勢力が伸びてきて欲しいところですが、同様に右からも望まれるところはある、「自陣営」の利益と「自国」の利益を切り離して考え後者を優先できる右派勢力もまた政治を変えていく上では必要な気がします。

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