非国民通信

ノーモア・コイズミ

人気のある政治家と多様性

2022-12-04 23:48:29 | 社会

 多様性云々と言及されることは昔よりも多くなってはいると思いますが、実際のところはどうなのでしょうか。脚光と反発を集めているものもあれば、今なお意識されないでいるものもまた多いように思います。例えば新型コロナウィルスの感染拡大に端を発して働き方や生活習慣にも相応の変化がありましたけれど、その中で変化に適応する人と、過去に戻ろうとする人との価値観の違いもまた小さくないわけです。

 しばしば「リモートワークで孤独を感じる」などという言説がメディアを賑わせていますが、この辺りはいかがでしょう? 会社組織の中にしか人間関係がなく、かつ仕事をすべき場所で人間関係を築くことに重きを置いてきたような人であれば、それが当てはまるのかも知れません。しかし地域や家庭の中で人間関係を構築できている人や、元より職場は仕事をこなす場所でしかなかった人にとって、リモートワークで孤独も何もあったものではないと言えます。

 あるいは「雑談からアイデアが生まれる」みたいな主張も経済誌を中心としてまことしやかに語り継がれているわけです。確かにオフィスに出勤して雑談で時間を潰しては仕事をしているフリをしてきた人にとって、雑談とはアイデアの源泉でなければならなかったのでしょう。しかし雑談で時間を潰したりせず真面目に仕事を処理してきた人にとっては、リモートワークで雑談がなくなろうとパフォーマンスには何の影響もありません。

 飲み会の出欠も評価に関わると、過去に上司から言われたことがあります。組合も「コミュニケーションを取ることは大切だから」と、会社側を支持する見解でした。この辺は企業や部署によって温度差もありそうですが、飲み会への参加を起立して君が代を斉唱するのと同じくらいに重視している職場は珍しくもないように思います。そうした中で飲み会に皆勤して評価を高めて昇進を重ねている人もいれば、反対に負担と感じていた人もいるわけです。

 問題は、上記の3パターンいずれも前者が「コロナ前」の主流派であったと言うことですね。会社こそが自分の人間関係構築の場であり、やっているのは雑談ばかり、宴会で目立っては偉い人に気に入られて地位を築いた人が従来の職場における主役でした。ところがコロナでリモートワーク導入となると、彼らの活躍の場はなくなり、それまで傍流に追いやられてきた人が反対に頭角を現すことになります。社会全体として「コロナ前に戻る」ことを掲げて脱リモートが進められているのは、そうした人々によるバックラッシュなのかも知れません。

 「コロナ前」を正常と位置づけ、誰もがそこに戻ることを望んでいるかのように語られがちですが、これこそまさに多様性に関する視点の欠如と言えるでしょう。世の中、浮かれ騒ぐことが好きな人もいますが、そうでない人も本当は多くいます。わざわざ出社しなくても成果を出せる人もいる、大人しくしていることに何の苦痛も感じない人もいる、感染症予防を重視する人だっているわけです。ところが後者を完全に無視して、「コロナ前」へと復古の動きが加速してはいないでしょうか。

 上記の千葉県知事の傲岸不遜な主張は典型で、流石に若いだけでチヤホヤされてきた人の言うことは違うなと思わないでもありませんが、このように想像力を欠き多様性を認められないタイプからすると「黙食」とは強いられるものであり、可哀想なものでしかないのでしょう。しかし世の中の「子供好き」が思い描くような騒ぎ回る子供だけが本当の姿かと言えば、実際には大人しい子だっている、食事の時間ぐらい落ち着いて過ごしたい子だっているはずです。

 私が小学生の頃は、休み時間は男子は全員校庭に出てドッジボールをするのがクラスのルールでした。私は不良でしたので隠れて本を読んだりして教師からは目の敵にされていたわけですが、子供は外で体を動かして遊ぶのが好きであって、それが出来ないのは可哀想、という周囲の思いもあったでしょうか。もちろん給食の時間に奇声を上げて駆け回る同級生達が唾を飛ばしてくるのも苦痛でした。私にしてみればコロナで学校環境も良くなったのではと言ったところですが、それでも「コロナ前」に戻そうとする人の方が幅を利かせるのは変わりません。

 引用した熊谷氏は人間としても最低ですが、これが選挙に勝って千葉市長から県知事へとステップアップすることを許してしまったのは有権者の責任でもあります。結局のところ民主主義という名の多数決政治においては多数派に阿る人の勝利こそが宿命であり、多様性に配慮する人の居場所はないのかも知れません。「コロナ前」に戻ろうとする復古派が多数を占めるのであれば、そうした人々の考え方を無批判に受け入れ、逆にコロナ前への回帰を懸念する人の声はこのように罵り返すのが人気商売では得策なのでしょう。

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