非国民通信

ノーモア・コイズミ

昔から知られていたこと

2023-08-12 21:08:15 | 社会

ジャニーズ性加害「深く憂慮すべき事態」 国連部会が会見(毎日新聞)

 ジャニーズ事務所の前社長、ジャニー喜多川氏(2019年死去)による性加害問題を巡り、実態調査のため来日している国連人権理事会の「ビジネスと人権」作業部会のメンバーが4日、東京都内で記者会見した。被害を訴える元ジュニアメンバーらと、事務所代表と面談したと報告し、「ジャニーズ事務所所属のタレント数百人が性的搾取と虐待に巻き込まれたという、深く憂慮すべき事態が明らかになった」と述べた。さらに、「政府が主な義務を負う主体として、被害者の実効的救済を確保する必要性がある」とした。

 

国連部会の見解「法的拘束力ない」 ジャニーズ性加害問題で官房長官(朝日新聞)

 ジャニーズ事務所の創業者、故ジャニー喜多川氏の性加害問題をめぐり、国連人権理事会の「ビジネスと人権」作業部会のメンバーが被害者救済に向けた対応を政府に求めたことについて、松野博一官房長官は7日の記者会見で、被害者への聞き取りなど政府が主体的な調査を行うことに慎重な考えを示した。

(中略)

 また、松野氏は「作業部会の見解は国連としての見解ではなく、我が国に対して法的拘束力を有するものではない」とも指摘した。

 

 さて大手芸能事務所で長年にわたり続けられてきた青少年への性的搾取・虐待の話ですが、国連組織まで調査に乗り出す事態へと発展しています。松野官房長官は日本を代表して「我が国に対して法的拘束力を有するものではない」との見解を表明していますが、いかがなものでしょうか。反ロシアや反中国であれば国連の権威を振りかざすことを好む一方で、自国や宗主国に非難の矛先が向かうようになると国連を無視するようになる、いつもながらの日本外交には違いありません。

 このジャニー喜多川氏による性加害、新たに自らの被害を告白する人が出てきているところではありますが、存在自体は昔から知られており、少なからぬメディアにも掲載されてきました。この辺、オリンピック・パラリンピックの音楽制作担当者であった小山田圭吾氏の障害者いじめや、自民党と統一教会の蜜月関係のようなものでしょうか。昔から知られていたし一般流通の雑誌や書籍にも普通に書かれてきた、それでも世間の注目を集めることなく長年スルーされてきたわけです。

 隠された真実などなく、世の中が気に留めるかどうかの違いしかない、と常々私は思っています。医学部入試における男女の点数調整だって、大騒ぎになる前から裏話として語られてきたものですし、小沢一郎の政治資金問題だって取り沙汰されたのは次の総理大臣と目されるようになってからでも、その実は地元の共産党議団に以前より突かれてきたことでした。誰かの調査や告発によって新たな真実が明るみに出ると言うケースは意外に少数で、多くのことは世間の注目度合いの差でしかない、と。

 では世間の注目を集めるには何が必要なのかと、そこは考えてもなかなか答えが見つからないところです。統一教会の件は、山上容疑者がトリガーを引いてくれました。小山田圭吾や小沢一郎の場合は、地位が上がった結果として有名罪の支払いを求められた結果でしょうか。ジャニーズ事務所の方は、加害者と目される人が死んだからとも考えられますが──少なからぬ被害者がいることは生前から随所で記されてきただけに、もう少し早く世間が注目しても良かったのではないかと思うばかりです。

 これはさておき、他国の独裁者に取り入るために19歳の未成年女性を愛人として差し出す、というのも性加害に当たるでしょうか。客観的に見れば、性加害問題として扱われるものであり被害者の救済も視野に入れる必要があると考えられます。少なくとも再び同じことをやったならば、つまり未成年である日本人女性を外国の権力者へ愛人として送り込んだことが公になったならば、それを仕掛けた人は社会的な非難を受ける、愛人にされた女性は被害者として扱われるはずです。

 ……で、当事者によるコメントがこちらです。世の中には鞭で打たれることを苦痛と思う人もいれば快楽と感じる人もいますので、置かれた状況が同じでも本人の受け止め方はそれぞれ異なるものなのでしょう。柔道の金メダリストでもある内柴正人氏が準強姦容疑で逮捕されたとき、この人は被害者を指して「今の18歳、19歳は立派な大人です。お酒を飲まされたというけれど、自分で断ることは出来たはず」とも述べています。では1959年当時の19歳は立派な大人だったのか、気になるところです。

 他にいくらでも選択肢がある中から、権力者に取り入るべく愛人になるという判断を成人が主体的に行うのであれば、それは尊重されても良いのかも知れません。ただ父親を亡くして高校を中退して夜の店へ働きに出た未成年女性に、どれだけ自分の意思で物事を決められる余地があったのかは微妙な印象です。もちろん個別の事例と一般論は異なる、たまたま本人が強い権力志向で周囲の大人の思惑と合致していた可能性もありますが、そうでなかったらどうだろうとも考えられるべきでしょう。

・・・・・・

 性被害を認める、というのもハードルが高いと言われます。性被害を被ること自体が恥として扱われる、性被害を受ける「弱い」人間として「低く」見られる空気が濃いほどに、性被害を隠そうとする動機は高まるものです。俄にジャニーズ事務所の問題が注目されるようになり、そうした流れの中でカミングアウトする人が続いている状況ですが、ここに至るまでには長い時間がかかりました。いわゆるファーストペンギンは昔から散発的にいましたが、それに続く人はなかなか出てこなかったわけです。

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