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ノーモア・コイズミ

読売新聞の言う現実的選択って何だろう

2011-07-11 23:37:17 | ニュース

就活、女子は現実的選択…正規雇用が男子上回る(読売新聞)

 今春卒業した大学生のうち、正社員など正規雇用で就職した割合は、女子が66・4%で男子の57・7%を8・7ポイント上回っていたことが、読売新聞の「大学の実力 教育力向上の取り組み」調査でわかった。

 就職活動で女子が男子より現実的な選択をしている傾向がうかがえる。男女別の正規雇用率が分かったのは初めて。

 男女合わせた卒業生の正規雇用率は61・5%で、昨年調査より0・1ポイント下がった。

 学部別では、男女とも生活科学・健康科学などの「家政」系学部の健闘が目立ち、男子は実数は少ないものの67・5%で、法・経済などの「社会科学」(67・8%)に次いで2位。女子は71・6%で、卒業後に大半が正規雇用で臨床研修を受ける「医・歯学」(80・5%)を除くとトップだった。

 調査は2008年に始まり、4回目。今年は、企業が重視するコミュニケーション能力の育成や就職支援などをテーマに質問した。回答率は84%で、全学生数の94%をカバーしている。

 さて就職状況を表わす統計としては厚労省による内定率調査や文科省の学校基本調査など、それぞれ基準の異なる代物があります。各調査の違いを把握することで色々と見えてくるところもあったりしますが、今回は読売新聞による調査を見てみましょう。取りあえず最終的に挙げられた数値を見る限り、学校基本調査に近い基準で集計されたものと推測されます。目新しいのは本文にもあるように男女別、雇用形態が正規であるかどうかを明確にしているところですね。その結果によると男女合わせた卒業生の正規雇用率は61・5%で昨年調査より0・1ポイント減、うち女子が66・4%で男子の57・7%を8・7ポイント上回ったそうです。

 2010年卒業の学生に関しても、学校基本調査では女子学生の方が10%程男子学生に比して就職率が高いとの結果が出ていました(参考)。ともすると昨今の就職環境では女性の方が優位なのかも知れません。ただ、せっかく雇用形態の違いにまで踏み込んだのなら、その「先」も含めて追跡調査してほしい気がします。正規雇用全体と非正規雇用全体で見れば歴然たる格差がありますので、この雇用形態による分類は意味があるのでしょうけれど、しかるに一口に正規雇用と言っても非正規雇用の平均以下の賃金で使い捨てにされる人もいるなど千差万別です。女性の方が就職率が高い、正規雇用である率も高い、ただその「中身」はどうなのかまで踏み込めると調査の意義も増すように思います。

 学部別では男女とも生活科学・健康科学などの「家政」系学部の健闘が目立ち、法・経済などの「社会科学」(67・8%)に次いで2位の正規雇用率を記録したそうです。とりわけ女子は71・6%と、臨床研究という正規雇用枠が待っている「医・歯学」を別とすればトップだとか。ただ「家政」系学部の就職先ってどうなんだろうと思うところもあります。正規で就職できる割合は高い学部のようですが、正規と言っても賃金などの待遇面ではどうなのでしょう。待遇は悪いけれど正規雇用率の高い業界に強い学部であれば必然的に卒業生が正規雇用で就職する割合は高くなるわけですが、それが就職に強い学部かと言えば、ちょっと微妙なところですよね。

 まぁ実際に調査するとなると難しいところだとは思いますが、単に正規か非正規かだけではなく、その後の収入や雇用が継続しているかどうかも明らかにしてほしいものです。つまり「高収入の職に就けたかどうか」「年金受給年齢まで働ける職に就けたかどうか」、こういう基準で調査しないと色々と誤魔化されてしまうところも多いのではないでしょうか。

 昨今では女性の専業主婦志向が強まっているとも言われています(参考)。会社でバリバリ働き続けるよりも、自分1人の稼ぎで家族を養っていけるほど甲斐性のある男性を捕まえることの方が難しくなった時代ということで、キャリアウーマンより専業主婦の方が希少価値が高いものになっているのかも知れません(男性の意識も「自分が稼ぐから妻は家で」というものから「おまえも働け」的な方向へとシフトしているようですし)。こういう中では、自然と女性の方が仕事に対する要求は低くなるように思います。一生、自分の稼ぎで生活していくつもりであれば就職先は厳選せざるを得ませんが(コンサルタントの「選り好みするな」なんて戯れ言を真に受けたら大変なことになります!)、結婚して専業主婦になることを前提にしている人であれば、それほど収入や雇用の継続に拘る必要もなくなるので、それだけ就職先も広がるわけです。往々にして雇用側は中高年になったら一部の幹部候補以外は切り捨てて若い人に入れ替えたがるもの、だからこそ安易に切り捨てられないであろう就職先を選ばなければならないのですが、結婚を機に退職したいという願望のある人なら応募へのハードルも下がる、そして採用される率も上がるものと考えられます。

 そんなわけで読売新聞が見出しに掲げた「現実的選択」なるものが果たして何なのか、私は首を傾げるばかりです。たしかに非正規より正規雇用を選んでおくのは現実的選択かも知れません。新卒時に椅子を確保しておかないと、後が大変ですから。ただ一口に正規雇用と言っても、その中身を考えないと誤った印象を広めるばかりです。「正社員でありさえすれば」と、名ばかり正社員になるのは現実的とは呼べません。たとえ就職が決まるのに時間が掛かろうとも、いわゆるブラック企業や業界を避けるのだって現実的選択ではないでしょうか。単に就職できている、正規で就職できていると言っても、必ずしもマトモな職に就職できているかは別問題なのです。健康で文化的な生活を営めるだけの給与が保証されているかどうか、中高年になったときに家族を養えるだけの額へと給与が上昇するような職であるかどうか、本人が望めば年金受給年齢まで働き続けられるような職場であるかどうか――こうした点を無視して単に正規雇用であるかどうかだけで判断すると、取りあえず女性の方が頑張っているもしくは優遇されているということになりそうですが、実態はどれほどのものなのでしょう?

 

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2 コメント

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そもそも選択出来たのか・・・ (ヘタレ一代)
2011-08-16 15:58:11
現実的選択とは言いますが、一社内定をもらえればいいほうである現在、果たしてどれほどの方に選択の余地を持っているのか疑問ですね。私の先輩方や先に就職した友人になぜその会社を選んだのかと聞くと、「自分を拾ってくれたから」という答えばかり聞きます。
こんな状況や管理人さんがおっしゃるようなある意味捨て身の行動を女性たちが取らざるを得ないなら、この調査には何の意味があるのか分かりませんね。それともこの現状を隠すための行為なのでしょうか。
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Unknown (非国民通信管理人)
2011-08-16 23:22:41
>ヘタレ一代さん

 現実的選択というより、妥協の産物なのではないかという気がしてならないんですよね。果たしてどれだけ、統計の対象となった女性が望み通りに就職先を選べたのやら……
返信する

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