非国民通信

ノーモア・コイズミ

各国の選挙を振り返って

2024-07-14 21:27:50 | 政治・国際

 先日の東京都知事選ですが、投票率は60%超で平成では過去2番目の高水準だったそうです。2012年の都知事選には及ばなかったものの、このときは石原慎太郎が職を辞しての争いだったのに対し、今回は圧倒的優位にある現職がそのまま立候補しています。それでも冷めた選挙にならなかったのは、大幅に増えた泡沫候補達の影響もあるでしょうか。中には悪ふざけとの誹りを受けても仕方のない候補者もいましたけれど、そうしたネタ候補もまた選挙への関心を高める上では役に立っていたのかも知れません。

 投票率が上がるのは一般的に良いこととされますが、この結果として割を食ったのが蓮舫で、当初は小池百合子の対抗馬と目されながら石丸伸二にすら及ばない3位という結果に終わりました。蓮舫に限らず民主党系の候補は若年層の支持が薄く、投票率が低迷して相対的に中高年層の票が多数を占める状態では一定の強みを見せるものの、今回のように選挙への関心が高まり若年層の投票も増えるようになると2位にもなれないわけです。政治家が子供受けの良いキャラクターを目指す必要はありませんけれど、支持層が中高年に偏る立憲民主党の弱点は自覚されるべきでしょうね。

 なお立憲・国民の民主両陣営は今回の敗北の責任を共産党に転嫁したいようで、共産党との連携解消を主張する議員も散見されます。実際どうなるかは分かりませんけれど、もし野党共闘という茶番が解消されるのであればどうなるのでしょう。民主党に道を譲って立候補の取り下げを続けてきた結果として共産党は少しずつですが着実に議席と得票を減らしてきました。共産党を滅ぼしたい、共産党に社民党と同じ末路を辿らせたい、反共であればこそ共産党との選挙協力は維持すべき、というのが私の見解ですが、両民主党や連合にどれだけの将来計画があるかは今ひとつ分かりません。

 東京都知事選挙はそれなりに投票率が高かった一方、ヨソの国に目を転じると盛り上がりに欠けたのか投票率の低い選挙もありました。その一つはイランの大統領選挙で、最初の投票では40%、決選投票でも結局は50%に届かない結果に終わったそうです。前大統領の事故死を受けて、今後の方向性を左右しかねない選挙であったにも拘わらず、イラン国民は冷めた目で見ていたことが分かります。

 決選投票に勝利したのは元保健相のペゼシュキアンで、氏を「改革派」と呼ぶ西側メディアからは一定の期待が寄せられているようです。イスラエルの蛮行を制止する上で重要な役割を担っているイランが欧米に媚びるようになるとパレスチナが見捨てられる恐れもあり決して歓迎できる事態ではありませんが、しかしイラン国民の低い投票率に見られる冷めた目線からすると、結局は最高指導者の決定が優先であって大統領についてはあまり重要でないとも考えられます。

 大きな選挙は続き、イギリスでは与党・保守党が大敗し、野党・労働党が政権を奪回するに至りました。もっとも現在の労働党は党内の左派を排斥して「中道」路線で染められており、その政策スタンスは保守党と大きく変わるものではありません。イギリスの場合は純粋に与党の失策のために別の党へ票が移っただけであり、日本における自民党から民主党への政権交代と同様、与党は変わっても根本的な政策は変わらない、あまり期待の持てない政権交代で終わる可能性は高いことでしょう。

 逆に転換の見込みがあるのはフランスで、第一回投票では右派が第一党を窺う勢いだったのですが、その後の決選投票で大きく覆り左派がまさかの第一勢力を占めるに至りました。ただ第一勢力と言っても過半数には届かず、左派・右派・中道のいずれも何らかの形で連立を組む必要に迫られています。この連立次第でフランスの政策は変わる可能性もあるものの、中道勢力が上手いこと立ち回ってキャスティング・ボートを握ってしまうと、これまで何も変わらない状況が続くと懸念されるだけに、今しばらくは状況を見守る必要がありそうです。

 ここで「中道」とは何かについて少し考えて欲しいのですが、世間一般の理解は以下のようなものはないでしょうか。「左」と「右」が両側で極端な主張を持っており、その中央でバランスを取っているのが「中道」であると、世の中にはそんな思い込みもありますし、「中道」勢力自身が意図を持ってそのイメージを作り出してきたところもあるわけです。「中道」という言葉を字義通りに解釈すればその名の通り左と右の中間に位置しているように感じられてしまうのは仕方がないのかも知れません。しかし「中道」勢力が促進してきたことの実態はどうなのでしょう?

 確かに「左」と「右」にも当然ながら主張はあり、それが相反して綺麗に対立している部分もあります。では「左」と「中道」、「右」と「中道」の間ではどうなのか、ともすると中間的な関係であろうと勘違いされがちですが、その実は「左」と「中道」の間には絶対に相容れない溝があったり、その点ではむしろ「左」と「右」の間の方がまだしも歩み寄れる余地があったりもするのではないでしょうか。世の中「左」と「右」の対立軸もさることながら、もう一つ「中道」という「極」があって、それぞれ3つの対立で捉えた方が現実に符合するところがあるように思います。

 例えば「資本家を優先」する政策を推し進めているのは「左」か「右」か「中道」かと言えば、多くの場合は中道勢力が最も先鋭的です。同様に「NATOの覇権を優先」しているのもまた「中道」であり、「左」や「右」は懐疑的な立場を取る傾向にあります。こうした点では「左」と「右」の間にはそこまで大きな相違点がなく、むしろ「中道」との間にこそ埋めがたい隔たりがある、その辺は強く意識されるべきでしょう。

 フランス大統領のマクロンはまさに「極中道」とでも呼ぶべき人物で、徹底した資本家優先、NATOの覇権優先へと舵を切ってきました。この極端な中道主義者に比べれば、極左や極右と呼ばれる政治勢力の主張はずっと穏健とすら言えます。日本を振り返っても「右」の安倍晋三と、保守本流の出身と呼ばれ相対的には中道に位置づけられる岸田文雄のどちらが資本家優先、アメリカ優先であるかは考えるまでもありません。日本をアメリカの意向に沿って戦う国へと作り替えようとしている急進派の政治家は、安倍晋三ではなく岸田文雄の方です。

 実際は右よりも左よりも先鋭化した急進派でありながら、「中道」という偽りの仮面であたかもバランスの取れた存在であるかのごとく自らを装う、そんな政治勢力こそが長らく欧米諸国を牛耳ってきました。ひたすらにアメリカ陣営のため勢力圏を広げようとする中道勢力によって国際関係も大きく歪められてきたのが現代と言えますが、フランスのように僅かでも左右勢力が中道を打ち破るようになってきたのは、多少なりとも希望のもてる展開ではあるでしょうか。そして中道勢力の打倒が必要なのは、欧米だけではなく日本もまた同様です!

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