非国民通信

ノーモア・コイズミ

規制の緩さに甘える社会

2010-05-27 22:58:27 | ニュース

日本の飲食店は実質的に規制が緩いから発展している - 堀江貴文オフィシャルブログ

昨日も東京JCのパネルディスカッションとかによばれて、日本の競争力強化や景気回復には何が必要なのか、成長戦略とは何かを聞かれた。即座に規制緩和という言葉が出てくる。規制が厳しい部門は何かとベンチャー的な新規参入が難しい。法律でがんじがらめにされているので、法令順守を徹底しようと思えば、ベンチャーの資金力や人脈・コネではどうにもならん場合が多いのだ。

そこで思ったのが日本の飲食店ビジネスのレベルの高さだ。東京は世界一といっても過言ではない。ミシュランガイドでパリと並ぶ世界で一番星が多い都市であるというのは、客観的に見てもレベルが高い事が証明されているということである。

もちろん、築地市場を頂点とする食材のロジスティックス・サプライチェーンが完備されていること、末端に至るまで食材を新鮮に食卓に届ける技術レベルが高い事なども影響しているが、それだけではないのかな?とも思ってしまった。雰囲気やサービスレベルも高いのだ。

それは飲食業界が実質的には厳しい規制を受けていないからなのではないかと思った。例えば米国では焼肉でも炭火焼肉を導入するのは難しいらしい。一部店舗内でも炭火焼肉店は存在するようだが、ほとんど存在しないのは店舗内での消防法関係がかなり厳しいからだそうだ。飲食店ではないが、海外でシャワートイレが普及しにくい理由は、洗面所など水周りにコンセントを設置することに厳しい規制があるからなのだそうだ。

日本で店舗内で炭火が使えないとなったら大変だろう。規制はあるのかもしれないが、実質的に黙認されているというような事も多い。例えば飲食店で天井の天板をはずしてコンクリートむき出しで営業している店舗が多いだろう。あれもビルによるとは思うが大抵は違法らしい。酒類を提供するのにも日本の飲食店は免許が必要ないが海外は必要なケースが多い。

また夜12時以降、原則として酒類を提供する店は営業できない国が多いが、日本は接客をしなければ朝まで営業してもかまわない。この接客というのも非常にあいまいというか実質的に接客をしていても見逃されている店も多い。バーなどでも個室は完全に個室になってはいけないのだが、地方などにいくと完全個室で営業している店も多い。

つまり、この適度な「ゆるさ」が日本の多様性のある飲食店文化を作り出し、世界に冠たる美食都市を作り出しているのではないかと思った。

 ホリエモンこと堀江貴文氏に関しては色々と興味深いところがあると思うのですが(参考)、つい先日は日本の飲食店は規制が緩いから発展している云々と述べだしたようです。そりゃまぁ日本の飲食業は「顧客サービス」の面で見れば世界随一の水準にあると思います。しかし落ちぶれたとはいえホリエモンは元・経営者なのですから、単に顧客の視点からだけではなく、せめて経営者の視点ぐらいは付け加えて欲しいところですね。日本の飲食業は規制の緩さの故に秀でた顧客サービスが提供されているかも知れませんが、じゃぁ日本の飲食業界が儲かっているのか、経営的に見て他業種に比べて発展が見込める産業と言えるのかどうか、そこを無視して「だから規制緩和が必要なのだ」みたいな誘導をされても説得力など皆無です。規制が緩い飲食業界の未来は明るいのでしょうか?

「日本海庄や」過労死訴訟、経営会社に賠償命令(読売新聞)

 全国チェーンの飲食店「日本海庄や」石山駅店(大津市)で勤務していた吹上元康さん(当時24歳)が急死したのは過重な労働を強いられたことが原因として、両親が経営会社「大庄」(東京)と 平辰 ( たいらたつ ) 社長ら役員4人に慰謝料など約1億円の損害賠償を求めた訴訟の判決が25日、京都地裁であった。

(中略)

 判決によると、吹上さんは2007年4月に入社後、石山駅店に配属されたが、同8月11日未明、自宅で就寝中に急性心不全で死亡。死亡まで4か月間の時間外労働は月平均100時間以上で、過労死の認定基準(月80時間超)を上回り、08年12月に労災認定された。

 大島裁判長は、同社が当時、時間外労働が月80時間に満たない場合は基本給から不足分を控除すると規定していたと指摘。「長時間労働を前提としており、こうした勤務体制を維持したことは、役員にも重大な過失がある」と述べた。

 ホリエモンが語らなかったことの一つに、労働に関する規制の緩さがあります。他業種でも労働関係の規制は無視される傾向にありますが、とりわけ飲食業界の労働条件の劣悪さは有名で、社員/店長の給与は時給に換算するとバイト以下なんてことが珍しくない世界です(参考)。上記引用のケースでは遺族が民事訴訟に出たことで賠償が命じられたわけですが、それは詰まるところ労働基準法違反が民事任せ、公的機関による取り締まりが極めて緩いことをも意味しています。労働関係の「実質的な」規制緩和もまた、日本は非常に進んでいると言えるでしょう。

 審判が笛を吹かないからと、手を使ってボールを運べばサッカーでは圧倒的に有利な立場に立てます。本来ならば初戦敗退で姿を消していなければならないような弱小チームでも、手でボールを運んでいれば勝ち残ることができる――これもまた日本の飲食業界の一面ではないでしょうか。ホリエモンが挙げた各種規制の「ゆるさ」に加えて、労働規制の「ゆるさ」がデフレの中で飲食店を生き延びさせているわけです。なるほど、たしかに規制が実質的に緩和されていることで発展する、生き延びられるところもあるのかも知れません。

 しかし、手を使ってサッカーに勝ったところで、そのチームが強くなれることはないはずです。笛を吹かない審判に助けられて勝ち残るのも、規制の緩さに甘やかされて生き延びるのも、どちらも誤魔化しに過ぎないもので、決して褒められたことではないでしょう。規制が緩いから発展する産業というのは、要するにルール通りに戦っては勝てない産業ということでもあります。そういう産業に偽りの勝利を与えたところで競争力なんて付くわけがないのです。規制緩和とは、ルール通りに戦っては勝てない企業への延命策でしかなく、抜本的な解決を遅らせるだけのものでしかない、そういう側面もまた無視されるべきではないと思います。

 

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7 コメント

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確かに (アダモ)
2010-05-28 11:48:15
 拝啓、非国民様。久々にコメントさせていただきます。「規制をゆるくしも企業自体の競争力があがるわけではない」とはその通りですね。そういえば、企業の競争力強化云々のために法人税減税が言い出されていますが、それこそ企業への「甘やかし」になるのでは?高い法人税の中でもやっていける企業こそ真の競争力を持っているといえるのではないかと愚考したしだいです。
Unknown (非国民通信管理人)
2010-05-28 18:55:04
>アダモさん

 アメリカなら日本よりも法人税が僅かながらも高かったりしますし、ヨーロッパでは社会保険料も含めた「政府に納める率」は日本より上の場合が普通ですからね。そういう状況でも利益の出せる企業を競争率があるというのならわかりますが、減税や規制緩和などで下駄を履かせてやらないと回らないというのなら、それは競争力以前に「見込みがない」企業だと言えるでしょう。どうも私には競争力云々は口実であって、法人税減税や規制緩和の方が目的であるように見えます。
Unknown (mina)
2010-05-28 20:33:14
ミシュランガイドに掲載されるようなお店と規制の緩さがどの程度相関性と因果関係があるのかが気になりました。
ただ日本が世界に誇るものは大抵が労働者に厳しいもののような・・・アニメも自動車も飲食も・・・。
お隣の韓国もそのあたりかなり苛烈にして強い企業を出している感じですよね。
中国はどうなのでしょう。自殺者が出ている工場のニュースが最近ありましたが・・・
Unknown (HANAKO)
2010-05-28 21:57:20
労働者として日常抑圧されているが故に自分が客になった時に横柄になる所があると思います。どうもそういう所から労働者間対立を煽る言説が正当化されてしまう構図があるようにも思います。


Unknown (非国民通信管理人)
2010-05-28 23:40:51
>minaさん

 新興国の持っている競争力って、要するに「人件費の安さ」を武器にした競争力なんですよね。しかし、そうした競争力は新興国が先進国になる過程で失われていくわけで、代わりの武器を手に入れなければならないのですが――どうも日本は人件費の安さを競争力の源とする旧態依然とした考えから抜け出せていないような気がします。とりわけ、改革論者ほど。

>HANAKOさん

 労働側が弱い分だけ、相対的に「お客様」が強くなる、それが高じて「客」になったときの横柄さに繋がるフシはありそうですね。そして自分が「客」になったときに横柄に振る舞った分だけ、「客」を迎える立場に回ったときに苦労させられる、そうやって首を絞めあう社会でもあるのかも知れません。
残念ながら (Bill McCreary)
2010-05-30 10:15:59
>どうも私には競争力云々は口実であって、法人税減税や規制緩和の方が目的であるように見えます。

そういうことだと私も思います。管理人さんがおっしゃるように、たぶん堀江氏の真のねらいはそこでしょう。それは彼自身の哲学にも(たぶん)合致するでしょうし。

あからさまに言うかどうかは別として、日本の経営者って、程度の問題はありましょうが、労働条件の規制緩和を熱望しているんでしょうからね。
Unknown (非国民通信管理人)
2010-05-30 21:57:03
>Bill McCrearyさん

 新規参入規制の緩和などでは経営側が反発することもありますが(ホリエモンがプロ野球に参入しようとしたときなど)、一方で労働規制の緩和は経営側には完全にノンリスクですからね。ある意味、自分たちの利益に忠実と言えるでしょうか。逆に経営側でもないのに労働規制の緩和に賛同しちゃうような人に比べれば、強欲ではあっても馬鹿ではないのでしょうけれど。

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