色々と重大事が相継ぐ中で、時局とは全く関係がないのですが、ちょっと思いついたことがあったので書いてみます。ホリエモンこと堀江貴文氏のことなのですが、彼は拝金主義者だったのでしょうか。たしかに「お金があればなんでもできる」的な発言が伝えられることもありましたし、意図して掲げた看板としては、そうだったのかも知れません。でも何事も看板通りとは限りません。看板に書かれたことが全て正しいなら、あらゆる政党も御用学者も国民のために尽力していることになりますが、実際は違うでしょう? 看板に書かれたメッセージではなく、実際の行動から判断しなくちゃいけません。
ホリエモンが有名になったのは、プロ野球参入を表明したときですよね。当時は球団消滅が既定路線だったところに、ホリエモンが沈黙を破って参入を表明したことで12球団維持へと流れが変わったわけでもあります。一部球団のファンからは救世主扱いされるなど野球ファンからは大いに歓迎されていたわけですが、しかるに球団経営に参入したのは後発の楽天であり、最終的にライブドアは排除されてしまいました。
真っ先に手を挙げやる気を見せたライブドアよりも、当て馬として担ぎ出された感もある楽天が選ばれたのは周知の通りですが、その理由とされたのは両社の経営体力の差でした。ライブドアよりもずっと金を持っている楽天の方が球団の親会社として相応しいと、そう判断が下されたわけです。ホリエモン=ライブドアには先陣を切る勇気と、人の手をつけていない分野に踏み込む柔軟な発想がありましたが、残念ながらカネがありませんでした。カネがなかったために、カネを持っている楽天に敗れたわけです。
次にホリエモンが話題を攫ったのは、ニッポン放送の買収劇でした。証券取引制度の穴を突くような奇策で一気に買収を決めようとしたホリエモンでしたが、予想外の抵抗に事態は長期化、そしてソフトバンク・インベストメントという、例によってライブドアよりもカネを持っている企業の介入によってホリエモンの計画は頓挫しました。そう、ここでもホリエモンは、カネがなかったがゆえに、カネを持っている人/会社に苦杯を飲まされたわけです。資金力の不足を工夫と機動力で補おうとしたものの、失敗したわけですね。
で、最後は粉飾決算です。これもある意味、カネがない分を小細工でどうにかしようとした結果です。結局、逮捕されました。なぜ? そうです、ホリエモンにはカネがなかったからです。ホリエモンはカネがないから失敗してきたのです。ひょっとすると、彼が本当に言いたかったのはこうだったのかもしれませんよ「お金があればなんでもできるのに!」と。
まぁ雇用主としてのホリエモンは特に評価していないと言いますか、彼の下で働いてみたいなどとは微塵も思わないのですが、ただ彼の存在は時代の反映として非常に興味深いものでもあります。小泉政権時代は富裕層を優遇し、中産階級を「下流」に落として特権階級とそうでない人の差を広げよう、格差を拡大させて社会の上下関係が変わらないようにしようと、そんな政策が続きました。こうした中でも突然変異的に、「庶民」の中から金持ちが出てくるわけです。たいていの場合は、特権階級の「お許し」をもらって仲間入りを果たすところですが、しかるに特権階級の領域に許可無く土足で踏み込もうとしたのがホリエモンだったとしたらどうでしょう。楽天と違って招かれもしないのに球団経営に参入しようとする、招かれもしないのに放送業界に参入しようとする、こういう勝手さは政財界にとって好ましくないわけです。小泉政権下でライブドアが摘発されたのは、構造改革によって固定させようとしていた上下関係を、勝手に踏み越えるような行為が嫌われたから、そう考えるとまさに時代の象徴です。
以前、努力を強要する人のことを言いましたが、その努力が報われてもこれですからね。結局だめなんだと絶望してしまいます。さすがに不正行為を正当化するつもりはありませんが。
http://ameblo.jp/takapon-jp/
今の彼の姿です。取り上げたのなら、紹介してあげてください。
まさに小泉政権下で大きくなりそしてつぶされたわけで、そういう意味では気の毒なところはあるかなと。
あ、遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。韓国では管理人さんに教えていただいたソフトがとても役に立ちました。コメント欄からで失礼ですが、本当にありがとうございます。09年もよろしくお願いいたします。
私も当時、自民を支持して今の惨状を招いた若者層ですが当時は階層社会というものに実感がありませんでした。いまなら「金があれば・・・」の発言の趣旨も違って見えます。
そういえば、もっとも華やかな時、亀井相手の刺客で選挙に出た時の馬鹿騒ぎの時は正直閉口思えばあの辺で何かがオカシイと気づけなかったから今があると思いますが。
楽天の場合、指南役にオリックスの宮内がいたのは周知の事実で、その辺の後ろ支えすら持たなかった(持てなかったとは言い辛いので)差がホリエモンの凋落ぶりなのかなと思います。
同じ頃でしたか企業買収で名を馳せた村上氏も思い出されます。彼もホリエモンがらみと敵に回すと世界で一番怖い球団に手を出して上り調子が終わった人ですが、思えばあの時代は小泉といい何かが狂ってたように思うんですよね・・・ホント。
虚業だの言っても他の一流企業だって実態は似たようなものだし、真っ当な根拠と言うより大半印象論だったような。
(虚偽報告だったら西部グループのほうが100倍は悪質だったもんなー、伝統ある企業はそっちのスケールも違います)
金持ちに生り切れない庶民性が、自分等との境界を意識させて、逆にムカつく人が多かったのかも。崇拝しちゃう人も。
こなれた富裕層は「金があれば~」なんて言いませんよね、それ、カネ持ってない人間を基準に考える発想ですよ。
ライブドアと同程度に、ゴマカシを繰り返している会社は他にいくつもあったはずですから。そんな中でライブドアが摘発されたのは、単に知名度の問題もさることながら、権力サイドからも嫌われる理由があったのではないかな、と思うわけです。
>愚樵さん
今はライブドアではなくアメブロですか。社会的には芸能人みたいな扱いなんでしょうね。今は随分と大人しくなった印象ですが、どうなんでしょう。
>Bill McCrearyさん
明けましておめでとうございます。こちらこそ、よろしくお願いいたします。
さて、堀江氏ですが、規制のものを壊すことが叫ばれる中で名前を売り、ところが実際に上下関係を侵してみた、特権階級の領域に足を踏み込んでみたら逮捕された、その点では小泉改革の建前と実像の象徴でもある、そんな気がしています。
>パンダチラさん
彼に勢いがあった頃ならまた別の印象もあるかも知れませんが、今となってみると、むしろカネがないゆえに失敗した、そういう意味では「もっとお金があれば……」と泣き言の一つも言いたくなる貧困層に近いところもあったような気がします。
>ふみたけさん
楽天は、ライブドアを阻止するためにオリックスを初めとする球団経営会社のバックアップがありましたね。招かれざる客として勝手に乗り込んできたライブドア、殿上人達から招待状をもらった上で参入した楽天、野球ファンとして眺めていたあの頃の印象が、私の場合は強いんですよね。
>Gl17さん
そうそう、税金を納めていないことを自慢するような財閥オーナーの方が、よっぽど投獄されるに相応しい。そして印象に残るのは、上流階級になりきれなかった庶民での成金と、本物の特権階級の違い、もの悲しさがありますね。