四国遍路の旅から帰った2日後、慌ただしく関西国際空港を旅たちました。「ドイツ・オーストリア2カ国周遊8日間」のツアーです。我が家にとっては結婚40周年記念という冠がついています。ツアーの参加者は30名ほど。リタイア夫婦、新婚夫婦、お友達同士、学生同士、一人参加とさまざまでした。
私にとってドイツは2回目の訪問になります。仕事の関連で1カ月ほどヨーロッパを遊学したのは20年も前のことでした。イギリス、イタリア、スイス、ドイツ、ベルギー、フランスと慌ただしく移動したこともあり、消化不良を起こした旅でしたが、今回はドイツとオーストリアに限定し、しかもフランクフルトとウィーンは連泊だったので、気持ち的にゆったりとした旅を楽しむことができました。
愛媛県の岩屋寺を引きずりながら12時間のフライトを経てフランクフルト空港に到着した私たちは、翌日、ライン川(世界遺産)下りのクルージングを楽しんだあと、ケルンの大聖堂(世界遺産)に向かいました。ちょうどこの日は日曜日とあって午後のミサの真っ最中、それが終わる4時15分までの90分は自由時間でした。ケーキが美味しいと有名なカフェで一服しているとき、なんとカレッジの仲間(女性)にばったり出会ってしまいました。奇遇というべきか、なんとも世間は狭いものです。
教会内は老若男女おおぜいの信者で溢れかえっていました。驚いたのは敬虔な賛美歌だけではなく、アカペラの歌声や手拍子などリズム感溢れる歌声が、大きな教会堂に響き渡ります。教団それぞれの象徴なんでしょうか、大きな旗を持つ若者がいます。手に手に蝋燭を入れた小さな容器を持つ者がいます。宗教は違っても、敬虔さという意味では違いはありません。四国の山寺で般若心経を唱えるのに近い雰囲気が漂っていました。大人たちの足元には子供たちの姿。小さいころから宗教心を育まれているのでしょう。
2日後に訪れたヴィース巡礼教会(世界遺産)は、その歴史秘話から巡礼が絶えない教会のようでした。中央に据えられている「鞭打たれるキリスト像」は当初、あまりにも悲惨な姿に信者が動揺し修道院の屋根裏に放置されていたのだとか。その後、洗礼の立会人として訪れた農婦がそれを哀れに思い自ら譲り受け熱心に祈りをささげた。すると、キリスト像に涙を流したようなしずくが残っていたとか。この話は瞬く間に広まり、多くの巡礼者たちが訪れるようになったのだそうです。こうした宗教的な秘話が人の心を惹きつける。弘法大師とともに歩く四国遍路に近いものがあります。ロマンティック街道沿いの小さな村シュタインガーデンの草原にぽつんと立つ白亜の教会。ヨーロッパを体感することになります。
今回のツアーはお城巡りもひとつのテーマでした。なにやらメルヘンの世界を彷彿とさせるものがありました。美味しい白ワインをいただきながら、ライン川(世界遺産)の両側に聳え立つお城を眺める、ローレライの歌で知られる岩山を眺めるクルーズも楽しいものでした。世界でもっとも美しい湖畔の町のひとつといわれるハルシュタット(世界遺産)での湖遊覧、ホーエンシュバンガウのノイシュバンシュタイン城は、児童向けの絵本に登場しそうな風景でした。
山の中腹にあるノイシュバンシュタイン城には徒歩で40分ほどかかるのですが、山登りが苦手な家内のために馬車で登ることにしました。足腰のしっかりした2頭の馬に頼ったわけですが、一番前の席に座っているとお馬さんのしんどさが伝わってきます。可哀想になってしまいました。家内も下山は歩いて降りると。
都市間の移動はすべて観光バスでした。1日に300キロもの長距離移動になることもありました。でも、四国遍路の旅で慣れていましたし、たくさんのクラシック音楽を入れたiPodをポケットに忍ばせていましたので、特に苦になることはありません。要所要所で数時間から半日単位で自由時間が設定されていて、比較的のんびりした旅を楽しむことができました。
日本とドイツの間は空路で片道12時間かかります。その間、寝ていれば良いのですが、狭い空間の中、多くの方々が席の前のモニターで映画を見たり音楽を聴いたり。私は、オペラを2本見ましたが、それでも全体の半分の時間に過ぎません。
目の前のモニターで現在地を刻々と示す画面に目をやると、時々ふだん見る日本地図とは異なる画面が現れます。ヨーロッパから日本を見つめる視点です。下図では、上が日本(大阪)、ロシアを挟んで下がヨーロッパ大陸になります。一瞬目を疑いましたが、アジア大陸とは別格で日本という国が存在しているのではなく、どう見てもアジア大陸のひとつの島に過ぎない。そんな日本という国の位置づけを思いました。ユーラシア大陸の東の果てに、日本という小さな島国がある。日本がアジアの一員にほかならないということであり、韓国、北朝鮮、中国とどう向き合うべきかを考えさせます。
8日間にわたる異文化体験を一回のブログでご紹介するには無理がありそうです。近いうちに、「クリスマスマーケット」「芸術のまちウィーン」という視点から、別途ブログにアップしたいと思っています。