心の風景

晴耕雨読を夢見る初老の雑記帳

タンポポ酒

2006-06-25 15:23:26 | Weblog
 雨が降りそうで降らない。すかっと晴れそうで晴れない。かと思うと、曇天の合間をぬって太陽が顔を出す。なんだか落ち着かない日々が続いています。そんな土曜の午後、汗を拭き拭き市内のとある会場にでかけると、ノーネクタイ、ノー上着の面々。クールビスなんですね。こういう小さな取り組みが地球温暖化対策につながっていくのでしょう。でも、ワイシャツにノーネクタイというのはどうも落ち着きません。いっそ、アロハ着用の方が涼しそう。
 ところで昨日は、会合の帰り道にジュンク堂書店に立ち寄って小林秀雄講演CD第三巻「本居宣長」を買ってかえりました。昭和53年夏、熊本県の阿蘇で大学生を対象になされた講演会の記録ですが、このところ毎月1巻ずつ手にして4本目になります。第3巻は、氏が「本居宣長」を刊行して半年を経過した頃のもので、「本居宣長を刊行するまで」「哲学者の文章」「宣長は一人」「プラトンのパイドロス」「ソクラテスと宣長」「人間の知恵」など、興味深い内容が収録されています。講演をもとに出版された本を読むのとは違い、氏の声を直に聞きながら、氏の思いに触れる。目に見えにくい行間を埋めてくれるような気がしています。何回も何回も聞いていると、さらっと読み過ごしいる箇所に気づくこともあります。内容によっては、本を読みCDを聞き、目と耳と両方で初めて氏の真意に気づくこともあります。氏の難しい言葉、思想。それを判ろうとしますが、片手間で理解できるものでもありません。だからよけいに離れられなくなっていく。私にとって小林秀雄は、そんな不思議な存在です。
 話はがらりと変わりますが、きょうは1日中雨のため時間を持て余してタンポポ酒を仕込ました。5月の連休に湖北の里に行った際に採取しておいたタンポポの根っこを陰干しにしていて忘れていたのです。乾燥したタンポポの根にホワイトリカーを注ぐぐと、2ヶ月もすれば琥珀色のタンポポ酒が出来上がります。健胃整腸、ぜんそく、熱さましなどに効用があり、愛用の薬酒です。調子づいて、今度は庭に出て物色しました。そして、ブルーベリー酒、ミント酒、月桂樹酒も仕込みました。そのうちブルーベリーは今回初めての挑戦ですが、滋養強壮のほか、眼精疲労にも効くと言われています。パソコンの使いすぎにはもってこいの薬酒かも知れません。
 これで、今夏の夏バテ防止対策は準備万端整いました。ミンミン蝉の声を聞きながら、長椅子に横たわって、氷を浮かべたタンポポ酒をいただきながら小林先生のご講演を拝聴する。...梅雨明けが待ち遠しいこの頃です。
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紫陽花

2006-06-18 10:33:43 | Weblog
 梅雨の庭の片隅にひっそりと咲く紫陽花の花。昨年、切花の紫陽花を挿木しておいたら、今年きちんと根付いて花を咲かせてくれました。深い緑を背景に打ち上げ花火を連想させる可憐な姿が、「夏」を思わせます。
 紫陽花は日本特有の園芸種で、伊豆や房総の海岸沿いにあるガクアジサイが原種で、我が家の紫陽花もその一種です。一方、花屋さんでよく見かける紫陽花は西洋アジサイといい、18世紀後半に西洋に紹介されたあと品種改良を経て逆輸入されたものなのだそうです。ガクアジサイについて調べてみると、「茎の先に散房花序をつけ、周縁に少数の中性花と中央に多数の両性花をつける」「中性花は4、5枚の花びら状のガクからなり」「中央の両性花を、中性花が額縁のように縁どっているので、この名がついた」(「四季の花=花屋さんの花図鑑」より)とありました。
 ところで、昨夜は、黒田玲子先生の著書「科学を育む」(中公新書)を読みました。浮き足立つ我が国の理科教育の現状と課題、科学技術政策の在り方について考えさせられることが多々あり、時間を忘れて読みふけってしまいました。気がついたら午前3時。慌てて眠りにつきました。
 そんなわけで、今朝は目覚めが悪く、そのうえに小雨が降る梅雨特有の空気が若干の気だるさを誘い、サティのピアノ曲を聴きながら布団の中でもぞもぞしていました。「三つのグノシエンヌ」「童話音楽のメニュー」「絵のような子供らしさ」「でぶっちょ木製人形へのスケッチとからかい」「自動記述」「3つのジムノペディ」...。考えてみると、このCDを聴くのは決まって気だるい雨の日が多いのです。とりあえずは何もしたくない。何も考えたくない。ただただ、肉体として横たわっている自分自身を感じるだけの時間...。
 すると、遠くで「ワン、ワン」。無為の時間に漂う私を、愛犬ゴンタが叩き起こします。現実の世界に蘇らせてくれました。少し遅めの朝食をとろうと食卓につくと、お皿に大きなビワの実がおいてありました。そのとき、ふと夢の中で父に出会ったことを思い出しました。学生時代を長崎で過ごした父は、ビワが大好きでした。明治生まれの彼がなぜ長崎にこだわったのかは知る由もありませんが、経済を学ぶ傍らESSクラブで活躍したようで、英語劇の主役を務めた当時の写真は自慢のひとつでした。父は、卒業と同時に東京の某会社に就職後73歳まで、一貫して企業戦士としての人生を歩みました。もうすぐ父の命日です。何年目になるのか思い出さなくてはならないほど遠い昔のことになってしまいました。
 追記:きょうは紫陽花に触れましたが、日本原種の紫陽花を西洋に紹介したのは、なんとシーボルトでした。その学名に愛人だった長崎丸山の遊女「お滝さん」の名を採ってオタクサと命名したとか。紫陽花は長崎市の花になっています。

シーボルトとオタクサ展
http://www1.city.nagasaki.nagasaki.jp/siebold/newpage1.htm
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中古レコードを楽しむ

2006-06-11 18:32:17 | Weblog
 このところ公私ともにドタバタで、ゆったりと休日を過ごすことができなかったので、地に足がついていない感覚が身体に充満しています。このままでは時間に流され緊張の糸が切れてしまいそうと、鬱憤ばらしに帰宅途中、中古レコード店に立ち寄りました。店に入った途端、私にまつわりついていた時間が止まるから不思議です。
 最近は、アナログディスク、いわゆる中古レコードに静かな関心が集まっています。私と同じ中高年世代だけでなく、いまどきの若者たちの姿も見かけます。レコードプレーヤーも新製品が発売され、爆発的に売れることはないにしてもコンスタントに売れているということですから、アナログファンにとっては嬉しいニュースです。そんな動きを知ってか、なかなか強気の商売をしているレコード店もありますが、わたしのお勧めは、大阪に8店舗を構える中古音楽ソフトの専門店「DISC JJ」。品質と品揃えとリーズナブルな価格が気にいっています。
 中古と言えば「使って古くなったもの」というイメージがつきまといますが、なかなか捨てたものではありません。モノとしては古くなっても、1枚のレコードから再生する音楽の世界は、デジタルディスク(CD)では味わえない耳障りのいい音楽を楽しませてくれます。現在、流通している中古レコードの何割かは、CDの登場で行き場を失った当時の商品であり、何割かは愛好家に丁寧に取り扱われてきたレコード。残りの何割かは通常の管理で時代を経たもので、このクラスになると1枚200円、300円の叩き売りです。でも、そんな中にも時たまきらりと光るものに出会うこともありますから無視はできません。そんなさまざまな経歴を経てきた中古レコードを買ってきては、レコードクリーナー(レイカのバランスウォッシャー33。これって一式5千円もするのです)で丁寧にお手入れをし、眠っていた生命を蘇らせる。わたしにとって最も楽しいひとときです。
 中古レコードの、もうひとつの楽しみ。それはジャケットの図柄です。西欧の美しい自然風景であったり、有名な画家やイラストレーターの作品であったり、演奏家の表情であったり....。わたしが収集するマルタ・アルゲリッチのレコードも、彼女がショパン・コンクールで優勝した若い頃の作品からずらり並べてみると、彼女の表情の変化のなかにピアニストとしての「歩み」が伝わってきます。大フィルを指揮する朝比奈隆の凛々しい姿も生き生きと伝わってきます。CDジャケットでは味わえない世界です。そんなわけで、レコード選びも「曲」や「演奏家」だけでなく「絵」で選ぶこともあるわけです。気に入ったレコードジャケットは書棚の片隅に週替わりで立て掛けます。私の部屋のインテリアのひとつでもあります。きょう手にした「珠玉のオーケストラ名曲集」も、そんなレコードの1枚でした。深い森の中の小川の縁に佇む女性、彼女を見つめる小鳥、フクロウ、ウサギ...。森の静けさの中で小川のせせらぎだけが伝わってきそうな、そんなイラストです。
 更新作業をしていたら、もう夕方になってしまいました。早いものです。今週は少し頑張って何とか土日連休にしたいと思います。
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お嫁さん

2006-06-04 01:13:28 | Weblog
 週末の夜は、私にとって最も心安らぐ贅沢な時間です。身体は結構疲れているはずなのに、午前零時を回って気持ちは高まるばかり。さきほどからチャイコフスキーの交響曲第5番をBGMに、この1週間を振り返っています。
 そう、火曜日の30日には、西本智実さんのコンサートに行ってきました。チャイコフスキー記念財団ロシア交響楽団を引き連れての演奏です。第五番のあとは、本邦初演となる未完成交響曲「ジーズニ」。すばらしい演奏でした。歳甲斐もなく前列4席目でのスタンディングオベージョンでありました。
 ところで、なぜ、この時間帯に更新作業をしているのかと申しますと、実は明日の日曜日、日帰りで東京に行くからなのです。長男君のお嫁さん候補のご両親にご挨拶に行ってまいります。大事にお育てになったのに、親元を離れ関西にお迎えすることになりますから、やはり安心していただくことが一番です。それは良いのですが、どうも我が家は、こういう一家の一大事が大好きなようで、嫁いだはずの娘までも加わって、両親には任せられないとばかり、次男を含めて我が家総出でご挨拶に参上することになった次第です。
 気の早い第一陣は、早くも今夜に東京入りですが、仕事の関係でスケジュール調整に失敗した私は、数時間前にご帰還。愛犬ゴンタと二人で、録画しておいたNHKテレビ「ディロン~運命の犬」第二話をご鑑賞でありました。......う~ん、明日は朝早いので、今週はこれぐらいにしておきます。と言いながら、手帳を見れば、次週の10、11日も出張でありました。
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