心の風景

晴耕雨読を夢見る初老の雑記帳

マルタ・アルゲリッチ

2005-12-23 19:02:44 | Weblog
 ここ数ヶ月の音楽雑誌を眺めていると、各誌ともピアニストのマルタ・アルゲリッチを何らかの形で取り上げています。近年は別府アルゲリッチ音楽祭総監督に就任するなど毎年のように来日していますから、それらの功績が評価されたのでしょうか。先頃、高松宮殿下記念世界文化賞を受賞しました。
 私とアルゲリッチとの出会いは、ずいぶん昔のことです。学生時代だったと思います。彼女がショパンコンクール第1位に輝いた頃です。西欧ではなくラテン・アメリカはアルゼンチンの首都ブエノスアイレスに生まれ育った女性ピアニストであることに、なにかしら関心を持ちました。京都・河原町のレコードショップで、彫りの深い独特の雰囲気を漂わせる彼女の写真を見て、ショパンの「ピアノ・ソナタ第3番ロ長調」を手にしたのが初めてでした。でも、その後はご無沙汰をしていました。最近、音楽雑誌で初老の域に入ったアルゲリッチの姿に出会って、一段と人間味を増した彼女の魅力を改めて感じたのです。
 というわけで、ことし最後の休日は、思い切って繁華街に出かけました。お目当ては、日本橋の中古レコード店DISC J.J.です。手にしたレコードは10枚。1枚800円から1000円ですから、しめて○○○○円。良いお買い物でした。年代順にジャケットを並べてみると、面白いことに気づきました。いくぶん難しい表情を見せる若い頃から、年とともに、だんだんと穏やかな余裕のようなものが感じられる表情に変わっていきます。人間の奥深さを思わずにはいられません。

 ところで、昨年の暮れにオープンした「心の風景」ですが、あっという間に1年が経過しました。仕事に疲れ、人間関係に疲れた私が、このブログで何を表現しようとしているのか、私自身さえ皆目見当がつきません。ただ、時代の激流の中で、か細い枝に必死にしがみついて「この激流に身を任せてよいのか」と自問自答する私がいます。「君は時代の流れから逃れようとしているのではないか」と問いただす、もう一人の私がいます。どちらも「私」なんだと思います。こうして、浮き草のように揺れながら、しかし確実にひとつの方向に向かって齢を重ねている。そういうことなのだと思います。でも、それならブログという形で公開することの意味って何だろうと考えると、不特定多数の方々とほんの一瞬でも、何かを共感する時間をもてたらという甘い思いが浮かんできます。しかし、それも人それぞれなのでしょう。思案したあげく、無理やり何かの意味づけをする必要もあるまい、というところに落ち着きました。
 いずれにしても、この1年間、この「心の風景」にお越しいただきました方々に御礼を申し上げたいと思います。そして、皆様とともに新しい年を新しい「気持ち」で迎えたいと思います。良いお年をお迎えください。

このブログ、通常は日曜日の更新を心がけておりますが、前々回予告いたしましたように、25日、26日と長男君を訪ねて小旅行をいたしますので、本年の更新は本日が最後になります。ひと足早い年末のご挨拶をさせていただきました。(^^♪
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師走のひとコマ(その2)

2005-12-18 10:58:08 | Weblog
 日本の上空に今冬一番の寒気が流れ込み、今日から明日にかけて日本海側や北海道は大雪になるのだそうです。そんな寒い寒い朝、愛犬ゴンタとお散歩に出かけました。落ち葉の上を楽しそうに歩く元気なゴンタと違って、ご主人様は防寒服にマフラー姿という出で立ちです。そんな風景を、初冬の青空に浮かぶ淡いお月様がみつめていました。
 ところで、このところ夜のお散歩が日課になっています。クリスマスが近くなって、お散歩コースに立ち並ぶ家々の庭先にさまざまなイルミネーションが灯るからです。大きな木すべてを覆うものから、小さなお星さんまで、工夫が凝らされています。日に日に増えていくので、ついついお散歩も楽しくなるというものです。MP3プレイヤーに録音したフィリッパ・ジョルダーノの新作CD「プリマドンナ」を楽しみながらです。
 初冬の夜空では、ほんとうのお星さんも輝きを増してきます。真ん丸いお月様をみつけると、つぎは火星、金星、そしてオリオン座、双子座、牡牛座と数えていくことができます。古代エジプト人は望遠鏡でなく肉眼での観測で天文学を考えました。当時は空が澄んでいたのでしょうが、視力も落ちてきた現代人も、まだまだ冬の星空を楽しむことはできます。
 さぁ、ことしもあと2週間です。今週は毎日のように忘年会があります。わたしたちは、過ぎ去った1年間に区切りをつけて新しい年を迎えるために忘年会を開くのですが(表向きですが(^^♪)、中国では「忘年会」ではなく「望年会」と書くのだそうです。新しい年に望みをかけるということなんでしょうか。忘と望の違いって、同じようでずいぶん違うような気もします。いずれにしても、難しいことは横に置いて美酒に酔うのも良し。体調を気遣いならが年末の諸行事を楽しむことにいたしましょう。
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師走のひとコマ

2005-12-11 14:51:39 | Weblog
 急に寒くなってきました。来週はもっと寒くなると天気予報は言っています。温かい布団の中でぐずぐずする季節を迎えました。
 そんな寒さもどこへやら、きょうは町内会の「餅つき大会」でした。朝早くから近くの公園から子供たちの歓声が聞こえてきます。家内も婦人会姿で参戦でした。そんな楽しそうな歓声に誘われて、里帰り中の娘とわたしも仲間入り。慣れない手つきで餅つきに汗を流しました。出来たてほやほやの善哉、焼餅、黄粉餅をいただきながら、同じ街に暮らす大人と子供が入り混じって餅つき大会に興じることの大切さをしみじみ思いました。塾のアルバイト学生が生徒を殺傷するという京都での痛ましい事件があったばかりですから、余計にそう思ってしまいます。
 終戦を境に、日本は、それ以前の価値観を無批判に捨て去ろうとしました。上からの押し付けを嫌い、自由・民主・個人主義への道をひた走ってきました。決して間違ってはいない選択なのですが、ひとつだけ置き忘れてきたものがあります。それは、お互いに目を見つめあい、行動を共に出来る『共感』という言葉ではないでしょうか。特に都会地では、隣近所のコミュニケーションがめっきり少なくなってきました。そこにTVゲームが追い討ちをかける。現実と仮想世界の区別ができなくなる。悲しいことです。
 ところで、我が家では昨日今日と、家族全員が勢ぞろいしました。年に何回かしか帰省できない長男君が帰ってきたからです。今回はひとり人数が増えました。家族みんなで温かくお迎えしました(^^♪。ことしの年末休暇には、遠くで暮らす長男君のお家を訪ねていく計画を立てています。いつも仕事に追われているという彼がどんな街でどんな方々と生活をしているのだろうというわけです。うまく格安航空チケットが入手できたので、長女夫妻と共に小旅行の気分です。まぁ、親ばかというか姉ばかというか、これも家族の絆の表れということにしておきましょう。

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ビクターマーク

2005-12-04 10:42:49 | Weblog
 小雨が舞う晩秋の朝は、愛犬ゴンタのお散歩もそこそこに、部屋の中で過ごしました。窓から見える秋の空も、なんだか重苦しい息遣い。そこにひらひらと落ち葉が舞う。何か寂しい朝の風景です。
 少し気分を晴らそうとレコードを物色しました。目に留まったのは、先日、日本橋のDISC JJで手にした『鶴』でした。国立アカデミー・ロシア合唱団(スヴェシニコフ指揮)。独唱はクララ・コルカン(メゾ・ソプラノ)です。レコードジャケットの帯には「いま世界中の国ぐにで、そして日本で、静かなブームをよびながら歌いつがれている「鶴」をはじめ、戦争の苦しみをこめた抒情歌謡のかずかずが、きく人の心を深ぶかとした感動につつまずにはいない」と紹介されています。1973年の録音とありますから、私が大学を出て就職した頃のものということになります。「戦後はやくも30年を迎えるが、このレコードのみならず、ソビエトではいまあらゆる分野で戦争の苦悩と悲劇を再び繰り返さないといった国民の願いを反映した芸術が生み出されつつあることも思いあわせてご鑑賞いただきたい」とあります。今年が終戦後60年ですから、そのちょうど中間地点で世に出たわけです。その後、ベルリンの壁崩壊、ソ連崩壊...アメリカ同時多発テロ事件、イラク戦争 。この30年間に世界は大きく変わりました。
 素晴らしい合唱を聞き終えて、レコードをジャケットにしまう際、ふとビクターマークに気づきました。蓄音器の前に座るテリア犬。懐かしい絵柄です。ビクターのHPで由来を調べると、原画は1889年にイギリスの画家フランシス・バラウドにより画かれたそうです。「フランシスの兄マーク・H・バラウドは”ニッパー”と呼ぶ非常に賢いフォックス・テリアをかわいがっていましたが、彼が世を去ったため、彼の息子とともにニッパーをひきとりフランシスが育てました。たまたま家にあった蓄音器で、かつて吹き込まれていた兄の声を聞かせたところ、ニッパーはラッパの前でけげんそうに耳を傾けて、なつかしい主人の声に聞き入っているようでした。そのニッパーの姿に心を打たれたフランシスは早速筆をとって一枚の絵を描き上げました」「その時の蓄音器は録音・再生ができるシリンダー式でした」「亡き主人の声を懐かしそうに聞いているニッパーの可憐な姿は、円盤式蓄音器の発明者ベルリナーを感動させ、彼はこの名画をそのまま商標として1900年に登録しました。それ以来この由緒あるマークはビクター商品に美しく記され、最高の技術と品質の象徴としてみなさまから深く信頼され、愛されています」と紹介されています。
 素晴らしい感動を、もういちどいただいた気持ちになりました。で、もう一回、レコードに針を落としました。(^^♪

http://www.jvc-victor.co.jp/company/nipper.html
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