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心の風景

晴耕雨読を夢見る初老の雑記帳

秋に、ヴォーリズ来日120年記念シンポ

2025-08-23 14:24:32 | Weblog

 暑さが峠を越えて少しずつ過ごしやすくなる時季を「処暑」と言うのだそうですが、今夏のこの暑さ、秋にはほど遠い感じですね。でも、今朝お不動さんの境内をお散歩しているとツクツクボウシが鳴いていました。その一画では地蔵盆の準備が始まっていました。

 そんなある日、少年サンデーで絶賛連載中の能楽漫画「シテの花」(壱原ちぐさ)の第3巻が発売されました。人気ダンサーの高校生が舞台の事故で顔に怪我を負い、芸能界から退くも、亡き祖母の縁で「能」の世界に飛び込んだお話しです。ついつい手にとって見てしまいます。
 そう言えば、京都の古本まつりから連れて帰ったマンガ「法然上人伝」(川本オコ)も、法然上人の人となりをうまく描いていました。文字から少し離れて漫画を見るのも楽しいものです。
 今週は、先週の下鴨納涼古本まつりに続いて、梅田の阪神百貨店で開催中の「古書ノ市」を覗いてきました。屋外とは違い冷房の効いた催事場です。百貨店の催事ですから並ぶ古書もおすましでしたので、時間をかけてゆっくりと古書とご対面です。でも、会計には長蛇の列ができ、30分もかかりました。
 この日は、お能を勉強するには欠かせない「平家物語」に関する分厚い本と薄い本の2冊お連れしました。当分、読書には事欠きません。
 読書と言っても家にいるだけでは滅入ってしまいます。そこで、9月20日に近江八幡のヴォーリス記念館で開かれるヴォーリズ来日120年記念シンポジウム 「ヴォーリズさん、満喜子さんをドラマに!」に出かけることにしました。大好きな作家のひとり、玉岡かおるさんがご登場です。
 奥様にお声がけすると行く気十分だったので、チケット2枚ゲットしました。そして久しぶりに「負けんとき~ヴォーリズ満喜子の種まく日々」( 新潮文庫)を開いてみました。
 ヴォーリズの妻満喜子は、明治時代の女性実業家・広岡浅子の女婿広岡恵三の妹にあたりますが、彼女の歩みを通じてヴォーリズの生涯を追った作品です。
 ヴォーリズといえば、数多くの西洋建築を手がけた米国人建築家です。関西学院大学や神戸女学院大学などの校舎を建築したり、同志社大学のカレッジソングを作ったり。メンソレータムを普及させた実業家でもありました。
 京都の講座に出かけるときいつも通る四条大橋の両岸に立つ東華菜館とレストラン菊水も、ヴォーリズの設計です。
 話しは変わりますが、孫次男君から依頼されているピアニスト角野隼斗コンサート(11月29日、K1アリーナ横浜)の第2回抽選会、本日発表されましたが残念ながら落選でした。12月にシンフォニーホールであるコンサートチケットも、先日の先行販売日午前9時直後に完売となるなど、熱烈なファンの恐ろしい動きにタジタジです。あとは来週の一般販売に望みを託すのみですが、さあてどうなることやら。

◇  ◇  ◇

 ところで、今年5月にフランスに行った際持ち歩いたパスポートの有効期限が、1年を切ろうとしています。リタイア後十分楽しませていただきましたが、あと5年延長して80歳まで海外旅行を楽しむか否か。いろいろ考えた結果、後期高齢者に仲間入りし坐骨神経痛をはじめいくつかの病名が示されると、いつまでも元気でいられる保証もありません(←少し弱気)。止む無く延長はしないことにしました。余生はせいぜい国内旅行を楽しもうと思います。
 その代わり、11月にもう一度ヨーロッパに出かけることにしました(笑)。行先はヨーロッパ文明の源流とも言えるギリシャです。夏の初めに村上春樹の「街とその不確かな壁」を読んで、エーゲ海を眺めてみたいという気持ちが一気に高まりました。題して「ギリシャ・エーゲ海クルーズ8日間」。
 昨年の地中海クルーズに続くもので、アテネ観光のほかはミコノス島、パトモス島、サントリーニ島などの島々を巡るのんびりした旅になります。とりあえず、AmazonKindleでKindleunlimited(無料)からエーゲ海の写真集やギリシャ神話でも眺めておきましょう。
 これでヨーロッパは北欧を除いてほぼすべての国を訪ねたことになります。現役時代は仕事で、リタイア後は非日常の世界を楽しみましたが、老夫婦にとっては今回が最後の海外旅行。プレ金婚式を祝う旅でもあります。←こじつけかも(笑)。 

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心訳「般若心経」を読む。

2025-08-19 10:28:31 | Weblog

 真夏の昼下がり、長椅子に腰かけて、 下鴨納涼古本まつりから連れて帰った4冊のうち「生きて死ぬ智慧」(文・柳澤桂子/画・堀文子/英訳・リービ英雄=2004年10月発行)を手にとって眺めました。帯には「心訳般若心経」とあり、「科学的解釈で美しい現代語に」と添えてあります。1頁目を捲ると、こんな言葉が記されてありました。

ひとはなぜ苦しむのでしょう・・・
ほんとうは
野の花のように
わたしたちも生きられるのです
もし あなたが
目も見えず
耳も聞こえず
味わうこともできず
触覚もなかったら
あなたは 自分の存在を
どのように感じるのでしょうか
これが「空」の感覚です

 般若心経と言えば、四国八十八カ所遍路の旅に出て初めて唱えたお経です。見様見真似で漢文を追いながら、意味も分からず唱えていました。解説書に目を通しはしましたが、あまりにも奥深く、ただただ唱えるだけでした。
 巡る寺々では、本堂と大師堂で般若心経を唱えますから、これまでに528回 (88ケ所×2回×3巡)以上唱えていることになりますが、未だ空で唱えることができません。まだまだ修行が足りないのでしょう。きっと。
 262文字の般若心経について、柳澤さんはこう記します。「般若心経が教える空について科学的に理詰めで書くことはできます。しかし、科学的である以前に、もっと崇高に歓喜を込めて、さとりの喜びを表現したい」と。
 そして、「宇宙では、形という固定したものはありません。実態がないのです。宇宙は粒子に満ちています。粒子は自由に動き回って、形を変えてお互いの関係の安定したところで静止します」と訳します。
 蝉の声を聞きながら、私には、真言密教のマンダラ思想をヒントに世界の不思議を読み解いた、博物学者にして生物学者だった南方熊楠の「萃点の思想」がぼんやり浮かんできました。
 柳澤桂子さんと言えば、ある時期、中村桂子さんと共にご活躍された新進気鋭の生命科学者でしたから、お名前だけは存じ上げていました。残念ながら30代半ばに病魔に襲われ、その後は闘病生活を余儀なくされていました。研究の一線を退かれてからは、サイエンスライターとしてご活躍でした。 
 ネット上にいのちで読む般若心経 生命科学者 柳澤桂子 (NHKアーカイブ)がアップされていましたので、ご参考までに添えておきます。

◇  ◇  ◇

 この夏、裏庭で無花果がたくさん採れます。全部で50個程度は収穫できそうです。朝の食卓には毎日、採れたての無花果が並びます。
 お盆休みも終わり、先週お休みした「わかりやすい能と古典文学」講座からアーカイブ(URL)が届きましたので、能「当麻(たえま)」のお話しを2時間みっちり聴講しました。
 お盆明けから、絵画教室や謡曲同好会のグループLINEも動き始めています。ただいま、明後日の絵画教室に向けて、能「巴」の一場面を描き始めています。11月末の謡曲発表会の課題曲でもあります。このあと、人物に色をつけて行こうと思っていますが、さあてどうなることやら(笑)。

 明日は整骨院で3回目の施術です。ずいぶん楽になりました。何となく良い方向に進んでいるようです。こうして75歳のシニアライフは、静かに穏やかに始まろうとしています。

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75回目の夏を迎える。

2025-08-16 15:14:46 | Weblog

後期高齢者の仲間入り

 まだまだ暑い日が続くなか、75回目の夏を迎えました。マイナンバーカードも更新され、健康保険証も後期高齢者医療保険に切り替わりました。

 厚生労働省の発表では、男性の平均寿命は81.09歳(女性87.13歳)で、 75歳男性の平均余命は12.08年とあり、統計上は87歳まで生きながらえることができそうですが、父が86歳で他界していますから、ほぼそんなところでしょうか。孫娘の結婚式に出席できるかどうかは神のみぞ知るです(笑)。

 そんな大きな節目の日に、生まれて初めて整骨院に行ってきました。昨年来の右足下腿の痺れが神経内科、整形外科では思うように改善しないので、並行して治療を試みることにしました。入ってびっくり。老若男女の多くの患者さんがお越しになっていました。問診を経て、電気治療(メガボルト×ラジオ波×吸引施術)そして施術と続くと、ずいぶん楽になりました。当面、ほぼ2日おきに集中的に通院すれば一定の改善は見込まれるそうですが、進捗度合いをみてその後の治療方針を考えるとのこと。

孫娘と科学館で遊ぶ

 次男君一家の帰省最終日は大阪市科学館に出かけました。長女一家との夕食会まで時間がもつかどうか心配しましたが、なんのなんの孫娘は目を丸くしていろんな展示物に障り、見つめ、楽しんでいました。最後はプラネタリウムで大阪の夜の星を眺めました(私はお昼寝タイム)。暑いさなか、冷房の効いた館内は過ごしやすく、夏休み中の親子連れでごった返していましたが、なかには若いカップルもちらほら。ちょうど良い空間になっていました。

 展示品の中に、かつて私が楽しんだことのあるポケットコンピュータ(シャープPC-1245)を見つけました。1980年代、全くの素人が見よう見まねでBASICの簡単なプログラムを作ってプリントして遊んでいました。我が家の第1号パソコンです。以来40数年、私のパソコンは何代目なのか思い出せないほど進化しています。

 その後、日本ではじめて静電気を本格的に研究し「日本の電気学の祖 」と呼ばれる橋本宗吉の古文書、太陽や月の運動を研究していた大阪本町に住む天文学者・麻田剛立の古文書などを眺め、丁髷に帯刀の時代に科学に目覚めた先人たちの存在を知ることになります。


下鴨納涼古本まつり

 次男君一家を見送ったあと、京都・下鴨神社の糺の森で開催中の「下鴨納涼古本まつり」に出かけました。開幕して4日が過ぎていましたので、お目当ての品を見つけることはできませんでしたが、それでも1時間をかけて見て回りました。この日連れて帰ったのは、三浦祐之著「日本古代文学入門」、文・柳澤桂子/画・堀文子「生きて死ぬ智慧」/砂原秀遍著「心で読みたい弘法大師のことば」/漫画・川本オコ「マンガ法然上人伝」の4冊でした。〆て千円なり。

 団扇を片手に汗をかきながら選書し終わった頃、うっすらと雨が舞い始めたので、ノンアルコールビールで喉を潤してから帰途につきました。
 きょうは「京都五山送り火」の日です。連日の上洛は少々きついので出かけませんが、小さい頃は庭先でご先祖様の霊があの世へ無事に帰れるようにと、おがらに火をつけて皆で手を合わせたことを思い出します。 

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真夏の夜、思いつくままに。

2025-08-14 00:39:08 | Weblog

伊勢神宮に御礼参り

 お盆休みに次男君一家が横浜から帰って来ました。お天気がぐずつき気味で予定が立たず、ならば雨を避けて旅に出よう!というわけで、彼らが雨の万博に出かけている間に、近場の観光地の宿の予約を試みましたが、名だたる所はほとんど満室。やっと見つけたのが鳥羽の海辺の宿でした。そこで思い立ったのが伊勢神宮への御礼参りでした。
 次男君夫婦は長く子に恵まれなかったところ、7年前のお正月一緒に伊勢神宮にお参りしたその年の秋に待望の孫娘が生まれました。その孫娘が来春めでたく小学1年生になるのを機に御礼参りがしたいと言っていたこともあり、さっそく出かけました。海辺を散歩し、温泉に浸かって、美味しい海鮮料理を楽しみ、翌朝伊勢神宮に向かいました。

大阪薪能
 お伊勢さんから帰った夕刻、私たち老夫婦は大阪・鶴橋でいったん次男君らと別れ、生國魂神社に向かいました。雨のために延期になっていた「大阪薪能」を観るためです。
 当初、11日、12日の両日行われる予定でしたが、初日は雨で順延、2日目は半ばで雨が降り出し火入れ式をもって終演となり、予備日の13日が設けられたものです。この日は能「清経」「初雪」「土蜘蛛」、狂言「太刀奪」、仕舞「鳥頭」を約4時間にわたって楽しみました。篝火で照らされた神秘的な能舞台で美しく舞う能楽師の姿に感動しました。

 高野山夏季大学の余韻
 話は変わりますが、きょうの毎日新聞夕刊の1面と7面に、「「ひろしま」を撮る」と題して、写真家の石内都さんことが大きく取り上げられていました。写真作品を通じて戦後80年を振り返るものでした。石内さんは今夏高野山夏季大学でお話しを伺った方でした。
 映画監督の成田洋一さんもそのお一人です。先日、彼の映画「あの花が咲く丘で、君とまた出会えた。」をAmazonプライムで観ました。現代からタイムスリップした女子高校生と特攻隊員のラブストーリーですが、戦争、特攻隊という重たいテーマでありがながら、今の若者たちに戦争の不条理さを生き生きと伝える作品に仕上がっていました。

『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』本予告90秒💐



 特攻隊と言えば、何年か前に鹿児島を旅行したとき、知覧特攻平和会館に立ち寄ったことがあります。戦争とは何か、平和とは何か、人の幸せとは何かを考えさせられました。
 飛び立つ若者たちが父母に送った陳列の手紙を丁寧に見ていた家内はずっと涙が止まりません。子を思う母親の一面を垣間見た思いがしたものでした。下の右端の写真は、映画の舞台にもなった現存する冨屋食堂の前をバスで通ったときに撮ったものです。

 ハーバード大学医学部客員教授の根来秀行先生のお話し「最先端医学と呼吸法、瞑想法」もその後引きずっています。
 加齢と共に、高血圧、リューマチ性多発筋痛症、坐骨神経痛など具体的な病名が付き始めた年齢になり、自分の健康にやや自信を失いつつある私ですが、つい数年前まで四国八十八カ所を巡り歩いたことが嘘のようです。内科、神経内科、消化器内科、整形外科、眼科など受診する科もタコツボ状態で、総合的に私の心身を診てくれる医者はいません。
 そんな折、根来先生のお話が高野山大学のHPに「ストレスリセット呼吸術 ~瞑想と医学~」(50分程度)と題して掲載されていました。YouTubeでも「細胞呼吸を高める基本の4・4・8呼吸法 」などがアップされています。
 呼吸法という基本的な原理を学び、気負うことなく平常心で「阿字観」に移行していこうと思っています。

 大阪薪能を観て少し興奮気味の私です。明日は、大学受験生の孫長男君を含む長女一家を交えた9名で食事会を開く予定です。こうして子や孫の成長を確認しながら、自らの生き仕方を確かめる歳になってきました(笑)。

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6人兄弟姉妹のニッパー家族

2025-08-08 11:05:20 | Weblog

連日暑い日が続きましたが、きょうは幾分過ごしやすい一日になりそうです。それにしても昨夜の雨は凄かった。京都からの帰り、ターミナル駅に到着してバスに乗る頃に猛烈な雨に遭い、家に帰ったときには全身ずぶぬれになっていました。でも、日照りのため干上がっていた田圃に恵みの雨が降ったのは幸いでした。
 そんなある日、連日の暑さに耐え切れなかったのか、熱帯魚のプレコさんが亡くなりました。水槽の掃除屋さんとして3cmほどの幼魚を連れて帰って10数年、30cmほどに成長したので、近々90cmの大型水槽に変えようかと話していた矢先でした。我が家の「主」的存在でしたから、残念なことをしました。
 そう言えば、17年間を共に生きた愛犬ゴンタが亡くなって9年経ちます。リタイアする2週間前お世話になった方々と一献傾けている時に一報が入りました。7月4日のことでした。さすがに新しいワン君をお迎えする気にもなれず、しばらくはゴンタ・ロスから立ち直れないでいました。
 そんなゴンタ・ロスを癒したのがニッパー君でした。
 私がニッパー君と出会ったのは20年も前のことです。河原町通りを歩いているとき、「小さなアンティークショップのショーウインドウから私を見つめているものがありました。足を止めると「ニッパー犬」でした。そう、このブログでも一度ご紹介したことがありますが、レコードのレーベルに印刷されているビクターマークのニッパー君でした。で、連れて帰ってきました」(2006年9月24日付「ニッパー君との出会い」 )。
 愛犬ゴンタが亡くなって以降、骨董市などでニッパー君を見つけるたびに連れて帰っていたので、いまでは5匹の大家族になっています。
 ところが先日、ブログ「心の風景」に時々コメントをいただく方から「2匹の小さな ニッパー君の里親になっていただけませんか」というお申し出をいただきました。そして昨日、小さな可愛い2匹のニッパー君を我が家にお迎えしました。お母さんニッパーに兄弟姉妹が6匹。大所帯になりました(笑)。
 ニッパー家族を眺めていると、制作者が違うのでしょうか、一匹一匹の表情が違います。この子は気が強そうな子、あの子はちょっと遠慮がちな子、その横の子は優しそうな子、その隣は甘えっ子かな、.....。なかなか楽しい顔ぶれです。
 さて、来週からお盆に入ります。明後日には横浜から次男君が孫娘を連れてやってきます。ただいま滞在中どう過ごすか思案中ですが、先約の大阪薪能に出かける日、彼らは大阪・関西万博に繰り出すとか。あとは京都の知恩院にお参りしたり、お買いものをしたり、長女一家と会食したりして過ごすことになりそうです。 そうこうするうちに、私は後期高齢者の仲間入りです。

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第99回高野山夏季大学に行ってきました。

2025-08-04 22:57:37 | Weblog

 8月1日から3日間、第99回高野山夏季大学(毎日新聞社&総本山金剛峯寺主催/高野山大学後援)に参加してきました。標高634mのお山の上の気温は30度、朝方の最低気温は20度。別世界でした。宿坊の部屋にはクーラーは設置されていますが、そのスイッチを入れることなく快適な日々を過ごしました。

 トップの写真は、新大阪駅前から出発した直行バスの車窓から高野山を眺めたものです。写真中央右の峰には高野山の入口に立つ大門がうっすらと見えます。1200年前、弘法大師空海が開いた宗教都市です。

私の知らなかった世界、生き仕方を知る。

 4回目の受講となる高野山夏季大学には今回約350名の方が受講され、3日間にわたって8人の方々が登壇されました。私がお名前を知っていたのは、プロテニスの杉山愛さんと小説家の京極夏彦さんだけ。各界でご活躍ながらいつもはスルーしてしまう方々から、私の知らない世界、生き仕方をお聴きすることができました。これが夏季大学の魅力でもあります。

 「私写真と戦後史...ひろしまへ」と題してお話しになった写真家の石内都さん。単なるドキュメンタリーではなく「創る」視点から写真を撮り続けて来たという石内さんの78年間の歩みを伺いながら、母親の遺品を撮影した「Mother's」、被爆者の遺品を撮影した「ひろしま」などの作品に見入ってしまいました。まさに芸術作品でした。石内さんは、写真界のノーベル賞と呼ばれるハッセルブラッド国際写真賞を受賞されているとか。
 「思いを、心に届けたい」と題してお話しになった映画監督の成田洋一さん。時々見かけるテレビCMをたくさん手掛けてこられたCMディレクターです。数年前からは映画も手がけ、23年 映画「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」が、来たる8月8日の金曜ロードショーで地上波初放送されるのだそうです。ご本人はテレビでは時間の関係で全編放映が無理なので、是非Amazonプライム等で全編を見てほしいとおっしゃっていました。一介の映像好きの一人の若者が、次々とクリエートしていく熱き情熱が伝わってきました。65歳にして未だ衰えを見せません。羨ましい限りです。

 そのほか、杉山愛さんの「夢を叶える生き方~自分らしさを見つける~」、鎌田浩毅 ・京大名誉教授の「南海トラフ地震から賢く生きのびる~地学の知恵」、金水敏・放送大学大阪学習センター所長の「高野山の上で日本語と関西弁の歴史を考える」、小説家・京極夏彦さんの「共感性の功と罪~お化けと陰謀」なども、興味深く拝聴させていただきました。

奥の院、弘法大師御廟をお参り

 2日目は朝6時半から 宿坊・苅萱堂密厳院の本堂で「朝のお務め」をしたあと、7時から朝食、そして8時からは大師教会で高野山真言宗管長の長谷部真道・大僧正の「お授戒」(事前申込)があり、菩薩十善戒についてお話しを伺いました。  

 午前の講座が終わると宿坊に戻って昼食をいただき、午後は自由時間を利用して奥の院に向かいました。以前は一の橋口から歩いて弘法大師御廟に向かいましたが、今回は右足が不調のため奥の院前までバスで移動し、そこから20分杖を付いて御廟に向かいました。
 樹齢二百年から六百年と言われる大杉に囲まれて、身も心も引き締まります。時々、休憩がてら大杉の幹元に手を添えて、右足下腿の快癒をお願いしたりもしました(笑)。 
 あいにく奥之院燈籠堂は改修工事中(今夏8月末完成予定)のため、燈籠堂での内拝、地下法場は参拝できず、堂の後ろにある弘法大師御廟だけをお参りしました。

 御廟をお参りしたあと、再び大師教会に移動して真言宗に伝わる瞑想法「阿字観入門」(事前申込)を受講しました。

阿字観はじめ呼吸法、瞑想法を学ぶ 。

 こうして心身ともに穏やかな一日を過ごした翌日(3日目)は、ハーバード大学・ソルボンヌ大学医学部客員教授の根来秀幸先生から「最先端医学と呼吸法、瞑想法」についてお話を伺いました。「自律神経」の働きとエビデンスに基づく呼吸法、毛細血管をピカピカにする日々の生活習慣について興味深いお話しを伺いました。

 続いて登壇されたモデルのSHIHOさんは「生きがいを見つける~ヨガと密教が導いたウエルネスの道~」と題して、自らのモデル人生について振り返ったあと、ステージ中央の椅子に座って、手足の動かし方や呼吸法の実技指導(ヨガ)をしていただきました。
 今回の夏季大学では、阿字観体験に始まり、呼吸法、瞑想法、ヨガと一連の流れを、実技を通じて学ぶことができました。

◇   ◇   ◇

 朝お散歩をしていたら、「高野山と謡曲「高野物狂」を紹介した謡曲史跡保存会の看板がありました。撮った写真をみると看板の左下に蛙さんが写っていました(笑)。
 1921年(大正10年)に始まった高野山夏季大学。今はやりの市民講座の草分け的な存在で、来年100回目を迎えます。一つの節目となる来夏のプログラムが楽しみでもあります。

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在るがままに見つめる。

2025-07-31 15:26:35 | Weblog

 街中が死んだように静まり返った真夏の昼下がり、部屋に籠って芸術新潮8月号「白洲正子のまなざし」をぱらぱらめくっています。この人の著作は、これまでずいぶん摘まみ食いをしてきましたが、最近はやはりお能に関するものに目が行ってしまいます。

 白洲正子と出会ったのはいつの頃だったか.......。ブログ「心の風景」の記事検索で振り返ってみると、初出は2006年3月5日付の「春めく」でした。

 「ここ数週間の休日は、白洲正子さんの生きざまに触れ、(中略)印象に残っているのは、骨董好きの白洲さんの「目の前にあるものを妙な先入観や知識を持たずに、在るがままに見つめること」「見る目を鍛えること」という主旨のお話でした。ひとの知識を借りて鑑賞するのではなく、自分の目や耳を信頼して、ものを見つめ、その美しさを求める。(中略) 複雑な人間模様の中で見失いがちな「ひと」の在り様に思いを致した次第です」。 

 ついで同年3月26日付記事には「NHKテレビ講座「知るを楽しむ~私のこだわり人物伝~」で白洲正子さんに出会い、白洲さんの著書を何冊か読んでいくなかで、彼女が小林秀雄氏と交友があったことを知った」とあります。

 そして2013年6月16日付の「繋がりから広がる世界」では、「近年の読書遍歴のなかで、鶴見和子、南方熊楠、柳田国男、小林秀雄、白洲正子、そして信時潔が繋がった。(中略)不安定なのは村上春樹の、私の中のポジションです。いえいえ、上田秋成「雨月物語」、柳田国男「山の人生」繋がりで何かが見えてくるでしょうよ。 」

 仕事も佳境を迎え日夜陣頭指揮にあたっていた頃ですが、心の中では現実とは全く異なる世界を彷徨っていたようです。その極端さが当時の私の生きる糧になっていたのかもしれません。
 そして今、文庫本の棚には村上春樹や須賀敦子、南方熊楠の文庫が並びます。その後ろには多田富雄、玉岡かおる、塩野七生(ローマ人の物語全43巻)などが控えています。心に残らなかった本はどんどん古本屋さんにお送りしているので、徐々に絞られています。


  今週は整形外科と神経内科の定期検診がありました。血液検査でCRP(炎症指標)に問題はないものの、坐骨神経に起因する右足の状態は芳しくなく、プレガバリンが1錠増えました。その旨奥様にLINEで伝えると、「ヤブ(医者)と違う?病院変えた方が良くない?」と(≧◇≦)。心配してくれるのはありがたいけど、貴方も通う大学総合病院なんですけどねえ(笑)。
 ブツブツ言っても仕様がないので、翌日は茹だるような暑さにもめげず、大阪市立美術館の「ゴッホ展」をご一緒しました。素人ながら絵を描くようになって、私も西洋絵画の見方が少し変わってきたように思いますが、ひんやりとした館内で作品を眺めながら、ゴッホ特有の色と筆づかい、そして息づかいに思いを致し、(白洲正子ではありませんが)「在るがままに見つめ」ました。
 ところで、会場でゴッホの生涯を紹介する映像を見て、ゴッホが1890年7月27日にフランスはオーヴェルの村外れの小麦畑でピストルで自らの胸を撃ち、2日後の7月29日に亡くなったことを知りました。奇遇というべきか、私がゴッホ展を観たのは没後135年経った7月29日でした。


 
さてさて、明日から二泊三日の日程で高野山夏季大学(毎日新聞・総本山金剛峯寺主催)に出かけてきます。気温が5度ほど低い高野山ですから半ば避暑気分ですが、2年前は油断して寝冷えをしてしまいました。今年はそんなことがないように身を引き締めてお勉強してこようと思います。

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盛夏🥵 大川で『能船』を楽しむ

2025-07-27 11:23:21 | Weblog

 連日、猛暑が続きます。朝でかけるときに見送ってくれた朝顔も、夕方にはぐったりとしています。陽が落ちた頃を見計らって水やりをしますが、狭い植木鉢に生きる草花にとって辛い日々が続きます。
 この暑さで素人の夏野菜づくりも、毎日の水やりが欠かせません。今年初めて挑戦した立体仕立てのカボチャは、蔓の剪定を間違ったためかうまく結実しません。でも、プランターで育てているキュウリは上手くできました。夏の初めにホームセンターで90円で買ってきた1本の苗から、なんと大きなキュウリを10本収穫、あと2本ぶら下がっています。大葉も不自由しないし地植えのオクラもなんとか収穫期を迎えました。日陰で育つミョウガの収穫もまぢかです。老夫婦で季節の野菜を楽しむには十分です(笑)。
 そんなある日、市環境部主催の「生ごみ堆肥化・土づくり」講習会に行ってきました。用意いただいた土と米ぬかに水を混ぜてタネを作り、そのタネと生ごみを混ぜて発酵させ堆肥にします。丁寧に教えていただきました。
 ゴミと言えば、私の住んでいる街では、曜日ごとに「古紙・古着」「可燃」「不燃」「廃プラ・ペット」「缶・びん」など分別回収が徹底しています。パンフレットには、分類ごとに回収するごみの詳細がくわしく説明されていて、最近話題の小型充電器や蛍光灯・スプレー缶などは別途市が指定する施設にある「ボックス回収」となっています。このほか町内会(子ども会)では業者に委託して古紙・古着・缶を回収し活動資金の一部に充当しています。
 リタイア後、私もごみ出しに神経を使うようになりました。これからは、生ごみはもちろんコーヒー滓や草花の剪定くずなども極力堆肥にして、少しでもゴミの量を減らすことができたら一石二鳥です。米ぬかの入手方法も教えていただいたので、市の補助を得て庭の片隅に置いているコンポストを有効活用していこうと思います。 

◇  ◇  ◇

 ということで、いつものことながら前文が長~くなってしまいました。ここでやっと本論に入ります。きのう大阪NOHフェスタ能船(大阪・関西万博 能楽の魅力を発信する会・独立行政法人日本芸術振興会・文化庁主催)を楽しみました。場所は大阪・天満橋の八軒家浜船着場です。
 第1部(18時開演)と第2部(19時半開演)の二部制で、私は第1部を観劇しました。軽食&ドリンク付きで五千円。開演前、夕暮れ時の大川の微風にほっとひと息つきながら、スパークリングワインをおいしくいただきました。
 そして、大川に浮かぶ船の上に設えた能舞台を最前列で堪能しましたが、演目の合間にあったワークショップでは「能面体験」があり、挙手の早い順に私を含めて3名が選ばれ体験することに。白足袋を履いて舞台に上がり、「すすり歩き」の練習をしたあと能面とご対面です。
 能面を着ける前に一礼、外した後にも一礼と、能面のもつ神性に思いを致しました。なによりも、顔に着けた能面から眺める視界を初めて体験しました。小さな窓から観客席を見てもなぜか片側しか見えません。それが効き目の仕業であることを知りました。前方の左右二本の柱に焦点を当てながら整えて行くと、少しずつ全体が見通せるようになりました。といっても、小窓から眺める世界です。能面を着けて舞うことの難しさを実感しました。
 この日の演目は「高砂」と「羽衣」のダイジェストでした。黄昏どきの大川に浮かぶ船の上で美しいお能の世界を堪能しました。
 特に大きな出来事があったわけではないのですが、こうして心豊かな日々が淡々と流れて行く1週間でした。そして今週末には、いよいよ高野山夏季大学が始まります。

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あっと言う間の9年でした。

2025-07-21 15:26:14 | 四国遍路

 断続的に続いていた驟雨もおさまり、夏本番を迎えました。孫たちも夏休みを迎えたようなので、昨日は久しぶりに近所に暮らす長女一家と夕食を共にしました。
 参議院議員選挙も終わり、きょうは何かしら落ち着きのない朝を迎えましたが、庭に植えているオリーブの木の枝先に、いくつかの実を見つけました。7年前にシチリアはアグリジェントの丘で樹齢千年のオリーブの木に出会い、その手触りが忘れられず、庭の片隅に植えたものです。
 先日、雨の中行われた祇園祭山鉾巡行を、私は四条通の知人宅から眺めました。10階の高さから眺めたのは初めてでしたが、人混みのなか道端で鉾を見上げる方が迫力があったのかも知れません。いずれしても、祇園囃子はいつ聞いても快いものです。ぼんやりと学生の頃の古き良き時代の風景を思い出します。
 そんな呑気な生活を満喫している私ですが、先日19日でリタイアして9年になりました。任期更新のご要請をお断りして比較的早期に一線を退いたことになります。あれもしたいこれもしたいと、中途半端になっていたことへの再挑戦?。それとも長い間家庭をほったらかしてきた罪滅ぼし?(笑)。いずれにしても、いま思えば良い選択だったような気がします。
 気軽に国内外へ旅行に出かけたり、お能を鑑賞したり、コンサートに出かけたり。あるいはシニア講座に通ったりと、日々の生活は一変しました。去年からは奥様も別のシニア講座に通うようになり、共に違う視点から生き仕方を見つめ直す場を得て、楽しく暮らしています。
 健康維持のため朝にお散歩をするようにもなりました。必ず立ち寄るお不動さんでは、本堂、奥の院、大師堂を巡ります。
 奥の院では、うす暗い洞窟の奥に鎮座する大日如来立像をはじめ8体の仏像に朝のご挨拶をします。それが、宗教心に乏しい私に四国八十八カ所巡りの出立を後押ししてくれました。
 これまで、歩き遍路1回、バス遍路2回巡っています。特に歩き遍路では、行く先々で多くの方々との一期一会の出会いがあり、この歳になって貴重な経験をさせていただきました。山深い遍路道で熊や猪に遭遇することもなく、無事満願できました。
 残念ながらこのところ、右足の調子が悪くて再びステッキのお世話になっていますので、4回目はないと思いますが、右足以外は元気そのものです。あっちに行ったりこっちに行ったり、私の放浪癖はおさまりそうにありません。
 更新したばかりのマイナンバーカードが有効期限を迎える10年先まで、孫たちの成長を楽しみながら、絵を描いたり本を読んだり謡曲を習ったりしながら、もうしばらくシニア生活を謳歌したいと思っています。

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K-CLASSICが紡ぐ日韓の心

2025-07-16 20:38:38 | Weblog

 先日、近所のドラッグストアにお買い物に行ったら、駐車場におおぜいの人が集まっていました。なんだろうと覗いてみると「ブルーインパルス見学の方の駐車はお断りします」との看板。大阪の空をブルーインパルスが飛ぶ日でした。そのうち轟音と共に6機の編隊が北の空に現れ、夢洲の大阪関西万博会場に向かって飛んでいきました。
 アクロバット飛行とは言え、何とも平和なお国ではあります。かの地では未だ戦禍おさまらない両極端な世相に少し心が揺らぎました。
 ところで、10日ほど前に古本市から連れて帰った村上春樹の「スプートニクの恋人」を読みました。この小説も村上春樹独特の不思議な人間模様が描かれていますが、そのなかで主人公(僕)は、ギリシャの小島のコテージから突然消えた「すみれ」が部屋に残していたカセットテープを見つけます。シュワルツコップが歌う モーツアルトの歌曲「すみれ」です。
 さっそくLPレコード「モーツアルト歌曲集」(ソプラノ:エリザベート・シュヴァルツコップ/ピアノ:ワルター・ギーゼキング)を取り出して聴いてみました。村上春樹の小説にはこんな楽しみもあるのでした。 
 クラシック音楽と言えば昨日、家内に誘われて大韓民国国立合唱団企画公演「韓日国交正常化60周年記念音楽祭」を聴きに、 ザ・シンフォニーホールに行きました。韓国のK-POPは知っていますが、K-CLASSICを聴くのは初めてでした。 
 大韓民国国立合唱団 (団長兼芸術監督ミン・インギ)は、欧米など各国で公演経験をもつ韓国を代表する合唱団のようです。この日は、第一部がハイドンの「戦争のミサ」、第二部が韓国歌曲と日本歌曲でした。聴きごたえのある素晴らしいものでした。
 なによりも、西洋音楽という共通の「場」を通して、お互いの「感性」を共有できたのは私にとって良い経験でした。韓国の歌曲「青山に生きる」「初恋」「懐かしい金剛山」「川を越えて春が来るように」。日本の歌曲「からたちの花」「明日という日」とも相通じるお隣の国の「感性」を思いました。
 ハイドンの合唱「戦争のミサ」を聴きながらぼんやり思ったことがありました........。
 最近、アメリカンファーストという言葉をよく耳にしますが、狭い地球上で国と国の間に線を引くことにどれだけの意味があるのか。一人ひとりの個性、多様性を蔑ろにして、自分の家の周りに頑丈な壁を作ってしまうことにどんな意味があるのか。
 先月、大阪関西万博会場で、ドイツのナショナルデーで挨拶に立ったピアニストのアリス=紗良・オットは、「私は自分の居場所を国籍の中にではなく、音楽の中に見出してきた。言語や背景、国境を超えて、人と人をつなぐ空間の中に」と言いました。そこに今日的課題の多くが凝縮されているように思います。日本の若者たちを魅了してやまないK-POP同様、K-CLASSICにも相通じるものがあります。当分、目が離せなくなりました。

 この日、私は更新手続きを終えたマイナンバーカードを貰いに市役所に行きました。パスポート同様、私が私であることを証明するカードです。私の立ち位置を確認するカードでもあります。何気なく、窓口で貰ったカードの写真と10年前の前回の写真とを見比べて、私の顔の表情になんとなく変化があることに気づきました。そこには、現役時代の偉そうな顔つきではなく、穏やかな表情をしたお爺さんの顔が写っていました(笑)。

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