暑い暑い夏の昼下がり、籐椅子に横たわり目を閉じて蝉しぐれの世界を彷徨っていると、ふと子どもの頃を思い出します。虫かごを肩にかけ虫取り網を振り回していた頃のことを。夜になると、近所のお爺さんに作ってもらったホタル採り箒をもって蛍狩りに出かけました。そのあと庭先の縁台に腰かけて、そのお爺さんから怪談話を聞きます。まだテレビが普及していなかった頃のことです。怖い怖いお話しに皆でキャッキャッと言いながら聞き入ったものでした。あれからずいぶんな年月が経ち、世の中も様変わりです。
それにしても暑い日が続きます。今週もあっちに行ったりこっちに行ったり。月曜日には国立文楽劇場で夏祭浪花鑑を観ました。演目は「住吉鳥居前の段」「釣舩三婦内の段」「長町浦の段」。7月22日から8月13日までの特別公演です。半分ほどの入りでしたが、外国人観光客をはじめ多くの皆さんが楽しんでいらっしゃいました。
この日は、文楽を観る前に、家内のお供で谷町9丁目界隈のステンドグラス材料店に向かいました。ネットで探したお店ですが、なかなか見つかりません。大阪生まれの大阪育ちの家内なのに、地下鉄から地上に出ると方向音痴になってしまいます。グーグルマップを使って、やっとこさ小さなビルの3階にあるお店を見つけました。
大阪市内もいろんな所に出かけますが、いずれも「点」でしかありません。点と点がどう繋がっているのか分からない。そのお店から国立文楽劇場まで歩いて向かいました。すると、先日訪ねた島之内のお茶屋さん界隈が見えてきたり、生國魂神社への参道が現れたり。そんなに広くはない地域に、時々出かける所が点在していることに気づきました。この日も暑い一日でしたが、時にはこうして歩くことで大阪の街の風景が立体的に見えてくるんだろうと思った次第です。
水曜日は、NPOの関係で京都に出かけました。京都ならではの町屋にある会社の社長さんとの打ち合わせでした。それが終わると仲間と別れて京セラ美術館に向かいました。6月下旬から始まっていた「ルーブル美術館展~愛を描く」が気になっていたからです。この日の最高気温は38.9度。歩いていると背中がじりじりと焼け焦げていくような錯覚に襲われました。熱中症の一歩手前だったかもしれません。
ひんやりとした館内に入ってひと息つくと、ひとつひとつの作品をゆっくり観て回りました。最後の部屋は珍しく写真撮影自由(フラッシュ厳禁)だったので思いっきりスマホで写真を撮りました。日本の美術館も徐々に館内の作品撮影が許されるようになってきました。
今週はこれでは終わりません。週末を迎えた昨日は、山本能楽堂で催された新作能「水の輪」2023~東洋と西洋の出会い」に出かけました。観世流能楽師シテ方の山本章弘さんの作品で、これまで25回あまり公演をされてきたという力作です。今回は、世界各地でご活躍のバレエダンサー・針山愛美さんをお迎えして、「能×バレエ」という意欲作でした。
「水の輪」の舞台は、このブログでも何度か紹介したことのある桂川、宇治川、木津川の三河川が合流する背割堤界隈です。京の都から難波に向けて出発した男が、そこで女の人(水の精)が漕ぐ一隻の川舟に乗せてもらいます。しかし、その女は汚れてしまった淀川の水を嘆き悲しみ姿を消してしまいます。そこに一羽の水鳥が飛んできて、水の精にもう一度帰ってきてもらおうと仲間(子水鳥)を集めて川の掃除を始めました。やがてきれいになった淀川に龍神が現れ、きれいな水の流れの道を作って待っていると、再び水の精が現れて、みんなで水のありがたさと難波の繁栄を祝う。ざっとこんなお話しでした。
水の精を山本さんが舞い、水鳥を針山が舞う。子水鳥を5名の子どもたちが舞いました。バレエとは言え能舞台の上での舞ですから、シューズの上に足袋をはき、舞いにも一定の「形」が工夫されていて楽しく拝見しました。
さてさて、今週もNPOではドタバタの日々が続きそうです。その合間を縫って4日から6日は毎日新聞主催「高野山夏季大学」に出かけます。帰阪後もお盆前まではなにやら忙しそう。なんとも落ち着かない日々が続きます。そんなわけで、このブログも夏休みをいただきます。次回の更新は8月10日前後を予定しています。
今夏は例年以上に暑い日々が続いています。コロナに感染される人も少し増えたような気がします。皆さまにはくれぐれもご健康に留意され、この暑い夏を元気に乗り越えてください。
梅雨が明けて、きょうは「大暑」。ここに来て旧暦の季節感を肌で感じられる季節となりました。夕方、庭に水やりをするのが日課ですが、お疲れ気味の草木もなんとなく息を吹き返します。この調子であと1カ月、お天気と睨みっこする日々が続きます。
さてさて、この1週間も出たり入ったりの慌ただしい日々が流れて行きました。前回ご報告したように、先週半ばには愛媛県は松山界隈にお遍路ツアーに出かけてきました。ことし1月から始まったツアーも8回目を数えます。
初日は、標高1000mを超える四国山地に抱かれた久万高原の44番大宝寺と45番岩屋寺をお参りしました。前回は大宝寺から岩屋寺まで3時間余りをかけ、古くから山岳修験者の行場だった険しい山道を歩きました。高低差160mもある八丁坂では息絶え絶えでした。今回はバスツアーですから楽勝ですが、それでも結構な山登りです。途中、滝のような雨が降り出して立ち往生することもありました。
大宝寺の参道の草むらに「みささぎ権現」という札板が一枚建っていました。聞けば平安時代、後白河天皇の勅使が天皇の脳の病気快復を祈願したところ病が治ったとの言い伝えがあり、神仏習合で頭の病を治す神様として知られているとか。一緒に歩いていたお爺さんは、脳梗塞にならないようにと真剣に手を合わせていました。杉木立の向こうにお社跡がありますが、今は場所を移動しているのだそうです。
お遍路をしていると、いろいろな所でこうした言い伝えが今に受け継がれています。眼の病気、癌、禁酒などなど。科学的根拠もない言い伝えですが、お大師さまに向かって自然と手を合わせてしまいます。人間、最後はこういうことなんでしょう。きっと。
久しぶり汗をかいたあと、この日のお泊りは道後温泉でした。温泉に浸かって一日を疲れを癒し、同行の士と一献傾ける一期一会の楽しいひとときを過ごします。これもお遍路のひとつの楽しみでもあります。
二日目は、逆回りで、51番石手寺、50番繁多寺、49番浄土寺、48番西林寺、47番八坂寺、そして46番浄瑠璃寺と巡っていきました。いずれも平たんな街中に点在していて、それぞれ20分も走れば到着する距離感です。
広い境内に国の重要文化財が建ち並ぶ石手寺では、昔ながらの回廊(参道)を歩いて本堂に向かいますが、帰り際前回品切れだった名物の「やきもち」(白とヨモギ)を手にすることができました。
最後にお参りした浄瑠璃寺では、先達さんお勧めで「魂の転生」という小冊子(400円)を手にしました。この歳になると妙に死後の世界が気になります。中陰→断末魔→魂の旅立ち→初七日→賽の河原→三途の河→十四日→二十一日→二十八日→三十五日→四十二日→四十九日満中陰→六道の門→百か日→一年→三年→七年→十三年→三十三年→五十年を経て「佛界」に到達する魂の転生が分かりやすく紹介されていました。
初七日とか三回忌とか、日頃よく耳にする言葉を深く考えることなくあたり前のように受け止めていましたが、それぞれに節目の仏教的な意味があることを知ることができます。こんな具合で、3回巡っていても、その都度新しい発見があるところに四国遍路の不思議があります。
さてさて、連日暑い日が続く中、ここらあたりで静かにしておればよいものを、昨日は、シニア仲間たちと大阪ミナミの繁華街に近い島之内のお茶屋「たに川」のお茶屋サロンに行ってきました。かつては北新地、新町、堀江、そしてミナミにあった花街、中でもミナミは全盛期には二千人近い芸妓がいたと言いますが、戦災を境に衰退の一途をたどり、今では芸妓も北新地に数名、そしてここ「たに川」さんに4名という状況だとか。そんな花街文化を伝えるのが谷川恵さんが主宰するサロンです。私のような庶民にとっては無縁の世界ですが、一度は見ておきたい花街の風景でした。
ということで、この1週間もあっという間に過ぎていきました。さあて今週はどんな1週間になることやら。とりあえず、明日の夜は国立文楽劇場にサマーレイトショー「夏祭浪花鑑」を観劇に出かけます。水曜日から金曜日はNPOの仕事に忙殺され、週末の土曜日には山本能楽堂に新作能「水の輪」2023~東洋と西洋の出会いを観に行きます。お気軽なものです。
ここ数日、本当に暑くなってきました。梅雨明け宣言も秒読みでしょうか。そんな朝、いつもどおりお不動さんまで朝の散歩です。日に日に蝉の鳴き声も元気になってきました。お天道様も朝からお元気です。境内に入るとまずは本堂にお参りをして、四国八十八カ所の祠の前を通って奥の院に向かい、その後長い階段をあがって大師堂に向かいます。そして休憩所でひと休みしたあと遠回りをして帰る。これで40分ほどでしょうか。汗だくで家に帰るとシャワーを浴びてさっぱりします。
今朝、庭に出てみると、カリンの木の下にカリンの小さな実がひとつ転がっていました。今年初めて実がついたカリンの実の成長を楽しみにしていましたが、数日前に結構な風が吹いていましたから落ちてしまったようです。残るはあと3個。秋には大きくなって黄色に色づいてほしいものです。
今週は残念なニュースもありました。出雲の甥から母(私の姉)が介護施設に入居することになったとの知らせです。認知症が進み、私も心配なので4月に出雲に出かけて遭ったばかりでしたが、いよいよこの日を迎えました。甥夫婦にはこれまでのサポートに感謝するとともに、姉が施設内での新しい人間関係に慣れ、平穏に暮らせることを願うばかりです。
昨日は近所に暮らす長女一家と久しぶりに食事会をもちました。高校1年の孫長男君も小学5年の孫次男君も、大好きなお寿司を堪能しました。孫長男君はこの夏休み中に東京へ一人旅を計画中とか。お爺さんから「闇バイトなんかに手をだすんじゃないよ」とお節介な話しをして皆で大笑いでした。孫の行動が気になるお爺さんでした(笑)。
蝉と言えば、能「蝉丸」を思い出しますが、今週のメインイベント、1回目の伝統芸能塾が山本能楽堂でありました。観世流能楽師シテ方の山本章弘さんから能楽の歴史、能楽師の役割、囃子の構成、能面や装束のお話しなどをスライドを交えてお話しいただきました。能「高砂」の曲をみんなで音読しましたが、謡曲の節回しの不思議さ、お能の奥深さを肌で感じた一日でもありました。
実際に能を舞うシテ方さんからお話しをいただくとずいぶん理解が深まります。次回は8月1日の夜、人形浄瑠璃文楽座三味線の竹澤宗助さんに文楽について語っていただきます。その3日前には山本能楽堂で、新作能「水の輪」2023を楽しむ予定です。(下段の写真は受講者のお一人が能装束を着せていただき舞台に立ったものです)
明後日から一泊二日で愛媛県は松山に行ってきます。今回は44番大宝寺から51番石手寺までの8カ寺です。歩き遍路と違いバスツアーですから旅行気分でもありますが、真夏のことゆえ何があるか分かりません。日々の慌ただしさから距離を置いて、静かにお参りしてこようかと思っています。
先日、朝のお散歩でお不動さんの境内を歩いていたら、どこからともなく蝉の声が聞こえてきました。まだ、真夏のような元気さはありませんが、7月も半ば、これから喧しいほどの鳴き声が境内に充満するのでしょう。きっと。
先週は、NPOの関係で大阪教育大学柏原キャンパスにおじゃましました。駅前から歩いて5分ほどの所にある正門を入ると、それから延々と続くエスカレーターに乗って、お山の上のキャンパスに向かいます。登り詰めたところから大阪平野を望むと、遠くにぼんやりとあべのハルカスや大阪城あたりを望むことができます。
かつて都市部にある大学が一斉に校外に移転した時期がありました。この大学もそうなんでしょう。創立150年を迎える歴史ある教育大学のキャンパスには、まだウグイスが鳴いています。「イノシシに注意」の看板もありました。都会の誘惑から離れた大自然の中で大学生活を謳歌している若者たちを羨ましくも思ったものでした。
雨が降ったり止んだりと落ち着きのない日々が続いています。庭先では、春先の一番花が終わっていったん枯れたクレマチスがまたもや復活、大きな花を広げています。長い冬の間に枯れてしまったと思っていた熱帯果樹パッションフルーツも、気温の上昇とともに急成長、大きな実をつけ始めました。
そうそう、昨年、一心寺の境内で拾ったジャカランダの種から育てた苗木ですが、1年経ってこんなに大きくなりました。でも、タネから育てた実生苗の場合、人の腕の太さぐらい幹が大きくならないと花が咲かないとも言われます。気が遠くなる年月がかかりそうですが気長に待つことにいたしましょう。開花まで生きながらえることができるかどうかは分かりませんが。
2週間前に収穫して陰干しにしていたドクダミ、ヨモギ、ミントの葉っぱがちょうど良い具合に乾燥したので、きょうハサミで刻んで瓶に収めました。手元にある「健康茶のおいしい飲み方」によれば、ドクダミ茶は「便秘、下痢、動脈硬化の予防」、ヨモギ茶は「体調を整えるざまざまな効果がある」と記されています。ミントもいろんな効用があります。基本的に煎じていただくことになります。
子どもの頃、川で遊んでいて怪我をして出血したときに、近くの茂みからヨモギの葉を摘んで揉んで患部を押さえていると血が止まるのは何度か経験したことがあります。ものの本によれば、ヨモギの葉に含まれる精油が、健胃、腹痛、貧血、冷え性、神経痛、リウマチ、ストレス、心臓病、強壮に効果があるとも記されていますが、本当かなあ。
いずれにしても、医薬品に幾ばくかの不信感をもつ私は、この歳になると妙に漢方やら自然の薬草に頼ってしまいます。身体に馴染んでいるからなのでしょうか。花粉症に悩まされたことは一度もありませんし、大病を経験したこともありません。我が家の庭には、アロエ、ウコン、シソ、ショウガ、ユキノシタ、タンポポ、そして幾種類かのハーブたちがいます。複雑な化学式で作られたお薬よりも私の身体には馴染んでいるような気がしないではありません。科学的な根拠はありませんが(笑)。
今日の午後、横浜の次男君からLINEが届きました。4月に幼稚園に通い始めた孫娘を連れてお盆に帰ってくるのだとか。ちょうどNPOの仕事の繁忙期の間(はざま)にあたるのでウエルカムですが、この夏のお出かけは難しくなりました。先延ばしになりそうです。
季節は早や「半夏生」の時季。手元にある「日本の七十二候」によれば「田植えを終える農作業の節目」なのだそうで、夏至から数えて11日目が雑節の半夏生とされ、烏柄杓(からすびしゃく)が生える頃のことを言うのだそうです。この時期に関西でよく食べるのは、蛸ともありました。へえ、そうなんだ。
我が家では今、メダカさんの産卵期を迎えています。人工の藻にはたくさんの小さな卵がくっついています。時々、藻を取り出して別の小さな容器に入れておくと、小さな小さな幼魚が一匹、二匹、三匹....。きょう、恐る恐る網ですくって少し大きめの器に移し替えてあげました。作業が終わって机の上に落ちた水たまりをタオルで拭き取ろうとした瞬間、何かが動いています。よく見ると数ミリほどの小さなメダカがいました。網から零れ落ちたのでしょう。急いですくって器に入れてあげました。よく頑張りました。
そんな我が家では今、奥様がステンドグラスの制作に夢中です。数年前に体調を崩してから遠のいていたのですが、少し元気を取り戻したようで、このところネットで材料やら工作機器やらを購入して再挑戦です。そんな器用なことは私にはできませんが、ご本人は、ボケ防止にもなると楽しそうです。ただいま、子や孫らにホルダーやら写真立てを作っています。
そう言えば、先日の水彩画教室のテーマは楽器でした。私が選んだのは、バイオリンでもタンバリンでもありません。「太鼓」でした。能舞台の後に控える笛方、小鼓方、大鼓方、太鼓方。幽玄の世界に笛と鼓が誘いますが、不思議な場面に変わった頃、掛け声と共に太鼓の登場です。そのリズミカルな音、単調さの中に奥深い音の世界が広がり、能舞台を引き立てます。オーケストラの打楽器と同じですね。現物はないので写真を見ながら描きました。先生からは「皮の色をよく見てね」「胴まわりの色あいもよく考えてね」と、なかなか厳しいアドバイスでした。まだまだ稚拙です。まあ楽しかったら良いか、と自分に言い聞かせています。 画材に「太鼓」を選んだのは、ほかでもありません、。コロナのために長らく休止していた山本能楽堂の能講座が、7月から初心者のための気軽な伝統芸能入門講座「伝統芸能塾」(全6回)として再開します。テーマは「能」「文楽」「舞楽」からなり、講師は観世流能楽師シテ方の山本章弘さん、人形浄瑠璃三味線の竹澤宗助さん、下掛宝生流能楽師ワキ方の安田登さん、天王寺楽所 雅亮会 副理事長の小野真龍さんです。さっそく申し込みました。8月からは、休日の朝の能講座「能活」も始まります。
そうこうするうちに、山本能楽堂から新作能「水の輪2023~東洋と西洋の出会い」のご案内をいただきました。入場料無料(要予約)とあります。さっそく申し込みました。ここ1年、能舞台にはご無沙汰していましたので、これを契機にふたたびお能の世界を彷徨うことにいたしましょう。
とは言え、NPOも今月から秋口にかけて仕事がヤマ場を迎えます。ボランティアとは言いながら気の抜けない日々が続きます。その合間を縫って、四国遍路に出かけたり、高野山夏季大学に行ったり..。東京都美術館のマティス展も気になります(笑)。さあてこの夏はどこに旅行に行こうかと思案中です。73回目の夏を前に呑気なものです。