心の風景

晴耕雨読を夢見る初老の雑記帳

「半分、青い。」の舞台、恵那市で広重の浮世絵体験

2018-06-28 20:20:00 | 旅行

 大阪では観測史上初めての震度6弱の地震は、大阪生まれの家内にとっても初めての体験でした。その後、余震のたびにずいぶん怖がっていました。子供3人を育てたお母さんなのに、結婚して40数年経って意外な一面を見た思いがしました。少し心配。これではダメだと思い、気分転換に一泊の温泉旅行に誘いました。
 岐阜県の恵那駅に降り立つと、「『半分、青い。』の舞台、恵那市へようこそ!」の旗が飛び込んできました。家内が毎朝欠かさず見ているNHKテレビの朝ドラの舞台、それが恵那市です。そんなに大きな街ではありませんが、その歴史は古く、東海道に並ぶ江戸時代の街道「中山道」沿いにあります。まずは街道沿いの大井宿本陣跡や中山道ひし屋資料館などを見て回りました。
 続いて訪ねたのが「中山道広重美術館」です。ちょうど「浮世絵諸国探訪~六十余州名所図会を中心に」展を開催中で、この時期は「花ふわり、月ひかり~広重描く 春花秋月」がテーマでした。
 浮世絵といえば3週間ほど前に、あべのハルカス美術館で鈴木春信展を見たばかり。わずかな基礎知識をもって歌川広重の浮世絵と向き合いました。浮世絵独特のあの青、緑、朱色。一見平面的な画面に構図を駆使して立体的な風景が見て取れます。その構図の素晴らしさ。家内と一緒に、一枚一枚を丁寧に見て回りました。(下の写真は廊下にあった複製パネル。実物は撮影不可です)
 楽しかったのは、2階の浮世絵ナビルームにあった「重ね摺り体験コーナー」でした。広重の浮世絵数点を、実際に自分で摺ってみることができるコーナーです。版木にインクを塗ったあと、「見当」に沿って和紙を版木の上にしっかり固定して馬煉(ばれん)で丁寧に摺っていく。この作業を色を変えて5回ほど続けると、なんと見覚えのある浮世絵が完成します。もちろんシンプルなものですが、私たちのような素人でもなんとなく摺り上げることができます。ポイントは、下の写真の左下にある白い「見当」にしっかり和紙を固定することです。それが微妙に動くと色がダブってしまいます。「見当をつける」という言葉は、この浮世絵摺りから派生したものだそうです。
 その夜は、恵那峡温泉で一服しました。大正時代、ごつごつした岩肌をぬう木曽川の急流をせき止めて造った我が国最初の発電用ダム「大井ダム」が満々と水をたたえるダム湖沿いにあります。樹々に囲まれた遊歩道を歩いて大井ダムまで行ったり、野鳥の鳴き声を聞いたり。ほっとするひと時を過ごしました。
 メンタルヘルスの一環でもあった小旅行でしたが、家内もなんとなく元気を取り戻したようです。帰った翌日からは、この際だからと部屋の模様替えを始めました。ひと安心です(笑)。時々、新聞紙上で大きな災害や事件に巻き込まれた子供たちのメンタルが話題になりますが、子供も大人も関係なく一定の対応が必要なんだろうなあと改めて思いました。
 話題を変えます。きょうは2週間に一度の水彩画教室でした。前回のテーマ「靴」の仕上げと、新しい課題「パプリカ」の制作です。「靴」は長男君が置いていったバスケットシューズです。先生に少しだけ手直しをしていただいて完成です。やはり最後は、色の濃淡で立体感を出すことの大切さを学びました。
 そうこうするうちに6月もあと僅か。今年も半分が経過しようとしています。続く7月は、いよいよ「歩き遍路」です。今回は、大阪駅から高知駅まで高速バスで移動し、その日は竹林寺と禅師峰寺へ。翌朝は高知県営フェリーで種﨑から長浜に向かい雪蹊寺、種間寺、清瀧寺へ。そして最終日は早朝に青龍寺にお参りしたあと、須崎市営巡航船に乗って埋立港から浦ノ内湾を走って横浪港に向かうことにしました。横浪からは再び歩いて須崎駅をめざし、須崎駅発の大阪駅前行き高速バスに乗って帰阪する、ざっとそんな日程を立てました。宿泊先は予約済、高速バスのチケットも復路分の確保を残すだけです。
 今夕のテレビニュースでは、早ければ次の日曜日あたりに梅雨があけるかも知れないと???。7月の下旬ともなれば、連日30度を超える炎天下の「歩き遍路」になりそうです。あまり気張らず、暑さ対策をしっかり行い、のんびりと歩きたいと思っています。

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天災で思う人の優しさ

2018-06-21 16:58:31 | Weblog

 月曜日の朝、いつもどおりコーヒーをいただきながら新聞を開いていると、ドン!ガタガタガタガタ....。同時にスマホの警報が鳴りだし、ガチャガチャガチャーン。飾り棚や食器棚からグラスやお皿が落ちてきました。ほんとうに一瞬のことでした。大阪北部を震源地とする震度6弱の地震です。
 家内は茫然としています。それでも大事には至らず、ひと安心でしたが、2階の部屋に行ってみると、耐震補強をしていないレコードラックからLPレコードがこぼれ落ち、本棚から落ちた本が散乱していました。
 気を取り戻して、さっそく後片付けです。床にはガラス片が飛び散っています。私の部屋では、およそ一千枚のレコードが散らかり、どこから手を付けてよいのやら。中規模の地震でしたから、ご近所を含めて大きな被害はありませんでしたが、これが地震かと.....。
                                      家内のステンドグラス作品は無事でした。
 そうこうするうちに、3人の子供たちからメールや電話が入ってきます。田舎の姉や東京の甥や姪たちからも安否確認の電話やメールが。さらには知人やブログ友達からまでも。わたしたちシニア夫婦の安否を気遣ってくれる人々がいることに、まずは感謝でした。ありがとうございました。

 地震の前日の17日は「父の日」でした。いつの時代からこんな習慣が始まったのかと思いながらも、宅急便が子供たちからのプレゼントを届けてくれます。送り状に書かれた見覚えのある子どもたちの直筆を眺めながら、仕事で忙しいのに気を遣わせたことに感謝です。お酒大好きの父親へのささやかな贈り物でした。
 そのお返しというわけでもありませんが、来月半ばの連休に、神奈川県の三浦海岸の温泉リゾートホテルを連泊で予約しました。あいにく長女一家は不参加ですが、関東組の長男、次男一家が全員集合です。なかでも長男君はこの4月から名古屋に単身赴任中。新1年生、新幼稚園児を含む3人の子育てに忙しいお嫁さんへのささやなか休息日のプレゼントでもあります。みんなでゆったり楽しく過ごせたらと考える親バカです。
 そんなある日、亡き義兄の、四十九日法要にあたる神式の五十日祭が終わった頃、田舎の姉から電話がありました。思ったより元気そうでなによりでしたが、聞くところによると銀行員に扮した男女がやってきて、相続事務に必要だから通帳を預からせてくれと。不審に思った姉は、お金の管理は息子に任せているから分からないと答えて追い返したのだそうです。初期の認知症とはいえ、まだまだ大丈夫。安心しました。
 それにしても他人の不幸につけこんで、よくもこんなことができるものです。我が家にも数か月前に振込詐欺まがいの電話がありました。家内が電話をとると、「おかあさん!」と若い男性の声。とっさに家内は「どちらさまでしょうか」と。数秒後、無言のまま電話が切れたようです。不用意に息子の名前でも呼ぼうものなら相手の思うつぼ、深みにはまっていたかもしれません。悪意をもって人に接したくはないのですが、このご時世、シニア世代にとって気を付けなければならないことが多くなりました。
 大阪北部に大雨警報が出た昨日はカレッジの日でした。いつもどおり家を出て、京橋駅でJR環状線に乗り換えようとすると、20分遅れの表示。やっと到着した電車に飛び乗ってひと駅目の大阪城公園駅で、電車が止まってしまいました。そうこうするうちに大和路線で列車故障が発生して各電車が立ち往生しているとの構内放送が鳴り響きます。通勤客と違い焦ることもないだろうと高をくくっていると、今度は運転の見込みがたたないのだと。しかたなく地下鉄に乗り換えて天王寺駅に向かいました。1時間遅れの到着となりました。
 こうした事態に、交通ICカードはどのように処理されるのでしょう。カレッジが終わって寺田町からJR環状線に乗ろうとすると、改札を通れない。駅員さんに言うとノーチェックで通してくれました。料金の精算は朝いただいた「代行乗車券」を降車駅で示して、そこで清算するのだと。呑み会のため大阪駅で清算してもらいましたが、その日の交通費は160円だけでした。交通ICカードながら、けっこうアナログ的でした。
 ちなみに、その日のJR環状線は列車故障のため終日混乱が続きました。日をおいて地震と雨と列車故障が重なり、都会の大動脈は大混乱。それでも冷静さを失わない乗客の姿に感心もした一日でした。

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梅雨の中休みに「浮世絵」の世界を楽しむ

2018-06-14 22:51:12 | Weblog

 雨が降りそうで降らない。いや少し降った。でも今日は快晴の一日。.......なんとも落ち着かない梅雨の中休みです。そんな一日の始まりは、新聞を取りに行ったついでにブルーベリーの実の収穫です。ジャムを作るためです。その実が食べ頃になるのを小鳥たちが狙っています。人間と小鳥の知恵比べ。早い者勝ちです(笑)。
 さて、きのうは、あべのハルカス美術館で開催中の「ボストン美術館 浮世絵名品展 鈴木春信」(6月24日まで)を観てきました。カレッジの授業「美術を味わう」の一環で、午前中は座学、午後は美術館で鑑賞というプログラムでした。
 浮世絵といえば歌麿、北斎、広重しか浮かんできません。鈴木春信なんて聞いたことがありませんでしたが、午前中の座学では、「憂世から浮世への転換」、町人の暮らしや感性に根差したものに変わっていく「浮世絵の画題」。墨摺絵、丹絵、紅江、漆絵、紅擂絵、錦絵と色数が増え精緻になっていく「版画の変遷」、さらには版元、絵師、彫師、摺師といった「浮世絵制作にかかわる人々」。そんな基本的な事柄を踏まえて、錦絵創始期の第一人者・鈴木春信の世界を読み解いていただきました。
 そんな基礎知識をもって、一枚一枚の作品に対峙してみると、江戸の町の賑わい、風俗や流行、遊興などの風景が見えてきます。絵師の心が見えてきます。数百年を経てしっとりと変色している和紙に、しなやかな人の姿と色合いが馴染んで、私に迫ってきます。今にも人が歩いてくるような、そんな臨場感を感じたものでした。
 展覧会場は、「春信を育んだ時代と初期の作品」「絵暦交換会の流行と錦絵の誕生」「絵を読み楽しむ」「江戸の恋人たち」「日常を愛おしむ」「江戸の今を描く」「春信を慕う」、以上七つのテーマに分かれ、鈴木春信の浮世絵の世界を存分に楽しませてくれました。
 こうした素晴らしい作品が明治期に海外に持ち出され、いまはボストン美術館で大切に保存されています。戦災を免れたという意味ではよかったのかもしれませんが、フェノロサや岡倉天心らがいなければ、これらの作品の多くは散逸していたかもしれません。大事な文化遺産です。
 絵画と言えば、きょうは水彩画教室でした。先日から描いていた「シャクヤクの花」、やっと仕上がりました。先生曰く「お花は上手に描けましたね。でも、どうだろう。花瓶の存在が強すぎないかなあ。お花がかわいそう」と。葉っぱの形と色のぎこちなさの方が気になっていたのに、花瓶が指摘されるとは。でも、言われてみれば確かにそのとおり(笑)。今後の課題にしておきましょう。そして今日のテーマは「靴」でした。
 ここで話題は変わりますが、先週、京都の近代建築を巡る街歩きに出かけました。その際、京都市役所の隣にある旧島津製作所ビル(1927年/設計・武田吾一)の「フォーチュンガーデン京都」でランチをいただきました。私が学生の頃はアルバイト帰りの市電の窓から見えていたビルです。それがなんとお洒落なレストランに様変わり。館内を見学させていただきました。古い建物をうまく活かして使う。外国では当たり前の風景ですが、嬉しいですね。

 そうそう、先日、現役の頃にお世話になった方と久しぶりに一献傾けました。本当に久しぶりだったので、会話についていくのに少し時間を要しました。まさに浦島太郎状態(笑)。考えてみれば、会社という組織はたかが2年でがらりと変わるものでもありません。基本的なところで時代的課題は何も変わってはいません。なのに、非常に遠くから会社というものを見つめている自分に気づきました。社会的存在としての組織の在り様を、まったく違う視点から眺めている。願わくば、さらなる飛躍を期待したいところですが、なかなか厳しい時代なのかもしれません。
 そんなある日の夜遅く家に帰ると、玄関の水槽にいる熱帯魚たちがお出迎えでした。今では我が家で唯一の生きものです。水槽の掃除屋さんと言われる小さなプレコを一匹入れて何年経ったのでしょう。こんなに大きくなってしまい、いまや我が家の主になっています。
 さあて今週も終わりに近づいてきました。6月も半ばを迎え、そろそろ来月の「歩き遍路」の計画を立てなければなりません。今度は31番札所・竹林寺から何カ寺巡ることができるのかどうか。夏の暑さも考慮しなければなりません。この週末に基本計画を固めることにしましょう。

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音楽の授業でスタインウェイのピアノ演奏を楽しむ。

2018-06-07 20:42:05 | Weblog

 昨日は久しぶりに一日中雨が降り、ここ関西も梅雨入り宣言となりました。そんな雨のなか、朝早くから天満橋にあるスタジオに出かけました。今週のカレッジは音楽講座「ピアニストの視点から音楽をみる」でした。午前と午後の各2時間、合計4時間。バロック音楽、古典派音楽、ロマン派音楽、近現代音楽の順に、音大の先生と大学院生から解説とピアノ演奏を聴きました。
 このスタジオには、フルコンサート仕様のスタインウェイ(D274)が常設されています。最前列に座って、バッハの平均律クラヴィーア、ハイドンやモーツアルト、ベートーヴェンのピアノソナタ、ショパンのノクターンやパラード、ドビュッシーのプレリュード、ラベルのマ・メール・ロワ、...最後はベートーヴェンの交響曲第5番を連弾で楽しみました。なによりも、若き院生たちの素晴らしい音楽表現に明るい将来を思ったものでした。
 先生いわく、ピアノ演奏には、譜面に忠実にテンポに合わせて弾くやり方もあるが、ある種の「ゆらぎ」が演奏の幅を広げるのだと。演奏者の個性、思い描く曲想ということなんでしょう。なんとなく分かるような気がします。考えてみれば、グレン・グールドなどはその最たるものです。
 ピアノと言えば、先日、アシュケナージと辻井伸行のコンサートチケットを手に入れることができました。辻井伸行のピアノコンサートは人気が高く、発売日にネット(チケットぴあ)で挑戦するも一瞬のうちに完売という状況が続いていました。大阪公演は11月11日とまだ先のことですが、アシュケナージが指揮するアイスランド交響楽団と辻井伸行の共演で、ラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」を聴きます(笑)。春先に咲く我が家の白いライラックも嬉しそう.......。
 きょうは音楽の話題が続きます。あと二題。........先日、レコードプレーヤーのカートリッジ、愛用のDENON製DL-103を新調しました。2年ぶりの更新になります。いたってシンプルな構造ですが、CDとは異なるLPレコードの良さを引き出してくれるMCカートリッジです。これがアナログの魅力です。
 もうひとつの話題は、先日、徳島県鳴門市のドイツ館で演奏されたベートーベンの第九のこと。読売新聞に「第1次世界大戦下、徳島県鳴門市の板東俘虜収容所で、ドイツ兵捕虜がベートーベンの交響曲第9番(第九)をアジアで初演奏してから100年となる1日、収容所跡地近くの広場で、市民らが当時とほぼ同じ人数規模の約120人で演奏会を再現し、歓喜の歌声を響かせた」という記事が載っていました。このニュースは他の新聞やテレビ、ラジオでも報じられていました。
 そのドイツ館に、私は昨年の9月、「歩き遍路」の第一歩を記す第1番札所・霊山寺に向かう前日、坂東にある民宿の周りを散歩していて偶然出会いました。戦時下のドイツ人捕虜たちと地元住民たちとの友情と交流の歴史が刻まれていました。国境を越えて音楽を共感する心。人の絆。大事にしたいものです。(2017.9.26『歩き遍路』の前日、ドイツ館に遭遇)
 ということで、音楽に纏わるニュース満載のブログ更新となりましたが、今週は梅雨に入る前の日曜日に孫長男君の運動会もありました。少子高齢化が叫ばれる昨今、子供たちの元気な姿を見るのは楽しいものです。「最近の子供は.....」という否定的な話もありますが、どっこい捨てたものではありません。応援合戦や集団演技などを見ながら孫たちの成長に目を細める爺バカがいました(笑)。
 明日は街歩き企画(京都の近代建築を巡る)の本番ですが、お天気が怪しそう。......当分、湿っぽいぐずぐずした日が続くんでしょうね。こんな季節はハーブの挿し木に最適です。大きくなりすぎたローズマリーの枝先を挿し木して「世代交代」の準備でもしましょうか。

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