心の風景

晴耕雨読を夢見る初老の雑記帳

お上りさんの東京見物(その5) ~安産祈願で鎌倉・大功寺にも

2019-05-29 16:49:52 | 旅行

 4月中旬から続いた長短織り交ぜた旅行もやっと終わりました。締めくくりは、先週末から月曜日まで3泊4日の日程で出かけた「お上りさんの東京見物(その5)」でした。

 初日、お昼前に羽田空港に到着すると、上野の東京都美術館で開催中の「クリムト展~ウィーンと日本1900」に向かいました。ウィーンのヴェルヴェデーレ宮殿でお目にかかったのは2年半ほど前のことでしたので、嬉しい再会となりました。
 観終わったあと、遅めの昼食をいただきました。お店はJALパックのオプションプランである「すしざんまい上野店」。なんと2200円の「こころ粋《大名椀付き》」を、たった100円でいただきました。この価格設定って一体どうなっているんでしょうね。でも、美味しくいただきました。
 次に向かったのは千駄ヶ谷にある国立能楽堂でした。やっとのことで手にいれたチケットでしたが、600余りの客席は満席で、大阪では味わうことのできない熱気を感じました。座席の背には字幕を映し出すディスプレイが設置され、日本語と英語いずれかを選ぶことができます。さすが国立能楽堂です。この日は「末広がり」「二人袴」「蝸牛」の狂言を楽しみました。
 その日のお宿は錦糸町駅近くのホテルでした。北斎美術館など古き良い時代の江戸の面影が残る両国、錦糸町界隈が、私は妙に気に入っています。ホテルの窓からは、米国大統領がお見えということで、青白赤の星条旗カラーに衣替えした東京スカイツリーが真正面に見えました。
 翌日は、早朝から次男君夫妻と鎌倉に行く予定にしていました。お嫁さんの安産祈願のためです。しかし残念なことに、次男君が急に高熱を発してダウンしてしまいました。仕方なくシニア夫婦だけで行くことにしました。
 行先は、鎌倉駅から歩いてすぐのところにある大功寺です。ちょうど戌の日にあたっていたので安産腹帯授与所は大勢の妊婦さん夫妻で混雑していました。生年月日や出産予定日などの基本情報をメールで教えてもらい、お婆さんがお嫁さんに代わってお守りと腹帯をいただきました。どんなに医学が進んでも、最後は神さま仏さまにすがることで気持ちを楽にするということでしょうか。多くの若いご夫婦がご両親に誘われてお越しになっていました。
 鎌倉にはずいぶん以前に来たはずなのに、あまり思い出せません。時間がたっぷりあったので、鶴岡八幡宮や鎌倉大佛殿・高徳院、鎌倉長谷寺をお参りしました。紫陽花には少し早かったのですが、美しい青紅葉を堪能いたしました。
 電車で移動中、若くして亡くなった私の兄が住んでいた「藤沢」という駅名がありました。亡き叔父の家がある「保土ヶ谷」という駅もありました。私の両親が新婚時代に住んでいた東京杉並の荻窪には未だ行ったことはないのですが、昭和の初めの頃、両親や兄、叔父たちの生活圏だったことを思うと、当時のことは全く知らないのに何となく懐かしさがこみ上げてきます。........こうやって私が旅に熱中しているのも、ひょっとしたら「終活」のひとつなのかもしれません。
 さてさて、三日目は日曜日ということで、長男君一家のほか熱も下がった次男夫婦も交えて、東京・竹芝桟橋から東京湾クルーズ「ヴァンテアン」に乗って、少しリッチなランチを楽しみました。レインボーブリッジ、豊洲市場、お台場、大井埠頭、羽田空港沖といった東京湾の見所スポットを巡る2時間ほどのクルーズでしたが、お上りさんにはちょうど良いコースだったかもしれません。半年ぶりの再会で話は尽きず、下船したあとも時間が許す限りの楽しいひと時を過ごすことができました。
 その日の夜は横浜みなとみらい界隈のホテルに泊まり、翌日ランドマークタワーの上から横浜の街を眺めたあと帰路に着きました。
 お上りさんの東京見物(その5)は、ざっとこんな感じでした。帰阪した翌日は講座運営のためお出かけ、その夜はシニア7人組の呑み会でした。そしてきょうも午前中は打ち合わせがありましたが、午後、家に帰るとやっとひと息です。明日は終日休息日。4、5日ゆったりと過ごせそうです。
 きょうは、R.シュトラウスの楽劇CD「ばらの騎士」を聴きながら、のんびりとブログ更新です。この曲は、村上春樹の「騎士団長殺し」の中でなんども登場する曲でもありました。

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【続々報】WALTY Classical 中岡さん手づくりのアンプについて

2019-05-22 20:05:07 | Weblog

 以前、よくおじゃましていたWALTY Classicalの中岡さんがお亡くなりになって早いもので3年が経とうとしています。このブログでも何度かご紹介させていただきましたが、これに関連して2017年8月8日、「【続報】WALTY Classical 中岡さん手づくりのアンプについて」と題する記事を、このブログに掲載させていただきました。
 記事は、コメントをいただいたハタナカさんという方が、中岡さん手作りのアンプをお探しになっている旨をご紹介させていただいたものでした。それがなんと、本日、そのアンプをお持ちの方からメッセージを頂戴しました。もし、ハタナカさんがこのブログをご覧になっていらっしゃるのであれば、お繋ぎをさせていただきたいと思いますので、画面左側の中ほどにあります「メッセージ」欄から私宛に連絡先をお知らせいただければ幸いです。よろしくお願いをいたします。

参考までに2017-08-08付の記事を再掲させていただきます。

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 ことし1月28日付の記事「WALTY Classical 中岡さん手づくりのアンプをご存知ですか」で、次のようなお知らせをさせていただきました。

 先週末(2017年1月21日)、ブログに一通のコメントをいただきました。1年半も前の記事「WALTY Classicalさん、閉店へ」(2015年7月18日)へのコメントでした。投稿いただいたのは、20年ほど前からワルツ堂閉店まで、アルバイトをされていたハタナカさんという方でした。
 「大変恐縮で突然ではありますが、中岡さんが製造された手作りのアンプを御持ちの方を探しております。ワルツ堂時代からご来店して下さっておられ、中岡さんと親しいお客様にだけ製作されておられました。元従業員の方々にも連絡もさせて頂いてお願いをさせて頂いている状況なのです。中岡さんを慕っておられたお客様方々でしたら、どなたかに繋がれると確信しながら、連絡させて頂きました。何卒宜しくお願い致します」と記されています。」
 元店主・中岡さんがお亡くなりになって1年が経とうとしています。もし、このブログをご覧になっている方で、ハタナカさんがお探しの「中岡さん手づくりのアンプ」をお持ちの方がいらっしゃれば、恐縮ですが左欄「メッセージ(メッセージを送る)」(非公開です)から私宛にメールをいただければ幸いです。よろしくお願いをいたします。
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 あれから半年が経過した先日、諸遊さんという方から1通のメールが届きました。そこには「中岡の兄ちゃんとは40年前の知り合いでした、第二店でお世話になりました。一度自宅に訪問をしモニターレッドを譲り受けアンプもあの時買わされました。今となればおいておけばと後悔しています」とありました。
 ハタナカさんがお探しになっているアンプだろうと思います。さっそく諸遊さんにお礼のメールを差し上げ、いただいたメールの内容をこのブログで紹介することのお許しをいただきました。手元にはないけれども「譲り渡した先は大切に使われているようです」と書き添えてありました。
 嬉しいメールでした。さっそくハタナカさんにお知らせしたいのですが、ブログにコメントはいただいているものの、わたしはメールアドレスなど連絡先を知りません。ハタナカさん、もしこのブログをご覧になっていらっしゃれば、ぜひ左サイドの中ほどにある「メッセージ(メッセージを送る)」欄から、わたし宛てにメールをいただきたく思います。諸遊さんからはメールアドレスをお伝えすることについてご理解をいただいています。ご連絡をお待ちします。 

 

 

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果樹の初々しい実が初夏の陽を楽しむ季節

2019-05-22 11:45:16 | Weblog

 窓を開けると初夏の陽が窓辺を照らします。我が家の庭では、レモンやスダチあるいはブルーベリーの小さな実が膨らみ始めています。春の花が咲き終わり、夏を迎える準備が着実に進んでいます。.......きょうは、家内が朝早くからステンドグラス教室にでかけたので、久しぶりに静かな時間を過ごしています。
 考えてみると、4月下旬から出たり入ったり落ち着きのない日々が続いています。先週は「歩き遍路」を終えた翌日に、朝からカレッジの講座があり、夕刻からは懇親会という名の呑み会がありました。一日おいて会議、同窓会と続き、今週も月曜が終日会議、火曜が講座.....。この4月から家内もボランティアとして出かけるようになったので、一週間があっという間に過ぎていきます。
 先週末の同窓会とは、以前2年間にわたって通ったシニア向け講座の、平均年齢70歳という元気な仲間たちの集いです。おおいに、食べ、呑み、語らい、楽しいひと時を過ごしました。
 場所は大阪・環状線天満駅にほど近いところ。いつものように、少し早く出かけて天神橋筋商店街をぶらり散策し、いつも立ち寄る「天牛書店」(創業明治40年)を覗きました。店内に入ると、東京・神保町のとある古書店のような雰囲気があり、静かなBGMが流れる店内でゆったりと選書を楽しむことができました。
 この日手にしたのは秋田麻早子著「絵を見る技術」(朝日出版社)でした。5月2日に発売されたばかりの本ですが1200円(定価1800円)でご購入とあいなりました。美術を学んだことのない一般人が絵画をどのように見、読み解くのかが平易な言葉で書かれています。水彩画教室に通う私としては、描く側と見る側の両方から絵画に向き合うという意味で、勉強になります。明日は水彩画教室です。
 そうそう。落ち着きがないと言いながら、週末から4日ほど東京に出かけてきます。40を過ぎて初産を決意した次男君のお嫁さんを励ますのが主な目的ですが、この際だからと長男一家も合流して楽しい食事会をセッティングしています。あとは、東京都美術館で開催中の「クリムト展 ウィーンと日本 1900」を観たり、国立能楽堂で狂言を楽しんだり(発売即日完売だったのに根気よくチェックしていたらキャンセルが出たのでしょう、めでたくゲット)。安産祈願を兼ねて次男夫婦と鎌倉に詣でる計画もあります。錦糸町の定宿で2泊、次男のいる横浜のホテルで1泊。ざっとこんなスケジュールですが、今回も格安JALパックを利用しての「東京お上りさん」になります。

 ちなみにきょうは、リストのハンガリー狂詩曲などを聴きながらブログを更新しています。ピアノ演奏はシフラです。4月下旬にブダペストの街を歩いていてリストの胸像にお目にかかることがありました。民族の誇りでもあります。
 LPレコード棚をみると、リストの曲が結構あるのに気づきます。暇を見つけて聴いていきたいものです。きょうは私の休息日ですから庭の草むしりのあと数枚は楽しむことができそうです(笑)。

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青紅葉を愛でる初夏の「歩き遍路」~大寶寺から石手寺まで

2019-05-15 20:52:41 | 四国遍路

 暖かいを通り越して暑ささえ感じる今日この頃ですが、そんな初夏の季節に「歩き遍路」に行ってきました。今回は、愛媛県と高知県の境にほど近い久万高原にある44番札所・大寶寺と45番札所・岩屋寺。その久万高原を下って松山市内の6カ寺を巡りました。青紅葉から漏れる陽の光が辺りに光る初夏の風情を楽しんだお遍路でもありました。
 前夜10時50分に大阪駅前BTを出発すると、翌朝6時前にJR松山駅に到着します。簡単な朝食を済ませて6時50分発の久万高原行のバスを待っていると、乗り場でなにやら必死にスマホと睨めっこをしている若い女性がいました。すると彼女、急に私に「高松の栗林公園行のバスはここですか」とカタコトの日本語で尋ねました。掲示板を確認して乗り場と発車時刻を教えてあげると、「切符はどこで買う?」。自動販売機を指さすと「日本語分からない」と。なんと日系アルゼンチンの方でした。祖母の母国を訪ねて一人旅をしているのだと。「で、どうなの?日本の印象は」と尋ねると「来てよかった」と。言葉を繋ぎ合わせているだけのカタコトの日本語でしたが、楽しい旅ができているご様子でした。今回は、人との出会いが印象に残ったお遍路でもありました。

 8時過ぎに久万高原のバス停に着くと、さっそく歩き出します。大寶寺までおよそ30分。大きな藁草履が奉納されている山門の前に立って、3年前バスツアーで来た時のことを思い出しました。
 次に向かったのは岩屋寺です。今回の行程の中では難所にあたるコースになります。歩き始めて少し経ったところで、町の婦人部の方々が運営されている「お接待所」に案内され、お茶とお菓子と果物をいただきました。傍にいた世話役の男性から、かつては2万人近くいた人口が8千人にまで減り、高齢化率が46%になっている現状を伺いました。基本、農業が主体の地域です。それ以外に若者が働く場が少ない。だから都会に出て行かざるを得ない。そんな現状を伺いました。
  でも、皆さん笑顔が絶えずお元気です。今は若者を増やすのがこの町の大きな課題だとか。傍にいた女性の方がおっしゃっていました。都会から農業をしに移住する若者を支援する制度があるとのことで、少しづつ定着している様子。農業実習を含めて町ぐるみで応援しているのだそうです。こんなポスターもありました。「心から安心して移住子育てを」「久万高原町はシングルママ、シングルパパを全力で支援します」。
 大自然に囲まれた素晴らしい町。古くから伝わる歌舞伎も継承するなど文化度も高い。先日旅した中欧の町々を思い出します。狭い国土の何分の一にも満たない所に人口が集中し、絵空事のようなビジネスが手を変え品を変えて蠢いている。何か大切なものを置き去りにしてはいないか。......農業で快適に暮らせるまちづくり。成功してほしいと思いました。
 シャガの花が咲く山道を歩いているうちに「八丁坂」の入口に到着です。岩屋寺はこの急な坂道を登り切った先にあります。八丁坂頂上休憩所でひと息ついたあと平坦な尾根道を歩きながら歩いていると、目の前に山岳修験者たちの行場である「逼割行場」が現れました。岩の裂け目をよじ登って頂上にある白山権現にお参りするのだそうですが、私には無理です。  さらに、三十六童子が点在する山路を降りていくと、岩屋寺の山門が見えてきます。お寺の周りには2000万年も前の地層が残る礫岩峰が聳えています。本堂横の礫岩の中ほどに、開山の法華仙人を祀った仙人堂跡がありました。登り口の看板に「危険な場所ですので転落しない様に十分御注意ください」と記されています。長い梯子を前に一瞬戸惑います。3年前に来たときは登りませんでしたが、今回は時間がたっぷりあります。よし!と登り始めましたが、あと3段というところで足が止まってしまいました.......。そのとき、もう一人の私が背中を押しました。やっとのことで登りきりました。上から下を眺めてびっくりです。高すぎる。高所恐怖症かも。
 納経所に行く前に穴禅定(お水供養所)にもお参りしました。燈明で微かに照らされていますが真っ暗なお堂の中を壁伝いに進みました。ここでふと思い出したのが、先日読んだ村上春樹の「騎士団長殺し」でした。第2部「還ろうメタファー編」で、主人公が不思議な深い森、深い洞に入っていくシーンと重なります。ついつい暗闇の「色」を考えてしまいました。村上春樹風の不思議な世界でした。
 こうして第1日目の予定は無事終了です。岩屋寺のバス停前のお店でアイスクリームをいただいたあと、この日の宿である国民宿舎小岩屋荘までのんびり歩いて向かいました。ここは松山。もちろんお宿は温泉付きです。

 翌日は、久万高原から松山市内に下っていくことになります。いろいろなルートを考えた末、比較的楽に歩けそうなルートということで、久万高原から塩ヶ森までバスに乗り、そこから峠を下って46番札所・浄瑠璃寺をめざすことにしました。これがなかなか気持ちの良い下り道でした。どんどん下って平野部に入りしばらく歩くと浄瑠璃寺、少し歩いて47番札所・八坂寺です。
   その後、遍路の元祖といわれる衛門三郎の屋敷跡に建つ別格霊場・文殊院や札始大師堂にもお参りしました。そして48番札所・西林寺へ向かいましたが、途中にある久谷大橋から重信川を望むと、なんと水が流れていません。流れていた形跡はあるので、田植えの時期だけ農業用水にでも使っているのでしょうか。不思議な風景でした。
 軽く昼食をとったあと49番札所・浄土寺へ向かいました。その途中、身体に障害をお持ちの若い男性がやってきて「接待です」といって5円硬貨を渡してくれました。私のような者になぜ?と思いましたが、お礼を言って受け取ると嬉しそうに帰っていきました。澄んだ目をした彼に、私はどう映っていたのでしょう。そのお心を大切にいただきました。
 実は2日目はここまでにする予定だったのですが、時計を見ると2時半。まだ行けるということでさらに足を延ばして50番札所・繁多寺、51番札所・石手寺と参拝しました。
 石手寺では、スペイン語圏の外国人観光客の一行に出会いました。スペインの世界遺産「サンティアゴ・デ・コンポステーラ」の巡礼を経験された方々でしょうか。四国のお遍路を興味深く眺めていらっしゃいました。
 二日目の宿は鷹の子の近くにある「たかのこのホテル」を予約していました。こちらでも、肌に源泉がまとわりつくようななんとも気持ちのよい温泉を楽しみ、2日間の疲れを癒しました。
 中欧旅行、歩き遍路、そしてボランティア(講座運営サポート)。ふだんの生活と旅が入り乱れ、でも楽しい老後生活が送れていることに感謝しなければなりません。
※きょうのブログ更新は少し長くなってしまいました。最後までお目通しいただき、ありがとうございました。

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民族、文化、宗教の多様性~東欧旅行(その2)

2019-05-07 22:48:05 | 旅行

 長期旅行から帰ると、雨が降っていたからでしょうか、庭の草木がずいぶん繁っていました。樹々の若葉が初々しく、ハーブたちも生き生きしています。目の前にはアゲハの幼蝶も.....。
 先週に引き続いて、東欧旅行に関することに少し触れます。まずはシェーンブルン宮殿の大ギャラリー。ここでかつてフランス革命とナポレオン戦争終結後のヨーロッパの新秩序を考えるウィーン会議が開かれました。残念ながら各国の利害が折り合わず『会議は踊る、されど進まず』という有名な形容詞がつけられた歴史的な場所でもありました。毎日のように舞踏会が開かれたというきらびやかなギャラリーで、ミニコンサートを楽しんだことになります。これもひとつの歴史体験ということにしておきましょう。
 そういう意味では、今回の東欧旅行でEU欧州連合のことが気になりました。現在、28カ国が加盟していると言われますが、その対応は各国さまざまです。イギリスでは離脱するか否かで揉めています。旅行客にとっては比較的簡単に国境を越えることができる気楽さがあり、ユーロでお買い物できる利便性もありますが(チェコやハンガリーのように現地通貨を併用している国もあります)、一方で難民の受け入れという現実的な課題もあります。
 民族の多様性と統治機構の在り様が問われているようにも思います。民族、文化、宗教の多様性を、ひとつの巨大な枠組みのなかでまとめあげることができるのかどうか。13億人とも言われるお隣の国のように一党独裁国家というものが本当に成立するものなのかどうか。『多様性』と『画一性』。そのどちらにもメリットとデメリットがあります。それをどう克服していくか。このあたりは人類の大きな歴史的な課題なのかもしれません。
 そうは言っても、目の前には母なる大河ドナウ川が流れています。マロニエやライラックの花が咲き乱れています。広大な麦畑が広がっています。菜の花畑が延々と続きます。村のあちらこちらに大小さまざまな教会があります。そこには、人々の日々の生活があります。人々の生活と宗教と政治。
 ひとつ触れるのを忘れていました。2年前にウィーンを訪れたとき、自由時間の多くを街のあちらこちらにある音楽家の胸像を捜しまわっていて時間切れになった美術史美術館に、今回やっと入ることができました。ラファエロのマリア像(草原の聖母)、ブリューゲルのバベルの塔など日本の展覧会で仰々しく眺めた多くの絵画が気負うことなく飾ってありました。部屋の真ん中にはどーんとソファーが置かれ、いろんな角度からじっくり見てほしいと言っているようです。写真もフラッシュさえ焚かなければ撮影可。アメリカのメトロポリタン美術館もそうでした。日本の美術館のような堅苦しさはまったくありませんでした。今回はここで半日を過ごしました。
 そんな8日間の旅行を終えて帰国した翌日、久しぶりに近くのお不動さんにお参りしました。令和の時代を迎えて初めての参拝でもありました。奥之院の薄暗い洞窟の奥にある大日如来像と対面すると、西洋の大聖堂と同じ空気感を肌に感じました。宗教とはいったい何なのか........。
 先日、京都の「春の古書大即売会」で、「空海 言葉の輝き」(ピエ・ブックス)を手にしました。美しい写真と空海の言葉が散りばめられた本ですが、なぜか心を鎮めます。その帯には「時は過ぎ、世は変わっても、今も人の心に生きて輝く 空海の言葉と高野の映像」とありました。国が違い時代が変わっても、人の根本的なところは案外何も変わっていないのかもしれない。もっとおおらかな気持ちで時代というものを眺めても良いのではないか。ふと、そんなことを感じたものでした。
 日曜日には、ことし初めて宝塚の清荒神さんにもお参りに行きました。GW終盤の時期、三々五々人々が訪れる境内を穏やかな春の陽気が包みます。気持ちの良いお参りができました。
 今週末には「歩き遍路」に出かけます。今回は、やっと松山です。第44番札所・大寶寺から第51番札所・岩手寺までお参りする予定ですが、さあてどうなりますことやら。幸い、雨の予報もありませんので、清々しい初夏の伊予路を歩いてきます。

※孫次男君がGW中から体調がすぐれず、明日も小学校をお休みするのだとか。両親はお仕事、お婆さんはどうしても抜けられない用事があるとか。ということで今夜、急きょお爺さんが明日お世話をすることになりました。ということで、一日早くブログを更新させていただきました。

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春を迎えた東欧諸国~音楽の風景を楽しむ

2019-05-01 23:02:50 | 旅行

 東欧旅行から帰った日、まだ時差ぼけの中で5月1日にアップするサイトの更新作業をしました。カレッジの新バージョンです。その翌日、つまり今日は、小雨が舞うなか、京都岡崎公園にある京都市勧業館みやこめっせで開催された「春の古書 大即売会」に出かけました。ゲットした10冊のうちの1冊は「ヨーロッパ学入門」でした。考えてみると、昨年の同時期も南イタリア旅行から帰国した翌日、この古書展に来ていました.......。

  さて、4月下旬から出かけていた中欧5カ国周遊の旅8日間。様々な争いに巻き込まれながら、民族の絆と文化を大事に守ってきた中欧の国々を巡りました。関西国際空港を出発してミュンヘン空港を経てプラハに降り立ちました。以後、プラハ、ドイツのドレスデンに寄り道したあと、ウィーンへ。そして国際列車に乗ってスロバキアのブラチスラバ、ハンガリーのブダペストへ。ざっとこんなバスの旅でした。
 いろんな国を巡って未だ頭の中が整理できていませんが、いま浮かんでくるのは、モーツアルトやベートーヴェン、リストなど音楽の風景でした。ワーグナーの「さまよえるオランダ人」や「タンホイザー」が初演されたというドレスデンのゼンパーオペラ(旧ドレスデン国立歌劇場)。外観だけでしたが、その空気感だけでも感動でした。その広場は1999年に開催された「ドレスデン・ガラ・コンサート」があった所。ゲオルギューとアラーニャが歌ったDVDが手許にあります。
 もうひとつはウィーンのシェーンブルン宮殿大ギャラリーでのミニコンサート。こちらではモーツアルトやハイドンの曲を楽しみました。のちほどお話しますが、歌劇「ドンジョバンニ」の歌も。
 ふたつ目は、寒い冬を終えて春を迎えた東欧の風景でした。道路沿いの菩提樹が初々しい若葉を広げています。ライラックの花、マロニエ(トチノキ)の花が春を告げています。その下を子供たちが行き交います。そこには国を越えて人々の生活がありました。
 三つ目は、やはり東欧の国々の歴史。蒙古の襲来に脅かされた時代、ヒットラーの悲劇、そしてソ連に自由を奪われた時代。そんな時代を耐え抜いて自由を謳歌する東欧諸国です。ドナウ川、そして民族の文化、歴史をある種の誇りをもって守りながら今に生きる。海に囲まれ国境を意識することなく生きてきた日本との違いを感じることになります。
 共産主義時代の遺物と現在が混在する中で近代的な都市に様変わりしているブダペストは、フランツ・リストの街でもあります。夕食後に楽しんだドナウ川クルーズでは、船上から国会議事堂の幻想的な風景に心打たれました。
  そうそう。今回の東欧旅行に連れて行ったものがあります。村上春樹の「騎士団長殺し」(新潮文庫全4巻)です。片道12時間の機上の友です。騎士団長殺し?なにやら推理小説のようですが、読み出してみると雨月物語を彷彿とさせるハルキワールドの世界が広がります。騎士団長とはモーツアルトの歌劇「ドン・ジョバンニ」に登場する人物です。それを題材に「騎士団長殺し」の絵を描いたのが、主人公(画家)が仮住まいする友人の父親。こちらは本格的な画家ですが、かつてウィーンに留学中事件に巻き込まれます.....。いろいろな人物が登場して大人のお伽噺が繰り広げられます。......4冊持参して3冊まで読み終えました。
 まだまだ語り尽くせないことがありますが、帰国したばかりなので、このへんで。日が経つにつれて何某かの思いが浮かんでくるのだろうと思っています。今夜は、ソプラノのゲオルギューとテノールのアラーニャ夫妻によるドレスデン・ガラ・コンサートのDVDを聴きながらのブログ更新でした。

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