心の風景

晴耕雨読を夢見る初老の雑記帳

本と戯れる ~ 紙媒体?それともデジタル媒体?

2020-07-25 10:41:41 | Weblog

 昨夜、NHKテレビで「神秘のヨーロッパ 絶景紀行『聖なる巡礼路を行く~カミーノ・デ・サンティアゴ~』」を見ました。南フランスのル・ピュイ・アン・ヴレイからピレネー山脈を越えて、スペインの聖地大聖堂まで全長1500キロを歩いてめざす「サンティアゴ巡礼」。自身の内面と向き合う巡礼者たちの姿を追いながら、四国八十八か所のお遍路と共通するものを感じたのは私だけでしょうか。四国のあとはサンティアゴ?、もう少し若かったら歩いてみたい巡礼の道でありました。 
 さてさて本題に移りますが、先日、久しぶりに事務所へ行った帰りに、京橋のツイン21アトリウムで開かれていた古本フェアを覗いてきました。今年は春から古本祭が軒並み中止となり、この夏に期待していた京都の「下鴨納涼古本まつり」も中止が決まったばかりです。例年だと秋には、四天王寺、大阪天満宮、京都知恩寺などで開かれるのですが、今のところ不明。昨今のコロナ感染状況を思うと、開催は無理かなあと思ったりしています。
 そんな中で開催されたツイン21古本フェアです。オフィス街の平日の昼下がりですから、お客はまばらでしたが、そのぶんゆったりと本を眺めることができました。お目当てのグレン・グールド関連の本は見つからなかったものの、吉田秀和さんの「新・音楽展望」を連れて帰りました。どうも最近、音楽を楽しむというよりも、その曲が作られた時代背景、作曲家や演奏者の人となり、そういう意味での音楽の「風景」に心惹かれます。
 音楽の風景、という言葉が浮かんでふと思い出しました。本棚から取り出したのは、指揮者・外山雄三さんのエッセイ集「音楽の風景」でした。この本は4年前の秋、大阪古書研究会主催の「天神さん古本祭」で見初めたものでした(笑)。
 私の本棚には今、現役時代に読み漁った類いの本はありません。古本の占める割合が俄然多くなっています。その一方で、近年、Amazon Kindle(電子書籍)にもお世話になっています。新刊本は専らデジタル媒体になります。雑誌類も紙媒体から電子媒体にシフトしつつあります。
 ところで、読売新聞12日朝刊9面に、神経科学者メアリアン・ウルフさんが「紙の本『深く読む脳』育む」と題する原稿を寄せていました。サブタイトルには「デジタル媒体は速読向き。染まると、ヒトは短絡的になり得る」とあります。
 なかなか興味深い内容でした。ウルフさんは最後に、デジタル媒体と紙媒体双方で「深い読み」のできる「二重に読む脳」を育むこと。子供の時になるべく多くの紙の本に親しみ、デジタル媒体は意識的に注意深く読む習慣をつける。そんなことをおっしゃっていました。
 私のような年代では、いまさら読書の仕方を大きく変える余裕はありませんが、紙媒体とデジタル媒体、それぞれの良さを味わいながら、楽しく「本」と向き合っていきたいと思っています。

◇   ◇   ◇

 ここ数カ月、コロナの関係で学びの場が閉ざされていますが、先日、水彩画教室のスタッフの方から9月下旬から開講する旨のお電話をいただきました。それまでの間はYouTubeで「柴崎春通の水彩画」を見ながら独学です(笑)。
 そして明日は、山本能楽堂の「休日の朝の能講座『能活』」に行ってきます。テーマは「井筒の巻」、全5回シリーズの初日になります。こうして少しずつエンジンをかけていくことになります。

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初めての入院体験で思ったこと

2020-07-18 10:40:52 | Weblog

 梅雨の時期の3日間を大学病院で過ごしました。コロナのため不要不急と言われた癌の精密検査の結果、ポリープを切除することになったためです。実は、この歳になって私は初めて入院と手術を体験しました。70年もの間、私の健康を下支えしてくれた大腸の内面を内視鏡のモニターで眺めながら、人体・生命の神秘を思いました。
 1カ月前に行った生検の結果は「良性」だったので、今回は大きく育ったポリープを取り除くだけの手術です。それでも、切除したポリープは大小あわせて11個にものぼりました。他に生検用に採取した細胞がいくつか....。部位が見つかるたびに狙いを定め内視鏡とメスを操作して切除、そして止血のための施術。医療技術の進歩に驚くとともに、医師と看護師さんの息のあった連携プレーに感心もしました。
 重篤でもなく、ただただ初体験の入院患者にすぎない私に明るく振舞ってくれた男女の看護師さん。細かなことにも目配りをしていただきました。抗癌剤の副作用で苦しんでいらっしゃったお隣の患者さんには、ずっと傍で励ましていた看護師さん。若いのに本当に頭が下がります。
 思えば昔、医療系大学の経営をサポートしたことがありました。そのとき印象に残ったのは学生たちの目の輝き、心の優しさでした。見ず知らずの私にもきちんと挨拶をしてくれましたし、エレベーターに乗るときには、さっとボタンを押してもくれました。人に寄り添う心の芽生えを感じました。もちろん中にはやや不適合と思しき者がいなかったわけではありませんが、医療技術者養成機関としての社会的使命の大きさもまた実感したものでした。
 ところで、ベッドに寝転がってスマホでニュースを見ていたら、東京の某医科大学病院で看護師さんたちが集団退職する動きが報じられていました。昨今のコロナ対応で病院経営が悪化するなか、ボーナスを払う体力を失っているのがその理由のようでした。身の危険を顧みずコロナ感染者のお世話をする医療従事者にとって、あまりにも惨いことです。でも、さきほど資金の目途がついたとの報道を目にしました。ひと安心です。それほどに病院経営が疲弊している現実があります。
 どうも最近、政治の劣化が目につきます。一貫した論理がない。ポスト・コロナの時代をどう生きるかという時代的な課題を描ききれていない。陰でこそこそ蠢く悪魔が見え隠れするばかりです。そんななか、先日の参院予算委員会(閉会中審査)で参考人として発言された児玉龍彦・東京大学名誉教授の言葉に感銘を受けました。「自己責任という恰好で個々の人にガイドラインを守れというのは無理」「ただちに国会を開いて、法律を最適化し、きちんとしたPCR検査をシステム的に行うべき」「それを今日からすぐやらないと、大変なことになる」と。目の前の現実を素直に見つめれば見えてくるものを、利権と権力欲が足枷となっているように見えます。なんのための専門家会議なのか、なんのための分科会なのか。このブログでは、政治的な発言は控えたいと思いつつ、どうも最近ひどすぎます。
 ぶつぶつお喋りしていますが、この2泊3日の入院中には白洲正子の「明恵上人」を読みました。つい10日ほど前に尋ねた高山寺、神護寺など栂尾の風景を思い浮かべながら、ある意味心の休養をしたことになります。
 実は来週、横浜の次男君が8カ月の孫娘を連れて帰ってくる予定でした。ところがここ数日のコロナ感染者の急増です。急遽、見送りとなりました。その次男君、来月半ばに新居に引っ越しをする予定なので、お手伝いがてら横浜に出かけようと思っています。それまでにコロナが落ちついてくれたら良いのですが......。

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モリコーネの訃報、そして高山寺散策

2020-07-11 10:23:49 | Weblog

 朝のお散歩でお不動さんに立ち寄った際、今年初めてセミの鳴き声を聞きました。そんなある日、朝刊を眺めていて目に止まったのが、E・モリコーネさんの訃報でした。映画音楽、91歳。荒野の用心棒....。この歳になると、若い頃に心のお世話になった方々の訃報に接します。お悔み申し上げます。
 滅多に映画館に行くことのない私ですが、なぜかジュゼッペ・トルナトーレ監督の映画はよく見ました。なかでも「ニュー・シネマ・パラダイス」は、DVDを購入するほど気に入っています。シチリアの少年と映画技師、初恋の女性への思いを描いた作品です。この日の夜は、久しぶりにDVDを見ました。モリコーネの音楽が心に染みわたります。
 7日にアップされたいずみホールの無観客ライブ配信(金管五重奏曲)第2部は、映画音楽がテーマでした。映画「ミッション」に流れたモリコーネの「ガブリエルのオーボエ/滝」を聴くことができました。人の心を静かに豊かに揺さぶる映画音楽の世界。この感動は歳をとっても変わりません。
 さて、話題はがらりと変わります。「芸術新潮」7月号の鳥獣戯画特集に誘われて、梅雨真っただ中、京都・栂尾の高山寺に行ってきました。京都駅前からJRバスに乗って向かうのですが、案の定、乗り場には「土砂崩れのため運休」の貼紙。よく見ると栂ノ尾までは通常運転で、その先が運休であることがわかり、ひと安心。乗客は2人。終点・栂ノ尾で降りたのは私一人でした。
 明け方の豪雨の影響で、路のすぐ横を流れる清滝川は茶褐色に濁り荒れ狂っていました。恐る恐る、いやいや気を取り戻して、栂尾山・高山寺に通じる裏参道を登りました。拝観の手続きを済ませてまず向かったのは石水院でした。奥の座敷には、鳥獣戯画や明恵上人樹上座禅像、明恵上人が愛玩していたという湛慶作の「子犬」などが陳列されてあります。(以下の写真は絵葉書から)
   いずれも国宝級の品々ですから、本物は別の場所に保管されているのでしょうが、周囲の空気感にしっとりと溶け込んでいて、私の心を和ませてくれました。時折晴れ間も覗く栂尾の山々を愛でながら、しばし縁側に座って小休止です。
 ご朱印状をいただいたあと、開山堂、明恵上人御廟、春日明神社、金堂などを見て回りました。その昔、山深い境内で人の生き仕方を考えたであろう明恵上人とその弟子たちのことに思いを馳せました。
 高山寺は、かの南方熊楠が「南方マンダラ」を構想するきっかけとなった土宜法龍が住持を務めたお寺としても知られています。土宜法龍宛南方熊楠書簡が大切に保管されています。
 南方熊楠は和歌山の出身で、博物学者、生物学者、民族学者として知られていますが、その破天荒な生き仕方が、現役の頃の私にある種の知力を与えてくれた人物でもありました。若くしてコンサートという舞台演奏から退きレコーディングに舵をきったグレン・グールドとも近しいものを感じてしまいますが、どうなんでしょう。私だけの受け止め方でしょうか......。荒れ狂う清滝川に沿って栂尾、高雄の山道を歩きながら、ぼんやりとそんなことを考えました。そういえば4年前のちょうど今頃、私は熊楠が眠る紀伊田辺の高山寺にお参りしたことがありました。(南方熊楠の墓前に報告2016-07-16)
 この日はそのあと、清滝川に沿って南に下り、槇尾山・西明寺と高雄山・神護寺を巡りました。帰りには本屋さんで白洲正子著「明恵上人」(講談社文芸文庫)を連れて帰りました。
 ちょっとした「歩き遍路」のようでもありましたが、ひとつ気づいたことがあります。マスクを着けて歩くことの息苦しさです。さすがに人のいない山道ではマスクを外して歩きました。でも、街中も歩く「歩き遍路」ではそうもいきません。ここ数日、感染者数が急増しています。四国の方々にご心配をおかけするわけにはいきませんので、少し落ち着くまで「歩き遍路」はお休みにすることにしました。

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コロナ梅雨にネットで無観客演奏を楽しむ。

2020-07-04 10:40:40 | Weblog

 雨が止んでいる間に朝のお散歩に行ってきました。いつもどおりお不動さんにお参りすると、本堂からは朝のお勤めのお経の声が聞こえてきます。境内の静寂感と微かに聞こえるお経の響きがなんとも言えません。でも、家に帰る頃にはまたしても空が怪しくなってきました。午後にはまた大雨の予想です。それではグールドのCDを聞きながらブログを更新することにいたします。
 ある日の昼下がり、グールドが奏でるピアノ協奏曲をハイレゾ音源で聴いていたら、急にパソコンがダウンしてしまいました。それもそのはずです。ほとんど使いものにならないくらい初期のノートパソコンを、メモリーを増強してWindows10にバージョンアップした代物です。無駄なソフトをすべて省いて音楽ソフト専用に使ってきましたが、さすがに寄る年並みには勝てなかったようです。
 これまでどおりステレオにパソコンを繋いで使うか、それともハイレゾ専用機を買うか。悩みながら電気街を歩いているうちに、中古の格安ノート Let's note に出会いました。さっそくステレオと接続して初期設定を終わり、ほっとひと息でした。
 最近はコロナの関係でコンサートが中止ないし延期になっているので、パソコンとテレビを結ぶHDMIケーブルも連れて帰りました。音声はステレオから、画像はテレビから。目の前に臨場感あふれる音楽空間が広がります。ネットで無観客演奏を探してまずヒットしたのは、いずみホールの無観客ライブ配信でした。大阪府文化芸術活動支援事業の「金管五重奏曲」です。演奏はOSAKA SHION WIND ORCHESTRA メンバーの方々。第2部は7月7日にアップされるとのことですが、雨の日には部屋に籠って音楽を楽しむ。これもありかもしれません(笑)。
 このようにゆったりまったりの生活を楽しんでいますが、先週は宝塚の清荒神さんにお参りに行ってきました。正式には「真言三宝宗 清荒神 清澄寺」と言います。火の神、台所の神と崇められ、大阪生まれの家内にとっては年に一度は必ずお参りするお寺です。今年はコロナの関係でこんなに遅れてしまいました。
 阪急宝塚線の清荒神駅から歩いて20分ほどのところに山門があります。以前、参道にたくさんのお店が並んでいましたが、最近はめっきり少なくなりました。唯一お客さんが並んでいたのは駅前の宝塚コロッケ屋さんです。ちょうどお昼前だったので私たちも並びました。安くて美味しいコロッケでした(笑)。
 話は変わりますが、週の初めに定期検診に行ってきました。血液検査、レントゲン、心電図の検査を受けて結果は良好。血圧検査も正常値の範囲内でした。が、娘のような女医さん曰く「70歳も近いことですから、血圧にも気を付けてくださいね」と優しくアドバイス。「ご家庭に血圧計がありますか」とも。「奥様とご一緒にお使いになってはいかがですか」とまで言われると、なんとなく心配になって、その夜、ネットでご購入でありました。少しずつではあっても、健康に気をつけなければならない年齢になったということなんでしょう。備えあれば患えなし。
 来週は、芸術新潮の「鳥獣戯画」特集に触発されて、京都の北にある「栂尾山 高山寺」に行ってこようかと思っています。天気予報をみると雨、でも大降りでなければ梅雨の高山寺もよいかと。

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