心の風景

晴耕雨読を夢見る初老の雑記帳

弘法大師空海の故郷を巡る

2023-10-22 11:20:11 | 四国遍路

 先週末、讃岐の国・香川県へお遍路ツアーに出かけてきました。66番雲辺寺、67番大興寺、68番神恵院、69番観音寺、70番本山寺、71番弥谷寺、72番曼荼羅寺、73番出釈迦寺、74番甲山寺、75番善通寺、76番金倉寺そして77番道隆寺の12カ寺です。
 巡ったお寺が多すぎてまとめにくいのですが、ふっと浮かんできたことからご紹介しますと、まずは本山寺。広い境内でひときわ目立つ五重塔と美しい芙蓉の花が浮かんできます。
 今回のお遍路では樹齢千数百年の巨木に何度か出会いました。たかだか70年足らずの人生しか歩んでいない者にとって気の遠くなるような長い間、同じ場所にじっとしてあたりの風景を眺めてきました。
 善通寺では南大門から入ってすぐのところにその大楠はありました。今年は弘法大師空海生誕1250年の年にあたります。この大楠はひょっとしたら空海が幼少の頃からここに立っていたのかもしれません。
大興寺では、本堂に向かう石段の横に、樹齢千二百年あまりのカヤの木(イチイ科の常緑針葉樹)と大楠が聳えていました。
 観音寺では、本堂前に樹齢八百年と言われる大楠が聳えていますが、岩盤の上に立っているのでしょうか。根元が地上に盛り上がっています。凄い生命力です。鐘楼の屋根の下には大きなスズメバチの巣があり、しょっちゅうハチが出入りしていました。

 善通寺界隈は、弘法大師空海(774年~835年)が生まれた所、真魚と呼ばれた幼少期を過ごしたと言われています。その善通寺は、和歌山の高野山、京都の東寺と共に空海の三大霊跡のひとつと言われます。
 まずは、広い伽藍にひときわ目立つ金堂(本堂)に向かい大きな薬師如来坐像に再会しました。空海が生まれた佐伯家の邸宅跡に建つ御影堂近くの御影池には、修行中の空海を真ん中に、中央に弥勒菩薩、左に父(佐伯善通卿)、右には母(玉依御前)の座像が置かれています。
 そういえば、前回、本山寺から弥谷寺に向かうのにずいぶん歩いた記憶があります。やっと参道までたどり着いても、その先本堂まで540段の石段があり大変でした。大師堂の奥には獅子之岩屋という岩窟があり、空海が幼少の頃ここで勉強したと伝えられている神秘的な空間です。
 お参り中に土砂降りの雨に見舞われた出釈迦寺の奥の院には、捨身が嶽禅定と言う言い伝えがあります。弘法大師空海が7歳の頃、絶壁から身を投じたところ天女が現れ抱きとめたとされる遥拝所があります。さあてどうなんでしょう。なにかの拍子に足をすべらせた真魚がうまく木の枝に引っかかって一命をとりとめた、というのが私の見立てですが、信じる信じないは人それぞれです。 こんなお話しもありました。曼荼羅寺の境内に、近くの丘に庵を建てて7年余り暮らしていた平安時代末期の歌僧・西行法師が、時々本堂前の平らな石の上で昼寝をしていたという平らな石があり「西行の昼寝石」と呼ばれています。西行がこのあたりに来ていたことは歴史的事実ですが、昼寝石というのは、信じるか信じないか。
 今回の旅の圧巻は、四国八十八カ所の中ではもっとも高い911mの山頂に建つ雲辺寺です。ロープウエイで7分かけて上りました。山頂に降りると、参道に五百羅漢が建ち並び、聖地の空気が漂います。大師堂横には、優しいお姿の観音像が目に留まりました。なにやら西洋の彫刻を思わせます。そういえば、善通寺の境内には法然上人を祀る祠、親鸞聖人を祀るお堂などがあり、宗派を超えた一大聖地になっています。いま中東では新たな争いが勃発していますが、他を受容する「心」の大切さを思ったものでした。
 そういえば、前回雲辺寺をお参りしたときは、土砂降りの雨の中、遍路道を歩いて下山しましたが、途中で道に迷い次の大興寺に向かうのにずいぶん苦労したことを思い出しました。山を下りてもあたりは田圃ばかりで人家なし。道を尋ねる人もいない。やっとこさ境内裏の入口を見つけました。納経所で次に向かう道を丁寧に教えていただきましたが、この日は疲れ切ってやむなくコミュニティーバスで観音寺駅に向かいました。

 こうして今年1月から始まった四国八十八カ所遍路の旅も来月をもって3回目の結願となります。リタイアして7年、その間に3回巡ったことになります。これでひとつの区切りになります。

【追記】
ブログを更新してから気づきました。私は今週末から来週半ばにかけて、長男君と次男君一家に会うため3泊4日で横浜・東京に出かけてきます。そんなわけで次週の更新はお休みします<m(__)m>。

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秋に二題~古事記と手づくり市と

2023-10-15 21:07:06 | Weblog

 昨日、庭掃除をしていたら、ほんのりと金木犀の香りが漂ってきました。咲き始めたばかりで、なんとも淡く優しい香りです。.......この季節を旧暦では「菊花開」と言います。いよいよ秋到来です。ジャカランダの苗木を数本、庭のあちらこちらに地植えしました。この樹が我が家を見下ろすまで成長する頃には、私はもうこの世にはいないでしょうが、それまでの間に一度でも青紫色の花が咲き乱れる風景を眺めてみたいものです。(写真:今朝お散歩で立ち寄ったお不動さんの玄関口に飾ってあった菊花)
 さて、先週、山本能楽堂で開かれた伝統芸能塾のテーマは「古事記」でした。講師は前回に続き下掛宝生流能楽師ワキ方の安田登さん、そして若手落語家の笑福亭笑利さん。それに笙(しょう)と太鼓と三味線の演奏者という顔ぶれでした。
 この日は、古事記の原典を皆で朗読しつつ、大阪生まれの作家・町田康さんが著した『口訳 古事記』(講談社BOOK倶楽部)を安田登さんと笑福亭笑利さんが掛け合いで面白おかしく読み進んでいくというものでした。国土の修理個成、聖婚、天照大御神と須佐之男命、スサノオのヤマタノオロチ退治、能「大蛇」、ヤマトタケルと進んでいきました。『口訳 古事記』の一節をネットに掲載されているものから拾ってみると、大阪弁丸出しです。
「汝(われ)、行って、玉取ってきたれや」
「ほな、行ってきますわ」
「イザナキとイザナミによる「国生み」と黄泉国行、日の神アマテラスの「天の岩屋」ひきこもりと追放された乱暴者スサノオのヤマタノオロチ退治、何度も殺されては甦ったオオクニヌシの国作り、父に疎まれた英雄ヤマトタケルの冒険と死、帝位をめぐる争い、女たちの決断、滅びゆく者たち――。」と紹介されています。日本最古の神話「古事記」が落語に変身です。
 古事記には、私がかつて暮らしていた町を流れていた斐伊川が登場します。八岐大蛇伝説は、小さい頃からよく聞いたお話しで、お祭りになると必ず神楽が演じられていました。そんな微かな風景を思い浮かべながら能舞台を眺めていました。

 と、ここまで綴ったあと、秋晴れに恵まれた今日は、久しぶりに京都に出かけてきました。家内の所望で百万遍・知恩寺の手づくり市を覗いてきました。同じ境内では来月の1日から5日の間、秋の古本まつりが開催されます。
 知恩寺の門をくぐってびっくりしました。たくさんのお店が並んでいて、大勢のお客がやってきていました。外国人の方も多く、なにやらクリスマスマーケットのよう。老若男女、出品された方々が丹精を込めて作った品々が所狭しと並んでいました。それを売る人、買う人。こういう風景を見るのは初めてでした。
 ちなみに我が家の奥様はステンドグラスの作品が仕上がって、ただいま皮細工に凝っています。と言っても教室に行くでもなく見様見真似です。昨夜はこんな小さな靴(写真)を見せてくれました。まだまだ初心者と、今日は見本に数個お買い上げでした。
 ....さあて、私はと言えば今週末、1カ月ぶりに讃岐の国へお遍路ツアーに出かけてきます。一泊二日で12カ寺を巡る強行軍です。

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オンライン動画学習サービスサイトJMOOCを再訪

2023-10-08 10:26:45 | Weblog

 今朝もひんやりとした空気感に目が覚めました。旧暦ではこの時季を17節気「寒露」と言います。「朝晩の冷え込みが増し、草木に宿る露が冷たく感じられる時季」。かつて寒い季節の四国遍路の道すがら時々見かけましたが、草木に露が宿るような風景は、ここ大阪では滅多にお目にかかりません。それでも朝のお散歩に出かけると、街全体が秋の風情です。
 そんな1週間でしたが、NPOの関係で落ち着きのない日々が続きました。と言っても、全くもって予想外の展開となりました。だらだらと緊張感が続くかと思いきや、瞬間風速のように、なんと当初の目標を2日間でほぼ達成してしまいました。若干の残務は残りますが、当分の間、のんびりと暮らせそうです。
 そんなわけで、昨日は終日お家の雑用に汗を流し、午後にはスポーツクラブ帰りに立ち寄ってくれた孫次男君のお相手をして、お爺さんらしい一日を過ごしました。その合間を縫って、山積みになった個人情報絡みのたくさんの書類を家庭用シュレッダーで裁断する作業にも汗を流しました。机の横の書類棚がスッキリしました。
 塩野七生さんの「ギリシア人の物語」も、スパルタ、アテネ、ペルシャへと読み進み、2500年も前の異国の時代風景を思い浮かべながら、程よい眠りにつく、そんな贅沢な時間を過ごしています。でも、時間が止まったような真空の中に身を置くと、なんとなく落ち着きません。私の生き仕方はなんとも厄介なものです。(写真は文庫本に綴られている口絵のひとコマ)
 そんな折、ネットを徘徊していて、久しぶりにオンライン動画学習サービスサイトJMOOC(ジェイムーク)を訪問しました。オンラインで公開された無料の講座を受講し、修了条件を満たすと修了証が取得できる教育サービスの日本版です。gacco、ネットラーニング、放送大学、JMOOCの4機関のプラットフォームになっています。
 これまでに修了証をいただいた講座は、「都市史研究の最前線~大阪を中心に」「なかなかいいいなか きてみんで徳島県那賀町」「昆虫学入門~多様性を探る」「男と女の文化史」「運動と健康の理論・実践」「妖怪の世界を探る~その伝承とビジュアルテキスト」の6つ。シニアの暇つぶしには持って来いの講座でもあります。
 現在募集中の講座を眺めていて「江戸怪談を楽しむ」を見つけました。講師は、法政大学理工学部創生科学科教授・国際日本学研究所長の横山泰子先生です。第1週は江戸怪談を楽しむ 怪談流行の理由、第2週は三大怪談とは(1)、第3週は三大怪談とは(2)、第4週:動物の怪談。
 10月27日に開講しますが、何となく面白そうなので、さっそく受講手続きをしました。小テストと総括テストの得点率60%以上が修了要件です。私のボケ防止の一環でもあります(笑)。
 少し心に余裕ができると何となく予定(課題)を入れてしまう悪い癖は直りません(笑)。今日の午後は山本能楽堂に出かけてきます。お気軽なものです。

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浄瑠璃寺の「魂の転生」を紐解く

2023-10-01 13:54:34 | Weblog

 10月1日。久しぶりに雨の朝を迎えました。小降りになったところで傘をもって朝のお散歩にでかけました。街中がしっとりと濡れていて、なんとなく秋の気配を感じる一日の始まりでした。
 そんななか、昨日はシニアの仲間たちと明石の「魚の棚」に蛸料理を食べに行ってきました。その前に、明石城を散策しました。内部公開中の「坤櫓」(ひつじさるやぐら)を見終わって外に出たところで、ボランティアガイドさんから北側の天守台に聳える「アベマキの木」を紹介されました。ブナ科コナラ属の落葉高木で、コルククヌギ、ワタクヌギとも言われます。聞けば、牧野富太郎が明石城を訪ねた際の記録に「アベマキ多し」と記録されていて、この樹の枝ぶりの良さに感嘆したのだとか。NHK朝ドラ「らんまん」が終わった直後だったので何となく感慨深いものを感じました。
 話しは変わりますが、先日、実家の義姉から電話がありました。来年は、母の50回忌、父の33回忌、兄の13回忌があるので予定を確保しておいてほしいと。もうそんな年月が経つんだと改めて思ったものでした。
 母が亡くなったのは社会人1年生の頃です。新規店舗の開店を前にバタバタしていたとき一報が入ったことを覚えています。お正月に帰省した際に言葉を交わしたのが最後でした。父も兄も、私は死に目に会うことなく逝っています。そういう後ろめたさが、ひょっとしたら四国遍路に向かう私の心の片隅にあるのかもしれません。

 手許に、四国八十八カ所霊場第46番札所「浄瑠璃寺」でいただいた「魂の転生」と題するリーフレットがあります。人が亡くなってから、賽の河原や三途の河、六道の門(地獄界、餓鬼界、畜生界、修羅界、人間界、天上界)などを経て「仏界」に到達するという、果てしない道のりが綴られています。

「13年」(縁覚界)
大日如来の教化を受ける魂の浄化により総ての因縁を深く明らかに見通しこれによって自覚の境涯を楽しみ独覚の位に上る。
「33年」(菩薩界)
虚空蔵菩薩の教化を受け覚心堅く仏界において利他の行を求めて活動し守護の力を持ち菩薩の境界に入る。
「50年」(仏界)
常に大日如来の教化を受け、総ての行位を成満し、諸法自遊自在にして諸仏菩薩と共に密厳浄土に安住する。

 ここで話題は急展開です。昨日、明石の帰りに何気なく立ち寄った紀伊国屋書店で、塩野七生著「ギリシア人の物語~民主政のはじまり」第1巻(新潮文庫)に出会いました。この夏に文庫本化されたようです。
 塩野さんの作品には、「ローマ人の物語」(全43巻)を読み終えて以降遠ざかっていましたが、専制政治の台頭で民主制の在り様自体が問われている昨今です。と同時に、組織の大小問わず組織運営の在り方が問われています。何気なく手に取ってしまいました。「魂の転生」とは全くもって無関係と思いつつ、でも何かしら人間の営みと通底してはいないか。物事を難しく考える、私の悪い癖が頭をもたげています(笑)。
 数年前に南イタリアはシチリア島を旅したとき、ギリシャの歴史を目の当たりにしたことがありました。文庫本には「古代ギリシャで民主政はいかにして生まれ、いかに有効活用され、見事に機能したのか?なぜ現代まで脈々と続く哲学や科学、芸術の起源となることができたのか?」「ギリシア人なくしてローマ人なし」とあります。
 芸術、つまり西洋絵画やクラシック音楽、歌劇の中に登場するギリシャ神話のお話にもなんとなく興味を抱く私です。ギリシャが繁栄を極めた当時の時代精神、時代風景を感じながら、少し頭の中を整理したいと思います。問題は、今週から繁忙を極めそうな状況のなかで読書の時間をどうやって捻りだすことができるのかどうか。ひとまず今日は、ブログを更新したら文庫本に目を通すことになります。

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