デカダンとラーニング!?
パソコンの勉強と、西洋絵画や廃墟趣味について思うこと。
 



司馬遼太郎 作『坂の上の雲』(文春文庫)、読了。

作品を書くにあたり、準備や下調べに膨大な時間をかけたのは分かるが、だからといって良質な作品になるとは限らない、読了直後そう思った。
この作品については以前にも触れたことがある。ちなみに10日もあれば文庫版で全8巻を読んでしまう人もいるだろうが、私の場合は読了まで21か月かかった。
遼寧半島への旅行の準備の一環で豆知識を得るために再び読み始めたのがきっかけであるが、読めば読むほど大陸に侵攻したことの理由としてロシアからの侵攻の恐れを建前にし、他の土地で戦争を繰り広げた時代を活力があった明治時代のロマン・夢としてうやむやにした作品だなと思った。
この作品の質が悪いのは明治期の外交や歴史について、自分の信じたいこと都合のいいことだけを信じ込ませる力があるところだと思う。諸外国に対して自分の「こうであったらいいな」といった歴史観から出た信念に合致したような記述を目にして作品を信奉し、ある種の精神的な願望をかなえ、それにしがみつきたくなる要素がある。作品を読んでおしまいというのでなく、20世紀初頭のイギリス、フランス、ドイツ、アメリカ、ロシア、日本、各国の自国および対外の歴史について目を背けたい事実もきちんと整理したくなった。


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