大浴場には運動場や図書館まであったが、運動場では走る人、ジャンプしている人、レスリングのような格闘技に熱中している人、今で言うバレーボールのような球技を楽しむ人、などなど、いろいろな運動で汗を流す人たちがいた。
こうした運動のあとはマッサージを受ける。マッサージで身体に塗られるのは香油で、マッサージが終わると身体の香油や汗を奴隷たちが取り除く。
取り除くために、まず細かい砂を身体にふりかける。油や汗を吸い取らせるのである。そして垢すりべらという一見「鎌」に見えるような道具で肌をこそげ、肌の汚れを取っていくわけだが、最近流行っているマンガのように現代の垢すり用タオルの方がやっぱり気持ちがよいと思われる。
複合型入浴施設には、微温浴室(テピダリウム)と温浴室(カルダリウム)と冷水浴室(フリギダリウム)、発汗室(ラコーニクム)などが大きな規模であった。もっとも暑い場所は発汗室であるが、温浴室でも床は焼け付くように熱く、素足では歩けないほどだった。
ではそういった浴室内を利用者はどのようにして歩いていたのか。実のところ大半の人が木靴を履いて歩いていたそうである。ローマの浴場はコミュニケーションの場でもあったが、そこは木靴の音に彩られていたことを想像すると、けっこうにぎやかで日本の銭湯とはまた異なる音の絶えない場であったのだと思ってしまった。
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