この旅の目的については既に触れたが、ロシアの文豪フョードル・ドストエフスキーについては触れてなかったので、少し書きたい。
Ф・ドストエフスキー(1821-1881):ペローフ画(トレチャコフ美術館蔵,モスクワ)
ドストエフスキーは19世紀ロシアの作家で、代表作に『罪と罰』や『カラマーゾフの兄弟』などがある。私はドストエフスキーの作品が好きで、作家の生涯をテーマにした評伝もいくつか読んだ。いろいろと見ているうちに作家に影響を与えたものを実際に見てみたいと思うようになった。
ドストエフスキーは、『罪と罰』を書いた翌年、妻と共にまるで逃げるように(実際、借金を抱えていた)ロシアを離れ、外国旅行に出た。
1867年4月(露暦)、ドレスデンでのドストエフスキーは、絵画館にてその後の創作活動に影響を与える作品たちに出会う。その作品の一つにラファエロの「サン・シストの聖母」がある。(絵の存在自体は67年より以前に知っていた)
ラファエロ画「サン・シストの聖母」(1513~14年頃),265×196cm
この絵はドストエフスキーの後半生の美の価値観に絶大な影響を及ぼし、いくつかの長編にも絵のことが言及されている。また、1879年10月にドストエフスキーは「サン・シストの聖母」の写真をプレゼントされ、亡くなるまで書斎に飾っていた。
ドストエフスキーは生涯「女性的なもの」にあこがれていたらしく、私はその究極の形がこの絵ではないかと思っている。
で、ドレスデンのツヴィンガー宮殿にあるアルテマイスターで実際にこの絵を見たときの感想だが、人の目線より高い位置で少し離れて掲げられてあり、また額縁のガラスが光に反射して、少し見づらいかったのが第一印象だった。
ぴょこぴょこ位置を変えつつ角度を変えつつ、そしてソファにもたれ体を反らし気味にして、作品をじっと見つめた。なんて大きくてやさしくて、思いの他どっしりしていて、人を寄せ付ける力がある絵なんだろうと思った。そして、何より人を落ち着かせる雰囲気がすばらしかった。
毎度のことながら、美術館を出るまでに、この絵の前に何度も立った。この作品を見た時間はのべ40分近くだったかも、と思う。
(「サン・シストの聖母」については、その購入者のエピソードや、第二次大戦でモスクワに運ばれたエピソードや、モデルは誰だったのか?などまだ解明されていないこともあるので、興味のある方はぜひ画集などを繰って見てください。)
(「回想」では、しばらくアルテマイスターの絵のことが続きます。)m(_ _)m
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というのもこの絵の全体を見るのは初めてなのです。
下に2人の天使がいますが
この天使だけがよくあちこちでクローズアップされていますよね~(何度も見たことがあります)
でもこの絵全体がこういう構図になっていたのかと思うと本当に感動というか衝撃的な感じがしました。
目から鱗のような感じでもあります。
また回想シリーズも楽しみにしています
美しく見える基本がしっかりしていますね。
そして、ぱすてるさんのおっしゃるとおり、
「サン・シストの聖母」は見上げている二人の幼天使も
クローズアップされることが多いのですね。
ミュージアムショップには、この天使が
クローズアップされた絵葉書が置いてあることがあって、
手に取りやすいというか、人気があるようです。
(たしか東京の国立西洋美術館にも置いてあったような...?)