田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

黒い波動 イジメ教師は悪魔の顔/麻屋与志夫

2011-10-01 14:32:57 | Weblog
4

誠の姿が見えなかったのか。
ステーションからは、看護婦は出てはこなかった。
前屈み。
同じ姿勢でコンピューターの操作に余念がない。

廊下を進む。
天井で蛍光灯がバチバチ音をたてて点滅する。
それはリアルな現象だ。
まるで誠の不安に連動しているようだ。
邪悪な黒い波動が頬を刺す。
鼻孔に異臭がつまる。
息ができないほどねばつく粘性のいやな臭い。
病室ごとにある。
プラスチックの患者名の書いてあるカードが。
ケースからぬけて。
両側から誠に襲いかかってきた。
ひらひらただようように見えているのに。
誠の体を突き刺すように。
襲いかかってきた。
カード。
頬を刺す害意の波動。
鼻には異臭。
カードの攻撃。
誠は廊下を走りだした。

点滅していた光が、ついに消え。
薄暗くなる。
不意に視界狭窄が起きた。
極端な遠近法で描かれたように。
廊下の幅が前方で鋭角となっている。
行く手を拒まれている。
誠はよろけて思わず病室のドアをおした。

翔太が顔をあげた。
ベッドにすわってジオラマをつくっていた。
指に緑のプラスチックの小片が付着していた。
葉っぱらしい。

「好きなこと、なんでもやっていいんだよ」

興奮している時の癖だ。
甲高い声で誠にいう。
と――。
翔太は作業にもどる。
セメダインで、プラスチック製の模造樹木を固定していた。
盛り上がった丘に樹木を植え込んでいる。
森を形成しようと熱中している。
額に手を置く。
熱はない。    
声はかさかさしている。
接着剤のもつ刺激的な匂いが。
ベッドを中心とし、波紋となって広がっていた。


 今日も遊びに来てくれてありがとうございます。
 お帰りに下のバナーを押してくださると…活力になります。
 皆さんの応援でがんばっています。

にほんブログ村 小説ブログ ホラー・怪奇小説へにほんブログ村

最新の画像もっと見る

コメントを投稿