田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

死なないヤッラ/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-05-22 02:20:09 | Weblog
死なないヤッラ


17

影のような黒服の男たちが、
兇暴な顔でみがまえた。
両眼が赤くさらにひかりだした。
こいつらには人間らしさはない。
ひとの生き血をすっているものだ。
「おれたちがこの歌舞伎町を、
新宿を、
日本を、
制覇するには夢道流のものが邪魔だとわかったのだ。
おれたちを群衆の中から識別できる。
おれたちの悪行を世間にしらせる。
おれたちに反抗して、
おれたちを滅ぼそうとする。
そういうことはしてもらいたくない」
芝原がせせら笑う。

影から巨漢がすすみでた。
赤く光る目だけではない。
肌も爬虫類のようにぬめり、
青黒くなっている。
分厚い唇からはヨダレをたらしている。
乱杭歯をむいてニタニタわらっている。
どうしてこいつらの笑い顔はみにくいのだ。
かくしている獣の飢えが、
むきだしになっている。
おそつてくるな。
翔子をかばった。
純は後手必勝の夢道流の掟をやぶった。
「愛する者を守るためです。
流派の始祖。夢道斉さま。
ゆるしてください」とこころで叫んだ。
純が巨漢の脇をはしりぬけた。
なにがおきたかわからなかったろう。
脇差は鞘におさまったままだ。
巨漢の胴から緑の血がふきあがった。
鬼切丸が音もなくぬかれた。
そして鞘に納められた。
一瞬の技ださった。

「まだ、まだ……」
巨漢がまだニタニタ笑っている。
さっと傷口を手でなであげた。
血の奔流はたちどころに止まっている。
止血テープでもはったようだ。
その回復力の敏速性におどろいた。
純はとんでもないヤッラを敵にまわしている。
 クッククク。くっくくく。巨漢がたからかに哄笑している。
「こちらからいくぞ」
 巨漢が動いた。



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