音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■ Brahms 3つの間奏曲 Drei Intermezzi Op.117 の楽譜について■

2009-06-25 23:58:45 | ■ 感動のCD、論文、追憶等■
■ブラームス Brahms 3つの間奏曲 Drei Intermezzi Op.117 の楽譜について■
09.6.25 中村洋子


★一昨日のブログで、書きました ルービンシュタインの CDには、

ブラームスの作品が、12曲、収録されています。

2曲を除き、残り10曲は、ルービンシュタインが、

84歳だった、1970年6月10日~12日にかけて、

ローマの RCAイタリアスタジオで、録音されています。

いままで、何歳の時の録音か、あまり、

気に留めていませんでしたが、

今回、CDのブックレットを見て、

その84歳というお年に、感嘆いたしました。


★一度、世に出た後、ひたむきな勉強をしないで、

大輪の花を、咲かせることなく、

蕾のまま萎れてしまう演奏家も、多いのですが、

ルービンシュタインは、年齢とともに、

さらに、輝きを増していった、

ということが、よく分かります。


★ルービンシュタインは、あるインタビューで、

「若いピアニストが上達する秘訣とは?」と聴かれ、

「毎日、バッハの平均律クラヴィーア曲集を練習すること」と、

答えています。


★ピアノの「マエストロ」といえば、アルフレッド・コルトー

Alfred Cortot も、忘れることができません。

私は、ブラームスの 3つの間奏曲 Drei Intermezzi Op.117

の校訂譜として、コルトーの版を、

ずいぶん、勉強いたしました。

出版社は「 Edizioni Curci-Milano 」社(クルチ社)です。

この出版社は、シュナーベル校訂の、

ベートーヴェンソナタ全集も、出しています。


★このコルトー版と、ヘンレ版のUrtext を比較しますと、

コルトー版は、ブラームスの自筆手稿譜(Autograph)を基に、

コルトーの校訂を、加えています。

ヘンレ版は、ブラームスの Handexempler(Auther'copy)を

基にしています。

このHandexemplerは、ベルリンのSimrock ジムロック社から、

ファーストエディションが、出版される折、

ブラームスが修正を加えた、ブラームス自身によるコピーです。


★ブラームス自身によって書かれた、

2種類の楽譜が、存在するのです。

一般的に、作曲家が版を重ねるごとに、手直しをすることは、

よくありますが、一番新しいものが、

優れているとは、言い切れない面があります。



★ベッチャー先生から、うかがった話ですが、

コダーイの「無伴奏チェロソナタ」は、第一版と、

後の版とでは、相違する点があるそうです。

シュタルケルが、コダーイの前で、第一版を演奏し、

「後の版と、どちらが正しいのか」と、

本人に直接、尋ねたそうです。

コダーイは、「It's OK」としか、いいませんでした。

それは、シュタルケルの演奏が、素晴らしかったので、

作曲家として納得した、ということなのでしょう。

質問には、答えてはいなかったようです。


★ブラームスの Drei Intermezzi に、話を戻しますと、

どちらがいいかは、別にして、

そのNo.2 について、両者を比較してみます。


★①=ブラームスの自筆手稿譜(Autograph)

 ②=ブラームスの Handexempler(Auther'copy)と、します。

22小節目で、

①には、フェルマータは記載されていない。
     
②には、P記号の直前に、上声と下声に、
       1つずつフェルマータが、記載されている。

42小節目で、

①には、crescendoのみ記載。
      
②は、3.5拍目の位置に、fが記載され、そのfの直前まで、
   crescendoが続いている。


84小節目の第1拍目、

①では、B♭/d♭/b♭ シ♭、レ♭、シ♭の和音。

②では、B♭/b♭ シ♭、シ♭のオクターブ。


★以上の3点が、大きな相違点です。

ずいぶんと、曲の表情が変わりますね。

両方弾いて、確かめてください。


   
                     (花梨の若い実)     
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