音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■Brahmsの弘法の一筆のような推敲で、Händelヴァリエーションが劇的に変化■

2014-06-04 01:55:12 | ■私の作品について■

■Brahmsの弘法の一筆のような推敲で、Händelヴァリエーションが劇的に変化■
               2014.6.4   中村洋子

 

 

ドイツの 「 Jugend Musiziert  」  www.jugend-musiziert.org

「 青少年音楽コンクール 」 で、私の ≪ 10 Duette für 2 Violoncelli 

2台チェロのための10のデュエット ≫ や、

≪ Zehn Phantasien für Celloquartett 

チェロ四重奏のための10のファンタジー ≫ が、演奏されています。

このコンクールは、ドイツ国内のみならず、

国際的にも、高く評価されています。

 


★ことし 5月 5日、Boettcher先生から頂きましたお手紙には、

 By chance I saw two young cellists going to

the competition:Jugend musiziert: 

and asked them, what are you going to play?

Nakamura, they answered.          

と、書かれていました。

 

★5月 13日の、Hauke  Hack  さんからのお手紙にも、

 I also heard a young celloquartet in Jugend musiziert in Essen,

who played one of your Quartets; it was very nice.                      

という報告が、ありました。


★Hauke Hackさんは、この 「 Zehn Phantasien für Celloquartett 」 を、

出版された 「 Musikverlag Hauke Hack  Dortmund 社 」 の、

オーナーで、ご自身も cellist チェリストです。

 


★ベルリンの リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から,

近く出版されます、私の ≪ 無伴奏チェロ組曲 2番と、4番 ≫ の、

校訂がほぼ終わり、 ≪ 5番 、 6番 ≫ の校訂へと移りました。

 

 


★今月は、16日 ( 月 ) が、 KAWAI  横浜・みなとみらいで、

「 Chopin が見た平均律 1巻・アナリーゼ講座 」 で、

19番 A-Dur イ長調 を、勉強いたします。


6月 25日(水)は、 KAWAI 名古屋で、

第14回 「Bach  Invention ・アナリーゼ講座」で、

 第14番 B-Dur を、お話いたします。


7月 3日 (木 ) は、 KAWAI 表参道で、

「 平均律 2巻・アナリーゼ講座 」第 16番 g-Moll  Prelude & Fuga 

を、ご一緒に勉強いたします。


★ Invention インヴェンションと、平均律 1巻、2巻を、

集中して勉強できることは、私にとりましても、

とてもよい機会です。


★そして、これら講座では、副題に掲げました、

Beethoven の 「 Klaviersonate  Op. 101  A-Dur 」 と、

平均律 1巻・ 19番 A-Dur との関係。

Invention 第14番 B-Dur と、 「 Suite bergamasque 

ベルガマスク組曲 」 との関係、そこから、

Debussy ドビュッシーの特徴的な和音が、実は、

 Bach に多くを負っていることが、ここから、

よくお分かりになると思います。


★また、 Chopin の名作 「 Piano Concerto  No.2  Op.21 」 が、

平均律 2巻 第 16番  g-Moll  を学び尽した結果として、

生まれ出た、ということを考えることにより、

Bach、 Beethoven、 Chopin、 Debussy へと連なる天才の系譜から、

生きた音楽史を、辿ることができると思います。

 

 


★多忙な中で、Johannes Brahms ブラームス (1833~1897)  の

≪ Variationen und Fuge über ein Thema von Händel op.24

ヘンデル・ヴァリエーション ≫ の自筆譜を読んで、楽しんでいます


★Brahms が  Clara Schumann クララ・シューマンに贈り、

現在は米国議会図書館に所蔵されている、

自筆譜のファクシミリ版です。


★贈り物にする楽譜ですから、丁寧に美しく書かれていますが、

それでも更に、鉛筆で書き込みや、推敲がなされていて、

なるほど! と、膝を打ちたくなるところもたくさんあります。


★例えば、4分の4拍子の Var.1、

 第 1変奏の 13小節目 2拍目の左手部分は、

「 F - B 」 の 8分音符ですが、

これは鉛筆で、推敲されたものだったことを、

自筆譜を見て、発見しました。


そうなる前は、 「 B 」 の 8分音符の後は、

「 b - f 」 の 16分音符だったのです。

 

 

 

この変更により、何が変わったのでしょうか?

初稿の 「 B - b - f 」 ですと、この 2拍目の和音は、

 ≪ tonic トニック ≫ になります。

1拍目は、≪ dominant ドミナント ≫ です。

そして、2拍目は ≪ tonic トニック ≫ 、

更に続く 3拍目は、また ≪ dominant ドミナント ≫ ですから、

「 dominant  -  tonic  -  dominant  」 の順番で、

規則的で、お行儀のよい音楽になります。

 

推敲後の、 ≪ F - B の 8分音符 ≫ になりますと、

この 2拍目は、拍の前半が、 属七の和音 ( dominant )です。

 

拍の後半は、主和音( tonic ) となりますが、

 

耳で聴きました印象は、1、 2、 3拍そして 4拍目の頭部まで、

 

属和音 ( dominant ) が、ずっと続く様に聴こえます。

 

≪ dominant ドミナント ≫ が続く、ということは、

≪ tonic トニック ≫ に、解決したいという、

強い方向性が、形作られます。

そして、1、2、3、4拍 の拍頭の音がすべて 「 F 」 ですので、

「 F - F -  F - F 」 の  ≪ repeated notes ≫ が生まれます。

この ≪ repeated notes ≫ は、あたかも、

保続音を4つに分割して、4回 「 F 」 を奏したように聴こえます。

4回 「 F 」 がありますと、急き立てられたような効果が生まれます。

 

★この ≪ repeated notes ≫ は、

Bach 平均律 2巻 16番  g-Moll の  Fuga の、

主題の  ≪ repeated notes ≫ と、

同じ性格を、宿しているともいえるのです。

 

 


そして、4番目の repeated notes  「 F 」  が終わったところから、

素晴らしい 「 三声 の counterpoint 対位法 」  が、

始まるのです。

 

★弘法の一筆のような、この推敲で、

場面が劇的に変化し、

傑作となったのです。


★また、皆さまがお持ちの実用譜で、私が書き写した図の

左手部分を、見てください。

Brahmsは、左手を 「 二声 」 に、キチンと書き分けていますが、

皆さまの楽譜は、そうなっていないのではないでしょうか。

「 自筆譜 」 を読むことは、

作曲家の肉声にも譬えられる「 作曲意図 」 を、

手に取るように、読み取ることができる、

という醍醐味が、得られることです。

 

 

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■ 講師 :   作曲家  中村 洋子  Yoko Nakamura

 東京芸術大学作曲科卒。作曲を故池内友次郎氏などに師事。
日本作曲家協議会・会員。ピアノ、チェロ、室内楽など作品多数。

 

 2003 ~ 05年:アリオン音楽財団 ≪東京の夏音楽祭≫で新作を発表。

 

 07年:自作品 「 Suite Nr.1 für Violoncello
        無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 などをチェロの巨匠
        Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー氏が演奏した
     CD 『 W.Boettcher Plays JAPAN
                         ヴォルフガング・ベッチャー日本を弾く 』 を発表。

 

 08年:CD 『 龍笛 & ピアノのためのデュオ 』
    CD 『 星の林に月の船 』 ( ソプラノとギター ) を発表。

 

 08~09年: 「 Open seminar on Bach Inventionen und Sinfonien
                  Analysis  インヴェンション・アナリーゼ講座 」
                    全 15回を、 KAWAI 表参道で開催。

 

 09年: 「 Suite Nr.1 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

 

         「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲第 3番 」が、
           W.Boettcher 氏により、Mannheim ドイツ・マンハイム で、
           初演される。

 

 

 

10~12年: 「 Open seminar on Bach Wohltemperirte Clavier Ⅰ
                  Analysis 平均律クラヴィーア曲集 第 1巻 アナリーゼ講座 」
                全 24回を、 KAWAI 表参道で開催。

 

 

 

10年: CD 『 Suite Nr.3 & 2 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 3番、2番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。

 

 

 

     「 Regenbogen-Cellotrios  虹のチェロ三重奏曲集 」 を、
             ドイツ・ドルトムントのハウケハック社
      Musikverlag Hauke Hack Dortmund から出版。

 

 

 

11年: 「 10 Duette für 2 Violoncelli
                         チェロ二重奏のための 10の曲集 」 を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

 

 

 

12年: 「 Zehn Phantasien für Celloquartett (Band 1,Nr.1-5)
    チェロ四重奏のための 10のファンタジー (第 1巻、1~5番)」を、
      Musikverlag Hauke Hack  Dortmund 社から出版。

 

 

 

13年: CD 『 Suite Nr.4 & 5 & 6 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 4、5、6番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。

 

 

 

         「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 3番 」 を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

 

 

 

      スイス、ドイツ、トルコ、フランス、チリ、イタリアの音楽祭で、
    自作品が演奏される。

 

 

 

 ★上記の 楽譜 & CDは「 カワイ・表参道 」 http://shop.kawai.co.jp/omotesando/  

 

 「アカデミア・ミュージック 」 https://www.academia-music.com/ で販売中

 

 

 



 


 

 

 ★私の作品の CD 「 無伴奏チェロ組曲 4、 5、 6番 」

 

  Wolfgang  Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー演奏は、

 

   全国の主要 CDショップや amazon でも、ご注文できます。

 

 ★ disk Union クラシック館で、第1 ~ 6番を購入できます。

 

 

 

※copyright © Yoko Nakamura    
             All Rights Reserved
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

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