■ショパン・バラード1番の演奏比較について ■
08.9.22 中村洋子
★9月30日(火)は、カワイ表参道「コンサートサロン・パウゼ」で、
第3回「バッバ・インヴェンション アナリーゼ講座」を開きます。
インヴェンションとシンフォニアの各3番です。
翌10月1日(水)は、カワイ表参道地下1階で、月2回開催の
少人数アナリーゼ講座で、ショパンの幻想即興曲と、
ブラームスの交響曲第4番の2楽章を取り上げます。
今週は、この準備の勉強と、作曲で大忙しです。
★ショパンのバラード1番の演奏を、
3人のピアニストのCDで聴き比べました。
アシュケナージ、ポリーニ、ルービンシュタインです。
アシュケナージは、録音が1967年? 8分54秒と
1975~85年録音 9分43秒の2種類。
ポリーニは、1999年の録音、8分35秒。
ルービンシュタインは、1959年録音 9分22秒。
★ト短調のナポリの和音で始まるラルゴの序奏は、
若き日のアシュケナージは、3小節目第1拍のドに続く
連続倚音(いおん)のソ、シ♭、さらに、
和声音のラ♭を頂点とする幻想的な曲の始まりです。
★2回目の録音では、ショパンのpesante(ペザンテ~重々しく)の
表示を忠実に、一音一音を噛み締めるように弾き、
頂点は、4小節目の4拍目のラ・ナチュラル、ソまで遅らせています。
同じ演奏家でも、時を経て、表現が変わっていくよい例です。
どちらも、詩的な美しく暖かい演奏です。
★ポリーニは、よくぞ、ここまで曲をアナリーゼし、
研究し尽くしたという演奏です。
思いがけない内声が、浮き上がってくるところでは、
ショパンが、バッハの影響をいかに深く受けていたか、
それを、ポリーニが、読み込んだうえで演奏していることが
手にとるように分かります。
★ショパン演奏が“絶品”といわれたルービンシュタインですが、
なぜか、公式には72歳まで「バラードの全曲録音」が成されていません。
バラード1番に限っても、大変に有名で人気がある曲ですが、
形式一つとっても、ショパンが4年間かけて、
格闘し練り上げたものですので、
一筋縄ではいかないのです。
★種々の解説本によりますと、
バラード1番は「ソナタ形式の一種」と書かれていますが、
どれ一つ明確な説明を見たことがありません。
どうも、これはどこかから孫引きされたものが、検証なしに
延々と孫引きされ続けている結果のようです。
講座で、しっかり説明いたしましたように、これをソナタ形式ととると、
演奏上、手も足も出なくなるのです。
★ルービンシュタインは、おそらく、
ポリーニのような詳細な研究を経た後で、
彼にしか表現のできない、大きな「宇宙」のような、
バラード像を創り上げました。
この演奏が、“究極の演奏”かもしれません。
★是非、皆様もいろいろな演奏を聴き比べ、
皆様のショパン像をおつくり下さい。
ムードミュージックにしないために、
曲の構造を研究し理解しませんと、
聴き所も逃すことになります。
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲
08.9.22 中村洋子
★9月30日(火)は、カワイ表参道「コンサートサロン・パウゼ」で、
第3回「バッバ・インヴェンション アナリーゼ講座」を開きます。
インヴェンションとシンフォニアの各3番です。
翌10月1日(水)は、カワイ表参道地下1階で、月2回開催の
少人数アナリーゼ講座で、ショパンの幻想即興曲と、
ブラームスの交響曲第4番の2楽章を取り上げます。
今週は、この準備の勉強と、作曲で大忙しです。
★ショパンのバラード1番の演奏を、
3人のピアニストのCDで聴き比べました。
アシュケナージ、ポリーニ、ルービンシュタインです。
アシュケナージは、録音が1967年? 8分54秒と
1975~85年録音 9分43秒の2種類。
ポリーニは、1999年の録音、8分35秒。
ルービンシュタインは、1959年録音 9分22秒。
★ト短調のナポリの和音で始まるラルゴの序奏は、
若き日のアシュケナージは、3小節目第1拍のドに続く
連続倚音(いおん)のソ、シ♭、さらに、
和声音のラ♭を頂点とする幻想的な曲の始まりです。
★2回目の録音では、ショパンのpesante(ペザンテ~重々しく)の
表示を忠実に、一音一音を噛み締めるように弾き、
頂点は、4小節目の4拍目のラ・ナチュラル、ソまで遅らせています。
同じ演奏家でも、時を経て、表現が変わっていくよい例です。
どちらも、詩的な美しく暖かい演奏です。
★ポリーニは、よくぞ、ここまで曲をアナリーゼし、
研究し尽くしたという演奏です。
思いがけない内声が、浮き上がってくるところでは、
ショパンが、バッハの影響をいかに深く受けていたか、
それを、ポリーニが、読み込んだうえで演奏していることが
手にとるように分かります。
★ショパン演奏が“絶品”といわれたルービンシュタインですが、
なぜか、公式には72歳まで「バラードの全曲録音」が成されていません。
バラード1番に限っても、大変に有名で人気がある曲ですが、
形式一つとっても、ショパンが4年間かけて、
格闘し練り上げたものですので、
一筋縄ではいかないのです。
★種々の解説本によりますと、
バラード1番は「ソナタ形式の一種」と書かれていますが、
どれ一つ明確な説明を見たことがありません。
どうも、これはどこかから孫引きされたものが、検証なしに
延々と孫引きされ続けている結果のようです。
講座で、しっかり説明いたしましたように、これをソナタ形式ととると、
演奏上、手も足も出なくなるのです。
★ルービンシュタインは、おそらく、
ポリーニのような詳細な研究を経た後で、
彼にしか表現のできない、大きな「宇宙」のような、
バラード像を創り上げました。
この演奏が、“究極の演奏”かもしれません。
★是非、皆様もいろいろな演奏を聴き比べ、
皆様のショパン像をおつくり下さい。
ムードミュージックにしないために、
曲の構造を研究し理解しませんと、
聴き所も逃すことになります。
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲