■私の「6 Suiten für Violoncello Solo チェロ組曲」全6曲の出版が決定■
~ Furtwänglerの自作自演から、彼の演奏設計図が解明できる~
2014.1.13 中村洋子
★前回ブログで、少しご紹介いたしました Wilhelm Furtwängler
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー (1886 - 1954) の作品を、
CDで、聴いています。
「 Musikverlag Ries & Erler Berlin リース&エアラー社 」 から、
作品が出版されています
≪ Sinfonisches Konzert: für Klavier und Orchester
ピアノと管弦楽のための交響的協奏曲 ≫ です。
Piano: Edwin Fischer
Conductor: Wilhelm Furtwängler
Berliner Philharmoniker
Recorded 1939. Ⅱ Adagio 第2楽章 アダージョのみ
★作曲家としての Furtwängler の作品を、彼自身の指揮で聴きますと、
Furtwänglerが、どのような “ 設計図 ” で、
自作品を演奏していたかが、実によく分かります。
Bartók Béla バルトーク (1881~1945) 校訂の
Wohltemperirte Clavier 平均律クラヴィーア曲集を勉強しますと、
Bartók が、どう Bach を弾いていたかを知ることになり、それにより、
Bartókの作品を、より深く理解できるようになります。
★これは、作曲家がどう演奏したかを、学ぶことから、
その作曲家自身への深い理解に到達する、という話ですが、
逆に、演奏家・指揮者 Furtwängler が、自身で作曲した曲を、
どのように演奏したか、を学ぶことから、
彼が、 Beethoven ベートーヴェン (1770~ 1827)や、
Johannes Brahms ブラームス (1833~1897) などの大作曲家を、
どう分析して、いかなる “ 設計図 ” で演奏したか、
それも、分かってくるのです。
Furtwängler の演奏が、どうして飛び抜けて素晴らしいのか、
その謎が、自作自演を聴くことで、
氷解したような気がしました。
★Berlinの 『 Ries & Erler Berlin リース&エアラー社 』 から、
お手紙が、届きました。
社長の Andreas Meurer アンドレアス・モイラーさんが、
「 まず、なによりも先に、新年おめでとうございます。
あなたのご多幸を祈ります。
私たちは、あなたの ≪ Solo Suite für Violoncello Nr. 2 、4、 5& 6
無伴奏チェロ組曲 2 、4、 5& 6番 ≫ の publish 出版を、
decide 決定しました。
Boettcher 教授に、校訂をお願いして、承諾をいただきました・・・ 」
★社長の Meurer モイラーさんは、 「 Musikverlag Ries & Erler Berlin 」
の二代目 Robert Ries (1889-1942) の、
お嬢さんの息子さんで、四代目です。
★既にお知らせしましたように、 1、 3番の楽譜は出版されており、
私の作品 「 無伴奏チェロ組曲 」 全六曲が、
Ries & Erler から、出版されることになったのです。
★ 「 Solo Suite für Violoncello Nr. 4、 5、 6
無伴奏チェロ組曲 4、5、6番 」 の CD解説に書きましたように、
Bach 「 Suiten für Violoncello solo 無伴奏チェロ組曲 」 全 6曲の
顰に倣うことは、 Ikaros イカロスが、蝋付けの翼で、
あまりに高く飛んだため、太陽の熱で蝋が溶け、
海に落下してしまった、というギリシア神話のお話のように、
身の丈に余る、無謀な試みのようにも思いました。
★しかし、Bach の国 Germany ドイツで、
老舗出版社が、全曲出版を、決定してくださいました。
大変光栄で、心から嬉しく思います。
★Bach の 全 6曲は、緊密な設計のもとに作曲され、
6曲全部で、壮大な 1つの曲と、みることができます。
「 緊密な設計 」 の中に、「 調性の設定 」 も含まれますので、
安易に調性を変更することは、よほどの熟慮か、
特段の理由がない限り、行うべきではないと、思います。
http://blog.goo.ne.jp/nybach-yoko/e/31dece61fd3e030eb9b7e7c710f65466
私の6曲も、全体で 1曲となるように、作曲いたしました。
★新着の 「 無伴奏チェロ組曲 3番 」 の楽譜を、是非、
Boettcher ベッチャー先生の録音された CDを聴きながら、
勉強していただきたいと、思います。
大変に、得るところがあるはずです。
★例えば、≪ Ⅴ Eicheln rieseln von Bäumen
Acorns Fall Lightly From the Trees
第5曲 木の実時雨 ≫ の 1~8小節目 pizzicato と、
9~33小節目の acro ( 弓で弾く ) 、 34~39小節目 pizzicato
の 3か所を、比較してお聴きください。
40~41小節目の acro と、 42~47小節目の pizzicato も、
同様に、比べてお聴きください。
★これは、弦楽器奏者のにならず、ピアニストにとりましても、
大変、参考になります。
pizzicato は、弓を使わず、指で弦を弾きますから、
弓を擦ることで可能な、持続音の crescendoや diminuendo、
vibrato は、不可能です。
一種の打楽器奏法といえます。
★それは、ピアノの奏法ととてもよく似ていると、いえます。
ピアノの場合、打鍵した後、いかなる crescendo や diminuendo も、
その打鍵した音に対して、加えることはできません。
ピアノの Legato 奏法、つまり 「 音をつなげ、滑らかに弾く 」 奏法も、
打鍵された瞬間から、減衰する音をいかに
滑らかにつながって連続しているかのごとく、聴かせるか、
一種のトリックとも、言えるのです。
★ピアニストが何気なく行っている 「 Legato 」 ですが、
本当の 「 Legato 」 を獲得するのは、至難の技です。
打鍵する瞬間、attack する瞬間に、
心臓の鼓動する、生身の人間が発する、
生きた attack が、必要なのです。
★その attack を、「 SuiteNr.3 für Violoncello solo Ⅴ
無伴奏チェロ組曲 3番 第 5曲 」 で、 pizzicato と arco とを、
比較勉強することで、学び、
ご自分のピアノ演奏に、役立ててください。
pizzicato が、ピアノの打鍵に近似し、
arco が、ピアノの legato の理想なのです。
★まずは、 1小節目の pizzicato と、
それを 4度上で、模倣した9小節目の arco を、
各々、1小節分だけで結構ですが、
楽譜を見ながら、何度か聴き込んでください。
本当の Legato を手に入れる第一歩です。
★「 中村洋子作曲 無伴奏チェロ組曲 3、2番 」の CD
Wolfgang Boettcher 演奏は、
KAWAI表参道1階楽譜売場 http://shop.kawai.co.jp/omotesando/、
アカデミアミュージックhttps://www.academia-music.com/ で、
お求めになれます。
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