音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■チャイコフスキーの「四季」と「中級程度の12の小品」の楽譜について■

2009-05-09 14:50:29 | ■私の作品について■
■チャイコフスキーの「四季」と「中級程度の12の小品」の楽譜について■
                   09.5.9   中村洋子


★ゴールデンウイークも終わり、日常が戻ってきました。

皆様は、いかがお過ごしでしたか。

私は、休み中「3人のチェロ奏者のためのトリオ集」

「Trios fuer drei Cellisten」を、作曲していました。


★この曲集も、ドイツのたくさんのチェリストたちに、

弾いて頂けることに、なるでしょう。

チェロ学習者が、音楽の喜びを感じながら、

気軽に、取り組むことができ、

同時に、プロの演奏家にも、真剣に演奏し、

楽しんでいただけるような曲、となるよう、

配慮いたしました。


★そのような意図の曲集として、チャイコフスキーが作曲した、

「四季」Op.37bis(1876年出版)と、

「中級程度の12の小品」Op.40(1879年出版) を、

挙げることが、できます。

かつては、チャイコフスキーの楽譜は、

良いものを入手することが、かなり困難でしたが、

最近は、優れた版がたくさん、出版されています。


★私が持っています楽譜は、Edition Peters や

Editio Musica Budapest などですが、

最近、Schott 社から、

「新チャイコフスキー全集に基づく演奏譜」が、

刊行されました。

信頼が置け、見やすく、お薦めしたいと、思います。


★「四季」につきましては、各月の冒頭に、

曲を象徴する詩が、英語とドイツ語で、記されています。

チャイコフスキーが、曲で描こうとしたイメージや世界が、

よく、伝わってきます。

詩を読んで得られるイメージを、自分で心に描きながら、

演奏することは、奏者にとって、

想像力を養ういい訓練になると、思われます。


★ピーター・イリッチ・チャイコフスキー

Peter Ilyich Tchaikowsky 1840 ~ 1893 は、

「中級程度の12の小品」Op.40 、

「12 Pieces of Medium Difficulty」を、

1878年2月、フィレンツェ滞在中に書き始め、

同4月、ロシア・カメンカの自宅に戻り、完成させました。

出版は、翌年の1879年の1月です。


★チャイコフスキーは、1878年8月の手紙で、

このように、言っています。

「私はいま、異なった種類の、いくつかのシリーズを、

全部、完成させました。私が書いたのは、ピアノソナタ、

3つのヴァイオリン小品集、12のピアノ小品集、

24の子どものためのピアノ小品集、6つのロマンス、

混声合唱のための作品 です」。


★この時期、彼の創作意欲が、溢れんばかりに、

満ち満ちて、いました。

大曲だけでなく、同時に、若い音楽家に対し、

愛情に満ちた小品集の“贈り物”を、たくさん書きました。


★これら小曲集は、図らずも、彼のリリックで、

優しく、叙情的な内面を、日記を綴るように、

素直に、正直に告白している作品、といえます。

この「12の小品集」の初演は、1879年12月21日に、

チャイコフスキーの弟子である、ピアニスト・作曲家だった、

タネーエフ Sergey Ivanovich Taneyev が、いたしました。


★1878年11月の、チャイコフスキーの手紙によりますと、

出版途中の楽譜を、タネーエフに渡し、校閲を依頼し、

出版前に、初演したようです。


★チャイコフスキーのピアノ作品には、まるで、

オーケストラのような響きを、もった曲が多く、

「12の小品集」も、そういう響きを、楽しめます。

これを、子ども時代に、練習しますと、

オーケストラ作品に親しむ、よい手引きとなります。


★また、大変に美しい曲が多く、

他の楽器に編曲され、よく、演奏されています。

名チェリスト・ピアティゴルスキー Piatigorsky も、

アンコール作品として、この「12の小品集」から、

2番「悲しい歌ト短調」を、

「6つの小品」Op.51 から、6番「感傷的なワルツ」を、

演奏していました。

これらは、CDの「Naxos Great Cellists Piatigorsky」

「Concerts and Encores」で、実際に聴くことができます。


★それを聴きますと、旋律の歌わせ方、

チャイコフスキーの息づかい、間の取りかた、リズムを、

ピアティゴルスキーのチェロから、個人レッスンのように、

おおいに学ぶことが、できます。

曲の強拍が、ただ「重い」のではなく、「一瞬の打撃」を、

「引き伸ばす」ように、演奏すると、

どんなに、生き生きとしたものになるか、

いい例と、言えましょう。


              (写真は、野草ハルジョオンの蕾)

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