音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■■ エリック・ハイドシェック先生の公開講座 その2 ■■

2007-12-24 17:38:08 | ★旧・感動のCD、論文,演奏会など
2007/9/7(金)

★前回の続きです。

ブラームス「ピアノ小品集」op.118の3番「バラード」の

39、40、41小節に使われている同一モティーフについて、です。

39小節目の、右手で奏する付点4分音符と8分音符の「ファーレ・ファーレ」を

ハイドシェック先生は、ここは、「オーケストラのホルンの音である」。

「No Pedal !!!」と、おっしゃいました。


★40小節目の、同じモティーフが1オクターブ下がった「ファーレ・ファーレ」は、

「ファゴットの音ですので、指を立ててピアノを弾きなさい」。

帰宅しまして、先生の仰るとおり、指を立てて弾いてみました。

なんとまあ、ピアノの音がファゴットに聴こえるのです。


★39、40小節は、ハ短調の属七でしたが、41小節目は、ロ長調に遠隔転調し、

先ほどのモティーフの変形が、右手で「シーソ♯、シード♯」と奏されます。

「これは、ヴァイオリンである」と、説明されました。

この40から41小節にかけての急激な転調は、

ベートーヴェンのピアノのための変奏曲にもあります。

伴奏を付けずに「ファーレ・ファーレ」から「シーソ♯・シード♯」の

モティーフのみを弾きますと、

「まるで、シェーンベルクの音楽のようですね」と、おっしゃいました。


★シェーンベルクは、ブラームスの作品を大変に愛し、研究し、編曲作品も残しています。

ハイドシェック先生が、直感でおっしゃったことは、正鵠を得ているといえます。

ちなみに、このop.118は、1893年に作曲されていますが、

ブラームスの4つの交響曲のうち、第4番ホ短調op.98は、

ブラームス52歳の1885年に、作曲されています。

亡くなったのは、op.118の4年後の1897年です。


★その第4交響曲第1楽章、第1主題のファゴットは、見事にこの音域、すなわち、

ヘ音記号のほぼ五線のなかに入っています。

このファゴットと、ホルンの関係を耳で聴きますと、

ハイドシェック先生のレッスンの意味がよく分かると、思います。

先生が、いかに、オーケストラ作品も研究されているか、ということです。

皆さまも是非、スコアを見ながら、第4交響曲を聴いてください。

ピアノを弾く上で、とても参考になります。


★ブラームスのピアノ作品には、室内楽やオーケストラの音色を、

イメージして書かれていることが、大変に多く、随所に見受けられます。

一方、ショパンは、ピアノでしか表現できない音色によって、

多くのピアノ曲を書いています。

しかし、ショパンですら、注意深く観察しますと、

オーケストラの楽器の音色を想定しているところが、たくさんあります。


★ブラームス第4交響曲では、18小節にわたる第1テーマのうち、

木管のフルート、クラリネット、ファゴットは、最初から最後まで奏されますが、

オーボエはやっと17小節目になって初めて、千両役者のように、一番目立つ音域で、

第1ヴァイオリンの「シー・シ・シ」をカノンで受け継ぎ、

この長いテーマを、印象深く閉じます。

オーボエが「オーケストラの華」、といわれるのが、実感できます。


★ベルリン・フィルの「オーケストラの華」ローター・コッホの

数少ないCDをまた、偶然、入手することができました。

モーツァルト作曲「オーボエ四重奏曲 K.370」。

共演はブランディス弦楽四重奏団、チェロはもちろん、ベッチャー先生です。

この曲は、モーツァルト室内楽作品集(CD3枚組)に入っています。

CD番号 BRL92874 、外盤ですが、日本語の表紙が付いており、

大手CDショップで購入できると思います。



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