音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■世界で大人気の映画「 最強のふたり Intouchables 」は、“仏版寅さん  その2 ■

2012-12-05 23:16:47 | ■楽しいやら、悲しいやら色々なお話■


■世界で大人気の映画「 最強のふたり Intouchables 」は、“仏版寅さん  その2 ■

                           2012.12.5   中村洋子

 

 

★この映画では、 ≪ 音楽 ≫ も重要な役割を果たしています。
現在のヨーロッパにおける、音楽の位置について、いろいろな思いがよぎります。

 
★ Philippe と Driss は、豪華なオペラを見に行きます。
周囲は着飾った紳士淑女、最良のバルコニー席です。
緑色の面白い衣装の歌手を見て、 Driss は、「 木が歌っているみたいだ、おかしい 」、
「 4時間も見続けるのか 」と、想像を絶する世界であると、言わせます。


★ Philippe の誕生日には、室内弦楽アンサンブルを呼び、親族と一緒に、
名曲の数々を、生演奏で聴くのが恒例です。
演奏会終了後、 Philippe は、特別にいろいろと演奏を頼み、Driss に聴かせます。
≪ ヴィヴァルディの四季・夏 ≫、Driss 「 何も感じない 」。
≪ 別のヴィヴァルディ ≫ Driss 「 職安で流しているあれだ。
“ 順番にお並びください、仕事まで 2年間待ちます ”」。
≪ Bach 無伴奏チェロ組曲 1番プレリュード ≫、 Driss 「 あ! 、コーヒーの宣伝だ 」。
≪ リムスキー・コルサコフ ≫ 、Driss 「 トムとジェリーだ 」
これは、寅さん映画でよく出てくる、権威をけなすシーンに似ています。


★Driss 「 今度はオレの番だ 」、「 音楽は踊れなくちゃ!!! 」。
小さな i-pot を机の上に乗せます。
アース・ウィンド&ファイアーの 「 ブギー・ワンダーランド 」が流れます。
強烈なリズム。
Driss は、体を上下左右、弓のようにクネクネしならせ、踊りまくります。
爽快です。    
普段は能面のような顔をしている女性執事も、大きな腰を振り降り、
 “ もうたまらないわ ” とばかりに、踊り始めました。
黒いタキシード姿の老給仕も、スッテンコロリ転びそうになりながらも、
踊りを、止めようとしません。


★この映画の観客は、正直、Driss の「ブギー・ワンダーランド」のほうが、
格段に楽しい、と感じていたのは、間違いないでしょう。
裃を着て、かしこまってクラシックの名曲を聴く人たちが、
ヨーロッパでも、化石になりつつあることを、示しているのかもしれません。
クラシックの名曲を、おざなりの商業的な演奏ではなく、
真の名演により、絶えず聴く経験を積み重ねる場がない限り、
この傾向を押し留める術は、ないのかもしれません。


★この Driss の反応に対する Philippeの顔は、複雑でした。
にこやかに、微笑んで入るものの、
「 ブギー・ワンダーランド 」に、組している顔ではありません。
この映画で、最も美しく聴こえたのは、
 Philippe の大邸宅を紹介するシーンで流れた、
 Chopin Nocturne Op.9-1 b-Moll でした。
                                    (続)
 

 

     ※All Rights Reserved, copyright Yoko Nakamura
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ■世界で大人気の映画「 最強... | トップ | ■世界で大人気の映画「最強の... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

■楽しいやら、悲しいやら色々なお話■」カテゴリの最新記事