■第8回「バッハ インヴェンション・アナリーゼ講座」のご報告■
09.3.24 中村洋子
★本日、カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」で、
第8回「バッハのインヴェンション・アナリーゼ講座」を、
開催しました。
音楽雑誌「ぶらあぼ」や、パンフレットをご覧になって、
初めて、お出で掛け頂きました方や、お仕事を休んで、
駆けつけてくださった方も、たくさんいらっしました。
★きょうは、ドイツ・ライプチッヒ出身の
ダーフィット・シッケタンツさんの、ヴァイオリンで、
バッハの「ヴァイオリンとオブリガートチェンバロの
ためのソナタ4番」の一部や、
私が編曲しました「ヴァイオリンとピアノのための
インヴェンション8番」、
シンフォニア8番とインヴェンション8番を、おのおの、
ヴァイオリンとピアノとで、声部を分けて、演奏しました。
★ヴァイオリンのアーティキュレーションを、そのまま、
ピアノに応用することは、できませんが、
ピアノ演奏にとって、それを知っていて弾くことは
とても、内容の深い演奏となります。
★特に、弓にバロック・ボウを、用いましたので、
バッハ時代には、このような、アーティキュレーションや
フレージングで、演奏していたのだ、ということが、
容易に、想像できました。
★バロック・ボウは、現代の弓と比べて、軽く、短いのですが、
シッケタンツさんは「大きく力強い音」を、出すこと以外は、
バロック・ボウのほうが、バッハ演奏に向いていると思う、
と、解説されていました。
ボウの長さが短い、ということは、ロングトーンの長さに影響し、
ひいては、曲のテンポを設定するのに、
大きな影響を与えると、思います。
★あるピアノ教師の方は、「バッハをつい、堅苦しいものと、
生徒に感じさせてしまうことが、悩みでしたが、
バッハの協奏曲がもつ、活き活きとした楽しさを、
インヴェンションに応用すれば、いかにバッハの音楽が美しく、
楽しいものになるか、分かりました」と、感想をお書きになりました。
★シンフォニアおよびインヴェンションを、
9番、8番の順で演奏する、さらに、9番、8番、7番と
逆に辿ることも、可能であり、とても新鮮です。
発表会などで、生徒さんに、インヴェンションまたは、
シンフォニアを2曲、弾いていただく場合、「9番、8番」の順で、
弾くことは、大変に効果的です。
その理由を、マタイ受難曲の例をとって、皆様に、ご説明しました。
★ちなみに、先ほどの
「ヴァイオリンとオブリガートチェンバロのためのソナタ4番」の,
第一楽章と、第47番のアリア「憐れみたまえ、私が神よ」
Erbarme dich, mein Gott は、同じ旋律が使われています。
このことから、分かるように、ヴァイオリニストは、
マタイ受難曲のアリアを、聴くべきですし、
ピアニストも同様に、さまざまな楽器のバッハ作品を、
聴きませんと、バッハの演奏は、底の浅いものに、なりがちです。
★バッハは、決して、この曲集を1番から順に、
弾くようには、指定していません。
作曲法としては、1番から順番に、発展していくのですが、
演奏する際は、奏者の思考により、
順番を独自の設定にすることが、可能です。
★しかし、それは、徹底したアナリーゼをした上でのお話です。
音楽愛好家の方は「グレン・グールドのCDで、
シンフォニアを、順番どおりに演奏していない理由が、
はじめて分かったような気がしました」と、
おっしゃっていました。
★風邪で、声が出にくかったのですが、
アンケートで、いたわってくださるお言葉がたくさんあり、
この講座の参加者の皆さまの、心の温かさに、
触れることが、できました。
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