昨日(18日・金)の夜のことである。
午後9時少し前。
妻とモミィは、いつもより遅いお風呂に入っていた。
僕はリビングで一人、テレビをかけながら週刊誌を読んでいた。
そこへリリリーンと電話が鳴った。
電話はテレビの近くにあるので、僕はリモコンでテレビ音声を消し、
週刊誌を置いて、今ごろ誰…? と思いながら電話に向かった。
家族、親戚、知人などとはほとんど携帯でやり取りをしている。
家の固定電話にかかってくるのは、勧誘など迷惑な電話が多い。
しかしそれはたいてい日中であり、夜の9時というのは、あまりない。
ひょっとすると、何か重大な連絡かも知れない。
ちょっと緊張した手で受話器を取った。
「もしもし~」と、聞こえてきたのは知らない女性の声だ。
声の調子から、若い女性ではなく、中年以上のおばちゃんと思われた。
そのおばちゃんは、僕が「はい、〇〇です~」と言うと、
「あ、あのぉ、こちらは、神戸ムニャムニャ…というところですが…」
早口なのでよく聞き取れず「はぁ? 神戸…なんですって?」と聞き返す。
「神戸ムニャムニャ…」と、その横文字のような部分がわからない。
おばちゃんはまたムニャムニャ…と言ったあと、
「…という、結婚相談所です」と続けた。
「はぁ? 結婚相談所…?」
何の電話やねん、これ。
そしておばちゃんが言うには、
「お宅さまに独身の方がおられましたら…ということで…」
で、電話をさせていただきました…ということなんだそうだ。
「わが家に独身者がいるかって…?」 と僕。
するとおばちゃんは、こう言った。
「ええ、そうです。 28歳から58歳の独身の男性の方、いらっしゃいます?」
ふ~む。
どうもわけのわからない電話である。
こんな時間に、「結婚相談所」から電話で、わが家に独身の、
…それも、28歳から58歳までの男性がいるか…な~んてね。
アホくさ、と思ったとたん、いたずら心が芽生えてきた。
「へぇ…。28歳から58歳まで、と決まってるんですか?」 と僕。
「はい、そういうことでお尋ねさせていただいています」 とおばちゃん。
「ううぅ~、残念やなぁ…」 と僕は悔しそうな声を上げた。
「はぁ…?」 と今度は相手が戸惑った様子。
僕は続けた。
「58歳まで? 惜しいなぁ。僕はもうちょとだけ歳がいってるのですが…」
僕の悔しそうな言い方に、おばちゃんは戸惑いから解放されたように、
「えっ? そうなんですか? で、独身でいらっしゃいますか…?」
と急に元気づいて、電話に出た僕自身に興味を持った様子だった。
僕がつつましく黙っていると、おばちゃんはいよいよ声を弾ませ、
「独身でいらっしゃるのですか?」 と、その質問を繰り返した。
一呼吸置いてから、僕が、
「いいえ。 孫もいてますねん。 えへへ~」
そう言うと、今度はおばちゃんのほうが沈黙 (絶句?) した。
そして、そのままひとことも言わず、ガチャンっと電話が切られたのだった。
なんだかねぇ…
自分から一方的に電話をかけてきたくせに、
せめて何かひとこと言って、切ればいいのに… (ぶつぶつ)。